【BMO Vol.8】WotC認定L3ジャッジ 鈴木健二氏インタビュー

タグ:, , , , , ,

text by Seigo Nishikawa

鈴木健二という名前のジャッジをご存知であろうか。仮にその名前に見覚えがなかったとしても「すずけん」という愛称であれば、ああ、と思われる方も多いのではなかろうか。

日本におけるMtG黎明期とも言える時分から、時にはプレイヤーとして、時にはイベントスタッフとして、そして何よりもジャッジとして、MtGを盛り上げ支え続けてきた男、それこそが鈴木健二である。早くからレベル3ジャッジに就任し、彼の元でその薫陶を受けたジャッジ・プレイヤーの数は最早数え切れない。

BIGMAGICとしても鈴木との縁は古く、第1回BMOのヘッドジャッジを始め、PPTQなどの大型イベントを常に取り仕切っていただいていた。

そんな彼が、今年の7月11日、自身のBlogにおいてレベル3ジャッジとしての活動を終えることを発表。11月に開催されるGP千葉を最後に、主要な立場からは身を引くことを発表した。その理由に関してはここでは触れないものの、日本のMtGの歴史をつぶさに見続けてきた一人の男は今何を思うのか。

BIG MAGIC INVITATIONALのヘッドジャッジという大役の隙間を縫ってインタビューをお願いし、快諾をいただいたのでその言葉をお届けいたしたい。

suzuki_01.jpg


-- お忙しい中申し訳ありません。よろしくお願いいたします。先日GP千葉にて、一度身を引かれるということを発表されていました。およそ後1ヶ月ということになりますが、今の思いなど教えていただけないでしょうか。

鈴木 思い......ですか。これは引退の直接の理由でもありますが、正直なところ現状MtGというものに時間を取るということができていません。当然今日のBMOのように、参加することができた場合は、自分にできることを全力で努めたいとは思っていますし、それまでに伝えれることがあるなら伝えていきたいと思っています。

-- BIGMAGICとしても鈴木さんには感謝してもしきれないというか、マネージャーをしています伊藤さんという方が、最初「すずけんさんが引退するのでセレモニー的なことをしたいんだよ」と先ほど言ってきて、そのときに既に涙ぐんでいて。

鈴木 ははははは

-- まだ1ヶ月ありますよ! という会話をしてました

鈴木 ......そうですね、千葉では僕も感傷的になるかもしれないですね。

-- 本当に色々と縁があるのですが、少し話を昔に戻らせていただきます。96年頃でしょうか、当初ジャッジになられたそのきっかけというのはどんなことだったのでしょうか。

鈴木 もう大分前の話なので、はっきりとは覚えていないところもありますが、まず基本的にMtGというゲームが大好きで、大学生のころにどっぷりと嵌まり込んでいました。最初は当然プレイヤーとして嵌っていたわけですが、基本的に何かを仕切って、計画をたてて、他の人に感謝されるというのが好きだったんですね。

-- 裏方的なことが好きだった

鈴木 当然ゲームで勝って嬉しいというのがあるのですが、それ以上にそのゲームをやる場を設けるということが、今振り返っても自分には向いていたのかなと思いますね。

-- 20年近く裏方をされてきたわけですからね

鈴木 少し間が開いたときはありましたけど、やっぱり自分に合っているし、そういったことをしているのが楽しいしと、それがそもそもジャッジを始めた根源なのだろうと思います。当時MtGを主催されていたホビージャパンさんの方たちと知り合いだったというのもきっかけとしてはあります。

-- ジャッジをやってきて良かったこと、というとやはりプレイヤーからの感謝の気持ち、ありがとうと言う言葉になるのでしょうか。

鈴木 やはり自分がこういった大きなイベント・トーナメントを行って、そこで皆が楽しんで帰ってくれる、これが私自身にとっても楽しいし嬉しいことですね。

-- 大きなトーナメントというお言葉が出ましたが、特に印象に残っているトーナメントなどはありますか。

鈴木 GP広島2011で、1回だけヘッドジャッジを行ったときがあって、それが思い出としてはやはり1番です。そのとき丁度外国人のジャッジを大勢呼んだんですね。新しいチャレンジということで、当然問題も色々とあったりはしましたけど、ジャッジもそうですし、MtGのコミュニティとしても国際化していく先鞭はつけれたのかなとは考えています。

-- 確かに、そのころからジャッジの方も国際色豊かになってきた、人数も80人、90人と多くなったという印象はあります。

鈴木 今のGPは外国の方とかも結構多くこられるようになりました。そういうのはとてもいいことだと思っています。

-- 十数年前と比較しますと、ルール的にも環境的もMtGも大きく様変わりしていますね。

鈴木 やはり全体的に国際化が進んでいる、というのが一番感じます。そして今のほうが色々と洗練されてますよね。お店とかも大きな店が増えましたし、チームであったりスポンサーであったり。日本人がPTで勝つ、というのが当たり前になっている。日本でも大きな大会がどんどんと増えてきて全体が底上げされている、これが大きく変わったのかなと思います。何より人が増えたなと。

