Damage 4 Wins! 第9回 『新次元の開拓』
タグ:Damage 4 Wins!, フロンティア, 森安元希Text by 森安 元希
新開拓地フロンティアと新セット『カラデシュ』
晴れる屋とBIG MAGICが共同開発したオリジナルフォーマット、フロンティア。
既に晴れる屋の公式サイトでは立ち上げに関する詳細な説明となる特集記事や常設ページが発表されていて、情報に敏いプレイヤーの皆さまの耳元には既に届いているようです。
フロンティアとは、スタンダードで使用できた『基本セット2015』(2014年7月発売)以降のエキスパションに収録されているカードをプールとした構築フォーマットです。
※使用可能セット 『基本セット2015』 『タルキール覇王譚』『運命再編』『タルキール龍記伝』 『マジック・オリジン』 『戦乱のセンディカー』『ゲートウォッチの誓い』(エクスペディションを除く) 『イニストラードを覆う影』『異界月』 『カラデシュ』(マスターピースを除く) |
※『カラデシュ』の《紅蓮の俊英、チャンドラ》など、通常の番外カードはそのエキスパンションに含まれています。
晴れる屋とBIG MAGICの他、既に大会の開催している店舗もあるようで、マジック:ザ・ギャザリングの新しい遊び方として根付いていってほしいですね。
今回のDamage 4 Wins!では、このフロンティアで組む4ターンキル・デッキを紹介したいと思います。
まずは『カラデシュ』のカードも含め、フロンティアで使えるプールで有力なダメージソースとなるカードをピックアップしてみましょう。
※通常の新セットの記事では『4ターン目までに6点を与えられるカード』を基準に紹介していましたが、今回は更にもう少し基準を厳しく、『7点以上を与えられる』カードに絞ります。6点と7点の違いは大きく、7点のカードは3枚使えばゲームに勝てるというメリットがあります。その分、普段は枚数も少ないのですがフロンティアでは一定の枚数がありそうです。
カードが本領を発揮できるタイミングでタイプを分けながらピックアップしていきましょう。
■ 1.部族シナジーを持つカード
自身がサポートする部族を持つカードと併用することでダメージ量が上がるタイプのものです。
《サリアの副官》
《アラシンの先頭に立つ者》
《流城の死刑囚》
《ゴブリンの群衆追い》
《ゴブリンの熟練扇動者》
《刃の隊長》
《小村の隊長》
今回、最も顕著な専用カードは《サリアの副官》と《ゴブリンの群衆追い》です。他に同じ部族を使用しない場合、彼ら自身は4ターン目までに2点しかダメージを与えません。
しかしその爆発力はスタンダード構築に影響を強く及ぼし、白単人間や赤単ゴブリンなどのデッキを成立させてきました。
■ 2.クリーチャー数とシナジーを持つカード
特定の部族ではなく、クリーチャーの総数とシナジーを持つタイプです。
《アクロスの英雄、キテオン》
《領事補佐官》
《武器の教練者》
《鋳造所通りの住人》
《無謀な奇襲隊》
《首折れ路の乗り手》
《領事補佐官》のような部族を指定しない強化能力を持ったカードのことです。強化が部族に依存しない代わりに、修整のタイミングは限定的であることが多いです。変身など特殊な前提条件を持つものが多いです。
■ 3.変身能力を持つカード
イニストラードのキーワード能力「変身」で大幅にP/Tを上げるタイプです。
《内陸の木こり》
《ラムホルトの平和主義者》
《村の伝書士》
《ガイアー岬の山賊》
《首折れ路の乗り手》
自身の他のカードの内容に左右されない代わりに、対戦相手の挙動に依存します。
《首折れ路の乗り手》は「2.クリーチャー数とシナジーを持つカード」としてもカウントできます。
《ラムホルトの平和主義者》など、一部は単体のスペックを買われて「緑白トークン」のようなデッキでも活躍しました。
■ 4.カードを捨てて強化するカード
手札からカードを捨てるというコストで強化できるタイプです。
マナが掛からずクリーチャーの展開を阻害しませんが、後続となる"弾数"自体が減ります。
《流城の死刑囚》
