【GP静岡2017春】プロツアー「破滅の刻」予選 決勝:Zhi Yiwin vs 小澤 毅

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グランプリ・静岡2017春では、様々なサイドイベントが開催され、その勝者には様々な商品が用意されている。その中で最も豪華なものはなんだ? と問われれば、やはりプロツアーの参加権利であろう。

プロツアー予選(PTQ)、決勝

3年ぶりに復活したPTQは、変則的なトーナメントで行われた。

まず、32人のミニトーナメントで『霊気紛争』シールド5回戦の"シングルエリミネーション"を行い、勝者を8人を決める。そして、『霊気紛争』ドラフトを3回戦で行い優勝者を決め、勝者は京都で開催されるプロツアー『破滅の刻』の参加権利を得る。

一度でも負けてしまえば、トーナメントから去ることになる。勝ち続ければ、プロツアー

多くのプレイヤーが情熱を燃やしてきたPTQが復活し、その栄えある一人目の勝者が、今決まろうとしている。

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この決勝卓に座るのは、Zhi Yimin(中国)と、小澤 毅(宮城県)の一戦だ。

Zhiは強力な除去を搭載した「赤黒」をドラフトし、「どうしてもプロツアーに行きたいんだ」と真剣な表情で筆者に告げた。

対する小澤の名を、歴戦のマジックファンならば知っているに違いない。グランプリ・山形2016で準優勝、グランプリ・仙台2010でもトップ8に入賞した経験を持つ古豪であり、今回は「青緑タッチ白」をドラフトし、ここまで安定した勝利を重ねている。

プロツアーへ向かう長く重要な一戦が、今始まる。

Game 1

後手の小澤が《たかり猫猿》を唱え、先手のZhiが1ターン遅れて《速接会の技師》を唱えたところからゲームスタート。小澤が《改革派の貨物車》を唱えて一歩先に出る。

Zhiは《速接会の技師》で攻撃。小澤は悩むことなく《たかり猫猿》をタップして「搭乗」、《改革派の貨物車》でブロック。戦闘終了後にZhiが唱えたのは、《真夜中の随員》。 小澤は一度身を乗り出し、座り直してからターンを受ける。

ここから、互いに順調に土地を伸ばしながら展開し、時に戦闘を交えつつも、静かにゲームが進む。

本戦は、決勝ラウンドが始まっているようだ。この席の遙か向こうにフィーチャーエリアが見えるのだが、会場に残った人が少なくなったことも相まって、明るさが際立っている。

とはいえ、こちらもギャラリーの多さと熱気は同様だ。久しぶりに復活したPTQということで事前の注目度も高かったが、それは当日も変わらない。

さて、盤面に視点を戻そう。小澤は《たかり猫猿》にトークンを乗せた《クジャールの種子彫刻家》と《難破船ウツボ》の3体を並べ、Zhiの盤面にいる霊気装置トークンを「製造」した《霊基体の野心家》を《凍り付け》で除去した状態。

対するZhiは攻撃クリーチャーを指定する段階。盤面には、霊気装置トークン、《霊気毒殺者》、そして《ドゥーンドの調査員》。互いに3体ずつのクリーチャーを並べている。

その状態でZhiは何度もクリーチャーを並べ替え、じっくりと思考を巡らせながら、攻撃とそれに対するブロックを想像する。

Zhiは《残酷な決断》で《クジャールの種子彫刻家》を除去。そして《ドゥーンドの調査員》と《霊気毒殺者》で攻撃をしつつトークンを生成。小澤は相手の手札の枚数を確認してから、《難破船ウツボ》と《理論霊気学者》でブロック。すべてのクリーチャーを失った小澤が《襲拳会の革命家》を唱えると、Zhiは《湿原の運び屋》で返す。

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Zhi Yiwin

ここからZhiは力強い手つきでゲームの主導権を握っていく。霊気装置トークンの攻撃に《暴力の激励》を合わせ、これを小澤は《英雄的介入》で受け流すが、トランプルによるダメージは防げない。さらに、《霊気烈風の古きもの》で起死回生を狙おうとする小澤の芽を摘み取るが如く、《果敢な爆破》を合わせていく。

次のターンも、Zhiは淡々と攻撃。その上に《ショック》を合わせて、ライフを削りきった。

Zhi 1-0 小澤

Game 2

このゲームは、後手となったZhiの《霊気毒殺者》からスタート。攻撃をしながら霊気装置トークンを生成。さらに《速接会の技師》と繋げて、攻撃態勢を整える。

対する小澤は《ならず者の精製屋》、《襲拳会の革命家》と繋げていく。

交戦が始まったのは次のターン、Zhiが3体で攻撃をしてからだ。小澤の《襲拳会の革命家》が《速接会の技師》をブロックして墓地に送られると、「紛争」を達成しながら《夜市の飛空士》。これは《光に目が眩む》で押さえつけられる。

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それでも攻勢を続けるZhi。《霊基体の匪賊》を唱えて、さらに戦力を増強。ところがこれも《光に目が眩む》で、さらに《霊気毒殺者》も《凍り付け》で除去される。

小澤の盤面には《ならず者の精製屋》しかいない状態だが、対するZhiも《ドゥーンドの調査員》と霊気装置トークンのみ。小澤が《速接会の翼鍛冶》を唱えたことで、盤面は完全に膠着した。