-- GPの参加人数も毎回のように更新されていますし、人が増えたというのは感じます。

鈴木 昔は、GPで1200人ぐらい来たら、「もうダメー、GP二つに分けないと死んじゃう」みたいなこと言ってて。でも今は二つに分けて1200人ずつ(笑)

-- それでも今は全く問題なく回っています

鈴木 ノウハウの蓄積と、ジャッジもプレイヤーも洗練されてますね、やっぱり。

-- 規模が大きくなり続けているMtGですが、これからのMtGに望むこと、は何かありますか?

鈴木 基本的に今進んでいる方向というのは間違っていないと思うのでこのまま進んでもらいたいと思います。一方で個人的に思うのは、新しい人をどんどんと呼び込んでこないと先細りしてしまう。僕自身もどうしても競技レベルに関わることが多い現状ですけど、もっと裾野レベルの例えばFNMであったり、プレリリースであったり、というほうにも力を入れたほうが良いですね。

suzuki_02.jpg

鈴木 Wizardsさんもティーチングキャラバンなどそういったところに目を向けていますし、ジャッジもそういったほうにも少し視線を合わせてもいいかなと。「一般レベルのトーナメントを絶対に軽視してはいけない」これが僕の持論で、そういった店舗レベルの人達がいかに気持ちよくゲームができるか、お店のジャッジや店員の方と協力して、お店の雰囲気を良くして行く、そういったことが本当に大事だと思います。

-- そういった店員の方の中にも、新しくジャッジになりたいという方はおそらく大勢いらっしゃると思います。そういった方へのアドバイスなどはありますか。

鈴木 基本的にはジャッジと言うのは審判のことを指しますが、その場の雰囲気を作り上げる人というのが僕の考えるジャッジの役目になります。楽しいイベントを作りたい、そして皆に楽しんで帰ってもらいたい、そういう気持ちを持っていてほしいかなと。そういう心構えというか、気持ちを持っている方はどんどんジャッジにチャレンジしてみて欲しいですね。

面接や試験と言う言葉を聴くと構えてしまう人もいるかもしれませんが、先ほどの心構えさえ持っていれば「ジャッジになるというのはそこまで難しいことではありません」。少し勉強していただいて、近くにいる色んなジャッジの話を聞いてみてください。

-- 一方、既にレベル1・レベル2ジャッジになられている方、後進の方と言う言葉が正しいかはわかりませんが、こういった方へのアドバイスは如何でしょうか。

鈴木 一つ思うのは「視野を広く持って欲しい」。例えばトーナメントで1番~100番のテーブルを担当しています、でもそこだけではなくて全体の人の流れであったり場の雰囲気であったり、少し視野の外の部分がどういったことになっているか、大きな目で見るというのが必要だと考えます。プレイヤーの人達が、今トーナメントについてどのように思っているのか、これは当然一人ひとりに「どう?」と聞く事はできません。でもそれはその場の雰囲気をきちんと観察していると、段々わかってくるんですね。その時々の出来事だけに集中するのではなくて、全体の流れと言うのを見れるようになっていってほしいなと思います。そうすれば、段々とトーナメントがスムーズに流れるようになる、ひいては皆の幸運度も上がるという形になります。これはいつも思っていることですね。

-- 今日の大会の前のジャッジミーティングなどでそういった話はされるのですか?

鈴木 改めてはあまりしませんね。今日は特にInvitationalのジャッジは少人数でしたし、自分が全体を見れたというのもありました。大人数のときで経験が少ないジャッジがいる場合などでは、心構えということで喋ることもありますが。

-- 今日は色々とためになるお話をいただきましてありがとうございます。GP千葉で、上のレベルでのジャッジは一旦お休みという形になりますが、これからも会場でお会いすることはできますよね。

鈴木 はい、MtGは当然続けて行きます。これからもよろしくお願いします、という形ですね。

-- 本当にありがとうございました。

suzuki_03.jpg

BIGMAGICからは、これまでの感謝とお疲れ様でしたの思いを込めて鈴木さんに花束と、鈴木さんのお子様へと絵本を贈らせていただきました。

GP千葉の会場で鈴木さんを見かけられたら、ぜひ皆様からも感謝のお言葉をお送りください。そうすれば鈴木さんと貴方の幸福度がアップする、そう確信しています。

そしていつもお世話になっているお店、ジャッジの方へ、本当にありがとうございます。