《怒り刃の吸血鬼》
《首絞め》
この3種類はそれぞれ状況によってダメージ効率が異なりますが、《怒り刃の吸血鬼》がカード1枚を3点にする高い効率で安定しています。
(※昔のクリーチャーの名前から、カードを捨てる効果を持つクリーチャーを「共鳴者」と呼ぶことがあります。
『イニストラードを覆う影』『カラデシュ』のリミテッドの解説などでもたびたび出てきています。)
■ 5.上陸能力を持つカード
『戦乱のゼンディカー』の能力語「上陸」で、土地を戦場に置いたときP/Tに修整がかかるタイプです。『タルキール覇王譚』のフェッチ・ランドとの相性が非常に良いです。
《鎌豹》
《噛み付きナーリッド》
《マキンディの滑り駆け
《鎌豹》はフェッチを3枚続けてセット出来れば最大ダメージ9点もある非常に振れ幅の大きい1マナ・アタッカーです。
フェッチ・ランドと同居していたスタンダード当時、デッキタイプ「赤緑上陸」としていずれも活躍しました。
■ 6.単体で完結しているカード
他のカードや相手の挙動に左右されず、与えるダメージの最低値が安定しているタイプです。
《ゴブリンの熟練扇動者》
《ラスヌーのヘリオン》
《通電の喧嘩屋》
3種のうち2種が『カラデシュ』のカードであり、期待の新カードです。
「タイプ別から見えてくるデッキの完成像」
こうして6タイプに分類してみると、やはり部族・クリーチャーの数に左右される1.と2.のカードが、ピック・アップ枚数は多いようです。
逆に6.の「単体で完結しているカード」は、『カラデシュ』までは《ゴブリンの熟練扇動者》1種だったということでもあり、これまでのスタンダードでは4ターンキル・デッキを作るにあたって「デッキ全体のシナジー」の観点は欠かせないものでした。
では今回、『カラデシュ』が加入するフロンティアフォーマットという構築基準のもとでは、1.と2.を主軸としない構築というのは出来ないものなのでしょうか。
単体として強い6.のカード3種類を主軸に採用したとき、どのような完成像が見えて、どのようなカードが足りていないかを考えてみましょう。
実はこの3種でゲームに勝とうとする場合、《ゴブリンの熟練扇動者》は使いません。
《通電の喧嘩屋》1枚と《ラスヌーのヘリオン》を2枚使わないと20点になりません。
※3T目にプレイした《ゴブリンの熟練扇動者》が4T目までに7点しか与えない為、19点までしか届かないためです。
ですが、60枚のデッキにはそれぞれのカードは4枚までしか入れられません。
毎回、「《通電の喧嘩屋》 1枚と《ラスヌーのヘリオン》2枚」を引けるとは限りません。
まずは「《ラスヌーのヘリオン》2枚」の代替えとなる、「《通電の喧嘩屋》の前・後のターンにプレイして2枚で12点」となるようなカードを探してみましょう。
実はここで《通電の喧嘩屋》のテキストを読み直して気づいたことがありました。
《通電の喧嘩屋》は部族タイプを2つ持っています。
人間。そして、戦士です。
人間・シナジーを持つ《サリアの副官》はシナジーに依存しすぎている為、振れ幅が大きく今回は主軸としない旨を書きました。
しかし戦士・シナジーの方はどうでしょうか。
既にピックアップしたなかには、単体でもダメージソースとして数えられる《刃の隊長》と《アラシンの先頭に立つ者》があります。
《通電の喧嘩屋》《アラシンの先頭に立つ者》の2枚コンボ
特に《アラシンの先頭に立つ者》と《通電の喧嘩屋》が、それぞれの能力にかみ合いがあります。
2T目に《通電の喧嘩屋》、3T目に《アラシンの先頭に立つ者》とプレイすると―...「3T目に4/3 二段攻撃・トランプル持ちが攻撃して8点ダメージ」。
「4T目に4/3と2/2の二段攻撃が攻撃して12点ダメージ」。と、合わせて20点与えます。
「2マナと3マナのカード2枚が2回のアタック・タイミングで20点を与える。」という非常に高いダメージ効率は、Damage 4 Wins!を始めてから今までになかった組み合わせです。
これで《ラスヌーのヘリオン》《アラシンの先頭に立つ者》《ゴブリンの熟練扇動者》と3マナ以降の選択肢は確保できました。
