【GP名古屋2016】レガシー選手権 SE 決勝 長谷 武則(愛知) 対 青柳 元彦(神奈川)

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text by 岩SHOW

121名の頂点を決める「日本レガシー選手権2016冬」もいよいよその最後の一戦を迎える。
ここまで二度フィーチャーされ、その安定感ある実力を披露してきた青柳。
はたから見ただけでは「これは一体...?」と分類不能なデッキと共に駆け抜けてきた長谷。
グランプリ本戦も初日全ラウンドが終了し、会場内でゲームを行っているのはこの2人のみ。
今日一日を勝ち上がってきた者のみが、ゲームを止めて帰路につくようにと促すアナウンスが流れ、スタッフが重い身体を引きずり明日への準備をする空間でゲームをすることを許される。言わば特権だ。

ジャッジに先導され、フィーチャーエリアにやって来た両名の顔に...一見、疲労や緊張は見えず。
ごく自然体でゲームに臨んでいるようだった。 優勝と準優勝、それぞれの賞品およびその分配が可能だということについての説明がジャッジよりなされる。
両者とも特にピンと来ないようで、「まあ、まあ...そのままで」といったやりとり。


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ジャッジの声とカードをシャッフルする音が、ガランとした場内に響いたのだろう。 どこからともなく、ギャラリーがワラワラと集まってきた。 日本レガシー選手権発足以来、定期的に見る決勝の風景が、2016年も変わらずここにあった。

Game.1

スイスラウンドの順位で勝る長谷が先攻を選択。
お互いマリガンなしで開幕を迎えた決勝は、レガシーらしく1ターン目から仕掛けのあるものとなった。

《汚染された三角州》→《Underground Sea》から《思考囲い》。青柳はまっさらな手札をテーブルに晒し、長谷はそれを見回してすぐさま《師範の占い独楽》を選択。

ここでメモを取ることをしなかったのが印象的だった。マジックにおいて、対戦相手の手札を見るカードを使用した際にはそこにあるカード名をメモに取ることは基本的なことであるとされ、それこそFNMからプロツアーまで、トーナメントのレベルに関わらず見られるアクションだ。
ただ、一般的に推奨されていることをせずとも決勝まで勝ち上がってくるプレイヤーも存在するということだ。メモは取らずとも、しっかりと記憶しているのであれば問題はないのだ。

独楽という1ターン目最良のアクションを失った青柳は《乾燥台地》をセットするのみ。
ここに長谷が2ターン目投げつけたのが《Hymn to Tourach》。
ハンデスの天敵とされる占い独楽を落とせたところにこのランダム2枚抜きは強烈で、これには青柳も《Force of Will》で応える。
同じ2枚喪失ならば、土地を巻き込まれる危険性よりも任意の2枚を犠牲にしたほうがずっと良い。ここでピッチコストに充てられたのは占い独楽の相方、《相殺》。

2ターン目もセットランドで終えた青柳に対して、さらに長谷の攻めは続く。 《不毛の大地》で《Tundra》を叩き割ると、続けざまに《暗黒の儀式》から《ヴェールのリリアナ》。 これが着地するとゲームを決める1枚となりかねない。青柳はここでも《Force of Will》。コストは再び《相殺》だ。

3ターン目こそ《思案》のみで実質的な攻めはなかったものの、4ターン目には再度《思考囲い》を放つ長谷。 ここまで3ターン連続、自身のターンにはセットのみで終えてきた青柳の手札が再度明かされる。 《剣を鍬に》《精神を刻む者、ジェイス》《瞬唱の魔道士》 「奇跡コントロール」らしい3枚が並ぶ中、長谷が引き抜いたのは《剣を鍬に》。続けて《渦まく知識》の後フェッチを起動し手札を入れ替えてターンエンド。これは続くターンにクロックを展開してくる証。

青柳はセットランドも出来ずターンを返す。2ターン連続で、これは苦しくないといえば大嘘になる。 この機に乗じて、長谷が戦場に送り出したのは...墓地をしっかりと追放し2マナで唱えられた《墓忍び》。 このクリーチャーもすっかり見なくなった時期もあったが、こうやって戦場に舞い降りる姿を見ると、今でもバリバリやっていけそうである。

