【BMO Vol.6】BIG MAGIC Invitational 決勝 河浜 貴和(東京)対 松原 武之(東京)

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Text by 森安 元希 BIG MAGIC Invitational (BMInvi) Vol.1   各店舗で開催された予選大会"BIG MAGIC Invitational Qualifier"ー…通称BMIQを制し参加権利を獲得し、今回参加した猛者たち87人。 北は北海道札幌、南は沖縄宜野湾(まりぎの)。BMIQは各地でドラマをもたらした。敗戦に涙した強豪も少なくなかったと聞く。BMInvi本戦と同じくスタンダードフォーマットで開催されたところが多かったが、中にはモダンやレガシーの大会で権利を獲得したプレイヤーたちもいる。 同じ会場、同じフォーマットで開催されているオープン大会である"BIG MAGIC Open Vol.6"とはまた違ったプレイヤー層、違ったメタゲームを形成していた。   そうしてスイスラウンド7回戦を経て選出された8人。 【4色ラリー】や【アブザンアグロ】、【マルドゥグリーン】など多彩なデッキタイプが並ぶ。 その内でもひと際、異なる方向からのアプローチを選んだ2人がいた。 DSC_0183 一人は河浜 貴和。BIGMAGICユニフォーム契約プレイヤーBIGsの一員だ。 関東のMTGグループ"チーム豚小屋"のリーダーでもある彼が選択したデッキは、Round 3のカバレージで示した【エスパーミッドレンジ】だ。 上位陣の参加者全体を見回しても、ここにたどり着いたプレイヤーはデッキ製作者である高尾 翔太との2人だけであったようだ。デッキビルダーとしての高尾の評価も、また一段と上がる。 SE Round 1では【ダークジェスカイ】相手に早々に《風番いのロック》4枚を引き切りながら、大逆転してみせた。 SE Round 2もその勢いに乗り、4/5の《森の代言者》2体に対して《風番いのロック》を《真面目な訪問者、ソリン》でサポートしてライフレースを最後に差し切った。 やはり、キーとなるのは《風番いのロック》なのか。河浜の【エスパーミッドレンジ】が、チーム豚小屋に新たなタイトルを持ち帰るべく今宵最後の戦いに挑む。 DSC_0189 もう一人は【アタルカトークン】の松原 武之だ。元々関西であった松原は近年東京に拠点を移しており、河浜同様グランプリの遠征などを積極的に行う競技プレイヤーだ。 レーティング時代には齋藤友晴に次いでレガシー国内2位の高スコアをキープしていたこともある。 あらゆるフォーマットを乗りこなすオールマイティさを特徴にするが、タイトルとは未だ縁がなかった。   調整を続けてきた彼謹製の【アタルカトークン】もそのプレイヤーの気質を受け継いでいた。 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》と《無謀な奇襲隊》でトークンスペルをサポートする展開と、そうしたカードで肥やした墓地を利用して《わめき騒ぐマンドリル》を採用し《光輝の炎》のようなトークン対策を潜り抜ける万能性を示している。 特に《ティムールの激闘》《強大化》《焦熱の衝動》とこれまで評価の高かったカードをまったく抜いて《焙り焼き》を4枚メインから積んだリストは、修練の様子が見て取れる。 事実、SE Round 1は非常にロングゲームとなったが、サイドボーディングの《前哨地の包囲》や《龍語りのサルカン》によって、乗り越えてきた。 そしてSE Round2。松原が「相性は厳しい」と話すデッキの1つである【4色ラリー】の鎌田が、その前に立ちはだかった。おそらく会場でも一番手のシェアを見せていた【4色ラリー】。デッキの強さは誰もが認めるところだが、ミラーマッチを典型にプレイングスキルが出やすく難しいデッキとも評判だ。 この、"今日一番強い【4色ラリー】"という難所を《アタルカの命令》によって征した松原であったが、次に迎える試合は彼にとって更に難しいマッチとなった。 河浜もまた、「思っていたよりも相性が良い訳ではない」とSE Round2を観戦していた感想をもらし、お互いが不安と自信を胸にしながら最終戦に挑む。   河浜 貴和(東京) vs松原 武之(東京) DSC_0182 Game 1 スイスラウンド上位の河浜が先手を選び、お互いフルハンドのキープした。 後手松原の《僧院の速槍》からゲームがスタートする。 河浜、返しに《搭載歩行機械》X=1を用意する。最近採用率が落ちてきているカードだが、2マナ域を補填し、飛行戦略をテーマとする【エスパーミッドレンジ】を確かに彩るパーツのようだ。 《ドラゴンの餌》、《軍族童の突発》とトークンを並べる松原。 《反射魔道士》2体でトークンの頭数を減らし、守勢を固めていく河浜。 その後もトークン呪文を続けて打ち、合わせて8体のゴブリンを並べる間にも、アタックにはかからない松原。頭数を減らしながらの数点を削っていくのではなく、"《わめき騒ぐマンドリル》を探査で唱えてから《無謀な奇襲隊》を怒涛する"という《ティムールの激闘》《強大化》にも劣らないコンボの組み合わせが出来るようになるまで、その打点とするべくトークンの頭数を貯めていたのだ。 その2枚がそろった瞬間、ゴブリントークン8体、《わめき騒ぐマンドリル》、《僧院の速槍》、《鐘突きのズルゴ》、《ケラル砦の修道院長》12体のフルアタックに取り掛かった。 全てが1/+0修正を帯びて併せてアタックダメージは20点をゆうに越している。 《反射魔道士》2体と3/3の《搭載歩行機械》しかいない河浜のブロッカーは全く足りないように見えるがー…ブロック前に《搭載歩行機械》の能力を起動。