BIGs 朴高志~今勝てるデッキ、ANTについて~

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こんにちは!

もうすぐグランプリ・千葉2016、久しぶりのレガシーGPが楽しみなBIGs所属・朴高志と申します。

今回はそんなGP千葉に開催に合わせて、自分が使っているデッキ「ANT」について書いていこうと思います。

1:基本的デッキ概要と最近のメタゲーム

何はともあれ、まずはデッキの内容を再確認していきましょう。

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まず、この「ANT」というコンボデッキ。
「アド(むかつき)ストーム」とも言われているように、"ストーム"というそのターンに呪文を唱えた回数を参照する能力を持った呪文を使って相手を瞬殺する、極めて強力なデッキです。

基本的なデッキの概要、動かし方や基本的な対策などは以前自分が書いたこちらの記事に書いてありますので、まずはそれを参考にしていただくとして・・・



では、「ANT」がどのように戦っていくのかを知っていくために、まずは、昨今のレガシーにおける主要デッキを見ていきましょう。


「エルドラージ」
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このデッキは、《虚空の杯》や《難題の予見者》といった強力な妨害カードを優秀な2マナランドから繰り出し、相手に何もさせないまま《現実を砕くもの》等のクリーチャーで殴りきる、かなりハイパワーなデッキです。

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軽量の呪文をシャットアウト出来るとあって「ANT」との相性はかなり良好、つまり「ANT」側から見たら戦いたくない相手です。

《虚空の杯》や《難題の予見者》は出されればそのまま敗北に直結しますし、サイドボードからも《アメジストのとげ》《歪める嘆き》などの強力なアンチカードを投入されて思うように動けないまま倒されてしまいます。


「グリクシスデルバー」
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《死儀礼のシャーマン》《秘密を掘り下げる者》などをキャストし、それらをカウンターやハンデス、火力などでバックアップする、いわゆるクロックパーミッションです。

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「ANT」との相性はまあまあといった所。
メインボードはやや「ANT」に分がありますが、「グリクシスデルバー」もメインを取れる可能性は十分にあります。

サイドボードからはお互いキラーカードが大量に入るわけでも無く、どちらかと言えばメインの延長戦のような感じになります。



「奇跡」
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古典的な青白コントロールでありながら、《師範の占い独楽》《相殺》のコンボを搭載した、現在のトップメタデッキです。

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「ANT」との相性は良いです、つまりこれまた「ANT」側から見ればつらい相手。

メインボードこそ「ANT」側がやや有利ですが、どこまで行っても《師範の占い独楽》と《相殺》のコンボを決められたら勝ち目はほぼ無く、サイド後はサイドカードを多めに取り合って長期戦になるので...即ち「奇跡」側の土俵で戦う事になります。


さて、ここまで見ると、あれ?「ANT」って今微妙じゃね・・・となるわけですが(実際、メタはあまり良くないです)、それでも勝ててしまう可能性をこのデッキは秘めているのです。


次の項目では、そんな「ANT」が勝てる理由を解説しますね。





2:小さな進化と大きな可能性


まず、この「ANT」というデッキ、先ほど触れたように、現在のメタゲームではあまり勝てるように思えません。

しかしそれとは裏腹に、それなりに結果を出しているようです。

例えば先ほど例に挙げたデッキリストもごく最近のイベントであるBIG MAGIC Sunday レガシーのものですし、自分も、その前の同トーナメントで上位に入る事が出来ました。

その理由なのですが...まず、こういった通常の手段では止めにくいコンボデッキの場合、先に挙げたようなデッキを除くその他大勢の"ローグデッキ(※1)"に対して簡単に勝てる事が多いというのが挙げられます。

レガシーでのローグの数は、現在はあまり多くはありませんが、それでもこれは大きなポイントになります。

(※1:ならず者デッキのことではなく、環境を形成する流行りのデッキとは全く異なるアプローチで組まれたデッキのこと)


