2014/11/05 懐古 - Card of the Day -今日の1枚-

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懐古/Dwell on the Past

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 寒くなってくると、物思いにふけりたくなることもあるだろう。キャラを作るとかじゃなく、なんとなくそういう機能が人間の心にあるんだと思う。たぶん、原始時代のご先祖様たちは「こうも寒いと、もうすぐマンモスも移動を初めちまうなぁ…この寝床ともここらでお別れだな」なんてことをパチパチ音を立てる焚き火を見つめながら考えていたのではないだろうか。というわけで、前回の《憂鬱》から始まる今週は「アンニュイ・ウィーク」だ。

 物憂い感じという意味のアンニュイ。良い意味の言葉ではないのだが、アンニュイな表情は時に魅力的に映る。マジックで物憂い表情と言えば、やはりこの方、Rebecca Guay大先生にご登場願おう。数多ある、儚さと美しさに満ちたファンタジーワールドから、アンニュイな表情そのものにフィーチャーした1枚である《懐古》を今回は選んでみた。もう見ての通りの美しさで、言葉にすることがむしろマイナスになってしまいそうなレベルである。…しかし、はいこれって提示して黙っている訳にもいかないので(最初はここまで書くコラムと考えていなかったんだけどなぁ)、恐れ多くも語らせていただきたく。

 カードとしては、実はリメイク物。かつて、《ドルイドの誓い》とのコンビネーションで名を馳せた、墓地対策用カード《ガイアの祝福》。これはコンボパーツ的に用いられたカードではあるが、その本来の役割は墓地を掃除する・あるいは再利用することにある。2マナインスタント・1ドロー付きで3枚ライブラリーに戻すこのカードをリメイクした《懐古》は、1マナソーサリーで4枚戻すという形になった。スレッショルドやフラッシュバックといった墓地活用が基本戦術であった当時のスタンダードに「トーメント」と共に登場。たしかに、そのような環境ならば1枚でも多く邪魔なカードを掃除できた方が有効ではある。

しかし、これが有用かと言うと「うーん」というのが正直なところ。やっぱり、先代のインスタントであることや1ドロー付き(通称キャントリップ)であることは大きな武器であったということだ。さらに続く「ジャッジメント」では《クローサ流再利用》という同系列でインスタントであるカードが登場し、緑の墓地対策の役目は完全に食われてしまうこととなった。

 しかし、大事なのはそこではない。《ガイアの祝福》の後継と名乗るには理由がある。ガイアは、その儚くも美しいイラストでも大人気の1枚だった…そう、Rebecca Guayを代表する1枚である。カードとして相似効果を持つ《懐古》のイラストをRebeccaが担当しているのは、明らかな意図があってのことだ。そしてこのイラストも、彼女のキャリアの中でトップクラスの輝きを放つ、素晴らしい作品である。カード名の《懐古》も素晴らしく、1つの作品としての完成度は、マジックというゲームの中でもトップクラスだと個人的には信じているのだ。

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