【マジックフェスト・京都2019】日曜ミシックチャンピオンシップ『バルセロナ』予選 決勝戦:二俣 洋次郎(東京) vs. Qi Wentao(中国)

By Yohei Tomizawa


 日曜日の夜に始まるこの一戦はいつ見ても歓喜と悲哀に満ちており、残酷なほど美しく、尊い。そこにあるのは勝ちと負けの二項対立だが、結果は大きくことなる。

 「準優勝おめでとう」と敗者へと送る軽い言葉は存在しない。決勝戦に挑む2人だけではなく、純粋に勝利のみを追い続けた参加者たち全ての想いが、この一戦へと帰結するからだ。

 多くのプレイヤーは先にある光景を見るために、今日も自身の勝利を疑わずこの大会へと集まった。これより始まる決勝戦は、ここへ辿りつけなかった多くのものたちの想いも含め成り立っている

 だからこそ、この一戦は尊い。


 チー/Qi Wentaoは既にその光景を知るプレイヤーだ。『グランプリ・静岡2017』を含む3度のグランプリトップ8を経験し、これまで計7回プロツアーを経験している。ちょうど『グランプリ・名古屋2018』のサイドイベントで開催されたプロツアー予選を突破したのも、彼であった。

 二俣 洋次郎はその光景をこれから知るプレイヤーだ。「初日落ちへチャンスを与える制度」と表現してくれたミシックチャンピオンシップ予選で、事実決勝戦まで勝ち進んでいる。過去にMOで鍛えた筋肉を今も維持し、PPTQへと参加し続けていたとのことだ。

 かたい握手を交わし、7枚を手に取る。この世で最も尊く儚い時間の始まりだ。


日曜決勝.jpg


ゲーム1

 勝敗のカギを握るのは絶対的メタカード《野茂み歩き》の存在だ。このカードの着地ターンと死活、シナジー織りなす「探検」持ちをどの程度引き込めるかにより戦況は大きく変わる。それこそ「探検」されなければ気に留める必要はないが、一度でもしようものなら火力1枚分のライフと強固な壁を用意されることになる。

 二俣は序盤からイニシアチブを握る。キッチリと2ターン目に《野茂み歩き》を召喚すると《翡翠光のレインジャー》をも召喚してみせたのだ!


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 いきなりの2サイズアップとなり、《溶岩コイル》の射程圏内も超えてしまう。《野茂み歩き》を除去できず同じシステムクリーチャーである《遁走する蒸気族》で応じたチーだが、僅か3ターンで二人の間には埋めようもない差ができてしまっている。ライフも盤面も大きくリードする二俣は、《野茂み歩き》で攻撃を始める。

 《ヴィーアシーノの紅蓮術師》のETB効果で「絢爛」を満たすと1マナで《舞台照らし》をキャスト。《狂信的扇動者》《魔術師の稲妻》とカードカウントは稼げているものの、状況を打開するには至らない。

 二俣が2体のクリーチャーをレッドゾーンへと送り込むとチーのライフは11まで落ちこみ、逆転の布石となり兼ねない《遁走する蒸気族》も《ヴラスカの侮辱》で対処する。

 《遁走する蒸気族》を失ったことで展開力で凌駕することもできなくなり、チーのプランは瓦解してしまう。なんせ手札は4枚とまだ多い。《狂信的扇動者》を追加すると《魔術師の稲妻》で《翡翠光のレインジャー》を除去するのが精一杯だ。

 そして追い打ちをかけるように《採取》で《翡翠光のレインジャー》が回収されると《野茂み歩き》はもう二段階サイズアップする。最早、彼の歩みを止めるものはいない。

 20-6と圧倒的に開いたダメージレースを覆す手段は、チーの手には残されていなかった。

二俣 1-0 チー



ゲーム2

 一瞥すると7枚をデッキへと戻すも

 二俣「ダメ」

と6枚の手札もキープできずダブルマリガン。新たな5枚に《森》しかなく、なんと4枚でのスタートとなってしまう。

 瞬間的なダメージ量と序盤の攻勢ならば、チーのデッキの右に出るものはいない。「スゥルタイミッドレンジ」の本領が発揮されるのは「赤単アグロ」が下降線をたどり始める中盤以降からであり、時間で押すチーのデッキはトリプルマリガンの二俣を咎める。

