まよ『マナ・バーンは、もうないんです。ルール変更の歴史と、復帰者への説明の方法。』

Text by まよ


皆さん、はじめまして!


「まよ」と言います。
お気軽に「まよちゃん(@813_my_st)」と呼んでいただければと思います。


ご覧いただいている殆どの方が「はじめまして」だと思いますので、自己紹介を簡単にさせていただきます。





1.自己紹介


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私がマジックに出会ったのは約3年前。仕事関係の知り合いから誘われ、マジックの世界へ入りました。


初めて使った相方(デッキ)は「テーロス」期のスタンダード『青単信心』です―...
ひょっとしたら「あのデッキは...」と思い出して胃が痛くなる方もいらっしゃるかもしれません。
初心者が使いやすく、そして競技レベルで通用するパワフルなデッキでした。


それ以降、スタンダードをメインに遊び続けました。


『エスパーコントロール』→『アブザンアグロ 』→『ランプ』→『バントヒューマン』→『昂揚』→そして、『霊気池』。


周囲が競技プレイヤーばかりだったため、使用していたのはメタの中心にあるデッキがほとんどでした。
練習となればプレイングやルーリングなどをたくさん叩き込まれることとなり、結果こそ残せませんでしたが競技大会の遠征も多くしていました。


さて今回、ご縁があり筆を執ったわけですが、私自身は今は競技マジックに直接参加することから離れ、『草の根大会』を主催・運営する立場にあります。
参加人数は4~5人から多くて16人程度。
『タワーマジック(※1)』や『カオスシールド(※2)』など、非常にカジュアルなフォーマットで遊んでいます。


(※1=色々なカードをもってきてタワーと呼ぶライブラリーを作り、ゲームを行う。土地や領域などにハウスルールが施されることが多い。)
(※2=適当なパックを6種1パックずつもってきてシールドを行う。思わぬカード同士のシナジー/アンチシナジーが楽しい。)




競技時代、友人たちと過ごして得た知識や経験は、今現在の運営において非常に役立っています。
それについてはとても感謝していますし、大切な思い出が活かされていることを実感する毎日です。


それでも、大会を開催するたびに課題は上がり、周りの方に助けていただいております。
ありがたいことです。


常に私自身の力不足を悔やみながら、一方で、自己流でいくつか方法を確立してきたものもあります。


その代表的なものは『復帰者の方への対応』です。
この課題自体は、プレイヤーの方であればどなたでも起こりうるものではないでしょうか。


元々マジックが好きだった方に、せっかくだから今のマジックも楽しくプレイしてほしい、という気持ちはプレイヤー共通だと思っています。
というわけで前置きが長くなりましたが、今回はこの『復帰者の方への対応』についてのお話をさせていただきたいと思います。


これがすべて、ベストだ!というわけでもありませんし、もっとスマートな対応があるかもしれません。
ですが、もし皆さんの周りに「最近、数年ぶりにマジックやろうと思ってさぁ」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ参考にしていただければと思います。





2.おかえりなさい、マジックの世界へ


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マジック:ザ・ギャザリングの間口は広く、ご存知のように会員制のゲームというわけでもありません。
"来るもの拒まず、去る者追わず"の世界です。


「マジックはやっぱり面白そうだなぁ」「マジックまたやってみようかな」と考えている方が「マジックをやってみたい!」と思えるポイントはどこでしょうか。
具体的には、「このお店に通ってマジックをやりたい!」や「このコミュニティの人達とマジックをやりたい!」と思ってもらえるような配慮の観点です。


みなさん様々なご意見があるのは承知の上で、私自身は『改訂されたルールを正しく説明すること』だと考えています。


"フェア(新規・復帰・現役を問わず公平)なゲームをしよう"という気持ちが一番伝わる方法だと思います。


復帰者にはゲームの基本などを説明しなくても良い以上、この改訂点の説明に割ける時間も多いのではと思います。


併せて言えば、現在決められているルールを遵守するかどうか、最終的にはコミュニティ次第だと思っています。




禁止カードは無視してプレイしよう!


