By Yohei Tomizawa
「世界で一番プロツアーに近いPTQ」
グランプリのサイドイベントで行われるプロツアー予選は、たった9回勝つだけでプロツアーへの扉が開く。予備予選でもなく、地域予選に参加する必要もない。
その代償として、この大会は予選Roundを含めて負けることが許されない。1度の敗北は、トップ8ラインからの脱落を意味するためだ。
迷う必要はない。ただ、勝てばいいのだ。
Team Cygames所属の覚前 輝也はプロツアーの権利はもちろん、次に参加するグランプリフォーマットの練習としてこの大会を位置づけている。対戦相手と向かい合い、プレッシャーのかかった状況で繰り広げられる真剣勝負は、普段の練習とは違ったものである。
対する今中 慎也はMOを主戦場とし、腕を磨く。「PPTQは最近はあまり参加してないんですが。」と言葉は途切れるが、やはりPTQは別格ということだろう。これまで培ったリミテッド感を、今から発揮するだけでいい。
迷う必要も、考える間もない。9回戦、たった9回戦なのだ。
一瞬の風となりて、走り抜けよう。
Game1
先手覚前から《島/Island》を置き合う立ち上がり。続いて《森/Forest》、《山/Mountain》と並べると《エルフの再生者/Elvish Rejuvenator》。ここで《森/Forest》を追加することに成功するが、残りの4枚が呪文と少し嫌な感じ。何より2色目である《沼/Swamp》を引かないことが一番の問題だろう。
対して今中は《島/Island》×2、《沼/Swamp》から《秘儀大全/Arcane Encyclopedia》と、かなりスローな出だし。
《マナリス/Manalith》で待望の黒マナを確保し、《貪欲なハーピー/Ravenous Harpy》を追加する。続くターンには《双頭ゾンビ/Two-Headed Zombie》をコントロールする今中にアタックを宣言する。今中も本体で受けることを告げると、第2メインに《骸骨射手/Skeleton Archer》が追加された。
互いにダメージレースの形を取り、《悪運尽きた造反者/Doomed Dissenter》で時間を稼ぐ。覚前は《苦悩火/Banefire》でクロックを排除すると、ダメージレースを一方的なものに。
盤面で巻き返すために、除去なりクリーチャーなりが必要だが、6マナ揃えた今中はドローゴー。
カウンターも頭をよぎるが覚前は強気に《ペラッカのワーム/Pelakka Wurm》をプレイし、スタックして起動された《秘儀大全/Arcane Encyclopedia》を解決しても、対応はない。
《ペラッカのワーム/Pelakka Wurm》が着地したことで、今中に残された時間はあまりに少ない。メインで構わず《秘儀大全/Arcane Encyclopedia》を起動するが、望んだカードに辿り着かない。
ダメ押しとなる《吸血鬼の君主/Vampire Sovereign》が追加されると、今中は一応ドローを確認し、
「次いきましょう。」
と気持ちを切り替える。
覚前 1-0 今中
Game2
今中がマリガン、覚前はダブルマリガンからのスタート。Game1とは打って変わり、今中が《錆色翼の隼/Rustwing Falcon》、《空中走査器/Skyscanner》、《ペガサスの駿馬/Pegasus Courser》とどんどんクリーチャーを展開していく。色を変更したのではなく、Game1では事故っていただけなのだ。
覚前も《吸血鬼の新生子/Vampire Neonate》、《再利用の賢者/Reclamation Sage》から《垂直落下/Plummet》で膠着させようと試みるが、1枚のレアで状況は一変する。
《ヴァレロンの有印剣/Sigiled Sword of Valeron》が装備されると、小さな隼が上空を支配する。自動的に増え続ける騎士・トークンを前に、加速されたクロックサイズは倍々ゲームどころではない。
《再利用の賢者/Reclamation Sage》は使いきってしまい、《ヴァレロンの有印剣/Sigiled Sword of Valeron》を破壊できない。《殺害/Murder》、《リッチの愛撫/Lich's Caress》で装備元を破壊するが、多勢に無勢。一瞬で覚前のライフは0を割った。
覚前 1-1 今中
Game3
十分な土地と《ヴァレロンの有印剣/Sigiled Sword of Valeron》を対処する《再利用の賢者/Reclamation Sage》と理想的な手札を覚前はキープする。
《錆色翼の隼/Rustwing Falcon》へ間髪置かずに《垂直落下/Plummet》をキャストすると、《呼び覚ます者イザレス/Isareth the Awakener》でプレッシャーをかける。
今中は《錆色翼の隼/Rustwing Falcon》2号機を召喚すると、アタックせずターンを返す。アンタップ状態の《平地/Plains》と《沼/Swamp》を見るに、そうやら《異様な忍耐/Abnormal Endurance》がありそうだ。
覚前も無理に殴らず、クリーチャーの展開を優先。《逆毛の猪/Bristling Boar》こそ《本質の散乱/Essence Scatter》されるが、タフネスの高い《茨隠れの狼/Thornhide Wolves》が通ると、ライフレースが動き出す。
今中もダメージを受け続けるわけにはいかず、《地平の識者/Horizon Scholar》でデッキトップを確認するが、フルタップの隙を覚前が見逃すはずがない。
《呼び覚ます者イザレス/Isareth the Awakener》と《茨隠れの狼/Thornhide Wolves》がレッドゾーンに送られると、《逆毛の猪/Bristling Boar》を呼び覚ます。厄介なリアニメイトクリーチャーの残すわけにはいかず、《地平の識者/Horizon Scholar》を差し出すしかない。
《大襞海蛇/Frilled Sea Serpent》をブロッカーと配置するが、《リッチの愛撫/Lich's Caress》で破壊されると止まらない。《茨隠れの狼/Thornhide Wolves》こそ《萎凋/Dwindle》で対処するが、《貪欲なハーピー/Ravenous Harpy》と《巨大な戦慄大口/Colossal Dreadmaw》という2種の貫通力を前に、今中のライフは少し少なすぎた。
覚前 2-1 今中
覚前、Win!