【BMInvi】BIG MAGIC Invitational 決勝 松本 友樹(東京) vs 中道 大輔(東京)

タグ:, , , ,

Text by 森安 元希


invSE3.jpg



プロ・プレイヤーズ・クラブ。
MTGが誇る"プロプレイヤー制度"は年々その内容をあらためながら
競技マジック最前線で闘い続けるプロプレイヤーたちを支援している。

BIG MAGIC所属プロ、松本 友樹。
シルバーレベル・プロである松本も、今期その恩恵を受けた者の1人だ。
そして来期もプロとしての立ち位置を継続したいという強い思いを持つ。

その為には直近開催されるプロツアー・京都へ出場するのが近道となるのだが―...
戦績の兼ね合いで、出場権がない。
そのためにBM Inviの優勝賞品、プロツアー参加権を欲していた。
喉から手が出るほど、優勝を求めている。

昨日のラストチャンストライアルでBM Inviの参加権を経て、
自作の【ティムールミッドレンジ】でここまで一直線に走ってきた。
【松本ハーレー】を代表とするデッキビルダー松本としての腕の見せ所となっていた。
デッキは昨日今日で10勝以上を挙げている。絶好調とも言える追い風だ。

昨晩、特設サイト上にトライアル突破者としてデッキリストが公開されたときには未だその強さを疑うものもいたが、今となってはもはや会場のどこにも【ティムールミッドレンジ】を趣味デッキだと哂う者はいない。
《栄光をもたらすもの》は、松本にも勝利の栄光を分け与えるのだろうか―...


対するは同じくBIG MAGIC所属プレイヤー。
BIGs、中道 大輔だ。

プロツアー参加をハッキリと標榜する中道も、ここは譲れない。

BIGsの活動内容はメンバーそれぞれに委ねられているが、"プロツアー出場"を目標とするものが多い。
そして中道はその実力の高さ、戦績の良さからプロツアーに接近する1人だと目されている。

BIG MAGIC Open Vol.8で参加権を確定させてから、
近日にグランプリ神戸が控えるなかでも今日この日まではスタンダードを意識してきた。
昨日のBIG MAGIC Openスタンダードでも勝てばTOP8のバブル・マッチまで進出しており、その勝率は全トーナメント参加者のなかでも有数だ。

BMInviスイスラウンド最終戦では同じくBIGsの川崎 慧太を破っており"身内"戦が続いているようにもみえるが、強烈な"ライバル"戦を踏み続けているともいえる。

選んだデッキは【ティムール霊気池】だ。
75枚全体の構成に自信をもって、松本へ堂々の対戦を挑む。


―...BM Inviではシングル(決勝トーナメント)限定の特別ルールが施行されている。
試合前のデッキリスト相互公開を、"どちらか1人でも希望すれば"執り行うというものだ。

しかし今回はお互い公開しないことを選択した。
勝つ為の刃は、最後まで隠しておくものだと言わんばかりに。

この選択が、自作デッキを持ち込んだ松本に利となるのか、
【霊気池】のチューン・ナップに自信を持つ中道をバックアップするのか。
その判定はマッチの勝敗に委ねられた。





Game 1


invSE3-2.jpg



《媒介者の修練者》《導路の召使い》《森》《霊気との調和》《反逆の先導者、チャンドラ》《栄光をもたらすもの》。
松本のキープハンドが示すルートは、明快だ。マナ加速からの赤いフィニッシャー。
順調に2ターン目に展開した《媒介者の修練者》は、中道の《蓄霊稲妻》で動き出しに待ったがかかる。

翌ターン、松本は《導路の召使い》をプレイしつつ、3枚目の土地も無事引けている。仕切り直しだ。
そして《反逆の先導者、チャンドラ》プレイ。次から《栄光をもたらすもの》が走り出す準備は完了した。

中道も《霊気との調和》から《蓄霊稲妻》、そして《霊気溶融》を《導路の召使い》にエンチャント―...
と少しずつエネルギーを貯めていっていた。

4ターン目にして、丁度エネルギー6。
中道は4枚目の土地を置いて、《霊気池の驚異》設置。そのまま、起動。

中道は迷うことなくめくった6枚から1枚を選んで、プレイを宣言する。

《絶え間ない飢餓、ウラモグ》。



ウラモグ.jpg



松本「負けました」


松本 0-1 中道



「《絶え間ない飢餓、ウラモグ》登場までに《栄光をもたらすもの》か《不屈の追跡者》、
あるいは《自然に仕える者、ニッサ》奥義(-6)の10点アタックが間に合えば勝ち目はある」
と、試合前に対【ティムール霊気池】戦の勝ち筋を話していた松本。
先手4ターン目の《絶え間ない飢餓、ウラモグ》登場にそれらが間に合う手立てはない。
《霊気池の驚異》を相手どる場合、"仕方ない"と気持ちを入れ替えることも大切だ。
それほど先手4ターン目《絶え間ない飢餓、ウラモグ》は圧倒的であり、かつ運の要素が大きい構造だ。

そして準決勝のGame 1同様、"これぞ【霊気池】"という勝ち方をおさめた中道。
あと2回のうち1回で良い。同じことが出来れば、優勝だ。
しかし《霊気池の驚異》ばかりに頼る構成のままでは松本のサイドボードカードが突き刺さるだろう。
盤面で戦いあえるようなクリーチャーたちをサイドインして、ミッドレンジ的な戦闘も視野にいれてゆく。