というのも、公認大会でなくクローズドなプレイであれば咎められることではありませんし、ルールはキチンと遵守しようよというコミュニティであれば、それもまた尊重すべきです。


しかし、いかなるフォーマットにおいても、改訂されたルールの説明は絶対にして差し上げてほしいのです。
そうすることでより、健全なマジックがプレイできるのではないかと考えています。


その方が今後マジックを楽しんでいくうえで、はじめてお会いした方とプレイすることも必ずあるかと思います。
そんな時に、マジックを嫌にならないように、「現行の正しいルール」をひとまず教えて差し上げるのは何よりも大切ではないでしょうか。



また各店舗やコミュニティでのハウスルールというものもあるかと思います。
スムーズな運営やプレイヤー間の円満な関係のためにそういったものを設けることは否定しません。
ただし、あなたの大切な仲間やコミュニティを守るために、本来のルールとハウスルールとはそれぞれ別のものとして、必ず説明しましょう。


幾度となくそういった『暗黙のルール』で悩み、せっかく復帰されたのにまた引退してしまった方々を見てきました。
逆もまた然りで、自分自身をはじめ既存のプレイヤーへ必要以上の我慢や無理を強いることはしないでください。


プレイが遅い方や考えが定まっていない復帰の方がいたら、現役側がやきもきするのは仕方のないことですが、
マジックを楽しみながらコミュニティに参加するなかで自然と解消されてゆくように方向づけましょう。


ご自身にとって無理のない範囲で、先輩であり後輩になるプレイヤーの方を歓迎して差し上げて欲しいということです。



少しキツい言い方となりましたが、"ルール"というゲームの根本に対して認識の齟齬があることは、お互いがマジックを楽しむうえでもっとも阻害となる要素になると私は考えているからです。
では続いて、肝心の「改訂されたルール」の部分についてお話をしていきたいと思います。





3.ルール改訂の歴史


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暑苦しい話が続きましたが、ここからはクールでスマートな説明を目指していきます。


マジックのルールで改訂されたところ?そんなのあまりないんじゃない?


と思う方も多いかもしれません。


最近の改訂・変更といえば、私の大好きな《霊気池の驚異》がスタンダードで禁止になりました。
(禁止改定のペースが変更になった結果の1つでもあります。)


えぇ。えぇ...。
おかげさまでスタンダードで使うデッキがなくなってしまいましたが...。


それはさておき、私たちがいま当たり前に遵守しているルールは、実は昔のものとは大きく異なるところが非常に多いのです。


現在のマジックでの大きなルール変更は下記の点です。




=1997年:プロツアーパリ97にて変更=


■オール(ノー)ランド・マリガンの廃止


 


=1999年:第6版にて変更=


■インタラプト(カード・タイプ)の廃止


■リンボ・連鎖の廃止。スタックの採用。


■『マナを生み出す能力』がマナ能力となる。


■『戦闘フェイズ』の独立
■ライフが0になった時点で即座に敗北へ変更


 


=2004年:神河ブロックにて変更=


■レジェンドルールの変更


 


=2007年:ローウィンブロックにて変更=


■プレインズウォーカー(カード・タイプ)の追加


 


=2009年:基本セット2010にて変更=


■マナ・バーンの廃止
■同時マリガンの採用
■マナ・プールが空になるタイミングの変更
■戦闘ダメージのスタックを用いない処理への変更


 


=2013年:基本セット2014にて変更=


■サイドボード枚数規定の変更
■レジェンドルールの変更
■土地のプレイに関するルール変更


 


=2015年:戦乱のゼンディカーにて変更=


■バンクーバー・マリガンの採用


 


代表的なものだけでもこれだけの数があるのです。
忘れていたけれど、そういえば改訂されていたなぁ。なんてものもあるのではないでしょうか。
これに加えてカード単位・能力単位の裁定などはより細かく変更になっています。


これらに加えて影響の大きいものとしては、先ほど私の実体験を挙げさせてもらった『カードの禁止改定制度』が該当します。
さらにいえばスタンダードの場合はローテーションに関するシステムもありますね。
これら2点は必要であれば最新の情報を伝えるだけで、ひとまず問題ないかと思います。


それでは『4.各ルールについての扱い』にて、それぞれのルールをみていきましょう。






4.各ルールについての扱い


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ここでは説明の仕方のコツも含めて、解説をしていきたいと思います。
基本的に復帰者の方への説明として重要だと思われるものだけをピックアップしてあります。
もっと詳しいことを知りたい!という方はネットで検索をしたり、ジャッジ・現役の方に質問をするなどの方法があります。


そして説明に入る前に。まずは下記の2点については徹底しましょう。



◆「いつまでマジックをやっていたか」を聞く


前項で書いた通り、やっていたブロックや年によって説明する内容は大きく変わります。
「基本セット2010」の前までやっていた方に、ノーランドマリガンについて説明する必要はないですよね。