次に、対策が薄いデッキへの勝率も保証されます。

例えば「土地単」のような、メインボードではほぼ「ANT」に対して無策で、サイドから頑張るようなタイプのデッキ相手は、よほどのことがない限り1本取った状態で始まるも同然となります。

ここまで極端な相性でなくても、こういった相性がはっきりしているデッキはまあまあ存在するので(何せレガシーはデッキの種類が多いですから)、そこに当たれば勝ち星を稼ぎやすくなるというわけです。

そして、「奇跡」デッキや「エルドラージ」などの相手にも、対策が無いわけではありません。

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まず、前回と今回のBIGA MAGIC Sunday レガシーでトップ8に入った「ANT」に共通しているのは、《巣穴からの総出》のメインボード採用です。

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このカードは、デッキの速度を上げるのに大きく貢献しています。

なぜなら、ストームが10に満たない場合でも、《冥府の教示者》を解決する時にマナが4マナしか無くても、《巣穴からの総出》を唱えれば大量のゴブリンが沸いて出て、大体は勝てるからなのです。

当然、レガシーでメインボードから全体除去を採用している相手は「奇跡」くらいで、その「奇跡」も、「ANT」相手に比較的腐りやすい《終末》を常にデッキトップに残したくはないですから、大抵はフェッチランドでシャッフルしてデッキのどこかへしまっています。

このカードのおかげで、相手が《虚空の杯》などの強烈なアンチカードをキャストする前に、コンボを成立させてしまう事が出来るのです。

他にも工夫をする事は可能です。

自分のレシピでは《目くらまし》を採用していますが、これは、対戦相手のどうしても嫌なカードをカウンターするために採用しています。

《意志の力》ではマナコストが重すぎて《むかつき》の障害となり、《呪文貫き》などのカウンターでは消せるカードに限りが出てきてしまう上、デッキの性質上コンボの邪魔もしてしまいます。

なので、消去法で自然と《目くらまし》がデッキに入る事となりました。

例えば、後手1ターン目、相手は《島》を置いてエンドの返しに《強迫》をキャストしたとします。

相手はそれに対応して《渦まく知識》をキャストしました。

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通常ならば、墓地に送りたいカードはデッキトップに隠され、相手の本来の手札を確認できないまま適当なカードを落とす事になります。ここで《目くらまし》があれば、《渦まく知識》を打ち消した上に相手の本来の手札を見て、一番墓地送りにしたいカードを落とす事が出来ます。

このシチュエーションは相手が青いデッキであれば多く存在しますし、もちろん「エルドラージ」の《虚空の杯》《難題の予見者》もカウンターしたいですし、その他にも、最近は《スレイベンの守護者、サリア》を擁する「デス・&タックス」なども増えてきていますので、それらに対して《目くらまし》はとても効果的に働きます。

この《目くらまし》によって1段階速度の遅れた相手へ、《巣穴からの総出》を1段階早くキャストして勝利、と、自分の「ANT」は実質的に速度を2段階早くしています。

これによって、本来は厳しいはずの相手を速度で圧倒し、勝利の機会を増やしているわけなのです。

メタ的に厳しいはずの「ANT」が意外と勝てちゃう理由について説明したところで、次は「ANT」のもう1つの勝てる理由とも言える、一部のカードの役割を説明してみようと思います。





3:このカードなんで入ってるの?

たまにある、「このカードの入ってる理由何?」と思うカード。

「ANT」のようなコンボデッキでは、結構頻繁に見かけることかと思います。

ここでは、そんな一見良く分からないけど勝利に貢献しているカードの説明をしていきますね。


・2枚目の《炎の中の過去》
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《炎の中の過去》を2枚採用している人は、最近よく見かけますね。
《冥府の教示者》から持って来る事で、本来のおおよそ2倍のスペルを唱えるようにしてくれるこのカード、どうせサーチするんだから1枚でいいじゃん!

