【BIG MAGIC Open Vol.9】BMOスタンダード Round 1 斉田 逸寛(東京) vs 川村 直輝(愛知)

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Text by 森安 元希

4月28日発売、『アモンケット』

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4月26日告知、4月28日施行《守護フェリダー》禁止。

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この2つの要素によって、【コピーキャット】(《サヒーリ・ライ》+《守護フェリダー》コンボ)と

【機体】(《模範的な造り手》+《キランの真意号》シナジー)の二大勢力であったスタンダードを取り巻く環境が、大きく変わった。

新環境を象徴する大会として9回目となったBIG MAGIC Openでは、どのようなデッキが頭角を現してくるのだろうか。

参加者たちは手探りのなか、新たな強さを求めてデッキを練り上げてきている。




参加者369人




過去最大級の規模として開催される"BIG MAGIC Open vol.9"。
前回、BIG MAGIC Open Vol.8にてその名を冠したTeam Cygames所属 渡辺 雄也を筆頭に、プロの姿も多い。
熱情とクオリティの高いマッチメークが頻発しそうだ。




春の暖気とこもる熱量に、汗ばむものもいる会場。
BIG MAGIC Openの顔としても馴染み深くなってきた中嶋ヘッドジャッジによってRound 1のペアリングがアナウンスされた。




そのうちの1卓。初戦のフィーチャーは、斉田 逸寛 vs 川村 直輝。

斉田はBIG MAGIC Open Vol.8のタイトルホルダーとして、今期からBIGsに加入した新鋭だ。
"BMO8"当時、最強のデッキとして評価されていた"青白フラッシュ"を用いて奥村 祐司との決勝を制したように、
また新加入インタビューでも答えているように、好んでトップメタのデッキを使いこなす。
そして後にエキシビジョンマッチを繰り広げた渡辺雄也をして、「巧い」と言わしめる技量を誇るプレイヤーだ。

【コピーキャット】というシェアトップのデッキが喪失した今回、斉田はメタゲームをどのように解体したのか。

対する川村は、愛知からの遠征だ。
BIG MAGIC Openには度々参加しており、未開の新環境という状況には親しみがあるようだ。




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互いに緊張の色は見せず、朗らかな雰囲気で握手が取り交わされた。

斉田「フィーチャーテーブル、広いね」
川村「ダイスがこぼれることもなさそう」

談笑しつつも手際よく準備を進めるさまに、2人の競技プレイヤーとしての高い練度が垣間見える。

やがて中嶋ヘッドジャッジによって"BIG MAGIC Open Vol.9 Round 1"開始の合図がかかる。




Game 1

先手は斉田。
《産業の塔》1枚と《模範的な造り手》のハンドではマリガンを選択。
前環境から引き続き覇者としての立ち位置を崩さない、【機体】だ。
トップメタを使うと公言する斉田らしいチョイスだろう。

川村も7枚のキープを宣言している。
こちらは数枚のカードを得て完成度を飛躍的に高めた【ジェスカイ・コントロール】のハンドだ。

1マリガンの斉田が白黒ファスト2枚から《歩行バリスタ》X=1を設置して、ゲームが開幕する。
展開的には"致し方なし"というところだが、中盤のキーカード《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》はしっかりと握っている。

川村は《灌漑農地》のタップイン処理から《尖塔断の運河》をセットしてターン・エンド。
続く斉田の《異端聖戦士、サリア》着地に《蓄霊稲妻》を合わせて、打線を形成させない。
翌ターンには《歩行バリスタ》のアタックに《マグマのしぶき》を当てて(厳密には、自爆させて)、戦場を一掃した。

打開策を示さないといけない斉田はタップアウトで《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を繰り出すが、《検閲》が突き刺さる。