Game 2

やはりマナクリデッキの強みはキープの基準にも影響する。
《森》《霊気との調和》《導路の召使い》というマナソースで、7枚をキープする松本。
土地1枚と形容することもできるハンドだが、ある程度順調に伸びることが確約されている。

中道は、ダブルマリガンだ。
こないときには、こうもこないものなのだろうか。
5枚をみて《蓄霊稲妻》と赤マナのない土地をキープせざるをえない。
そのなかにある《絶え間ない飢餓、ウラモグ》は悲しい表情を浮かべているようだが―...
それに引きずられるようにドローステップで引いたのは、新たな《絶え間ない飢餓、ウラモグ》。

その間にも、松本は《導路の召使い》から《不屈の追跡者》、そして《栄光をもたらすもの》を展開している。
中道の唯一展開した《ならず者の精製屋》を《栄光をもたらすもの》の督励で撃墜し、
その直後に2体目の《栄光をもたらすもの》を登場させると、既に中道のライフは僅少だ。

中道は《逆毛ハイドラ》で盤面を固めたいが、飛行を持つドラゴンたちはその牙爪の振る舞いを止めない。
それでも―...中道の懐にエネルギーはじりじりと溜まってゆく。
劣勢を覆すためにエルドラージを呼び起こす《霊気池の驚異》を起動するための下準備は整った。

ドラゴンに攻め立てられるなか、実質のラスト・ターン。
中道、《霊気池の驚異》を願ってのドローは―...

願い、叶わず。

松本 1-1 中道



《不屈の追跡者》、そして《栄光をもたらすもの》。
今度は、松本が話していた通りの勝ち方が再現された。
"【ティムールミッドレンジ】ここにあり"を示した攻勢だ。
松本はスコアをイーブンに持ち込めたことに、ほんのひとつ、ためいきを吐いた。

中道も、ダブルマリガンの不運に引きずられずに最後まで可能性を信じていた。
焦ることなく嘆くことなく、今までと変わらないポーカーフェイスで、準備を進めてゆく。

お互いに自分のデッキの"ぶん回り"を相手と観客たちに紹介できたところで、いよいよ最終ゲームだ。





Game 3

決勝戦にて3度、土地1枚をキープする松本。
《霊気との調和》から《導路の召使い》で盤面を構築してゆく。
ハンドには《栄光をもたらすもの》も握り、順調に繋がりそうだ。



invSE3-1.jpg



中道、再びのダブル・マリガンにして、それでも土地カードが見えなかった7枚6枚に比べれば、
一番ゲームの出来そうなハンドで始めている。
順調に土地をのばし《つむじ風の巨匠》からのスタートだ。
翌ターンの《天才の片鱗》は《払拭》されるものの、手詰まりの様子はない。
松本の《栄光をもたらすもの》プレイに《霊気溶融》を貼って、凌いでゆく。

松本は《つむじ風の巨匠》を《蓄霊稲妻》したあとは、
《導路の召使い》だけでも地道に中道のライフを削ることを選んで、計3回のアタックを通してゆく。
その後は《自然に仕える者、ニッサ》をX=4でプレイして、+2能力から次なる攻め手をライブラリートップに用意する。

中道はメインの《奔流の機械巨人》から《天才の片鱗》を使いまわし、占術2で2枚を下に送っての新鮮なドローで《霊気池の驚異》を手にいれた。
次のターン、いよいよ《霊気池の驚異》起動に"挑戦"することが出来る―...

そう期待した中道の目の前で、ターンを受け取った松本が幾つかのアクションを手早くとりおこなった。

1つ目。《造反者の解放》で《奔流の機械巨人》を破壊。

2つ目。
そして《自然に仕える者、ニッサ》がおもむろに戦場から消滅する。
-6能力で土地2枚を5/5・飛行・クリーチャーにしていた。

3つ目。
攻撃宣言。《導路の召使い》と土地・クリーチャー合わせて3体アタック、2点5点5点の12点ダメージ。残り中道のライフ、2。

そして最後の4つ目。
第2メイン、松本が残る4マナからプレイしたのは―...

《反逆の先導者、チャンドラ》。



チャンドラ.jpg



プラス能力起動、めくれたカードを唱えないことを選んで、中道に2点が与えられる。

残り中道のライフ、丁度、0。

中道も、そして松本のハンドを見ていない観客たちも、
ようやく《奔流の機械巨人》が着地して"ゲームはこれからどうなるのか"という考えを馳せていたところのスピーディなアクションの連続だった。

Game 2の《栄光をもたらすもの》強し。
Game 3の《自然に仕える者、ニッサ》強し。

そして決勝戦という場で2ゲームをもぎとった【ティムールミッドレンジ】強し。

未だ生まれたての【ティムールミッドレンジ】は、きっと名前を与えられて、プレイヤーたちに愛され世界に羽ばたいていくだろう。
それを観る者全員に確信させるゲームであった。

松本 Win!



プロツアー京都出場権を獲得し、再びプロシーン最前線に躍り出ることとなったプロプレイヤー、松本。
本戦の活躍も去ることながら、こうした新環境におけるデッキビルダーとしての期待も今後ますます大きくなっていく。



invSE3-6.jpg


松本 友樹、BIG MAGIC Invitational Vol.3 優勝おめでとう!

BIG MAGIC Open Vol.9 カバレージページに戻る