この《墓忍び》が殴りかかるも、前のターンにようやく土地をセットできた青柳は《瞬唱の魔道士》から《剣を鍬に》フラッシュバック。 これに対して、長谷の見せたカードは意外なもの。 《目くらまし》をピッチではなく素撃ちで唱え、青柳の除去を弾く。ここまでの動きで、まさか《目くらまし》が入っているとは夢にも思わなかった。青柳も内心、驚いていたのではないだろうか。 その青柳は、殴られた返しに《終末》をトップしこれを奇跡コストで唱えて、撃ち漏らした忍びを消し去る。

これで一息つきたいところだが...ここまで勝ち上がってきた相手というのは、そうも優しいものでもなく。 長谷は再び、墓地を取り除きつつ《墓忍び》。 このデーモンラッシュに、青柳はフゥーと息を吐きながら《渦まく知識》で解答を探しに行く。 この最強ドロースペルが再び奇跡を起こし、忍びに一発ドツかれながらも自身のターンのドローで戦場に《終末》をもたらす。 続けざまの《相殺》は《目くらまし》されるも、なんとか流れを取り戻しつつある青柳。あと土地を1枚引くだけで、念願のジェイスが降臨しまくり返せる。


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しかし、長谷はその上を行く。《Hymn to Tourach》で手札を攻め、三度目の《墓忍び》!
もはやこのデーモン、忍んでいない。1試合に8マナのカードが3度キャストされるなんて、これぞレガシー。
青柳は、このデーモン3号機を《天使への願い》X=1で出したトークンでキャッチ。それで稼いだターンで引き当てた4枚目の土地で、遂にジェイスをキャスト。これで忍びをバウンスすれば、今度こそその顔を見ることは無いだろう。

しかし、長谷。さらにその上を行く。《墓忍び》を3度唱えた男には《目くらまし》を3度唱えることなど容易いもの。
使用者以外には歪な構成に見えるデッキも、今日の長谷にとってはこれこそがベストな形。 ここまで勝ち抜いてきた勢いを、決勝一本目で体現したのだった。

長谷 1-0 青柳


サイドボーディング中、時計は22時を回る。
固唾を飲んで見守っていたギャラリーが一斉に離れてゆく。
静けさの中、くっきりと浮かぶ2人の姿。

青柳は、悩んでいるように見えた。レガシーのメタゲームには存在しないタイプのデッキを相手取り、何を入れ何を抜くのか。相手はどのようなサイドプランを取ってくるのかも読まねばならず、非常に難しい。
青柳は、レガシーの強豪の一人である。長くレガシーに真剣に打ち込んできた、だからこそ、ここで日本レガシー選手権のタイトルが欲しい。勝ちたいからこそ悩む。

その対面に座る長谷。メタ外の独自チューンのデッキを持ち込みつつ、ここまで勝ち上がってきた。ゲーム開始前もリラックスした様子で、この人はこのイベントを勝ちに来たタイプ...俗っぽい言い方をすれば、ガチのプレイヤーではなく、カジュアルにレガシーを楽しんでいるタイプなのではないかと、思っていた。ここでのサイドボーディングでも、自然体でそれを悠々と行っている、かと思ったのだが。カードを持つその手が、微かに震えていた。当たり前の話だが、長谷だって勝ちたいのだ。その思いは、決勝まで勝ち上がって、そして一本目を先取し王手をかけたところで膨れ上がった。それが今、指先に現れたのではないか。



Game.2

青柳が《乾燥台地》を置いてターンエンドを告げ、二本目が開始。
長谷はこれに《死儀礼のシャーマン》という理想的なスタートで機先を制しにかかる。
青柳はこれに対し、《終末》を引き当てたので公開し奇跡誘発宣言スタックでフェッチ起動。
《Tundra》を持ってきて白マナを支払いこれを唱えて厄介な1マナクリーチャーを除去する。

長谷が《不毛の大地》を投げつけて返した3ターン目は両者土地を置くのみ。
ゲームは4ターン目、遂にあのカードが姿を現すことで動く。
《師範の占い独楽》だ。ここから先、青柳のドローの質は常に最高品質が保証される。