2マナ・クリーチャー
今度は2マナの《通電の喧嘩屋》側の代わりとなるカードを探しましょう。
残る単体で運用が可能なカードは、4.カードを捨てて強化するカードと5.上陸を持つカードの2種類です。フェッチ・ランドを採用する場合は上陸・クリーチャーの方が、そうでない場合はカードを捨て強化する方が安定しそうです。
《マキンディの滑り駆け》と《怒り刃の吸血鬼》、《刃の隊長》のいずれかを採用する、ということになりそうです。
後述する色マナの観点も含め、《怒り刃の吸血鬼》が単体で最も安定したダメージを与えられる為、優先しましょう。
2マナ・3マナ中心の構築
これまでのDamage 4 Wins!では、「1マナから順番にクリーチャーを展開する。順番に各マナ域のクリーチャーの種類と枚数を用意する。」という形を基本にしてきました。
しかし今回は2マナと3マナのカードがいずれも強力な為、あえて1マナの生物を積極的には採用しない形にしてみましょう。
強力な2マナ・3マナのカードへしっかりとアクセスする為のカードで、1マナの枠を埋めてみます。
候補は「土地にもクリーチャーにも繋がるカード」ということで、《ニッサの誓い》か《マグマの洞察力》は良さそうです。
どちらにしても、現地点で4マナのカードを採用していないことから、「4T目にプレイして3マナのカードを探す」というようなプレイングも可能です。
また、2マナ・3マナを中心にした為、4T目のアクションが少なそうです。
特に《怒り刃の吸血鬼》から《アラシンの先頭に立つ者》と繋がる場合、4T目《ラスヌーのヘリオン》でも点数が足りません。
この場合に確保すべき効果である「4T目にプレイして、即座に1枚で大ダメージ」となると条件を満たすものはかなり厳しいです。
二段攻撃を持つ《アラシンの先頭に立つ者》のパワーをプラス修整する方法が最も現実的なようです。
最大の修整を与えるカードは、過去のスタンダードで強烈に活躍した1枚でした。
1枚で+6/+6修整という、とても強いカードがありました。
探査持ちの《強大化》です。探査は墓地を肥やす《怒り刃の吸血鬼》の能力ともかみ合います。
最後に《ゴブリンの熟練扇動者》や二段攻撃持ちクリーチャーと相性が良い《アタルカの命令》でリストをまとめて完成です。
サンプルデッキリスト
土地26 クリーチャー23 スペル11 |
《マグマの洞察力》プレイの為に土地カードが必要な為、「安定して4T目に土地を4枚セットするのに必要な枚数」である24枚より若干増やして26枚。
まだ若干空いている1マナ域はマナベースの都合上、赤いクリーチャーが好ましく、《鐘突きのズルゴ》は疾駆を持つ戦士として、高評価として採用。
ひとまず、このようになりました。
正直マナベースには改善の余地が沢山あるのですが、ひとまずサンプルリストとして紹介します。
また、これまで「1マナを最大枚数として4マナが最も少ない右肩下がりのマナカーブ」のデッキを多く紹介してきましたが、今回は3マナが最大枚数となるマナカーブとなりました。
フロンティアを楽しみましょう!
前回は初めてとなる「緑黒カラーの4ターン・キル」を紹介しました。
また今回の《通電の喧嘩屋》と《アラシンの先頭に立つ者》のような「2枚コンボ」級の強烈な組み合わせがあれば、赤を主体とした普段のカラーリングながら構築にもアレンジが加わります。
特にプールが広くなるフロンティアでは、他にもスタンダードでは見られなかった様々なコンビネーションが生まれることが予想できます。
『基本セット 2015』『タルキール覇王譚』『運命再編』と『イニストラードを覆う影』以降はスタンダードで同居していないので、組み合わせを探す楽しさがありますね。
フォーマットが未成熟だからこそ、自分のデッキを最大限にアピールできるチャンスの場でもあります。
みなさんも是非、晴れる屋やBIG MAGICで、そして地元のショップで、フロンティアと『カラデシュ』のカードを楽しんでください。
それではお読みくださってありがとうございました。森安でした。