BIG MAGIC所属プロ 井上徹「競走路の走り方(現時点でのカラデシュ・ドラフト考察)」
タグ:カラデシュ, ドラフト, 井上徹, 考察記事, 読み物みなさんこんにちは。
BIG MAGIC所属プロの井上徹です。
今回は新セット『カラデシュ』のドラフト考察記事を書かせて頂きました。
各メカニズム・色の雑感、実際にプレイしたデッキの解説と順を追って書いていきますので、どうぞ最後までよろしくお願いいたします。
[新メカニズムについての雑感]
・機体
機体は(通常のクリーチャーと比べると)マナコストに対して一回りサイズが大きくなっており、アタッカーとして優秀なカードが多いです。
中でも《改革派の貨物車》《バリスタ突撃車》《ボーマットのバザール船》はほとんどのデッキに入り得る強力カードなので、まだ色が決まっていないドラフト序盤では、他の有色カードよりも優先的にピックすることをお勧めします。注意点として、機体は搭乗要員がいなければただの置物なので、デッキ内の機体枚数は2~3枚に抑えた方が良いでしょう。
・製造
僕が『カラデシュ』のメカニズムで最も重要だと考えているのが、この製造という能力です。
生成した霊気装置・トークンはアーティファクト参照カードや機体の搭乗要員、
さらにはチャンプブロッカーとその用途は多岐にわたります。
製造持ち本体にカウンターを載せれば、マナコストに対して平均的なサイズを持っており、
その汎用性からどのマナコスト帯の製造クリーチャーも優秀です。
・エネルギー
主に各色に存在する、エネルギーを払うことでサイズアップするクリーチャー(《亢進する亀》《亢進するネズミ》《亢進するサイ》等)に注目しています。
マナコストが軽いものが多く、攻撃的なデッキでのメインアタッカーに最適です。
継続的なエネルギー供給が出来ればどのクリーチャーもすぐに手が付けられないサイズに成長していくので、
他のスペルによるバックアップも合わせると、そのままライフを削りきってしまう程のパワーがあります。
エネルギーを軸にしたデッキを組む場合はクリーチャーのサイズが一回り大きい緑と、
エネルギーを得るカードが多く存在する青の組み合わせがおすすめです。
[各色の雑感]
・白
霊気装置・トークンを生成するカードが多く、他の色より展開力が頭ひとつ抜けています。飛行持ちのクリーチャーが多いので、空からのビートダウンが強力なカラーです。
オススメの組み合わせ:赤白、青白
注目カード:《格納庫の整備士》
2マナ2/2と標準的なサイズを持ちながらCIP(戦場に出た際に誘発する能力の総称)のおまけ付き。
CIP能力は製造持ちを戻したり、《特権剥奪》などのエンチャントを付けられたクリーチャーを戻したりと、
おまけとは思えないほどよく働きます。
・青
相手を妨害するカードや、エネルギーを得るカードが多く、どちらかといえば他の色のサポートがメインになるのが青です。特にエネルギーを得る手段は豊富なので、エネルギー系のデッキを作る場合に重宝する色になるでしょう。
オススメの組み合わせ:青黒、青緑
注目カード:《歯車襲いの海蛇》
製造持ちや機体のお陰で、あまりアーティファクトを意識していないデッキでも自然とコストが軽くなります。
たとえアーティファクトがデッキに少なくても、
7マナ5/6でブロックされない能力持ちは十分フィニッシャーを務められるスペックです。
・黒
プレイアブルなコモンが圧倒的に多いのが黒です。特に2種類のコンバットトリック(《活力の奔出》《隠然たる襲撃》)が非常に優秀で、攻撃的なデッキのメインカラーにオススメです。
オススメの組み合わせ:赤黒、黒緑
注目カード:《楕円競走の無謀者》
普段のセットならばこの手の復活するクリーチャー・カードはブロック不可の能力を持っていることが多いのですが、このカードは持っていません。
そのため攻めるデッキと守るデッキ、どちらでも活躍が期待出来ます。能力で1度でも墓地から戻ってくれば御の字です。
・赤
赤はアーティファクトを参照するカードが多いので、アーティファクトがメインのデッキで特に力を発揮します。
主に《垂涎グレムリン》や《撃砕確約》は、アーティファクトを使った攻撃的なデッキの要となるでしょう。
オススメの組み合わせ:赤白、赤黒
注目カード:《気ままな芸術家》
エネルギー1個で速攻を付けられるのは破格の能力です。自身は1個しかエネルギーを得られないので別のカードによるサポートが必要ですが、エネルギーさえ確保出来ればかなりのダメージを稼いでくれるでしょう。《アラダラ急行》や《破砕踏歩機》に速攻を付ければ奇襲性抜群です。
・緑
