マナは土地から得るものである。土地は1ターンに1枚戦場に出すことが可能。領地を増やして使えるマナも徐々に増やしていこうというゲームなわけだが、そんなちんたらした方法には使ってられんわいと別の方法でマナを得る色もある。
緑は自然と融和することでマナを生み出すクリーチャーがいたり、大地を緑豊かなものにして土地を増やす呪文があったりでパーマネント総数を増やす形でマナも伸ばす。
対して黒は生け贄の魂などからマナを得る、使い捨ての儀式呪文を用いて刹那的なマナ増加法を売りにする色だ。共に『アルファ』よりマナを扱う色としての役目を与えられたのだが、黒のそれは時にとてつもないコンボデッキを強化してしまうという難点があった。
黒には同時にカードをサーチするという役割も与えられていたので、これらが合わさることは大変なことになりかねない。そんなこともあって、マジックの歴史でたびたびおこなわれる"色の役割"の変更の1つとして、『ミラディン』においてインスタントやソーサリーでのマナ加速は黒から赤に引き継がれることとなった。その時歴史が動いたってわけだ。
実はこれより前に《輝石の儀式》なるゴブリンの数だけマナを生み出すインスタントが出ているのだが、これは部族カードとしてのデザインが強いので...《暗黒の儀式》の正統な後継カードと言うのであれば《煮えたぎる歌》であろう。
3マナ払って5マナ得る。カード1枚で2マナ増えるという点も《暗黒の儀式》との共通点だ。その初期投資が大きく変わったことで、カードとしてはだいぶマイルドになったが...それでもマナが伸びるという点を大いに買われて、当時のブロック構築から現在のレガシーまで、幅広いフォーマットおよび期間で大活躍している、マジックの歴史に名を刻み付けた1枚である。
最初の日本人プロツアー王者を生み出した「ビッグ・レッド」の核でもあるわけで、やはり歴史を動かした1枚であることは疑いようがない。
3マナと重くしてもカードプール次第では《暗黒の儀式》になり得るということをモダンの「ストーム」デッキで証明し、比較的安定して3キルを生み出すこのデッキの最も悪いヤツということで禁止カードとなった。
モダンじゃダメでもレガシーではのびのびと、1ターン目に《反逆の先導者、チャンドラ》なんかを唱える動きを可能にしてくれる楽しいカードとしてこの手のオールインデッキを愛するプレイヤーに「初手に来てくれ」と願われ続けている。
今週は「その時歴史が動いたウィーク」
岩SHOW Card of the Day 2018/03/12《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》