5ターン目。斉田は《大天使アヴァシン》をメインで出すかどうか長考したのち、セットランド・ゴー。
その間に川村は《天才の片鱗》でハンドを蓄えてゆく。

―...【ジェスカイ・コントロール】は相手が動いても動かなくても対応できる"打ち消し+ドロー"という古典的な戦法ながらに強力なデッキだ。
勝ち筋である《奔流の機械巨人》自身が打ち消しを兼ねるのも、隙を見せない優秀さを誇る。

斉田は川村のエンドに《大天使アヴァシン》を展開し、アタック宣言までは生き残るが《蓄霊稲妻》が合わさって対処される。
そこから今しばらくセットランド・ゴーを続けざるを得ない斉田。
対して、《灌漑農地》2枚をドローに置換してゆく川村。

ハンドの質が著しく高まった川村のゲーム・コントロールが始まった。



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川村




《模範的な造り手》に《本質の散乱》。
《奔流の機械巨人》から《天才の片鱗》を使いまわし。

《歩行バリスタ》X=3に《排斥》。

《無許可の分解》に《不許可》。
2枚目の《無許可の分解》に2体目の《奔流の機械巨人》からの《不許可》使いまわしー...

斉田の展開はものの見事に1枚も許されず、2体の機械巨人が戦場に君臨することとなった。

斉田 0-1 川村




《灌漑農地》を筆頭にサイクリング付き2色ランドは、中速以下のデッキを安定させる上で非常に有力だ。
加えて《検閲》《排斥》という2種類のリアクション・カードにもサイクリングがついているのは、
青白を含むコントロール・デッキ全てにとって僥倖であった。
勿論、青いからには《奔流の機械巨人》と《天才の片鱗》のシナジーも引き続きデッキの主軸を務める。
コントロール復権を象徴する【ジェスカイ・コントロール】を持ち込んだ川村が、ゲームを先取した。

サイドボーディング・タイム。
最大の仮想敵として【機体】を想定しているであろう川村は速やかにサイドボーディングを終える。
対して、新勢力ともいえる【ジェスカイ・コントロール】にどう立ち向かうべきか入念に検討を繰り返す斉田。
特に【機体】は、サイド後にアグロとPWコントロールの2つの側面を持ち合わせるデッキだ。
どちらに寄せるべきかー...




Game 2

お互いに7枚スタートで第2ゲームが開始する。

斉田、《霊気拠点》から《模範的な造り手》でスタートする。
先手の選択権を持っていた斉田はメインから引き続き、アグロ戦略を主軸にしたようだ。

第2ターン、《産業の塔》、《キランの真意号》。アタック3点。
第3ターン、《検閲》をケアしつつセットランドから《屑鉄場のたかり屋》。アタック7点。
これで既に川村のライフは半分だ。斉田が先手機体の真骨頂ともいえる高速・高打点の展開を示した。




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斉田



川村はケアされた《検閲》を他のカードに切り替えるべく、サイクリング。

斉田は第4ターン、《屑鉄場のたかり屋》を追加。
これの着地からのフルアタックを許せばライフが枯れる川村、《否認》を含めロングゲームのハンドを握っていたのが噛み合わず、軽量除去に辿りつけなかった。

斉田が環境随一のゲームスピードをメイクして、2ゲーム目を迅速に取り返した。

斉田 1-1 川村




Game 3

川村の《検閲》2枚を含めた先手は強力だ。
まずは斉田の初動、後手2ターン目のX=1《歩行バリスタ》を蹴る。
続く《異端聖戦士、サリア》には《マグマのしぶき》で対応する。

しかし川村、ハンドのスペルは非常に充実しているが、その代償にランドが3マナで止まった。
対する斉田は止まらず、ストレートに《大天使アヴァシン》をプレイする。

川村、この《大天使アヴァシン》のアタックを1度受けとめてから、
斉田がアタック後の第2メインでも動かないことをみてから、エンドに《霊気溶融》をエンチャントして疑似的に無力化を図る。

斉田は強引かつ無理なく、これに対する回答を放った。
2枚目の《大天使アヴァシン》。
伝説ルールによって無力化した《大天使アヴァシン》を犠牲にしつつ、アタッカーを絶やさない。

