By Riku Imaizumi
こんにちは。「オリジナルデッキを見つけて紹介する」デッキリスト探検隊、第40回です。
面白いデッキリストを見る機会が減ってきた昨今、
「目が覚めるようなデッキリストを見たい、というかあわよくば自分のデッキをみんなに知らしめたい」
と思っているデッキビルダーのみなさまの要望にお応えし、今日もデッキリストを紹介していきます。
オリジナリティがあるだけのデッキリストは誰にでも作れます。しかしながらそれで勝つのは至難の業。
だからこそ、オリジナリティを持ち、ある程度の成績を残したデッキリストには大きな価値があるのです。
デッキリストにはビルダーの個性が光ります。
唯一無二、この世に一つしかないオリジナルデッキたち。
そんな「デッキビルダーの作品」を今日も紹介していきます!
上陸ナヤ
むかしむかし、初代『ゼンディカー』がスタンダード現役だったころ、上陸ボロスというデッキがあったそうな。
1ターン目に《ステップのオオヤマネコ》、2ターン目に 《板金鎧の土百足》、3ターン目に《乾燥台地》設置+起動と動くだけで合計10点ものダメージをたたき出す恐ろしいアグロでした。
当時のプレイヤーは《ぐらつく峰》とか《狡猾な火花魔道士》とかの名前を聞くと懐かしさに震えるんじゃないでしょうか。私の体感では1年前のデッキなんですが、実際は10年前のデッキらしいです。そうか、これが相対性理論か......。
そんな上陸ボロスが三代目となる『ゼンディカーの夜明け』を経てモダンに復活しました。
Designed by HotBread in Magic Online
カラーリングに緑を加え、ナヤになっています。
『ゼンディカーの夜明け』から得たカードは主にこの二枚。
2種類目の《ステップのオオヤマネコ》となる《アクームのヘルハウンド》と、強力な能力がふたつも追加された《板金鎧の土百足》、《山火事の精霊》。
上陸クロックが8枚も追加された結果、さすがにもう《板金鎧の土百足》に出番はありません。
《アクームのヘルハウンド》と《山火事の精霊》は見た通りに強いカードですので、他のカードを見て行きましょう。スタンダード時代にはなかったカードが目白押しです。
上陸デッキにとってなによりも重要な土地の安定供給。スタンダード時代には難しかったそれが、モダンのカードプールなら簡単です。
《レンと六番》はどう使っても強いですが、このデッキでは特に《エルフの開墾者》が光ります。
まずは《聖遺の騎士》よろしく土地サーチで上陸を達成。《セジーリのステップ》は昔からこの手のサーチの相方ですが、このデッキでは《飛翔する海崖》で飛行を持たせられますし、《灼陽大峡谷》でドローもできますね。《トロウケアの敷石》をコストに使えばマナ加速まで。
墓地に土地が溜まれば3/4のクロックに変身しますから、八面六臂の大活躍をしてくれるでしょう。
また、一度場に出した《セジーリのステップ》や《飛翔する海崖》を生け贄にすれば、あとで《レンと六番》で再利用もできますね。
屋台骨となる土地メカニズムのほか、脇を固めるカードは以下のような感じです。
グリクシスシャドウにも入っている《ミシュラのガラクタ》。《エルフの開墾者》やフェッチランドといったシャッフルするカードを多用するのでドロー操作は容易です。もちろんサイドボードには《夢の巣のルールス》の姿がありますね。
《アタルカの命令》は基本的に火力として使用すると思われますが、「あなたは、あなたの手札にある土地カードを1枚戦場に出してもよい」の能力がうまく嵌れば《鼓舞する突撃》みたいなカードになってくれるでしょう。フェッチランド以外でインスタントタイミングの上陸達成はなかなか読みづらいので、限定的なところはありつつも非常に強力な運用ができるはずです。
最後に、異彩を放つこのカードにも触れないわけにはいけません。
土地を生贄に捧げ、その分だけ土地を場に出す。つまり場にある土地の分だけ上陸できる。
このカードを使う場合、《ステップのオオヤマネコ》たちのことを《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》みたいなもんだと考えたほうが良いかもしれません。単純に4枚生け贄にするだけでも+8/+8ダメージ。上陸クリーチャーが2体ならんでいるだけで16点ダメージ。ほとんどコンボデッキみたいな火力です。もちろんブロックはされてしまいますけどね。
それにしても、《風景の変容》のすごいところはサイドチェンジした後に《死者の原野》を持ってこれることなんですよね。
上陸ボロス、体感1年(実際10年)の時を経て多芸になりました。これが相対性理論。かがくの ちからって すげー!
