【マジックフェスト・京都2019】ミシックチャンピオンシップ『バルセロナ』予選 決勝戦:Ma Noah(韓国) vs. Huang Yung-Ming(台湾)

By Yohei Tomizawa


 準決勝、『グランプリ静岡14』のチャンピオンである仲田 涼は対戦相手であるホワン ユン ミン/Huang Yung-Mingに対し《強迫》をキャストし、対応を迫る。


 ホワン「Thinking...」


 間もなくタップアウトで《弾けるドレイク》へと《潜水》がキャストされ、周囲で観戦していたプレイヤーの多くは仲田の勝利を確信する。仲田がスタックして《喪心》を唱えたことで2対1交換が実現し、更に解決された《強迫》により手札から《軽蔑的な一撃》を捨てさせたのだ。盤面と手札を掌握したことで、後は仲田がクリーチャーによるビートダウンを続けるのみとなった。

 そして数ターン後、仲田はゲームに敗北していた。何を言っているのかわからねーと思うが、見ていたもの全員が何が起きたのかわからなかった。

 ホワンは《弾けるドレイク》でのビートダウンを《潜水》と《軽蔑的な一撃》な一撃でサポートし、勝利したのだ。対処したはずのカードを全て引き直して。


 グランプリチャンプの緻密なプレイすら凌駕する剛腕、これこそがホワンの強さであり決勝戦まで勝ち進んできた要因であることは疑いようもない。彼の強さを最大限引き出すのは一瞬の隙を突き、相手を強襲する「イゼットドレイク」だ。準決勝からもわかるようにこのデッキは彼のプレイと合致する。


 対するマ ノア/Ma Noahは初出場した『ミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019』にてスタンダードラウンドを9-1の好成績で終えた構築のスペシャリストだ。ドラフトラウンドでの失速もあり栄光の日曜日へ進出することこそ叶わなかったが、5敗以内でまとめたことで次の『ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019』の権利を手にした。

 「今年はできる限り多くのミシックチャンピオンシップへ参加し腕を磨きたい」

 謙虚に語るマだが、その鋭い視線はロンドンに続くバルセロナすらも見据えている。クリーブランドでの戦友「スゥルタイミッドレンジ」のアップデートバージョンを持ち込み、ここまで上り詰めた。


 決勝戦は海外プレイヤー同士の対戦となったが、マジックに年齢も人種も、経験すらも関係ない。必要なのは強さ。

 それは、これより始まる決勝戦で証明される。


決勝りゅうじ入り.jpg


ゲーム1

 先手はマは6枚を手に取ると《ラノワールのエルフ》で最高のスタートを切り、対するホワンは《プテラマンダー》で応える。

 マリガンしてまで得た《ラノワールのエルフ》はすぐに真価を発揮し2ターン目に《打ち壊すブロントドン》を着地させる。続くターンには《翡翠光のレインジャー》が足りなかった青黒の2色を届け、2枚目の《翡翠光のレインジャー》がデッキトップへと固定される。

 「スゥルタイミッドレンジ」がデッキパワーそのままに躍動するに対し、ホワンは《航路の作成》で手札を増やすとタップアウトでこちらも《奇怪なドレイク》をプレイグラウンドへ。

 マは流れるように《翡翠光のレインジャー》でライブラリートップを公開するとそこには《人質取り》の姿が!残すことを選択しサイズアップを果たすと、残ったマナを使い《喪心》をキャストし、厄介なブロッカーを排除する。これによりマ16-11ホワンとライフも盤面もマが大きくリードする形となった。


マ.jpg


 ホワンはここでかなりの時間を使いプランを練る。このターンも《島》をセットしたことで使える赤マナは1枚のみと、マのクリーチャーを除去しようにも1体が精いっぱい。フルタップでクリーチャーを召喚しようにも、先ほどの探検により見えている《人質取り》が頭から離れない。

 悩んだ末、ホワンは《島》1枚をアンタップした状態で《奇怪なドレイク》を召喚し、ターンを返す。

 マの手札には先ほど探検により公開されている《人質取り》と《喪心》。後者を《奇怪なドレイク》へと見舞うと、ホワンは堪らず息を漏らす。

 そして《奇怪なドレイク》が墓地に置かれたのを確認するが早いかマのクリーチャーは我先にとレッドゾーンへと向かい、ここでホワンは残していた《島》を使い《選択》をキャストする。

