「黒に染まりゃいいんだよ!」第11回前編

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2015.08.21
text by Ishida Hiroshi

(後編、カード評価編はこちら)

皆さん、オリジンしてますか?

突然ですがこの『マジック・オリジン』、リミテッド視点ではかなりの良環境です!
最後の基本セットらしく、MTGの基本に忠実な環境でありながら、「アーキタイプ」が重視されていてデッキを組み上げていく楽しさもあり、これからマジックを学んでいく初心者にもあらゆる次元を旅してきた上級者にもおすすめできる環境と言えます。

自分もシールド、ドラフト両方楽しんでいますが、いや~実にいい環境ですよ!
一応自分の紹介文でも「リミテッダー」と書かれていますがそうなんです、もともと構築戦よりリミテッドの方が好きなんですよね。GPやPTQもリミテッドのもので結果を残していますし、プレリでパックを手に入れて我が家で朝まで仲間とドラフトをやるのも恒例行事となっています。
まぁでも今の自分はリミテッダーである前に「黒使い」ですからね。
そこで今回は、このオリジンリミテッドの......「黒」について特集します!

 
●オリジン環境  全体的な印象

いきなりドップリと黒の話に入る前に、まずはオリジン環境を簡単に説明したいと思います。
あくまでごく簡単な説明です。オリジン環境は実に味わい深いので、やりこんでいけばどんどん新しい発見があると思います。

・2/2が跋扈する環境!
どのカラーにも2/2(2/1)サイズのコモンが多く、大体の場合地上はこれらで溢れかえります。
なのですぐに相打ちになるか、もしくはにらみ合いになるわけですが、逆に言えばこれらを圧倒できるタフネス3はかなり頼りになることになります。・タフネス4はかなり固い!
2/2が多いとはいえ、そこは"高名"環境。毎回相打ちで止められればいいのですがそういうわけにもいかず、そうなると時間と共に2/2以下の連中よりも重いコストのパワー3クリーチャーも戦場に並んできます。
ですがパワー4はそうそうおらず、またコモン火力呪文2種も3点ダメージなので、タフネス4はかなり突破されづらいです。

 


「タフ4」の代表格の《鋤引きの雄牛》なども、そういう意味ではサイドボードの定番です。

・飛行は強い!
オリジンの特徴として、どのカラーも地上は同程度のサイズの生物が睨み合う展開になりがちです。
そうなるとやはり、モノを言うのは"飛行"という回避能力です。
回避能力が大事、というのはどんな環境であれリミテッドの基本ですが、最後の基本セットであるオリジンでもそれが守られているのはリミテッダーとして嬉しいものがあります。

・除去が弱い!つまりテンポが大事!
これも最近のリミテッドの傾向ですが、オリジンの除去カードもかなり弱く設定されています。
特にインスタントの除去は貴重で、自由に動けるのは範囲の狭い《焦熱の衝動》か、5マナと重いことで読まれやすい《不浄な飢え》のみ。


《天界のほとばしり》はケア可能ですし、《分散》は時間稼ぎにすぎません。
よって相手の妨害を受ける状況が限られており、攻め側が有利な環境になっています。
そうなってくると、当然"テンポ"が重要な環境とも言えるわけです。序盤からクリーチャーを展開してダメージを刻んでいく、ということをMTG用語で「テンポが良い」と言います。それが重要視されている環境なのです。

・3マナ域過多! 使える2マナ域は貴重!
さて「オリジンはテンポ環境」という事が言えるのですが、そうなると大事になってくるのがマナカーブです。
状況を巻き返せるカードが少ないので、序盤から積み上げていくテンポ差が最終的に大事になっていくわけです。
となると低マナ域、特に2マナ域のアクションが大事になってくるのですが......
これも全体的な傾向ですが、どのカラーも3マナ域はプレイアブルな、あるいは強力な生物が数多く存在します。

 


ですが2マナや4マナ以上となるとそうはいかず、マナカーブを整えるのは苦労することになります。
ドラフトでもシールドでも2マナ域は特に大事な環境です。それなのに2マナのカードは数が少ない。ドラフトではこれをピックすることを・シールドならここが多い色を優先する、ということをできるだけ重視したほうがいいでしょう。