 《狂信的扇動者》と《ゴブリンの鎖回し》のゴブリンコンビが軽快にクロックを刻み、火力を見舞う。

 ゲーム1では決定打となった《野茂み歩き》も"探検"あってこそであり、トリプルマリガンでは引き込めるのか。

 いや、チーは二俣が"引かない"と楽観視はしない。《稲妻の一撃》で逆転の芽を摘むと、そのまま最速のビートダウンを完遂する。

二俣 1-1 チー



ゲーム3

 《狂信的扇動者》が走り始め《舞台照らし》をキャストするも、豪華絢爛には程遠く《ショック》と土地という2枚が追放される。チーにとっては、これこそが最大の誤算であった。

 唯一にして最大の問題点はチーのクロックが《狂信的扇動者》のみという点だ。単一クロックでは二桁以上のライフを残し余裕をもってミッドレンジの時間帯へと突入してしまう。せめてもう1体、2点以上のクロックを用意できない限り目的地へはたどり着けない。

 行く手を阻むのは二俣の《打ち壊すブロントドン》。ここへ《溶岩コイル》を打ち込むと2体目の《狂信的扇動者》が駆け付け二俣のライフを14とする。

 もう14なのだろうか、まだ14なのだろうか。ゲームのスローダウンを目論む二俣は《強迫》でチーの手札を丸裸にすると《翡翠光のレインジャー》をキャストする。最初の「探検」で《ハイドロイド混成体》が公開され二俣は一瞬悩むも、それを墓地へと置いた。


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 彼が求めているのはゲームの膠着要素でも、中途半端なリソースカードでもない。必要なのはたった一つ、土地だ。二度目の「探検」で無事に土地を加えるとセットランド。確認済の《ゴブリンの鎖回し》もこれで耐えることができる。

 予定調和に《ゴブリンの鎖回し》をキャストしETB効果と《狂信的扇動者》の片割れで《翡翠光のレインジャー》を除去すると、二俣のライフは12へと落ち込んだ。

 だが、再度キャストされた《強迫》でトップデッキしていた《実験の狂乱》を奪われ《ヴラスカの侮辱》がキャストされると、またもダメージソースは《狂信的扇動者》のみとなってしまう。

 チーが《実験の狂乱》をトップデッキしたことにより、戦況は変わるかと思われたが、ライブラリートップに恵まれず、アンタップを経て二俣の手から《暗殺者の戦利品》がキャストされる。そして続くターンに、《ハイドロイド混成体》を落としてまで土地を確保した、二俣の終着点が明かされる。


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 攻防の主導権は完全に二俣の手の中にあり、それはゲーム展開のコントロールへも繋がる。

 チーは紅き《未来予知》である3枚目の《実験の狂乱》をキャストする。本来ならばリソースゲームに持ち込み逆転となるはずだが、《殺戮の暴君》が時を与えず、《ハイドロイド混成体》追加されるとダメージレースが加速する。

 デッキトップから《遁走する蒸気族》が現れ、本来であれば土地が2枚捲れるまで半永久的にスペルを使用できるループ体制を整えるも、すぐにチーの手は止まってしまう。返すターンに《打ち壊すブロントドン》が《実験の狂乱》を破壊すると、いよいよチーにできることは少ない。

 最後の1点までライフを差し出し続いたゲームは止まることない《殺戮の暴君》によって幕が引かれ、そして。

 二俣は、ミシックチャンピオンシップへの入り口へとたどり着いた。

二俣 2-1 チー



 「ミシックチャンピオンシップは目標だったので、この結果は望外でした」

 優勝が決まると二俣は顔を綻ばせ、そう言った。続けて

 「ただ(PPTQ回りなど)競技マジックは辛いな」

 とも。

 そう、ミシックチャンピオンシップへ至る道のりは険しく苦しい。多くの敗北とストレスを乗り越えた先に、少しだけど何物にも代え難い場所がある。

 確かに勝つことが全てではないかもしれない。楽しんでこそのマジックザギャザリングかもしれない。それでも、それでもなお、だ。ミシックチャンピオンシップは選ばれしものしか入場を許されない天上界。そこに広がる世界が文字通り極楽なのか、はたまた地獄なのかは、一つのラインを越え自身が体験しないことにはわからない。

 だからこそ

 「参加してみて、(次のMCQは)判断したいですね」

 と最後に付け加えてくれた。

 今日も多くのプレイヤーはそこを目指して、ミシックチャンピオンシップ予選へと集まった。これまでの苦労も、たった一度の勝利で報われると信じて。

 最後に新たなステージへと立つ勝者を祝し、終わるとしよう。



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日曜ミシックチャンピオンシップ『バルセロナ』予選、優勝は二俣 洋次郎!おめでとう!


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