【BMO Vol.8】BIG MAGIC OPEN Vol.8 渡辺雄也杯記念 渡辺雄也インタビュー

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text by Seigo Nishikawa

「渡辺雄也杯」という名前を抱いた今回のBIG MAGIC OPEN。

その名が示すように、「殿堂」渡辺雄也氏には、様々なイベントであったり、生中継の解説であったりと、まさに八面六臂の活躍をしていただいた。特にステージイベントでは、大ファンです、という方が次々と駆けつけ、彼のどんなときでも全力のその姿勢は、本当に皆に愛されているのだなと改めて感じた次第である。

そんな中、渡辺雄也氏に時間を割いていただき、改めて殿堂と言うものを振り返っていただくと共に、これからの展望を語っていただいた。彼のMtGに対する真摯な思いが少しでも伝われば幸いである。

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画像は、Magic: the Gathering 公式サイトよりお借りしました

-- 改めまして、今回の殿堂入りおめでとうございます。

渡辺 ありがとうございます。

-- 早速ですが、殿堂のセレモニーにおいて、名前を呼ばれて指輪を受け取られたときの気持ちを伺えますでしょうか。

渡辺 殿堂のセレモニー自体の段取りというのが全く知らされていなかったんですね。

-- そういう連絡は無いのですか?

渡辺 はい、無かったですね。「スピーチを英語でしてもらうよ」「わかりました、練習しときます」というやり取りはありましたけど、6時から7時ぐらいの間に来てくれ、という以外どういった風に進めていくのか全くわかっていなかった。

-- 集合時間からして結構、ざくっとしていますね。

渡辺 会場について、他の殿堂の方や、僕がお呼びしたゲストの方々と談笑していました。

-- ゲストの方と言うのは何人ぐらい呼べるのですか?

渡辺 今回は7人呼べるとのことだったので、いつもお世話になっている中村夫妻(肇・さら両氏)や、練習パートナーの井川さん(井川良彦氏 HareruyaPros所属)をお呼びしました。Cygamesの木村さん(木村唯人氏 Team Cygamesの発起人)やジャッジの中嶋さん(中嶋智也氏 PWC主催 BMOスタンダード ヘッドジャッジ)もお声がけしたのですけど、都合が合わなくてそこは残念でした。

-- それは確かに残念ですね。

渡辺 会場で、1時間半ほど談笑していて

-- 結構長い談笑ですね

渡辺 長かったですね。そこから名前を呼ばれて、スピーチという流れでした。先ずオーウェン(Owen Turtenwald 今回渡辺氏と一緒に殿堂入り)からで、オーウェンが緊張してるのを見ながら、ふと「僕もこの後スピーチするのか」と思ったらすごく緊張してきて。日本人なんで英語も不得意ですし、指輪を受け取ったその時は、スピーチしなければ、というのがあって正直そっちに頭がいっぱいでした。実際最初の一小節目で噛んでしまって、頭が真っ白になって。なんとかスピーチが終わって、写真を撮るという段で指輪を改めて嵌めたときに「ああ、叶ったんだな」と、そこでようやく実感がわいてきましたね。

-- ここに殿堂が来たんだな、と言う感じですね

渡辺 (指を見つめながら)はい、そうですね。

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画像は、Magic: the Gathering 公式ツイッターよりお借りしました

-- あのスピーチというのはご自分で考えられたのですか。

渡辺 そうですね。自分で考えたのを、Wizardsの方に英訳していただいて、合わせて音声にしたものも作っていただいて、それを聞いて練習しておくという形でした。

-- Cygames様のサイトでも、スピーチの練習を重ねている、というようなことが書かれていました。

渡辺 実際のところ、しっかりとした時間は取れなかったので、前日に2時間程といったところです。

-- 先ほど英語は余り得意ではない、というお話がありましたが、PTやGPをこれだけ回られていて、多くの外国のプレイヤーとも交流されているかと思います。そういうところでの意思疎通とかは問題ないのですか?

渡辺 それは大丈夫ですね。向こうも意識して判りやすい言葉をつかってくれたり、ゆっくりと喋ったりしてくれるので、こちらも回数重ねていますし、そういった点では問題は無いです。

-- 今回、殿堂入りのビデオメッセージで、オーエン・ターテンワルドやジョン・フィンケル(Jon Finkel 2005年マジック殿堂)、といったプレイヤーからコメントがありましたが、普通にお話されるという感じですか。

渡辺 会場とかで会えば、決まり文句的に「今何勝何敗?」「俺はいくつだよ」とか、「お互い頑張ろうね」とか話しますね。前に「今どう?」って聞いたら「10-0だよ」って返ってきて、「おいおいおい止めてくれよ」と(笑)。

-- 特に仲の良いプレイヤーとかいらっしゃいますか?