4/4にしたところで、これを自らの《勇敢な姿勢》で爆発させ、飛行機械トークンを展開した。 一気にブロッカーの数を増やした上、《搭載歩行機械》と《勇敢な姿勢》によって肥えた墓地から、《わめき騒ぐマンドリル》へ向けて《残忍な切断》をも繰り出す。 この大混雑のコンバットによってもライフを半分ほども残しつつ、《わめき騒ぐマンドリル》や《ケラル砦の修道院長》など高いダメージを生成するアタッカーたちをのきなみ打ち倒すと、返しのターン《風番いのロック》強襲を示して盤面は完全に河浜へと流れた。 ハンドの有効牌全てを使い切るムーブをしのがれた松原、ここから更にこの飛行3/4 2体を乗り越え、ライフを詰め切る算段がつかなかった。 今日何度目となるのか、《風番いのロック》が河浜に勝利をもたらした。 河浜 1-0 松原 Game 2 《燃えがらの林間地》《山》《ドラゴンの餌》《軍族童の突発》2枚《多勢》《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》とキープした松原。3ターン目に引いた土地が《血染めのぬかるみ》であったことでこれをどう持ってくるかの判断が問われたが、展開を優先して《山》をサーチ、《軍族童の突発》を2回唱えてから《吹きさらしの荒野》を引き込み、《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》のマイナス起動から入って12点アタックというスムーズながら阻害しにくい展開を仕掛けた。 河浜も《空中生成エルドラージ》でいなそうとしたものの、止められる気配のハンドは来ない。 Game 2も松原の攻勢を河浜が受ける形となった。 勝負は再び河浜が先手となる最終戦にもつれ込んだ。 河浜 1-1 松原   Game 3 今度は土地2枚と3マナ呪文が多いハンドを河浜がキープした。 2ターン目初動として河浜が示した《搭載歩行機械》を苦い顔で《焙り焼き》する松原。 3ターン目には《隠れたる龍殺し》とトップデッキしていた《乱脈な気孔》のタップインを処理した河浜は、続けざまに《空中生成エルドラージ》を展開。 「全部、タフネス1なんですよね」 松原の発言はある種メタゲームにおいて重要な考察だ。 【4色ラリー】が採用する《地下墓地の選別者》は《空中生成エルドラージ》と違って本体のサイズが大きい。そうであったなら松原は苦境であっただろう。しかし《空中生成エルドラージ》は今度はトークンにブロックされないアタッカーとして、河浜側に利点も大きい。 《軍族童の突発》のトークンで相打ち上等のアタックを申し出る松原。これに《隠れたる龍殺し》を差し出してライフを守った返し、河浜は2マナだけを浮かして変異をプレイする。 「竜殺し(追加の《隠れたる龍殺し》)か」。松原がもらす。 《大物潰し》の誘発型能力はともかく、タフネス2になる大変異が厄介だ。3マナを支払えるようになる前に攻勢を仕掛けておきたい。   しかしその思惑は外れた。松原の《ドラゴンの餌》に対応して、河浜が仕込んだ変異を明ける。 表面として示されたのは、《層雲の踊り手》。 「そっちかぁ」。松原は想定していた頭数より2つ減った状態で《無謀な奇襲隊》を怒涛するが、やはりトークンの数が少し足りず、そこまでライフを攻めきれない。 この猶予に《層雲の踊り手》と《空中生成エルドラージ》をアタックに向かわせてダメージを稼ぐことは怠らず、《永代巡礼者、アイリ》《白蘭の騎士》でブロッカーを用意した河浜。 《永代巡礼者、アイリ》の能力が動き出すと先まで奪っていたライフアドバンテージも喪失してしまう松原。《ケラル砦の修道院長》のめくれに思いを託す。   めくれはー…《焙り焼き》。松原の思いにデッキが応えた。即座に《永代巡礼者、アイリ》を焼き落とす。このターンはタップアウトになった為、飛行2体の攻撃を受けつつ翌ターンに備える。 飛行5点を毎ターン受け続け、松原のライフはピッタリ残り5。 いわゆるターンを返したら負けの"ラストターン"となった。 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》展開から《無謀な奇襲隊》怒涛、《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》マイナス起動。これでブロッカーによる分を差し引いてもピッタリとなるダメージ値を指し示す。 河浜、ブロッカーを展開して残った1マナとハンド1枚に回答があるかが勝負となった。 【エスパーミッドレンジ】に"点数で見たマナコスト1点"の除去はない。 しかし、1マナで唱えられる除去はあった。そして、それは河浜のハンドから唱えられた。   《残忍な切断》。探査によって墓地から4枚のカードが追放される。   喪失したトークン1体分のライフを守った河浜が、今度は丁度となるライフを攻め切る番となった。   ハンドは1枚ある。しかし立ちマナのない松原に、奇跡の1枚は打てなかった。   河浜 2-1 松原   河浜 Win! 河浜が今宵一番の接戦を制し、悲願のタイトルを得た。 チーム豚小屋に新しい伝説が加わった。   これをなにより喜んでいたのは、河浜の勝利をタイトル獲得を誰より願っていた瀧村 和幸であった。 誰よりも早く訪れ、猛り、叫び、祝った。 河浜もそうした瀧村の期待に応えられたことに、明るい笑顔で返していた。 そうして続々とチーム豚小屋やBIGsの面々が祝いに駆けつける。河浜の人望の厚さを示している。 本人はチーム豚小屋のリーダーとしての役割を"牽引する強さというより取り持ち役"と話していたが、それは彼なりの謙遜であったことを今回、証明してみせた。河浜は、強い。 BIGsの、そしてチーム豚小屋リーダーの河浜  貴和、ここに在り! DSC_0193 BIG MAGIC Open特設ページに戻る