【GP名古屋2018】プロツアー『ラヴニカの献身』予選 決勝戦:平山 怜(東京) vs. Qi Wentao(中国)

By Yohei Tomizawa



 「プロツアーラヴニカの献身予選」の主役は一人のアメリカ人プレイヤーだった。


de rosa.jpg(アメリカ選手権07より)
 Anronino De Rosa/アントニーノ・デ・ロサ


 海外では「Big Man」、日本では「おにぎり」との愛称で親しまれた巨漢のイタリア系アメリカ人プレイヤーはこっそりと(その体格から非常に目立ってはいたが)『グランプリ・名古屋2018』のために来日していたのだ。


 かつてはリミテッドの名手としてプロツアートップ8も経験し、数々のグランプリや選手権で入賞を果たしている。2003~2008年を中心に活躍した選手だ。最近ではメディアで見る機会を失っていたが、その彼を日本のプロツアー予選で見かける日が来るとは。いやはや、感慨深いものである。


 彼が目立っていたのは体格でも、過去の実力による威光でもない。実力も健在で予選ラウンドではBIGs所属の川崎 慧太を破り、全勝からのIDでトップ8へと駒を進めていたのだ。


 しかし、だが、しかし。決勝ドラフトの舞台にアントニーノは現れなかったのである。見失うはずもないあの巨漢は何処へ消えてしまったのか。ヘッドジャッジである伊藤へ確認すると、


「飛行機の時間があるからって、3位のプレイヤーはドロップしたよ。」


 おお、アントニーノ。君のマジック愛はその程度だったのか。飛行機チケットかプロツアーの権利か。どちらかしか選択できないのなら、最高の舞台で君の姿を観たかったのに。


 勝手に悲しみにくれる筆者を救ってくれたのが、誰であろう平山 怜に他ならない。


 アントニーノがドロップしたことで空いた8人目の枠に滑り込んだのが、9位の平山なのだ。トップ8の座席をツモってみせるとそこから2連勝で決勝戦の舞台まで勝ち進み、ラッキーだけではなく実力も確かなものと証明してくれている。


 晴れる屋トーナメントセンターにてHreruya Hopesの宇都宮らと修練に励む平山はプロツアー『ドミナリア』に続く、2度目のプロツアーの権利を欲している。デッキについて聞くと「ディミーアが好きで2つのギルドで揺れてしまった」と謙虚に答えてくれるが、ここまできたら関係ない。狡猾さにスパイスを加えた「ディミーアタッチ赤」のドラフトデッキで、決勝戦へ挑む。



 今日一番ノッっているであろう平山を迎え撃つのは、強力なプレイヤーだ。Qi Wentao/チー ウェンタオはこれまでプロツアーに6回も出場しており、グランプリでも3度のトップ8経験をもっているのだ。プロツアーでこそ結果はでていないものの、グランプリ3度のトップ8は伊達ではない。


 今季は精力的にグランプリを回っており、レベルプロも視野に入れているとか。ドラフティングされた「イゼット」は前のめりに20点を削りきる意志が全面に押し出されており、レアリティの高さも相まって強力なものとなっている。


 狡猾さと狂気。相反する青きギルドに所属するプレインズウォーカーたちの決勝戦が、始まる。


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ゲーム1



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Qi Wentao


 


 《蒸気孔》、《ディミーアのギルド門》と互いにタップインで入ると、続くターンには《気難しいゴブリン》、《ディミーアの偵察虫》とクリーチャーを展開。地対空のダメージレースがスタートする。


 チーはゴブリンで2点のダメージを与え《ゴブリンのクレーター掘り》を召喚し、クロックサイズを倍化させる。


 平山のポイントは諜報を持つカードをプレイできるかどうかだ。例えば《囁く工作員》のようなカードがあれば《ディミーアの偵察虫》のパワーを2に引き上げ、チーのクロックを上回ることになる。


 だが平山はここで諜報をプレイできず、更に悪いことにクリーチャーを追加することもできない。


 4点対1点のダメージレースはチーの場に《ゴブリンの電術師》が追加されたことで、増々不利に。平山はアタックを止め、4枚の土地をフルオープンでターンを返す。


 《捕獲球》、《囁く工作員》、《眩惑の光》といくつかの選択肢が浮かぶがチーは構わず3体をレッドゾーンに送り、平山はブロックすることなく本体で受けライフは8へと落ち込む。


 第2メインに入ると《蒸気孔》を残しながら《つぶやく神秘家》を召喚する。《ゴブリンの電術師》のお陰で、傍目には《軽蔑的な一撃》を構えているようにも見える。


 平山の手には《霧から見張るもの》と《致命的な訪問》。しかし万が一《軽蔑的な一撃》があった場合致命傷となりかねないため、《切断された糸》と《冷酷なゴルゴン》をプレイし戦線を支える。ライフが9に増えたことで、盤面だけで見ればチーのクリーチャー1体を道連れに5点は残るはず...だった。


 アンタップしたマナを寝かせ、チーがキャストしたのは《宇宙粒子波》!