川村、続く《反逆の先導者、チャンドラ》には《不許可》、
《大天使アヴァシン》へ《蓄霊稲妻》と、タイトなマナベースながら膠着を維持してゆく。

攻める斉田。
受ける川村。



ギリギリのところで保たれている平穏は、どちらかが一息ついたら一気に崩される危うげな気配だ。

ここで斉田が着地させた《屑鉄場のたかり屋》が殴り始める。
除去にすこぶる強いコントロール・キラーとしての1枚だが、ここからどれだけ活躍できるか―...

しかし、川村、1度アタックを受けてから《天才の片鱗》の占術で見たカードが強い。
4マナで止まっていたランドと、《マグマのしぶき》。即座に両方をハンドに加える。

そのまま手にいれた《マグマのしぶき》を《屑鉄場のたかり屋》へ差し向ける。
斉田は自らの《屑鉄場のたかり屋》に《無許可の分解》を合わせた。
墓地へ逃げたいという意思表示だが、《否認》が更に合わさって許されない。
《屑鉄場のたかり屋》が追放される。

―...これまで《屑鉄場のたかり屋》を非常にネックにしていたコントロールデッキが《マグマのしぶき》を得たことも、
サイクリング付きの呪文を得たのと同様にデッキの完成度を非常に高めているようだ。


斉田は、《屑鉄場のたかり屋》を巡る攻防の後、《キランの真意号》を置くが搭乗員が確保できない。
川村が《明日からの引き寄せ》で4枚ドローしてハンドを一気に稼いだ。

その後、斉田が一縷の希望を託した《大天使アヴァシン》プレイが《奔流の機械巨人》からの《不許可》で消されて
再びアタッカーが不在の戦線となった。

しかし斉田は《無許可の分解》で《奔流の機械巨人》を破壊。
《キランの真意号》がいるので本体へダメージが3点はいって、川村のライフは残り6にまで差し迫った。

ハンド・アドバンテージに差はあるが、隙を縫ってライフを詰められるようなら芽があるが―...
その希望を打ち砕くように、川村がソーサリー・タイミングで動いた。

《保護者、リンヴァーラ》プレイ。




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天使トークンこそ出てこないが、《無許可の分解》2枚分にも匹敵する、5点回復。
ライフを2桁に戻して余裕を取り戻したことで、斉田は再び窮地だ。

斉田、2体の《スレイベンの検査官》と2回の手がかりでカードを掘り進めるが、
そのエンドにプレイされた川村の《奔流の機械巨人》の打点が重い。
5点、5点、5点とライフが消耗していくなかで最後の希望を託して《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をプレイするが、
川村のハンドから2体目の《奔流の機械巨人》がプレイされた瞬間、ゲームが終結した。

川村 2-1 斉田

 





ルーリングの確認以外では殆ど無言のまま静かに進行したマッチであったが、勝敗がついてからの2人は明るかった。
逆に言えば、それだけ互いに真剣に取り組んでいた試合であった。

打ち消し呪文への対応に関して前後不順などの「細かいミスが多かった」と反省する斉田。
川村も、自身から見えていた情報などと突き合わせてプレイの正誤を確かめてゆく。



Game 1,2,3。

全てのゲームの感想戦を繰り広げ、総括的に流れを見返す2人。
初対面ながらも感想戦が盛り上がる試合は、良い試合を示す証だろう。



1敗スタート。その事実を重く受けとめながら、「もう1度フィーチャーに呼ばれるように、頑張るよ」と語る斉田の活躍からも目が離せない。

そして初戦から前回優勝者に勝利という大金星を挙げた川村は、この勢いのままに次戦へ向かう。
新勢力【ジェスカイ・コントロール】の行く末を握るものの1人となりそうだ。



BMOスタンダード Round 1 斉田 逸寛 vs 川村 直輝

川村 Win!

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