《不朽の理想》
Designed by Rinko in Magic Online
マジックにはマイナーながらも根強い人気を誇るカードが多くありますが、《不朽の理想》もそのひとつ。
デッキからエンチャントを直接戦場へ。しかも歴伝という特殊な能力により、毎ターンのアップキープに《不朽の理想》がオートでコピーされます。
よく知られているのは、まず《ドラゴン変化》を戦場に出し、その後に戦闘に制限をかけるようなカードで負けなくするというパターンです。
このデッキでも《ドラゴン変化》は入っているものの、「負けなくする」という意味ではいまはもっと直接的なカードがありますね。
9回まではすべてのダメージを軽減。しかも並べれば並べるほど軽減できる回数が増える(どの《九つの命》にカウンターを置くかは自分で選べる)ため、序盤から終盤まで積極的にプレイできます。
そして、組み合わせるとダメージでは絶対に負けなくなるような相棒も......。
どちらも3マナで綺麗なマナカーブとは言えませんが、それに目をつむる価値のある2枚コンボでしょう。
また、もともと《不朽の理想》を唱えるために採用された《睡蓮の花》があるので、マナカーブが多少いびつでもカバーできる場面はあるはずです。
デッキ全体が面白いくらいエンチャントで埋められており、除去呪文すら《薄氷の上》のみ。
《抑制の場》《神聖の力線》で抑えつけたり、《九つの命》や《ファイレクシアの非生》で無理矢理負けないようにするみたいなので、《偉大なるオーラ術》が活躍しそうです。
《引き裂く突風》を採用しているデッキは......まあ、そんなにいないでしょう。
ユニークな《軍団のまとめ役、ウィノータ》
Designed by Takagi Hideto
いまではすっかり競技レベルのカードとして認識されている《軍団のまとめ役、ウィノータ》ですが、その能力はけっこう広い範囲に及びますので、実はかなり好きにデッキを組めるカードです。
このデッキではユニークな人間がたくさん採用されています。
まずは青いこれらの人間から。《クローン》系統のカードはできることが多いので、《軍団のまとめ役、ウィノータ》でめくった選択肢のうちのひとつにある分には少なからず活躍できるでしょう。
《第10管区のラヴィニア》はプロテクション(赤)に加えて4マナ以下の土地でないパーマネントを留置するという、対戦相手がほとんど予想もしないような能力を持ちます。オンリーワンな性能なので、一見無理な盤面からでも勝ちにいける可能性がありますね。
ちなみに青い土地は《繁殖池》1枚しか入っていないので、《東屋のエルフ》で起こすなり《楽園の拡散》から青マナを出すなりしないと《騙り者、逆嶋》のキャストはできません。
そして他にも見慣れないカードたちが。
この2枚をしっかり覚えている人は少ないのではないでしょうか?
《アラシンの先頭に立つ者》は戦士クリーチャーに二段攻撃を与えます。まず《軍団のまとめ役、ウィノータ》が戦士。次に《ゴブリンの熟練扇動者》も戦士。なんと《野生のナカティル》も戦士。あと《騙り者、逆嶋》も場合によって戦士。
そして《冷眼のロヴィサ》もまた戦士に恩恵を与えます。+2/+2修正に加えてなんと速攻まで。《アラシンの先頭に立つ者》と組み合わせるととんでもない火力が出そうですね。
「人間」と「人間以外」。要求する条件が非常に緩いので、《軍団のまとめ役、ウィノータ》の可能性はまだまだ残されています。
自分の好きなクリーチャーを活躍させてみてください。
以上、デッキリスト探検隊でした。
昨今、自分のデッキを記事にする人も増えてきました。そういった発信も良い流れだと思いますが、デッキビルダーたるもの、自分のデッキが他人の記事に掲載されることこそ本懐。
あなたの作ったデッキを紹介できる日を楽しみにしています。