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 ダイレクトに6点のダメージを与え、平山のライフは3まで落ち込んでしまう。


 《霧から見張るもの》を召喚しギリギリ踏みとどまろうと画策するが、チーの手から《最大高度》が表裏でプレイされるとこれ以上耐えることはできなかった。


平山 0-1 チー





ゲーム2
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平山 怜


 


 平山は《家門のギルド魔道士》でクロックと同時に、マナフラッド(土地過多)とマナスクリュー(土地事故)の両面への解答を用意する。


 チーは《ピストン拳のサイクロプス》、平山は《猛り狂う聖像》とクリーチャーを召喚し合うが、このアーティファクトクリーチャーに対し《原因不明の消失》がプレイされたことでダメージレースはイーブンとなる。


 平山の手には《猛り狂う聖像》と《捕獲球》の二択。クロックの拡張よりも相手のクリーチャーの除去を優先すると、それは吉と出る。チーは追加のクリーチャーを召喚できないのだ。


 軽いクロックとクリーチャーダメージを通す手段の組み合わせからなるイゼットカラーはドローが偏ると、途端に機能不全を起こしてしまう。チーの手札には《最大高度》や《宇宙粒子波》のようなカードばかりが集まっているのだ。


 逆転をかけ召喚した《パルン、ニヴ=ミゼット》も《致命的な訪問》で対処されてしまうと、チーに逆転する手段は残されていない。2ターン目に召喚された《家門のギルド魔道士》が見事にチーのライフを削りきった。


平山 1-1 チー




ゲーム3


 プロツアーへの切符をかけた大取のゲームは平山のマリガンで始まった。


 《急進思想》をプレイしたにも関わらずイゼットのチーにしては珍しく、3ターン目にクリーチャーが召喚されない。逆に平山が《背骨ムカデ》と攻撃に優れたクリーチャーを召喚し、優位に立つ。


 《奇矯なサイクロプス》は《捕獲球》で無力化し、先ずは3点。続く《ピストン拳のサイクロプス》に対しても《猛り狂う聖像》を召喚し+1カウンターの行き場を確保した上で、《背骨ムカデ》で再度3点を刻む。


 一方的なダメージレースに対し、チーは守るのではなく攻めることで活路を見出す。すなわち《つぶやく神秘家》を召喚してから《最大高度》をキャストし、《ピストン拳のサイクロプス》で5点のダメージを与えたのだ。


 5枚目の土地として《山》を置くと平山は迷わず2体のクリーチャーをレッドゾーンへ送り、チーはブロックせずにライフで受ける。《つぶやく神秘家》はもちろん、生成された鳥・イリュージョン・トークンですらチャンプブロックせず、真っ向からダメージレースを挑む姿勢が見て取れる。平山は第2メインで《光を遮るもの》を追加する。


 チーは6枚目の土地を置くと《パルン、ニヴ=ミゼット》ではなく、土地を捨て《最大高度》を再活することを選択する。先ほどのトークンと合わせ6点のダメージを刻み、ライフレースは平山9-8チーと拮抗している。だが、この均衡は平山のアタックフェイズに打ち破られる。


 3体のクリーチャーへ手をかけると、チーは《猛り狂う聖像》へ《音波攻撃》をキャストする。プレイヤーへ2点入れつつアタックを一度休ませるとこれでトークンは3体に増え、この内1体と《つぶやく神秘家》が平山のクリーチャーを止める。


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 ここまでゲームをリードしてきた平山には、唯一弱点があった。クリーチャーを引き続けダメージレースは優位にたっていたものの、除去呪文が一切引けないためチーの盤面へと干渉することができないのだ。


 チーは自身のターンへ入ると慎重に計算し、ブロッカーへ向け手札から更なる《音波攻撃》をプレイする。


 墓地に置かれた2枚の再活呪文とレッドゾーンへ送られたクリーチャーを眺め、平山は勝者を称えるべく、右手を差し出した。


平山 1-2 チー





「プロツアーラヴニカの献身予選」、優勝はQi Wentao!おめでとう!



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