【BMO Vol.8】BMO Standard Vol.8 渡辺雄也杯 準決勝A 斉田 逸寛 vs 岡井 俊紀

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BIG MAGIC Open Vol.8 渡辺雄也杯 準決勝A 斉田 逸寛 vs 岡井 俊紀

Text by 森安 元希

BIG MAGIC Open Vol.8 渡辺雄也杯。

斉田 逸寛、中道 大輔、岡井 俊紀、奥村 祐司。

遂に出揃ったTOP4による準決勝は、準々決勝から1日置いて日曜午後より開催された。
生放送の都合上、準決勝は順番に行う流れとなっている。

午後2時に4人が中嶋HJのもとに集合し、先の試合は斉田 逸寛vs岡井 俊紀が行われることに決まった。
一先ずは改めてのデッキチェックがはいる。


この間、しばらく時間の猶予があり、顔を合わせた4人は話が弾んでいるようであった。

岡井は奥村と直前まで共に練習を積んできた仲間だと言う。
西葛西の"ピットイン"といえばGPTなど競技大会を積極的に行っている江戸川の店舗だ。
中道は西葛西の近くに住んでいると話し、今後の交流の話題に華を咲かせていた。

また、斉田を知る関東のプレイヤーは決して少なくないだろう。
先日500回開催を数えた草の根トーナメント"Planes Walker's Cup"通称PWCを代表する強豪の1人だ。

PWCの1年間の総合王者を決める大会でもあるPWCC2011では当時のミスターPWC和田 寛也との熱戦を制している。
このことから"ミスターPWCキラー"の異名もあるようだ。


また中道も、斉田と同様に、或いはそれ以上にPWCを代表するプレイヤーだ。
斉田と同じくPWCC2015を優勝。
PWCが年間を通して開催しているポイントレース戦覇者の称号"ミスターPWC"を2013年度に獲得している。

元々、ミスターPWCは渡辺雄也その人を指す言葉でもあり、年々受け継ぐ形となっているそうだ。
岡井、奥村も斉田を「二人のことは一方的に良く知っている」と笑いながら話す。

岡井は最近MTGに転向した別のゲーム出身のプレイヤーだと話す。
弱冠20歳の若き新鋭が、伝統に立ち向かう。


やがてデッキチェックも問題なく終わり、斉田と岡井は席に着く。

とても友好的な談笑を続けていたが、二人の表情はゆっくり、ゆっくりと真剣味を帯びていった。

―...BIG MAGIC Openの決勝トーナメントはデッキ公開式だ。

岡井は斉田の『青白フラッシュ』のリストを一瞥する。

斉田は岡井の『青白フラッシュ』をリストを一瞥する。



顕著な差はやはり岡井が採用する《ウェストヴェイルの修道院》の有無だろうか。
しかし、サイドに《折れた刃、ギセラ》を置く斉田も同型戦をしっかり見据えている。

互いに口数少なく、リストを入念にチェックする。

大きな差がないからこそ、メインサイド合わせて75枚の内の数枚の差がゲームに大きく響く。
その事実をありありと感じさせるマッチアップとなった。

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Game 1

スイスラウンドを1位で抜けている斉田が先手を宣言する。1マリガン。
後手の岡井は7枚をキープした。

斉田が《港町》で公開する《島》のメモも怠らない岡井。
フラッシュ(瞬速)を冠するだけあり、インスタント・タイミングで動くデッキではこうした小さい情報の収集も大切だ。
先手の斉田が《無私の霊魂》2連打からゲームメイクしていく。

岡井は《密輸人の回転翼機》から《反射魔道士》で斉田の飛行ビートに待ったをかける。
逆に《密輸人の回転翼機》アタックを仕掛け、ダメージレースを走り出した。
ルーター能力にて、重厚なハンドから《スレイベンの検査官》を捨てる。ハンドの重厚さが見えるようだ。