 しかし墓地も肥えておらず《最大速度》も採用されていないホワンの「イゼットドレイク」には、選択肢など残されてはいなかった。

マ 1-0 ホワン




ゲーム2

 マの《強迫》がホワンの手から《軽蔑的な一撃》を落とす。2種類の軽量ドローと《ショック》を確認し、自身の手札が《クロールの銛撃ち》と《人質取り》とリアクションカードのみのため、ロングゲームが予想される立ち上がりとなった。

 ホワンは《選択》からスタートし、続く《発見+発散》は墓地と手札へと振り分ける。互いにドローゴーに1ターン費やすと、遂にホワンがゲームの主導権を握るべく動き出す。

 力強く《蒸気孔》をショックイン、プレイ《弾けるドレイク》!既に墓地には4枚のインスタント・ソーサリーが落ちており、マへ5ターンのクロックを突きつける。



ホワン.jpg


 ここまでリアクションカードばかりだったマも、ここで遂にトップデッキしてみせる。デッキのダイナモ《ハイドロイド混成体》を引き込むと、X=2でキャストしライフと手札の両方を手に入れる。

 だが、このタップアウトの代償はあまりにも大きかった。ホワンは《軍勢の戦親分》を加えると《ショック》をハイドラへと打ち込み、一気に6点のダメージを与え、《潜水》を匂わすように《蒸気孔》へ2点のライフを支払うと、ターンを返す。

 その手札に《潜水》はあるのか、それともないのか。それを確認すべくマは《強迫》をプレイし、《稲妻の一撃》を落とすと安心して《人質取り》を。《軍勢の戦親分》を奪い、ゲームのスローダウンを目論む。

 それも束の間、ホワンの剛腕が発揮されトップデッキしたばかりの《溶岩コイル》がキャストされると、勝負の行方は最終ゲームへと持ち越しとなった。

マ 1-1 ホワン



ゲーム3

 《野茂み歩き》と《溶岩コイル》の交換で始まったオオトリゲームは、《翡翠光のレインジャー》の探検で《ヴラスカの侮辱》を引き込んだマが有利に進む。《ショック》を耐える4/3のサイズにタップアウトでのクリーチャー召喚を咎める《ヴラスカの侮辱》が用意されているのだから。

 しかし《稲妻の一撃》がキャストされると、追加戦力を引き込まていなかったマはドローゴーを繰り返すようになり、ドロースペルに溢れたホワンがゲームのイニシアチブを握ることになる。盤面こそ平穏だが、有効牌を確実に集めているためだ。なんせ《航路の作成》で《溶岩コイル》を捨てるほどなのだ。

 再び盤面が動いたのは6ターン目、マがトップデッキした《ハイドロイド混成体》をX=4で召喚する。2枚のカードを引くと、ここまでリアクションスペルに溢れていたマの手札は6枚とだいぶ多い。ただ、《ヴラスカの侮辱》が2枚とマナコストが高いため、《潜水》を絡めてのクロックをホワンが用意できるかが焦点となりそうだ。

 ホワンはクリーチャーを召喚する代わりに、《幻惑の旋律》という最高の解答をキャストする。当然カウンターを構えるように2枚の土地をアンタップ状態で、だ。

 マの《人質取り》キャストには予定調和で《軽蔑的な一撃》が撃ち込まれる。これによりホワンはタップアウトとなるが、《最大速度》と《弾けるドレイク》への注意を怠らず、《野茂み歩き》を召喚せずに《喪心》を抱えたままターンを返すとホワンが《軍勢の戦親分》を召喚したため、《弾けるドレイク》の強襲はないと判明し、第1メインフェイズ中にマは《喪心》ですぐさま対処する。


 手札が4枚であることを確認すると、5マナ残してマは《野茂み歩き》を召喚。返すターンに召喚された《弾けるドレイク》を《ヴラスカの侮辱》し後続こそ断つものの、その間も《ハイドロイド混成体》が上空からクロックを刻み続けている。

 目には目を《ハイドロイド混成体》には《ハイドロイド混成体》を。マはX=6で2枚目の《ハイドロイド混成体》をキャストし、ライフを17としと3枚のカードを新たに加える。

 その返し、ホワンはマの墓地に置かれた除去と手札の枚数を考え、そして決断を下す。




mcq0101.jpg


 2枚目の《幻惑の旋律》!制空権を得た《ハイドロイド混成体》が再び4点のダメージを与え、《奇怪なドレイク》までも追加する。残った2枚の手札に《潜水/》かカウンターがあるりいずれかのクリーチャーを守れたならば、このままビートダウンを完遂しそうな雰囲気ではある。