しかもコストが4マナと重いから、《むかつき》でめくれた時も痛いし・・・と思っちゃいますよね。

でも実は、普通にドローして手札に来た時でも活躍してくれるんです。

例えば、《暗黒の儀式》を連打した後、《冥府の教示者》を唱え、解決前に《ライオンの瞳のダイアモンド》を生け贄にし、手札を全て捨てたとします。

対戦相手は《意志の力》を使ってきました。もうほぼ負けですね、投了して次の試合に行きましょう・・・と本来はなるのですが、ここで墓地に《炎の中の過去》があった場合はどうでしょう。

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もし、赤マナを含めて、最低条件として6マナ以上浮いていれば、墓地から《炎の中の過去》を唱え、コンボを継続出来るのです。

さらにゲーム後半では、このカードを引くだけで墓地からストームを稼いで勝ててしまったり、逆に墓地にある状況で《陰謀団の儀式》を引いただけで勝ててしまったりと、このカードの枚数を増やせば、カウンターとハンデス、そしてロングゲームの3つに強くなる事が出来ます。

流石に4枚も入れると《むかつき》の邪魔になるのでそんなことは出来ませんが、1枚くらいなら追加する意味の大きい、強力なカードだと言えますね。


・《森の知恵》
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メインボードでよく見かける《師範の占い独楽》によく似たカードです。
しかし、個人的には《師範の占い独楽》をメインボードに入れておくより、《森の知恵》をサイドボードに採用する事をおすすめします。

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ライフを攻めてこない相手にサイドインするこのカード、複数枚引いても微妙な、3枚目の《ザンティッドの大群》の代わりに入っているのですが、これは入れる相手の範囲が被っていて、かつ《森の知恵》はカウンターではなくハンデスで妨害を試みる黒いデッキ相手にもサイドイン出来るからです。

正直言って、絶対に打ち消さないとダメなくらい強い《森の知恵》。

これに対して《意志の力》を使わせた時点で仕事をしているのですが、もし場に出てしまった場合、マナを使う事無く、ずっと3枚の中から選び抜かれたカードを手札に加え続ける事の出来る、一方的な状態になります。

その上、欲しければライフを払っていく事によって、一気にコンボパーツと安全確認用の手札破壊呪文を仕入れる事も出来ます。
ハンデス主体の相手には、単純に質のいいドローの保証と、いざという時の引き増しがただただ優秀です。


・《外科的摘出》ではなく、《根絶》

マナのかからない《外科的摘出》の方が、基本的には優秀。

ですが、仮想敵が違えば採用するカードもその役割も変わってきます。

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「ANT」が当たりたくないデッキの一つに、「リアニメイト」というデッキがあります。

墓地から《グリセルブランド》などの大型クリーチャーを吊り上げ勝利するタイプのデッキなのですが、速度が「ANT」と同じくらいあり、その上向こうはカウンターもハンデスもあるという結構厄介な相手です。

サイドは当然墓地対策でなんとかするのですが、ここで《外科的摘出》だと、相手も《意志の力》で打ち消してくる事がほとんどです。

《根絶》なら、そんな心配はいらず、マナを余らせてターンを返しても動きに支障が出にくい「ANT」なら《根絶》を運用する事が出来ます。

あと、余談ではありますが、「ANT」にはメインボードに4~5枚ほどのフリースロットがあります。
ここを何にするかで、使用者の特徴が出ますし、デッキの勝てる範囲も大きく変わってきます。

自分なりのチューンで勝てる範囲を変えてみるのも楽しいので、環境に合わせて調整するのをおすすめします。

逆に「ANT」と戦う時は、こういったフリースロットに入っているであろうカードをプレイされた時に、どういった意図で入っているのかを考えてプレイすると、何も分からないままやられてしまう事を避ける事が出来るかもしれません。