ならばと、長谷は《ヴェールのリリアナ》で枚数そのものの締め上げにかかる。
質vs枚数の戦いになるかと思う暇も無く、青柳はしっかりと《議会の採決》でこれを除去。
長谷はプレインズウォーカーが駄目ならばと、《思案》でカードを引き込んでから《未練ある魂》でトークンを展開。 青柳が独楽を回すのみで動きが無いうちに、二度目の《ヴェールのリリアナ》も通し、盤面の優位を築きにかかる。

動きが無かったとは言え、青柳のドローは占い独楽によって常に質が高いものが供給されている。 このリリアナへの解答は《僧院の導師》。トークンにはトークンで対抗しにかかる。 長谷は続く自身のターンでリリアナの-2能力を使ってこれを除去しにかかるが、青柳はこれにスタックで《剣を鍬に》でスピリットを除去しつつモンクを生み出し、これを導師の身代わりとして生け贄に。

長谷は、このやり取りの後に《仕組まれた疫病》をキャスト。指定は「モンク」。この順序が逆であれば、導師は庇ってくれる弟子を失い死亡していたことだろう。些細な順序違いが、盤面に大きく影響を与える。 長谷はこの導師を撃ち漏らしたことで、次のターンに《渦まく知識》を絡めた果敢パンチでリリアナを失ってしまうのだった。

こうなると流れが変わるのが世の常。 長谷はさらに疫病を追加し、指定モンクで導師を除去し、今後も戦場に出せないという状況を作る。


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これは一見有効な手段に見えるものの、青柳には本命のカードがある。
それこそが、かの最強プレインズウォーカー《精神を刻む者、ジェイス》。
青柳は一呼吸置いてから「・・・ブレスト」と±0能力の起動を宣言。アドバンテージを得つつトップを調整する。

これに対抗すべく、長谷も《石鍛冶の神秘家》でプレッシャーをかけにかかるが... 青柳もこれには独楽のドロー能力を起動して手札に青いカード(ジェイス)を補充し、それをコストに《Force of Will》を放つ。

しかし長谷も負けていない。ここで一本目乱れ打ちした《目くらまし》で打ち消し戦を制し、石鍛冶からは《梅澤の十手》をサーチ・即キャスト。
青柳はジェイスの+2能力で忠誠値を上げつつ次なる脅威を未然に追い払いにかかる。ここは「そのまま」でターンを返された長谷は、十手装備パンチでジェイスの忠誠値を削るだけに留まる。

ゲームを決定付けたのは、11ターン目。青柳はジェイスでブレストし静かにターンを返す。
長谷は十手を持ったスピリットでアタックするが、ここで青柳が占い独楽ドロー能力起動からの奇跡《天使への願い》X=3!
長谷は《渦まく知識》から《目くらまし》を唱えるが、そこは青柳もしっかりと1マナ立たせてあったので問題なく通る。
これでスピリットを受け止められた長谷は、既に乗っていたカウンターを2つ利用しスピリットをパンプ、天使1体を討ち取る。
そのまま《未練ある魂》をフラッシュバックしてターンエンド。

ここで...長谷の十手の上にはカウンターが0個。天使との戦闘でダメージを与えたのにも関わらず、誘発を忘れていたのだ。
これに気付いたのは次のターンに青柳が《思案》でカードを探している時。 気付いてもこの誘発忘れは巻き戻らない。致命的なミスがここで出てしまう。
もっとも、その十手は《仕組まれた疫病》1枚と合わせて《摩耗+損耗》で壊されてしまうのだが。

ジェイスを維持し天使で長谷の攻撃を阻む青柳は、最終的には更に天使を5体盤面に追加し、逆王手。

長谷 1-1 青柳


時刻は22:29 一度は散りつつも二本目の山場になると再集結していたギャラリー達も、さすがに時間が時間なので続々と会場を後にして行く。
残ったのはほんの数名、それぞれの友人のみ。

