text by Seigo Nishikawa
アジア・ヴィンテージ選手権2018トライアル Round4 山屋裕紀vs森田朋之
席に着くなりどちらともなく「デッキわかった」と口に出す。勿論両者共に勝っているプレイヤーなのだから近い席に座っているということもあるようだが、どうもそれ以上によく顔を知っている存在のようだ。
しかしそうはいっても、知己というわけでもないようで、大会でよく当たる、デッキは知っている、でもお互いの名前は知らない、という現代社会を象徴するかのような二人である。
「byeは嫌がられるんですよ。折角遊びに来てるのにbyeでその機会がなくなるって残念なんで」
そう山根は語る。森田も同じ思いではないだろうか
二人が住むのは滋賀と東京であると言う。本来であればなかなか出会うことが無いであろう二人。しかしヴィンテージをプレイしているが故に二人は出会うことが出来た。これもM:tGの魅力の一つであろう
Game1
先手を取った山屋が、《溢れかえる岸辺》《Volcanic Island》とゲームを開始し、森田が「静かな立ち上がりですね」と評す。その言葉を示すように森田は華々しくゲームを開始する。
森田朋之
《Bazaar of Baghdad》をセットすると即座に起動し《秘蔵の縫合体》《イチョリッド》《陰謀団式療法》と墓地に送り込むと、続く自身のアップキープには《臭い草のインプ》《陰謀団式療法》、そして《秘蔵の縫合体》を餌として《イチョリッド》を墓場より蘇らせた。
ドローステップに《臭い草のインプ》を発掘し、メインフェイズには《イチョリッド》を糧に《陰謀団式療法》をキャスト。これこそは山屋が間髪いれずに《意志の力》を見せることで迎撃されてしまうが、続くターンの2度目の《陰謀団式療法》で山屋に続く妨害手段が無いことを確認すると、一気にギアを最高速まで持っていく。
アップキープに《Bazaar of Baghdad》で2回、ドローステップに1回、《石化した原野》をセットしこれを即座に墓地の《Bazaar of Baghdad》に変え更に2回。《ゴルガリの墓トロール》が墓地と手札を往復すると、それに比例して膨れ上がる森田の墓地。都合1ターンでスペルを使用することなく30枚のカードを墓地に叩き込んだ。
この過程で2体の《ナルコメーバ》が戦場に戻り、《黄泉からの橋》が4枚落ちていることを確認すると、念のためにと《陰謀団式療法》で《意志の力》を指定。
果たして山屋は「持っています」と見事に引き入れていることを示すのだが、抵抗はそこまで。森田が《炎の血族の盲信者》を吊り上げることで、Game1の幕は閉じた。
山屋 0-1 森田
Game 2
ドレッジはヴィンテージでは所謂Tier1と呼ばれるデッキである。それだけに山屋はサイドボードは欠かすことはない。結果的に成就しなかったとはいえ《意志の力》を引き込んでいた山屋。
そんな山屋が使うデッキはオース(《ドルイドの誓い》)であることが、一連の《陰謀団式療法》で暴かれている。こちらも勿論Tier1のデッキで、森田も当然のようにとサイドボードを進めていく。
それでもより相手のサイドが刺さるのはドレッジ側。森田もそれはわかっているだけに「ここからだよなぁ」とこぼすが、ここまで3回それを乗り越えているのだから不安は無い。
再びの先手となった山屋はそんなサイド後のオープニングハンドを受け入れる。
山屋裕紀
一方で何があっても《Bazaar of Baghdad》を初手に引きいれたい森田。ドレッジはこのカードの有無で勝敗はおろかゲームが出来るかどうかまで変わってくるといっても過言ではない。
森田は《血清の粉末》を見せ、《Bazaar of Baghdad》が無い7枚のハンドを捨て、新鮮な7枚入手。その上でマリガンを選択する......だが6/53にも求めるものは無く、再び《血清の幻視》。そして続くマリガン。ここでゲームを開始すること、即ち《Bazaar of Baghdad》を引き込んだことを宣言した。
山屋は2回の《血清の幻視》と共に取り除かれた一群の中に《ゴルガリの墓トロール》が2枚《ナルコメーバ》が1枚が眠ることを確認すると、《禁忌の果樹園》《トーモッドの墓所》を2枚セット。
森田「いいスタートですね!」
だが山屋はまだまだこんなものではないと、続くターンには《ドルイドの誓い》を設置。
「ずるい!」にこやかに笑いながら森田が言葉を発すると、山屋は「お互い様ですよ」とさっきはドレッジの力を見せ付けたのだから、今度はこれぐらい良いでしょう、とこちらも朗らかに。
無事《ドルイドの誓い》が解決され《引き裂かれし永劫、エムラクール》が《ドラゴンの息》を身にまとうと、今度は森田が敗北を認めることとなった。