◆「過去及び現在のマジックを否定すること」を言わない


コミュニケーションの一環として、特定のカードの話も出るかと思います。
ですがネガティブな話題は、その方向性自体がモチベーションを削ぎやすいとことにも繋がるので注意しましょう。


特に禁止カードの話題の際には注意が必要です。
私も心の中ではモダンで禁止される迄は0マナ・ドローや4キル・無限コンボのことを、あんな風やこんな風に思っていましたが、そういった場では口にしないようにしています。




4-1.マリガン


■オール(ノー)ランド・マリガンの廃止
■同時マリガンの採用
■バンクーバー・マリガンの採用


まず、「マリガン」そのものについてです。
その方がプレイされていた時期を加味し、順を追って説明します。


マリガンについて持っておくべき基本的な認識は下記3点です。


◆両者が先手後手の順でマリガンを選択・宣言した場合は同時にシャッフルを行う。再度マリガンチェックを行う。
◆いかなる手札でも対戦相手への公開なしでマリガンを選択できる。
◆マリガンをしてハンドが減っているプレイヤーは『ライブラリーの1番上を覗いて、ライブラリーの上か下に戻す』を行う。


この3点です。先手後手の決め方や処理の順序、占術についてなどは適宜追加して説明してください。


4-2.フェイズ/ステップ


■『戦闘フェイズ』の独立
■マナ・バーンの廃止
■マナ・プールが空になるタイミングの変更


続いてはこちら。


まず「第6版」以前の方には現在は『戦闘フェイズ』が独立して存在していること、それにより戦闘前と戦闘後の2つのメインフェイズが存在することを伝えましょう。


マナに関しての以前のルールは下記のとおりです。


◆フェイズ終了時にマナが残っているとその点数分ライフが減る。(当時「マナ・バーン」と呼ばれていました。)
◆マナの消失はフェイズ終了時のみ。


一つ目のマナ・バーンに関しては「現在は存在しません」の一言でいいかと思います。


二つ目についてですが、現在は『ステップごと』にマナは消失します。
どのタイミングで消失してしまうのかは、ターン構成を元に教えるようにしましょう。
ターン構成などはネットでも簡単に見つけられますので、印刷などをして見せながら説明すると双方がわかりやすくておすすめです。


戦闘フェイズの構成ステップは特にややこしい部分でもあるので、説明側も気をつけましょう。
戦闘ダメージがスタックに乗らないことと合わせての説明になる場合もありますので、もっとも時間を割くパートになる可能性があります。




4-3.カードタイプの廃止・追加


(■インタラプトの廃止)
■プレインズウォーカーというカード・タイプの採用


インタラプトに関しては「インスタントに吸収された」というニュアンスで大きく問題ないでしょう。


今でこそ当たり前にあるプレインズウォーカーですが、「ローウィン」以前は存在しないカードタイプでした。
この説明も骨が折れるところかと思いますので、説明する側も気合いをいれて、非常に強く魅力的なカード/ルールであることを伝えましょう。


プレインズウォーカーのルールというのはたくさんあります。そして特に説明が必要なのは下記です。


◆プレインズウォーカーはソーサリータイミングで唱えられるパーマネント・カード。
◆プレインズウォーカーの唯一性のルールが適用される。
◆忠誠度カウンターと忠誠度能力を持つ。
◆クリーチャーではない、攻撃やブロックに参加できない。
◆攻撃側プレイヤーは、プレイヤーとプレインズウォーカーのどちらに攻撃するかを選択する。
◆対戦相手は戦闘以外でプレイヤーへダメージを与える際に、プレインズウォーカーへの置換を選ぶことができる。


さらに細かく見ていきましょう。


◆プレインズウォーカーの唯一性のルール
※『イクサラン』発売に伴いルールが変更になりました
現在はプレインズウォーカーの唯一性のルールは適用されません。


マジックでは同一の人物が多数の次元(プレイン)を渡り歩く姿が描かれています。
そのため、人物としては同じだけれど、カードとしては違うという現象が多く発生します。


それらのカードを同時に使う際には、サブタイプである『プレインズウォーカー・タイプ』を参照します。
このタイプが同じであった場合は同時に戦場に出しつづけておくことができません。同一人物ですので。
(どこぞのリゾートで同じキャラクターが同じ時間にそれぞれのパークにいないのと同じですね。ハハッ!)