低マナ域から高マナ域まで揃った優秀なクリーチャー陣が魅力的なのが緑です。《人工物への興味》《弱者狩り》《撃墜》といった各パーマネントへの対処カードも揃っており隙がありません。
また《霊気との調和》《野生の放浪者》といったカードは多色デッキを組む際に重宝します。
オススメの組み合わせ:青緑、赤緑
注目カード:《高峰の職工》
緑の対空防御の要。
自身にカウンターを載せて1/4になると、単体でこれを超えられる飛行クリーチャーはほとんどいません。
[実際にプレイしたデッキの解説]
今回は僕が実際にプレイしたデッキの中で3-0したものをピックアップして解説していきます。
・青黒
序盤はしっかり守り、後半のフィニッシュ手段(《領事の旗艦、スカイソブリン》《マリオネットの達人》《巧みな交渉術》)に繋ぐコントロールデッキです。
2~3マナのカードがしっかり確保出来ていた為、どのゲームも安定してフィニッシュ手段まで耐えることが出来ました。
まず2枚の見るからに強力なレアが目に付きますが、このデッキで最も活躍したのは2枚入っている《巧みな交渉術》でした。
《巧みな交渉術》は青によくあるコントロール交換系のカードです。
こちら側はアーティファクトであれば何でもいいので、
製造で生み出したトークンや、相手が使えない色の組細工を押し付けるのがベストです。
押されている場面でもこれ1枚で戦況をひっくり返す力を秘めており、個人的に青のトップアンコモンはこれで間違いなしです。
次に活躍したのは《ドゥーンドの調査員》です。
アーティファクトがあれば3/2接死となり、序盤から終盤まで攻守共に優秀なクリーチャーです。
アーティファクトがない場合でも2/2と、2マナ域としては十分なスペックです。
青黒は低マナ域に《禁制品の黒幕》《亢進する亀》といったタフネスの高いクリーチャー=優秀なブロッカーが多く、
こういった受けに回るデッキが組みやすいと感じました。
このデッキには入っていませんが、《領事府の空船口》や《ダッカラの孔雀》等があれば
飛行持ちへの耐性も上がり、さらに隙のないデッキになるでしょう。
1枚で勝てるパワーカードをピックで来たのであれば、青黒は良い選択肢となることでしょう。
・赤白
除去とコンバットトリックを駆使して殴る、典型的なビートダウンデッキです。
このデッキは2マナ域が3枚と少ないですが...目指すべき完成系としては、2マナ域がもっと欲しい所ですね。
このデッキのキーとなったのは《楕円競走車》です。
デッキ内にこれをサポートするカード(《永存確約》《変速の名手》《領事の盾護員》など)が多く、これ1枚で相手のライフをゴリゴリ削るゲームが多かったです。
次に《天才速製職人》と《安堵の再会》です。
この2枚のような無駄なカードを捨てて新たにカードを引く能力は、
ゲームが終盤になるほど大きな意味を持ちます。
実際のゲームでは序盤から中盤にかけてお互いのクリーチャーが相打ちを続け、後半戦に入ると
こちらだけ余った土地を捨ててクリーチャーを補充し続けることで勝つ、といった感じの展開が多かったです。
リミテッドにおいて、ゲーム後半のマナフラッド(土地を多く引いてしまっている状況)対策は非常に重要です。
《安堵の再会》はマナフラッド対策として非常に優秀な上にコモンなので、赤をやるのであれば必ず1枚は確保しておきたいレベルのカードですね。
このデッキではアーティファクトが少なめですが、もっと機体やアーティファクトクリーチャーを多く取って
《永存確約》や《撃砕確約》を有効に使えるように組めるとより強力です。
特に《改革派の貨物車》があればこのデッキの攻撃力はぐんと上がります。
このあたりをイメージしながら、攻撃性溢れるピックをしてみてください。
[まとめ]
『カラデシュ』環境のドラフトはアーティファクト参照カードやエネルギー関係のシナジーが特に強いと感じました。
ピックの方向性としては、序盤はなるべく無色のカードから入り、流れてきた有色の強力カード(特に多色カード)を見てデッキの色を確定させていくとやり易いと思います。
特に多色カードの中でも《禁制品の黒幕》《経験豊富な操縦者》《通電の喧嘩屋》は
カードパワーは高いのですが、2色とも合っていないとなかなかピックされず(多色デッキにタッチされる可能性も低い)、
遅い順目で流れてくることに期待出来ることから、これらを擁する青黒・赤白・赤緑の組み合わせは
その他の2色の組み合わせよりも多少優先してやりたい組み合わせだと、個人的には感じました。
環境初期という事で、まだまだ新環境への理解が浅い状態での考察となりましたが、
少しでも皆さんのドラフト・ライフの参考になれば幸いです。