・出ただけで仕事をするようなボムカードはあまりない
これは意見が別れる所ですが、リミテッドにおいて、どんな状況でも1枚で巻き返せるような爆弾、所謂ボムカードは...自分はあまり好きではありません。
特に、相手が除去を持っていようが関係なく、出ただけで仕事をしたり、あるいは除去耐性があるような、アドバンテージをとってしまうボムカード......例えば《龍王アタルカ》や《ワームとぐろエンジン》など。

 


ああいったカードはそれまでの展開関係なく1枚で勝ってしまいます。こうなると極端な話、レアを引いた方の勝ち、という事になりかねません。

ですがオリジンには、こういった「ただツヨ」系のボムカードがかなり少なく、対戦相手をレア1枚の暴力で圧倒できるような事はあまりありません。
なので序盤からの積み重ね、盤面の構築が大事になってきて、丁寧にゲームプランを練ってプレイするのが重要です。

 
勿論《光り葉の選別者》や《ピア・ナラーとキアン・ナラー》など、アドバンテージ系のただツヨボムはありますが、それでも最近の環境と較べて非常に少ないはずです。また、リミテッドただツヨカードの代表であるプレインズウォーカーも、今回はクリーチャー・カードということで対処が容易になっています。

とにかくボムレアがなくても、コモン&アンコモンだけでしっかり戦えるデッキが組める。レアカードを叩きつけあうゲームも派手でいいですが、自分はこの地力が必要になってくるオリジン環境はマジックをしている実感が持てて好きですね。

・10種類のアーキタイプ環境!
そして最後に、これがオリジン環境の実に面白いところなのですが、今回は2色の組み合わせごとにそれぞれテーマが決まっており、アーキタイプデッキを組むことが出来ます。
これは基本セットとしては異例中の異例と言えるでしょう。

 
カード同士のシナジーを意識しながらデッキを考えていくのはとても面白く、またコンボを狙ってプレイするのも楽しいです。
さらに言えば、カラーごとに決まったテーマがあるので、初心者にとっても目指すべきものの指標となり(白と黒はエンチャントを集めるといった具合に)、遊びやすい環境だと思います。 
●そんな中で黒の役割は......?

基本的にテンポ環境という事が言えるオリジンですが、さてその中で黒が担っている役割は何でしょう?
これもまた、オリジンらしく、黒の基本に沿ったものになっています。

・除去が弱い環境でも、黒の除去は強い!
やはり、黒といえばクリーチャー除去。以前にも記事にしましたが、生物に死をもたらすのは黒というカラーの象徴です。
さて、上述したように重い・微妙な除去ばかりのオリジン環境でも、黒の除去は頼りになるものが揃っています。

 
《魂裂き》も《不浄な飢え》も、コモンとは言え強力です。特に《魂裂き》は、一見頼りなさそうに見えるかもしれませんが、環境にとてもマッチしていて最強コモンの一角です。

 

アンコモン以上にも強力な除去は多く、特にレアには超強力な《衰滅》もあります。
やはり黒といえば除去!この色をやるのであれば、バンバン殺してやりましょう!

・アドバンテージを取りやすいカラー
素直な殴り環境であるオリジンには、あまりアドバンテージをとれるカードがありません。

 

しかし黒にはコモンにも《骨読み》《死橋のシャーマン》など、素直に使用するだけでアドバンテージをとれるカードが有ります。
除去の強さも相まって、黒はアグロ環境であるオリジンにおいても、後手に回ってのアドバンテージ戦略も取れるカラーになっています。

・シナジーが特に重要!
オリジンはアーキタイプデッキを組みやすい環境ですが、その中でも特に黒は、テーマにそってデッキを組み上げてこそ効果を発揮する、そういったカードが多いです。
もっともわかりやすいのは《ナントゥーコの鞘虫》で、これは生贄系アーキタイプの最重要パーツです。

 