渡辺 マーティン・ジュザ(Martin Juza)とか、クリスチャン・カルカノ(Christian Calcano)ですね。カルカノは特に「けいおん!」大好きなので。

-- 世界を超えて「けいおん!」で繋がっていると!

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クリスチャン・カルカノ(画像は、Magic: the Gathering 公式サイトよりお借りしました

-- 小中学生の頃にMtGに捉われた渡辺さんが、2007年から世界を回るようになって、外国の方とも数多く知り合われて、これからもまだまだ続けて行かれると思うのですが、改めてMtGの魅力、というのはどういったところにあると思いますか?

渡辺 語りつくせないぐらいありますが、強いて言うなら、やはり対人ゲームと言うことで人との繋がりができるということですね。世界を旅するようになってから、MtGを通じて知り合いがたくさん日本国内だけじゃなくて、世界中にできた。飲みにいくような、そこで馬鹿騒ぎができる友達に世界中で出会えたというのは本当に感謝です。

-- 人との出会いが大きいと

渡辺 勿論MtGのゲーム性も素晴らしい。いくらやっても次々と新しい展開が生まれて、終わりの無いゲームですよね。対戦ツールとしても素晴らしいですし、コミュニケーションツールとしても素晴らしい、最高のゲームだと思います。

-- そんな素晴らしいゲームを続け、ここまで数多くのPTやGPに出てこられて、遂に殿堂というある意味「最上位」の地位まで辿り着いたというイメージがあります。これからのヴィジョンなどはあるのでしょうか。

渡辺 ここで終わるのは今まで自分が積み上げてきたものを放棄するようなものなので、勿体無いですし、何よりもまだ達成していないもの、たとえばPTの優勝などもまだありますので、気を入れなおして頑張って行きたいと考えています。

-- 正直、まだPTで優勝していない、というのが意外でもあります。

渡辺 いやぁ、決勝で負けましたね(プロツアー「ラブニカへの回帰」)。あれは残念でした。やっぱりPTでの優勝が当面の目標ですね。これだけは経験できていないので、次なる目標をここに定めています。

-- わかりました。それでは少し話はかわるのですが......

渡辺 (遮るように手を差し出して)もう一つだけ、言いたいこと、目標があります。

-- はい。

渡辺 僕みたいなプレイヤーを育てて生きたいです。

-- と、いいますと?

渡辺 次代の殿堂になるプレイヤーに、殿堂表彰の場で「渡辺さんのおかげで殿堂になりました」といってもらえるようなプレイヤーを育てたいなと考えています。

-- それでは、渡辺さんから見て、この方のおかげで僕は殿堂になった、という方はいらっしゃるのですか?

渡辺 本人が聞いたら微妙な顔をするかもしれませんが、やっぱり中村修平(2011年マジック殿堂)さんですね。

-- 中村修平さんが最初に渡辺さんを世界に連れ出してくれた。

渡辺 そうですね。初めてのPTで初日落ちしてしまって、次のPTは権利が無い状態でした。でも、その次のPTがチーム戦だったので、中村さんに誘ってもらってPTに出ることができたんですね。他にその年の世界選手権で、5敗か6敗で対戦したのですがそこで勝ちを譲ってもらって、それ以降の権利も与えてもらった。そういった意味で、本当に色々な場面で導いてもらいましたし、中村さんがいなかったら、僕が殿堂になることはなかったと思います。

-- 本人が聞いたらどういう反応をしますかね。

渡辺 はいはい、みたいに流されるんじゃないでしょうか(笑)

-- 「お前はそんなの関係なくなってたよ」とか言いそうですね。

渡辺 そうかもしれないですね。まぁ次に殿堂になる人にそういう風に名前を上げてもらえる存在になりたいですね。

-- 今、渡辺さんから見て、この人は、という方はいらっしゃいますか?