4T目。斉田の土地が3枚で止まる。
これを機と見た岡井は《スレイベンの検査官》をメインで出して《密輸人の回転翼機》へ搭乗。

アタック前に斉田が《停滞の罠》で隠す。
岡井はそのまま即座に手がかりを引き、土地をしっかり伸ばしていく。

斉田も1ターン遅れで4枚目の土地に辿りつき、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をプレイした。
トークンを生成しクリーチャーを並べていく。

実はセットランドの中身が《島》3 《大草原の川》1と、本来最重要である白マナの猶予が少ない岡井は
手札に《停滞の罠》《大天使アヴァシン》のダブルシンボル・カードを溜めてしまっている。
《スレイベンの検査官》のダブル・アクションも取れない中、《反射魔道士》をプレイして盤面をごまかすしかない。


ここでゲームの主導権を握り返した斉田が《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》で攻勢を仕掛ける。
大量のライフを支払い、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》2回のアタックを通していく岡井。
ここでようやく待望の白マナを生み出せる5枚目の土地をドローするが、《港町》だった。
タップインで《大天使アヴァシン》《停滞の罠》は依然としてプレイ出来ない。

しかし岡井は表情を決して変えない。
普段のトークでは軽やかに喋る斉田も、ゲーム中は表情を悟られないようにする為か、マスクをしている。
互いに盤外の情報ではなく、ゲームの展開から情報戦を築き上げていく。

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斉田

土地を4枚でストップさせている斉田は《平地》《島》《港町》《大草原の川》と、色の不自由はない。

《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》で攻め、《停滞の罠》で受ける。
《反射魔道士》で戻されていた《無私の霊魂》2枚も同時に戦場へ送り返した。

岡井はこの横並びのアタッカーたちに耐える為、《大天使アヴァシン》プレイを一旦後に回して横並びで返す。
《異端聖戦士、サリア》、《無私の霊魂》。


斉田は《無私の霊魂》と《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》のアタックを仕掛け、岡井は《無私の霊魂》同士打ちで戦力を消費させていく。
《大天使アヴァシン》に繋げる為には頭数の総数は少なければ少ない方が良い。

しかし斉田は《空鯨捕りの一撃》で《異端聖戦士、サリア》を落とし、岡井頼みの綱の《大天使アヴァシン》も《停滞の罠》にはめると、趨勢は決したようだ。

それでも岡井は強い意志でゲームを続ける。

斉田は実質的に最後となる戦闘フェイズを迎える。
並べた生物で攻撃宣言を仕掛け、岡井はチャンプブロックで全ての生物を消費した。
ライフ残り1。

ここから打開できるプレイもカードもないことは、誰よりも岡井が知っている。
リストを観たばかりの斉田も、おおむね知っている。

それでも続ける理由が、準決勝にはある。
一縷よりも細い期待をかけてのドローの後、岡井は少し笑って、そして畳んだ。

斉田 1-0 岡井


Game 2

《スレイベンの検査官》2枚と《停滞の罠》、そして青マナ含む土地4枚をキープした斉田。
《スレイベンの検査官》2枚と《停滞の罠》、そして《大天使アヴァシン》と《平地》3枚をキープした岡井。
2人とも万全とは言えないハンドだが、ゲームの展開はおそらく《スレイベンの検査官》の調査次第で百万通りの顔を見せるだろう。
悩みに悩み、2人ともがマリガンでリフレッシュさせるよりも、"ここ"に賭けた。

