【GP静岡2017春】特別インタビュー:Helene Bergeot -プレイヤーの夢を叶えるために-

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マジックの魅力。その一つが、このゲームに対して様々な形で能動的に関わることができること、と筆者は考える。

マジックの魅力が詰まったこのグランプリを眺めても、様々な人が来場している。ある者はプレイヤーとして参加し、ある者はジャッジとして彼らを支える。我々カバレージ班は、その魅力を伝える形で関わっている。そして、そのマジックを製作しているウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の人も、会場には足を運んでいる。

今回のグランプリ・静岡2017春には、スペシャルゲストが来日している。それが公式ページのお知らせなどでもおなじみの、Helene Bergeotさんだ。
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我らの岩SHOWが対談をお願いしたところ、お忙しいにも関わらず快く承諾いただいた。普段のお仕事、やりがい、そして気になるこれからのグランプリについて、早速伺ってみよう!


岩SHOW「改めまして、ようこそ日本へ!」

Helene「ありがとうございます。日本は本当に良いところですね。もっとゆっくりしたいのですが、仕事なので......」

岩SHOW「では、そのお仕事についてお聞きしたいのですが、Heleneさんのお仕事について詳しく教えて貰えますか?」

Helene「肩書としては、組織化プレイ・ディレクターというものになります。仕事の内容は、世界70ヶ国以上で開催されているマジックの大会のマネージャーを務めています。グランプリのみならず、プロツアーもその一部ですよ」

岩SHOW「なるほど、だからプロツアーにいらっしゃるんですね。プロツアーの取材に行ってHeleneさんをいつもお見かけしているので、お話できて嬉しいです。色々と大変なお仕事だと思いますが、どのようなことが大変ですか?」

Helene「当然のようではありますが、すべての物事を世界規模で見つめて、考える必要があります。日本、アメリカ、フランス、南米、あらゆる国で"同じ方針"を持ち、共有しなければなりません」

岩SHOW「世界中でプレイされているからこそ出てくる課題ですね」

Helene「そうですね。口にすることは簡単ですが、実現するのは非常に難しいことです。なので、日々挑戦している状態です」

岩SHOW「マジックだからこそある難しさ、というものもやはりありますよね?」

Helene「もちろんありますね。地域の差、そして特色もあります。日本のように競技志向のプレイヤーが多い場所もあれば、競技的な環境がない場所ももちろんありますから」

岩SHOW「プレイヤーにも差がありますよね。プロツアーを目指す人もいれば、友人同士で楽しむことが目的の人もいますし」

Helene「そうですね。その人たちのどちらかだけではなく、両方を同時に楽しませる。これは大変なことですが、それだけマジックが魅力的であり、マジックだからこそできることでもあります。とてもやりがいのある仕事です」

岩SHOW「なるほど......そういった難しい中で、幸せ・喜びを感じる瞬間ってありますか?」

Helene「プレイヤーはそれぞれ違う目標を持っていますが、そのすべての夢を叶えることも、マジックはできますよね。そして何よりも、その夢を叶えて喜んでいる表情を見たときの感動は、いつまでも代わりません。『あ、この人を幸せにできたんだな』と思えて、とても嬉しいんです。それが、本当に幸せです」

岩SHOW「トーナメントに足を運ぶと、それを見ることができるわけですね」

Helene「そうですね。マジックにはたくさんのトーナメントがあります。特に、ワールドマジックカップは思い入れの強い大会です。前回は73ヶ国が出場したのですが、出場者の中には、大きな大会に参加したことがないプレイヤーもいました。そういった人たちも参加でき、そして彼らを応援することで世界中が盛り上がるというのは、本当に凄いことです」

岩SHOW「あなたはまさに、Dream Makerですね」

Helene「少し恥ずかしいですね(笑)」

岩SHOW「では、少し違う話題になるのですが、2018年より『ChannelFireball Events (CFBE)』をウィザーズ・オブ・ザ・コーストの専任グローバル・パートナーとし、すべてのグランプリ運営を委託する、という発表がありました。この発表は大きな衝撃があったと思うのですが、今後日本のグランプリはどうなっていくのでしょうか?」

Helene「まず、この方針を取った第一の目標は、"グランプリの品質を保持すること"です。世界で同じ体験ができるように、ということが一番重要でした。現在は、世界各国でグランプリが開催されていますよね?」

