2014/10/20 Drop of Honey - Card of the Day -今日の1枚-

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Drop of Honey

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 マジックには「この色がこんなことを?」と違和感を覚えるカードが、特にその最初期のセットにはいくつか含まれていた。これは、まだどの色が何の役割を与えられるべきかが定まりきっていなかったが故にデザインにもある程度の「自由」が許されていたのだ。赤い打消し、青い土地破壊、そして緑のクリーチャー破壊…今日はその緑の1枚についてのお話。

《Drop of Honey》は緑のエンチャントでありながら、直接的にクリーチャー破壊を行うという、現在のマジック観から見ると「不可解」な1枚である。1マナという超軽量なこの1枚は、あなたのアップキープの開始時に戦場で最もパワーの低いクリーチャーを破壊する。2/2と1/1がいるならば、1/1がその被害に遭う。その後、その2/2よりもパワーが低いクリーチャーが出てこなければ犠牲となるのはソイツに決定。こうやって、延々と破壊を繰り返して行き、戦場からクリーチャーが去るとこのエンチャントも破棄され、蜂蜜の滴が落ちることは二度となくなる。

除去呪文と考えると、少々緩慢である。1匹くらいが犠牲になってもどうとでも良いという考えのウィニー系を相手取り、それを食い止めるほどの強さを発揮するわけではない。かといって、クリーチャーがいなければ維持できない特性上1ターン目に設置してロック完成というわけにもいかないというのが何と言うか痛し痒し。そもそも、自身がクリーチャーを運用するデッキではデメリットになりかねない。というわけで使いにくい1枚ではあるはずのだが、しかし高額なカードの1つである。最初のエキスパンション「アラビアン・ナイト」のカードだから?それだけが理由ではない。

このカードは驚くべきことに、「対象」を取らない。クリーチャーはあくまで「選ぶ」という形で破壊の的となるので、被覆や呪禁を持った連中を難なく破壊することが出来るのだ。実は1994年から2006年までの実に12年間は、テキストが「対象の」に変更されていたため、マジックの歴史の中でその本来の挙動を行える状態であった期間がズバ抜けて短いカードでもある。永い幽閉を経て、2006年からはエターナル環境で《敏捷なマングース》などの対策カードとして頑張っていたりしたものだ。

このカードは、タイの民話をベースとして作られたものだ。「え、アラビアン…?」というツッコミは、飲み込んでいただきたい。「A little drop of honey」というお話。ある日、王様は食事に出た蜂蜜を一滴、床にこぼしてしまった。家来はお拭きしましょうかと尋ねるも「あー、まあ、いいよ大丈夫。誰かがやってくれるから。それよりさっきの話だけど…」とおしゃべりに夢中でスルー。

この蜂蜜を舐めに、虫が飛来してきた。この虫を、今度はトカゲが食べにやって来た。虫を喰らったトカゲに好奇心をそそられたのは猫である。これを捕らえようと飛び掛かった猫だが、その猫は犬に噛みつかれることとなった。さあ、ここで出てくるのは猫と犬、それぞれの飼い主。お前の犬が悪いいやお前の猫だとあーだこーだの言い争い。これがなんと国中に拡散し、どちらの飼い主側に着くかで国は真っ二つとなり、この勢力の小競り合いは戦争にまで発展。最初は何の話だと傍観を決め込んでいた王様も、元をたどれば自分の蜂蜜が招いた混乱であり「私が何とかしなければいけなかった」と気付いた時にはもう、国が亡ぶ直前でしたとさ。そんなお話。うまくカード化出来てるよなぁ。

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