長谷が先攻を宣言し、両者マリガンなし。この日を締めくくる最後の一戦が始まった。
《Underground Sea》から《思案》と動く長谷。 2ターン目には《暗黒の儀式》を唱え4マナからアクションをかまそうとするが、ここには青柳が《狼狽の嵐》。
長谷はさらに続くターン、《Hymn to Tourach》で一本目を思い起こさせる手札攻め。
これにより墓地に落ちたのは、2枚とも奇跡呪文。フレイバー的には不吉だが、ゲーム的には重く手札から唱えられないカードが他のカードを庇う形となり不幸中の幸いと言うべきか。

青柳の3ターン目。そこには懐かしい光景があった。 3マナフルタップで《僧院の導師》!キレメンター! かつて《曇り鏡のメロク》というトークンを増産する強力なフィニッシャーが存在した。

このカードはトークン生成にマナを払う必要があり、もし即座に除去が飛んできてもせめてトークンを残すためにある程度マナが余った状態でプレイするのが普通だった。その常識の中で、あえてフルタップで最短ターンにプレイしてしまい、相手の対処がなければそのまま勝ってしまうというプレイングがあり、キレメロクと呼ばれていたものだ。


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そのキレメロクのまさしく現代版、キレメンター! 除去されれば貴重なカードを失うが、何もなければ見返りは勝利と同義。 このキレメンターに対して、長谷は除去を...持っていなかった。

《死儀礼のシャーマン》と《石鍛冶の神秘家》を出してクリーチャーで応戦してみるも、続くターンに青柳は《議会の採決》をキャストし石鍛冶を除去。《思案》と重なり、トークンを生み出し果敢誘発させながら殴っていく。
石鍛冶が残した《殴打頭蓋》を素出しする長谷だが、青柳はこれも《摩耗+損耗》で砕きながらのフルパン。
更に《瞬唱の魔道士》が《思案》をフラッシュバックし、トークンを増やすが...ここはアタック前にやっておけば打点が伸びていたということに気付いたのか「ミスったな...」という表情をしていた。

この猛攻にブロッカーを用意する長谷だったが、ジェイスまで戦線に加わり、打点とともに将来の可能性を奪われてしまう。
長谷が投了を宣言し、決着。 青柳が、2016年最初のレガシービッグイベントの王者となった。

長谷 1-2 青柳

青柳win!



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「やっとだね」 「やっと勝ったね!」 と最後まで見守ってくれた友人らに祝福される青柳。
自身も「やっと勝った」と口にする、悲願のタイトル。

祝福する人物の中にはポマ山の愛称で知られる青木力の姿も。 「奇跡を教えたのは俺なんだよ」と満面の笑み。
時間のない中、王者・青柳に簡単なインタビューを行った。

・奇跡を使った理由は?
青柳「3年ぐらい使ってて・・・」
青木「いや、2年ぐらいじゃない?」
青柳「じゃあ2年かな、ずっと使ってて、ノブ君(レガシーの強豪・斉藤伸雄)にも教えてもらって」
青木「昔はずっとコンボプレイヤーでね」
青柳「そうですね、ずっとハイタイドを使ってて。そのデッキにも独楽が入ってるんですけど、やっぱりこのカード強いなと...これを最大限に使うなら、奇跡しかないなって」

・『ゲートウォッチの誓い』も出ましたが、今のレガシー環境に関してどのように考えていますか?
柳「ANTと奇跡が頭抜けて二強で...でも、新カードが出たのもあって、今回もTOP8にポストが残ってて。ああいうデッキが増えそうですね。あれと当たると負けちゃうところでした。本当にキツイ。そのため、サイドに《基本に帰れ》を1枚採用しました。」

・では最後に、これからレガシーを始めるプレイヤーに一言お願いします!
青柳「ほんと、1つのデッキを継続して使っていくことですね。」
青木「こいつ最初ほんとに下手だったんだよ~」
青柳「2年とか継続して練習していけば、レガシーは下手でも勝てるようになります!」
青柳「それに、最後の方(長谷)のデッキ...すごかったですね。独自の形で、やりこんでる感ありました。奇跡やANTが強いですけど、練習すればいろんなデッキに可能性があると思います。」

練習あるのみ。レガシーは禁止改定はあれどローテーションでカードは逃げない。
何年も、カードと付き合って成長していく。その結果、仲間とかけがえのない時間を共有出来る。 それこそがレガシー。



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優勝は青柳元彦!おめでとう!!



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