渡辺 同じチームですが、市川さん(市川ユウキ氏)。キャリア自体は浅いですけど、このまま続けていけば、当然成績は残すでしょうし、本人のキャラクターも回りに受け入れられていているので、近い将来そうなってもおかしくないな、とは思っています。

-- では、市川さんが殿堂になった時には「あのときの渡辺雄也の言葉があったから、俺は殿堂になったんだ」と。

渡辺 いやぁ、彼は言わないかなぁ(笑)

-- 思ってても言わないかもしれないですね。

渡辺 「俺が一番だ」って言うかな。そう言って欲しいですしね。

-- それこそ、「俺は自力でなるんだ」ですね。

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-- 今、市川さんの名前が挙がりましたが、Cygamesというチームに関して聞かせてください。

渡辺 発足してから1年ぐらい、自分が入ってからは半年ちょっとぐらいかな。かなり注目されているチームだな、と思っています。これからも全員で盛り上げていきたいですね。いつか、チームCygamesでチームグランプリとか参加したいですね。メンバーが4人なので難しい部分もありますが。他は、PTとかで4人全員同じデッキで参加する、4人で調整したスペシャルデッキを持ち込む、ということが実現できればいいなと思います。

-- この前は、渡辺さん以外の3人は同じデッキでしたよね。

渡辺 そうですね。予定とか色々と都合があって、4人揃えるということができませんでした。後、デッキを作るにあたって方向性の違い、がありますね。それぞれの調整スタイルというか。

-- といいますと

渡辺 僕と市川さんが合わない。

-- 合わない。

渡辺 市川さんはイベントの前日にデッキを決めるタイプ。勿論そうでないときもありますが、最終的に前日にデッキを完成させるということが多いんですね。僕は3日前ぐらいにはデッキを決めて、そこからは細部を調整する、という形を取りたい。デッキを決めるタイミングが違うので、それが違うなら、一緒にやる必要もないよね、と。3日前の段階では同じデッキにしていることはありますけど、市川さんは、そこからも色々変えていくタイプです。勿論デッキの話はよくしますけどね。

-- それだとなかなか4人足並みを揃えて、というのは難しそうですね。

渡辺 前回は僕以外の3人が同じデッキ、前前回は市川さん以外が同じデッキだったという。

-- 市川ユウキと渡辺雄也が交わる日は来るのでしょうか。

渡辺 いつかは来ると思いますよ(笑)

-- ではいつか、二人が同じデッキを使ったときには、読者の皆様も遂に来たか! と思ってください。

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-- そんな市川さん、渡辺さんが所属されているTeam Cygamesですが、ゲームというくくりでは共通していましたが、MtGとは余り関係していない企業でした。MtGのプロチームを作る、と言う話を最初に聞かれたときどのように思われましたか?

渡辺 MtGとは関係のない一般企業が、MtGというものに魅力を感じて参入してくれた、というのは単純に嬉しかったですね。

-- PTに向けての合宿ですとか、勿論これまでも個人レベルではされてたのかな、とは思うのですが、それが一般プレイヤーの目に見えるようになった、これが凄く印象的なことだなと感じています。

渡辺 そうですね。合宿とかをメディアなどで発表してもらって、そういったことからプロマジックというものに興味を持ってもらって、そこから少しでもPTに出たい、という流れに持っていけたらこれはとても嬉しいことですね。チームミント様と契約させてもらったときもそうですし、Cygames様に移ったときもそうですが、今の流れは日本のMtG界にとっていいように寄与しているのかな、とは考えています。

-- 今回、BMOで渡辺雄也杯、と行いたいというのをCygames様のほうが快く受けていただいた、というのは本当にありがたいことですね。

渡辺 最初に話が来たときは、何考えてんの? と思いましたけどね(苦笑)

-- MtGの大会に個人の名前がつくという。

渡辺 いや、吃驚しましたよ。

-- 最後に、と言う形になりますが、今回「渡辺雄也杯」ということで多くのイベントに参加いただきました。この後、BMOスタンダード優勝者とのエキシビジョンマッチが残っています。今の意気込みなどをお伺いできますか(※インタビューは、BMOスタンダード準決勝の前にお伺いしました)。

渡辺 そうですね。優勝される方というのは、強い方が一番強く仕上がった状態で出てこられるので、正直勝てるかどうかはわかりません。ですが、折角今回イベント名として名前を付けていただいたというのもありますし、殿堂というものもいただいたのでその名に恥じないような戦いをするつもりです。

-- 渡辺雄也ここにあり、を見せ付けて欲しいと思っています

渡辺 そうですね。いいゲームをお見せしたいです。

-- 昨日、今日と本当にありがとうございました。何か、言い残したこととかありますか

渡辺 ......本当に昨日は人生最高の日でした(しみじみと)。Cygamesに「ありがとうございました!」と声を大にして言いたいです。

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