当然1T目《スレイベンの検査官》スタートの両者。

岡井の2T目、《スレイベンの検査官》2体を追加した。
最初のドローは《スレイベンの検査官》だったようだ。

斉田の2T目、《スレイベンの検査官》2体を追加した。
同じくドローに《スレイベンの検査官》が含まれていた。

僅か2回のターンの往復で、同じクリーチャーが6体並ぶ盤面もそうそうない。
極限にまで張りつめていた緊張の糸が2人の間で少しだけ解け、ちょっとだけ笑い合う。

しかし次のアクションまでには既に集中力をしっかりと取り返していた。
長丁場を戦い抜けてきた猛者の証だ。

3T目は岡井、《密輸人の回転翼機》を追加。斉田に動きはない。

4T目、《平地》3枚を置いていた岡井が《港町》をドローする。
今度は青マナ不足に悩む。セットランドの前に手がかりを1度起動し、新たな土地を探しにいくが見つからない。

斉田のセットランド事情は再び順調だ。
《港町》《平地》《平地》《大草原の川》。

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岡井

岡井、1度は《停滞の罠》をケアして攻撃しなかった《密輸人の回転翼機》を起動し、攻撃宣言まで成功する。
ドローしていた2枚目の《港町》を捨て、《平地》を手にいれた。これがアンタップインの5マナ目だ。
既に《大天使アヴァシン》を持つ岡井、若干の安堵を得たのは間違いないが、勿論表情には出さない。

《大天使アヴァシン》を構えるなか、斉田が《石の宣告》で一方的に《スレイベンの検査官》三連星を圧し潰す。
がら空きの岡井に、斉田の《スレイベンの検査官》三人衆が殴りかかる。

岡井はこれを《大天使アヴァシン》で受けず、手がかりで1枚引いてから《呪文捕らえ》を唱えた。
斉田、岡井が予測していたように《停滞の罠》でブロック前にこれをどかす。

ここから《スレイベンの検査官》の3点クロックが刻まれていく。

次ターンのコンバット。
満を持して岡井は《大天使アヴァシン》を唱えたが、斉田は《空鯨捕りの一撃》を合わせる。
対応して《大天使アヴァシン》で《密輸人の回転翼機》に搭乗したが、斉田2枚目の《停滞の罠》を持っており、
岡井は全てのクリーチャーを失ってしまう。

岡井、このやりとりを終えた後、ここで痛恨のミスをしてしまう。
5マナのタップアウトで《大天使アヴァシン》をプレイしたはずだったが、
土地のタップが半端なものがありマナが浮いてるものと勘違い、ターン終了時に手がかりを起動してカードを1枚引いてしまう。

これに気づき、ゲームの進行にストップがかかったのは既に岡井がターンを得てのメインフェイズであった。
中嶋HJの最終的な裁定として、現状のハンドから"斉田が岡井のハンドから1枚を選んでデッキに戻す"という形となった。
《停滞の罠》が戻り、岡井からすれば小粒なクリーチャーたちのハンドであることが不意のタイミングで晒されてしまった。

岡井は《スレイベンの検査官》と引き換えに得た手がかりを消費するターンを経てから、《密輸人の回転翼機》と《無私の霊魂》をプレイする。
この《無私の霊魂》は《虚空の粉砕》で弾かれ、《密輸人の回転翼機》のみが戦場に追加される。

斉田は《密輸人の回転翼機》と《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》追加をしていく。
同型戦でこの《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を止めるカードは、致命的に少ない。
《大天使アヴァシン》で無理やり落とすか、クリーチャー化したところを《停滞の罠》ではめるというような搦め手が殆どだ。

この劣勢に、岡井の土地ドローが止まらない。
手がかりで充実したハンド5枚のうち、実に4枚を土地にしていた。
《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》のクリーチャー化アタックを《ウェストヴェイルの修道院》トークンで受けるものの、これは根本的な解決ではない。

斉田は岡井の手が枯れたと読みきり、一度《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》のマイナス4で自陣を1サイズ膨らませ、攻撃に回していく。

斉田 2-0 岡井

斉田 Win!

準決勝。
『青白フラッシュ』ミラーマッチを制したのは、斉田 逸寛。

「後は任せたよ」
岡井は観戦していた奥村に、次戦とピットイン勢の矜持を託した。