だが、ただ単に負けるわけには行かない。《ドルイドの誓い》で捲れたカードを再度確認し
1枚の《貪欲な罠》
2枚の《血染めの太陽》
3枚目の《トーモッドの墓所》
があることをしっかりと確認し、Game3への渡りをつけた。
山屋 1-1 森田
Game 3
とにかく《Bazaar of Baghdad》を引き入れたい森田と、それが機能を発揮するのを1ターンでも止めたい山屋。最後に確認したカードを元に、2回目のサイドボードをじっくりと行う森田。対して山屋は数枚のカードの入れ替えを検討しつつも大筋は変えないことを選択した
森田の《Bazaar of Baghdad》探索が始まる
だが7枚には望むものは無く、6枚には土地が無い。
森田「ここに来て闇に飲まれるかぁ」
山屋「5枚は闇じゃないです」
そう何枚になろうと引き込めばよいのだ。山屋は6マリガンしたドレッジに負けたことがあるのだという。
続く5枚には土地が3枚、なれど《Bazaar of Baghdad》は無い。少し頭を抱え、森田は4枚へと歩を進める
1枚目に《石化した原野》が捲れ、続いて2枚目にも《石化した原野》が捲れる。思わず噴出す森田。ここまで来たらもうデッキと心中するしかない。そして森田は遂に《Bazaar of Baghdad》を発見する。
すぐにこれを起動し《臭い草のインプ》を捨て「何も無いことにかける」と自身の命運を山屋に委ねる。実は山屋も初手をキープするのには結構時間をかけていた。そんな山屋の手札は《トーモッドの墓所》《血染めの太陽》を持つが、それ以外はそこまで見るものが無いというものであった。
だが、デッキと心中しているのは山屋も一緒だ。相手が《Bazaar of Baghdad》を引き込むならば、こちらはそれより先に《ドルイドの誓い》を起動するのみ。そんな山屋の思いにデッキは《定業》という形で答えを返す。
そしてこれをキャストすると
「両方とも上に」
思わずのけぞる森田。そうそこで山屋に引かれることを待っていたのは《禁忌の果樹園》と《ドルイドの誓い》という最高のコンビ。
山屋が2ターン目を迎えると森田にできることは右手を伸ばすだけであった。
山屋 2-1 森田
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激戦を終えた山屋にインタビューを申し込んだところ、快く引き受けていただいたので、続けてお送りしよう。
マネージャー(?)の高橋さん(右)・友人の方と一緒に
-- 見事、優勝おめでとうございます
山屋 ありがとうございます。
-- ヴィンテージはずっとされているのでしょうか
山屋 2013念に始めたので5年目ってところですね。ずっとレガシーをやってたんですが、最近レガシーのメタゲームの変わり方の速度とかについていけなくて、ここ最近はヴィンテージばっかりです。
-- ヴィンテージはまだゆっくりという感じですか?
山屋 そうですね、まだゆっくりですし、昔のアーキタイプがずっと残っています。今日使ったオースなんかもそうですし、大会の数自体もそこまで多くないので、付いていけてますね。皆好きなデッキを使える環境だと思います。
-- 普段はどのようにプレイされているのですか?
山屋 MOが多いですね。すんでいるところの近くにマジックのショップが全く無いので、今はなかなかリアルの大会は難しいですね。グランプリとか大きな大会の時には顔を出して楽しむという感じになっています。
-- 今回見事byeを取られたわけですが、チャンピオンシップのほうは
山屋 はい、参加します!
-- ヴィンテージの方って、どこにもいらっしゃるなというイメージがありますね。
山屋 そうですね。先程の森田さんも何度か対戦していただいて、話すわけではないけど知っていると言う感じです。ヴィンテージは大会自体が少ないので、1回でも多くプレイしたいですし、機会は逃したくないからbyeとかは嫌われるんですよ。勿論チャンピオンシップのbyeは嬉しいですよ。
-- ところでマネージャーの方(高橋さん)も普段はヴィンテージをされている感じですか。
山屋 そうですね。いつもは好きなデッキを色々と回しているんですけど、今回はマネージャーが良く使っているオースと同じ形を使わせてもらいました。ちょっと昔ながらのエムラクールが入っているレシピです。今は《業火のタイタン》とか素だしできるクリーチャーの形のほうが主流なんですけどね。
-- 最後になりましたが、チャンピオンシップに向けて意気込みをいただけますか?
山屋 そうですね。折角byeを取ったので、出来るだけ上に上がれるようにがんばりたいと思います。
-- ありがとうございます
山屋 あとはカセルに
山屋&高橋 感謝
山屋 ということですね。