 マは《潜水》とカウンターの可能性を考え、慎重に使用するカードを選択する。先ずは《クロールの銛撃ち》をプレイし、解決されると《奇怪なドレイク》と相打つ。これで残るは6マナ。

 次は《人質取り》でサイズの大きい《ハイドロイド混成体》を対象にとると、これも解決される。《潜水》も《軽蔑的な一撃》もなく、可能性としては《否認》か、一つのカードへガードを上げながら、マはプレイを心掛ける。

 急に寂しくなった盤面だがホワンは残った4点のハイドラで攻撃すると、《溶岩コイル》を《人質取り》へと見舞いリキャストを防ぐ。対照的に勢いを増すマは《翡翠光のレインジャー》を召喚し《野茂み歩き》をサイズアップさせつつ貴重な6点のライフを得て15とする。

 既に《溶岩コイル》の射程圏外となった《野茂み歩き》の対処手段を思案していると、ホワンはドロー後に手を止め、1枚のカードをプレイする。



イゼット副長、ラル.jpg


 《標の稲妻》よろしく大量ダメージで厄介なシステムクリーチャーを除去すると、《イゼット副長、ラル》を守るため《ハイドロイド混成体》をアタックせずに終える。

 リソースの奪い合いであるこのゲームでプレインズウォーカーは残せるはずもなく、マはそのエンドに《ヴラスカの侮辱》で対処すると、《翡翠光のレインジャー》をレッドゾーンへ。度重なるショックインとダメージの蓄積によりホワンのライフは13。最後のクリーチャーである4/4の《ハイドロイド混成体》を差し出し、盤面は完全に平穏となった。

 減っては増え、増えては減る盤面の脅威とライフ。このシーソーゲームを強引に引き寄せたのは、マだった。《ハイドロイド混成体》と除去の交換を経て、引いた分だけ有利となると、《ビビアン・リード》が《人質取り》を引き寄せると彼女を《軍勢の戦親分》から守るため《クロールの銛撃ち》2体を護衛として立てる。


 ホワン「That's very hard」

 お互いに吹き出すと和やかな空気が漂うが、それも一瞬。すぐに張り詰める。ここはミシックチャンピオンシップへの権利をかけた最後の一戦なのだ。

 再び、厳しい顔に戻ると、ホワンは、《軍勢の戦親分》と3体のゴブリン・トークンを《ビビアン・リード》目掛けて攻撃へと送りだし、忠誠値を4減らす代わりに親分本体とトークン1体を失った。

 身を挺して守った彼女は、そのお礼にマへ決定打を届けてくれる。



ハイドロイド混成体.jpg


 そう、4枚目の《ハイドロイド混成体》。マが10マナをタップするのを確認するとホワンは今までで一番深く溜息を吐き、カラカラと笑う。そして、現実が訪れる。

 ミッドレンジ界の王者はライフと新たな除去を届け、圧倒的な盤面を作り上げる。1度、2度とホワンは手札を抱えたまま、静かに今までよりも素早くターンを返す。

 マは万が一すらもケアし《愚蒙の記念像》をセットし、アタックへと送り出す。これでホワンのライフは5だ。

 ドローすると、ホワンは土地にまみれた手札を公開し、右手を差し出した。

 2枚の《幻惑の旋律》を乗り越え、適切に相手の手札を読み切ったマが勝利したのだ。


マ 2-1 ホワン



 勝利が決まった瞬間、マは喜びを爆発させ、仲間たちと分かち合う。目標としていたものの、一方を手に入れたためだ。


勝った後.jpg


 マはこの週末に2つのものを手に入れるために来日している。一つはたった今手にした『ミシックチャンピオンシップ・バルセロナ2019の権利』、もう一つは明日の本戦でのポロポイントだ。

 マが所持するプロポイントは現在14点。ロンドンまでに1点でも多くのポイントを稼ぎシルバーレベルへと到達できれば、ミシックチャンピオンシップ1回分の権利を獲得することができる。プロツアーを経験し自分自身を高め、その上でプロポイントを確保できればと語るマの横顔は喜びに満ち溢れていた。

 本戦の目標を聞くと控えめに、それでいて力強く「まずは明日全力を尽くすこと...全勝するよ」と語ってくれたマ。彼ならば、どんな苦しい状況でも僅かな活路を見出し、目的を遂げるだろう。

 私たちの目の前で魅せてくれた、《幻惑の旋律》2枚を覆したこの決勝戦のように。


勝者.jpg


ミシックチャンピオンシップ『バルセロナ』予選、優勝はマ ノア/Ma Noah!おめでとう!


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