赤黒パクリファイスデッキなどは、カード2枚のシナジーがもはやコンボの域に達しており、ナントゥーコがいないとデッキが成り立たないくらいです。
また、それぞれのアーキタイプを象徴する多色アンコモンカードも、黒絡みのものは重要かつ強力なものばかり。《群れのシャーマン》や《猛火のヘルハウンド》がシナジーを発揮するデッキは、芸術的なまでに強力です。
逆に言うと、アーキタイプごとのシナジーを発揮できないと、単体ではあまり強くないカードも多い色である、ということです。
オリジンの中でも、黒はテクニカルで玄人好みなカラーと言えそうです。 
黒のアーキタイプ

オリジン環境は基本的なカードで形成されながらもアーキタイプ環境でもあり、2色のカラーの組み合わせごとに決まったテーマが設定されていることはすでに述べました。
それはアンコモンの多色カードに象徴されていて、とてもわかりやすく提示されています。
ここでは黒がらみの各カラーのテーマを紹介します。


戦略......生け贄シナジー
キーカード......《ナントゥーコの鞘虫》《反逆の行動》《猛火のヘルハウンド》
赤黒のカラーリングは本来攻撃的なものですが、オリジンにおいては最もシナジーを重視した、コンボチックなものになっています。
シナジーの起点となるのは《ナントゥーコの鞘虫》で、《反逆の行動》でコントロールを奪った相手のクリーチャーを生贄にして処理してしまう、パクってサクリファイス=「パクリファイス」デッキとなります(鞘虫の英名から「ハスク」という呼称が良く使われていますね)。

また《反逆の行動》あるいは《心酔させる勝者》がなくても、赤にはトークンを出すカードが複数種類ありますので、自前で生け贄を用意するのは簡単です。
《猛火のヘルハウンド》は単独でも強力ですが、上記のようなカードとシナジーが絡むと更に強さを増す素晴らしいクリーチャーです。


戦略......エンチャントシナジー
キーカード......《血の呪いの騎士》《荒廃唱え》《オーラ術士》

白黒にはエンチャントに関係して効果を発揮するカードが多く、もちろんそのエンチャント自体も有用なものが多いです。
《荒廃唱え》は環境柄かなり強力で、上手く行けば素晴らしい支配力を発揮します。《死の国の重み》1枚で相手のクリーチャーを2体除去したり...本来オーラはアドバンテージを失いやすいのが欠点ですが、白黒はそのセオリーとは真逆でアドバンテージ獲得能力に長けていると言えます。 
例えシナジーが上手く絡まなくても、エンチャントは単体でもそれなりに強いのも高評価です。


戦略......エルフデッキ
キーカード......《群れのシャーマン》《森の伝書使》
緑黒はニッサが渡った次元であるローウィンのエルフ達がフィーチャーされています。
ただしシナジーの起点となるのがアンコモンばかりで、基本的には《群れのシャーマン》がいなければエルフに拘る必要はありません。
このカラーは普通にカードパワーが高く、ミッドレンジデッキを組むのに適しています。緑黒=エルフデッキを組まなくてはいけない、というわけでは決してなく、古くからある除去&大型クリーチャーのようなデッキを組んでも良いでしょう。 
特にアドバンテージを得る手段がとても多く、タフなデッキを組み上げることが出来ます。



戦略......墓地活用
キーカード......《取り憑かれたスカーブ》《蘇りしケンタウロス》《スカーブの大巨人》
このカラーは明らかに墓地活用がテーマとして設定されていて、墓地を肥やすカードは多いのですが...そこから直接アドバンテージにつなげるわけでもなく(墓地が肥えれば手数も増える"フラッシュバック"があった『イニストラード』のそれとは違うのです!)、かなり難しいカラーになっています。
また青と黒はどちらもクリーチャーの線が他の色に比べて細く、マナカーブも整えづらいなど、かなりクセのあるカラーリングになっていると思います。
自分自身、あまりこのカラーをやったことがないし、あまり強いとは思えないのですが......それでも《取り憑かれたスカーブ》のような強力なカード自体はありますし、じわじわと場をコントロールしていく楽しさは、構築同様青黒ならではのものがあります。 
●オリジンの黒、全カード評価!!

さてここからが本番!
リミテッドでも黒使いでありたいという同士のために、オリジンの「黒のカードだけ」を全評価していきます!


(後編、カード評価編はこちら)