例えば《精神を刻む者、ジェイス》と《秘密の解明者、ジェイス》は収録されているブロックすら全く異なるカードです。
カードタイプ項目に『プレインズウォーカー -ジェイス』という表記があります。
この"ジェイス"という項目が『プレインズウォーカー・タイプ』となり、ここが同じであった場合には同時に戦場に出しておけません。
といった具合に説明をしてください。


その後の処理は『レジェンド・ルール』と同様です。「戦場に出たあと、状況起因処理でどちらか選んで墓地へ送る」ことをかみ砕いて説明してください。


◆攻撃側プレイヤーは、プレイヤーとプレインズウォーカーのどちらに攻撃するかを選択する


攻撃側プレイヤーは『相手プレイヤー』か『相手がコントロールするプレインズウォーカー』のどちらに攻撃するのかを『攻撃クリーチャー1体ごと』に指定できます。
通常のプレイヤーへのダメージ処理と同様・同時に行われ、プレインズウォーカーにダメージが入れば『忠誠カウンター』をその値分だけ取り除きます。
攻撃の結果、値が0になれば、これは墓地へ送られます。



◆「戦闘以外で対戦相手へダメージを与える際、そのプレイヤーがコントロールするプレインズウォーカーへ置換する」ことを選べる



戦闘でないダメージを与える側が置換するかどうかを選ぶ、ということが直感的に分かりにくい場合もあります。


もう1つ大事なのは、『対戦相手』です。双頭巨人戦など2対2で対戦するルールのフォーマットもあります。
他のプレイヤーと対戦相手が異なる場合があるので、注意して説明しましょう。


■レジェンドルール及びプレインズウォーカーの唯一性の変更


プレインズウォーカーの唯一性のルールは先述のとおりです。
レジェンド・ルールは2度の改訂を経ているため、説明が長くなりがちですが、ひとまず現在のルールをスパッと伝えましょう。


『同じ名前の伝説のパーマネントを2つ以上コントロールしている場合、その中から1つを選び、残りはそのオーナーの墓地に置かれる。』


以上です。


『コントローラー(コントロールしている)』と『オーナー』の違いについても若干ややこしいですが、説明をした方がトラブルになりにくいところでしょう。
(《反逆の行動》と死亡時誘発型能力を持つクリーチャーの組み合わせ等でも必要になりやすい情報です。)


併せて、この『墓地に置かれる』は『破壊』、『生贄に捧げる』ではないこと。『再生』、『破壊不能』では防げないこと。という説明も忘れずに。
状況起因処理のため、2体が同時に戦場に出たあとにはスタックを挟むことができないことも忘れないようにしましょう。


また伝説のクリーチャーはプレインズウォーカーと異なり、『カード名が異なれば物語上の同一人物でも同時に存在できる』という説明も必要です。


《大天使アヴァシン》と《希望の天使アヴァシン》と《守護天使アヴァシン》は戦場に同時に存在できるということですね。
レジェンドルールでは常に単純にカード名だけを参照します。


以上が、その期間プレイしていなかった復帰者の方へ『絶対に』説明をしてほしい部分となります。
これ以外にも先にあげたルールの変更点や各ブロックで登場しているキーワード能力などは都度説明をしましょう。


ただし、説明される側も当然のことですが『してもらって当たり前』という態度ではなく、自分で調べたりしてから質問をするようにしましょう。
友人はあなたのママでも先生でもありせんから、そこをはき違えないように!



5.まとめ


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ルールの改定点について、長々とお付き合いいただきありがとうございました。
復帰者にマジックを楽しんでもらいたいという熱意だけでも伝わっていればなぁ、と思っております。


少し運営的なお話になりますが、店舗の人間として復帰される方が増えると嬉しい理由があります。


マジックを取り扱い、各種イベントを行っているお店はWPNという制度に属しています。


説明すると長くなるのですが、これはそのお店で遊ぶ方が多ければ多いほど、ゲームデーなどのイベントの開催可能な回数が増え、イベント参加者に配布するプロモーションカードが多く貰えたりするなどの恩恵を得られるのです。


ですから、お店の方が復帰される方を嫌がる理由なんてありません。久しぶりにマジックがしたい、となったらお近くのお店に足を運んでみて、店員さんに色々聞いてみましょう。優しく対応してくれると思いますよ!


これを読んで1人でも新しくこの世界に飛び込んでくださる方が増えますよう、草の根の陰から願っております。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
まよでした。




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