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土地を7枚まで伸ばし、戦況を好転させたいZhiは《果敢な爆破》で打開策を探すも、《英雄的介入》で回避されてしまう。

小澤は《速接会の翼鍛冶》と《ならず者の精製屋》で攻撃。Zhiはひとまず守りに入り、《ドゥーンドの調査員》でブロック。さらに、次のターンに《残酷な決断》で《ならず者の精製屋》を除去して、盤面を落ち着ける。

ゲーム中盤。小澤が《ダッカラの孔雀》《霊気運用者》と展開する。Zhiは《溶接自動機械》を唱えて続き、《霊気毒殺者》が序盤に生成した霊気装置トークンも残っているため、互いに2体のクリーチャーを並べている状態となった。

Zhiが霊気装置トークンと《溶接自動機械》で攻撃をすると、小澤はじっくりと時間を掛け、指で机を叩きながら何度も打点を計算する。まだ少し喧騒の残る会場に、机を叩く音が響く。その指は2体のパワー合計を明らかに多く越えた数を叩いている。"何か"を想定した上で、《霊気運用者》でブロック。すると、Zhiは静かに《暴力の激励》を合わせてきた。先ほど小澤が叩いていた指の回数と等しい数字が、このカードには記されている。想定どおりのダメージをメモに記した小澤は、一呼吸を置いてからゲームを決めに行く。

まずは2体で攻撃。Zhiのライフを残り1まで削ると、追加の《歯車組立工》を唱えてターン終了。

Zhiのドローは、《山》。受けのない状態が改善するはずもなく、一度深く頷いてから土地を畳んだ。

Zhi 1-1 小澤

小澤は一足先にシャッフルを終えると、自分のメモに手を伸ばし、GAME:3の欄に二つ、「20」と力強く記した。これが、プロツアーまでの距離だ。ついに、最終ゲームが始まる。

Game 3

小澤はマリガン。6枚の手札をて、一度頷きゲームを始める。

Zhiは《霊気毒殺者》、攻撃して霊気装置トークン、《歓待する構築物》と並べる。対する小澤は《理論霊気学者》のみで序盤を凌ぐ。

Zhiは3体で攻撃。小澤は《守られた霊気泥棒》を瞬速で唱えて《歓待する構築物》のブロックに当てる。《理論霊気学者》が霊気装置トークンをブロックし、「紛争」達成。《夜市の飛空士》がカウンターを乗せて現れる。小澤は落ち着いた表情で《ピーマの霊気予見者》を唱えて戦線を増強。これをZhiは長考の末に《チャンドラの革命》で除去し、《島》をアンタップできなくさせる。

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小澤 毅

《霊気毒殺者》の攻撃を《理論霊気学者》で受け止めてから、《速接会の翼鍛冶》。さらに《誤動作》で《夜市の飛空士》を止めて小澤も順調に展開。《速接会の翼鍛冶》が単独で攻撃すると、Zhiは《残酷な決断》で占術をしながら《歓待する構築物》で打ち取り、戦場に静寂が訪れる。

何千人というプレイヤーで埋め尽くされていた会場も、今や閑散としている。どこか寂しさを覚えながらも、本戦、そしてサイドイベントの勝者が決まっていく。それがどのフォーマットの、どのようなルールで行われる戦いであろうとも、決勝卓の熱さは変わらない。グランプリ閉幕直前の空気は独特だ。

その独特な空気の中、PTQの決勝は、ここから一気に熱さを増していく。

Zhiが潤沢になったマナを活かすために《溶接自動機械》。小澤は身を乗り出して、相手の土地を数えた......8枚。毎ターン2点のダメージが確約された状態で、残りライフは8。朝から開催されたPTQも、残すところ4ターンだ。

小澤は自分に残された時間を確認する。そして、このゲームのフィニッシャーを、盤面へと叩きつけた。

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《自己組立機械》!

Zhiは《果敢な爆破》でこれを破壊するが、さらに《自己組立機械》が続く。そしてライブラリーから探し出されたのは、《歯車組立工》。さらに《新緑自動機械》《霊気運用者》と続ける。

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後続を展開できないZhiが《溶接自動機械》で1点のダメージを与えてくるが、そのエンドフェイズに小澤は《歯車組立工》で《自己組立機械》のコピーを、そして自身のターンでもコピーを組み立て、盤面に4/4のクリーチャーを3枚並べる。

全軍で攻撃を仕掛け、小澤は勝利を手元に引き寄せた。その勝利の傍らには、プロツアーへのチケットも添えられている。

Zhi 1-2 小澤

ギャラリーから湧き上がる拍手。その中心にいた小澤にヘッドジャッジが声を掛け、権利について説明を始めた。

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明るい声で受け答えする。朝から続いた戦いの疲れも忘れて喜びを噛み締め、権利獲得者の証を手にした。

さて、今回、このカバレージを執筆するために、筆者は過去のPTQの記録やカバレージを読み漁った。先人たちによって記された権利獲得者の名前や、会場の熱気に触れたものとして、最後にしっかりと彼の名前を記しておきたい。

近い将来、「グランプリ・静岡2017春のサイドイベントで復活したPTQ」について調べる人が、きっといるはずだ。彼らが資料探しをする際に迷わないように。そして、このプロツアー予選の勝者を、改めて称えるために

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プロツアー予選、勝者は小澤 毅。おめでとう!

グランプリ・静岡2017春 カバレージページ