岩SHOW「そうですね。別々のグランプリが世界中で同時に開催されています」

Helene「同じ"グランプリ"という名称でありながら、世界各国で違った特徴があります。私は、それぞれの地域から良いところを集めて、それを世界中に共有したいと常に思っていました。たとえば、"日本が持つグランプリの良さ"を海外に共有し、海外で出た素晴らしいアイディアを日本のグランプリで実施する、ということも可能になっていきます」

岩SHOW「なるほど。日本が持つグランプリの良さ、というお言葉がありましたが、Heleneさんから見て、日本のグランプリはいかがですか?」

Helene非常に素晴らしいですね。『日本のグランプリは素晴らしい』というのは、世界共通の意見だと思いますが、実際に目にして、感動しました」

岩SHOW「ありがとうございます! そんなに褒めてもらえるとは......具体的に、どの辺りが目に止まりましたか?」

Helene「まず、2700人が参加する本戦を運営しながら、サイドイベントもスムーズに運営されています。日本の方にとっては当たり前なのかもしれませんが、スタッフ全体が一丸となってイベントを運営していて、本当に感動しました。このレベルは、世界で見ても高い水準なんですよ」

岩SHOW「そうなんですね。国外のグランプリに参加しないと、その辺りは気づけないことですね」

Helene「それに、この会場では大会だけではなく、どこか"お祭り"のような雰囲気があります。物販ブースも充実していて、イベントステージも用意されていますね。ゲームをするだけではなく、マジックに関するあらゆることを楽しめる......まさに"マジックのお祭り"と言うべき場所です」

岩SHOW「そういった良さを、世界に共有していきたいとお考えなのですね」

Helene「そうですね。それに、マジックプレイヤーはグランプリが大好きですから、もっとグランプリに参加できるチャンスを増やしたい、と思っています。CFBEに運営を任せることで、単純にグランプリの開催回数は増やせると思います」

岩SHOW「なるほど......では、グランプリが変わってしまうんじゃないか? というのは考えすぎ、ということでしょうか?」

Helene「変わるとすれば、それは良い変化でしょうね。誤解をされがちなのですが、今回の件でグランプリから日本の良さをなくすようなことは、決してしないと保証します。私たちが目指すものの最低水準が、現在の日本のグランプリなのです。世界的に見ても素晴らしいレベルを維持しながら、さらに良くしていきたい。そして、皆さんがもっと幸せになれる場所を作りたいですね」

岩SHOW「その幸せな表情を見て、Heleneさんも幸せになれるわけですよね」

Helene「そうですね。もっと幸せなプレイヤーの表情を見たいと思います。それが、私の生き甲斐ですから」

岩SHOW「ではお忙しいと思いますので、最後に一つだけ。日本のプレイヤーに向けて、メッセージをお願いします」

Helene「繰り返しになってしまいますが、グランプリのみならず日本から学ぶことは、とにかくたくさんあると思っています。プロプレイヤーも多いですし、イベント運営の技術も世界にはない高いレベルです。そして、この文化を世界に広めることが重要だと思っています。日本の良さを世界中にシェアすることができたら、マジックはさらに良くなると思います。日本は世界の憧れ、というのは言いすぎかもしれませんが、アメリカやヨーロッパで、日本のようなグランプリ運営ができたら、どれだけ素晴らしいか。みなさんにとって素晴らしい時間を過ごして貰えるように、これからも仕事を続けて行きます。よろしくお願いします」

岩SHOW「ありがとうございました! 日本にはいつまでいらっしゃるのですか?」

Helene「明日、日本を離れます。1分1分が楽しいので、とっても名残惜しいです。ただ、今回は短いのですが、すぐにまた来るんですよ。プロツアーが京都でありますから、その時はもう少し長くいられると思います。なので、またお会いしましょう!」


「ありがとう」と挨拶をして、Heleneさんは会場の人混みの中へと消えていく。その顔が常に笑顔なのは、彼女が「生き甲斐」と語る、幸せなプレイヤーの表情を見ているから、なのだろう。

今後のグランプリについて、変化があることは間違いない。しかし、それは「良い変化」と、彼女は語った。「幸せなプレイヤーの表情を見たい」という言葉、そして幸せなプレイヤーが増えることを他ならぬHeleneさんが望んでいるのだから、きっとそうに違いない。

その良い変化に、我々も少しずつ能動的に関われるように、と願う。

グランプリ・静岡2017春 カバレージページ