カードの解説をした所で、次はサイドボーディングについて触れようと思います。





4:IN/OUTの仕方

仕方...とは言っても、実は割とアドリブ気味なのが「ANT」のややこしいところ。

インするカードは大体決まっているのですが、アウトしているカードはその都度違ったりします。

これは、メインに《目くらまし》を採用している関係もありますが、それ以外にも相手のデッキのチューンに合わせたり先手後手で変わったりなど結構複雑なものになっています。

それでは早速、自分が使用したデッキを用いて、主要デッキ相手のIN/OUTを解説していきますね。
レガシーは同じデッキでも微妙な構成の違いがあったり、それを使うプレイヤーの習熟度などでサイドボーディングも変化します。

この項目ではあくまで入れ替える「候補」のカードを紹介します。何枚まで入れる・何枚まで抜いてOKという目安として、参考にしていただければと思います。


・対「ANT」
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ミラーマッチ。

入れるカードは大体この3枚なのですが、抜くカードはいささかややこしいです。

メインでどれだけ《目くらまし》を上手く使えたか、サイド後は先手であるかどうかで変わってきます。


・対「デス・アンド・タックス」
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「デス・アンド・タックス」に限らず、「マーベリック」などのヘイトベアー系、エルドラージ相手は大体こんな感じになります。

《氷の中の存在》を4枚入れるのは確定で、残りはIN候補の中からOUT候補の枚数と相談してチョイスする感じです。
これらの相手に《突然の衰微》を4枚入れたくないのは、《不毛の大地》で《Tropical Island》を割られてしまうと、土地から緑マナを出せなくなるからです。

1~2ターン目はスピード任せにコンボを狙いつつ、それ以後は《氷の中の存在》を裏返す事に集中するといい感じです。


・対「奇跡」
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「奇跡」コントロール相手。

IN候補の9枚こそほぼ確定でいいと思われますが、OUTするカードは難しいです。

《水連の花びら》4枚と《陰謀団の儀式》2枚までは抜いていいのですが、残りの3枚は候補の中から選ぶ事となります。
それぞれが一長一短なので、1本目の様子でしっかり考えて決めたいですね。

《古えの遺恨》は、《師範の占い独楽》に対して、フェッチランドの起動に対応して使います。

また、サイドから厄介なアーティファクトを入れられても、《突然の衰微》を温存しながら対処出来たりする優れものです。


・対BUG系

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これがもっともアドリブを要求されます。
まず《目くらまし》なのですが、サイドからは《思考囲い》を多くしてくる可能性もあるため、残したくはあるのですが・・・後手だと《死儀礼のシャーマン》のせいで腐りがちに。

何枚残すかは1本目にどれだけ《目くらまし》を上手く使えたかにかかっています。

《巣穴からの総出》はこのデッキには《ゴルガリの魔除け》《毒の濁流》で対策されやすいものの、残しておくと何かと便利なため...これまた抜くか悩ましいですね。

これも1本目で使ったかどうかで判断してもいいでしょう。

INするカードでは、《突然の衰微》を何枚入れるかが難しいです。

1枚でもいいですし、3枚入れても仕事はします。
どれだけ相手がやっかいな置物を入れてくるかによりますね。


いかがだったでしょうか。

今回はANTの応用部分を中心に書いてみました。この記事が、これからの皆様のレガシーライフにおいて、少しでも参考になれば幸いです。

そういえば最近、新しい統率者戦用のカードが収録された、『統率者2016』が発売されましたね。

もちろんレガシーでも使えそうなカードが収録されているこのセット、個人的には《激情の薬瓶砕き》に注目しています。

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出した返しに《意志の力》で相手の呪文を打ち消しつつ5点、その後の自ターンに《グルマグのアンコウ》キャストで7点!!

もしかしたら、GP千葉で『統率者2016』のカードを使用した、面白いデッキが出てくるかもしれませんね。そういう意味でも楽しみな大会です。

それでは、今回はこの辺で!GP会場にてお会いしましょう!

※リンク先は『マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト』を参照しています