【マジックフェスト・横浜2019】金曜ミシックチャンピオンシップ『バルセロナ』予選 決勝戦:Xie Zhan(中国) vs. 石附 拓也(東京)

By Riku Imaizumi


メタゲームは、時に生き物に例えられる。
【ドレッジ】の台頭、【グリクシス・シャドウ】の復権、【人間・アグロ】の逆襲。
本日にいたるまで、細かなメタゲームの変遷はあれど、その中心にいたのは【イゼット・フェニックス】であると言ってよかった。


しかし、今、頂点の座を決める席にそれはいない。
雌雄を争うのは、2種類の"部族"デッキだ。


中国から日本まで。比較的近いとはいえ、海を越えてやってきたXieは、同国の仲間数名と共に今大会に参加した。
仲間たちの想いを背負い、彼はミシックチャンピオンシップ『バルセロナ』へ手をかけられるか。


対する石附は東京のプレイヤー。"Hareruya Hopes"宇都宮 巧の所属するグループで研鑽を続けている。
彼もまた、悲願たるミシックチャンピオンシップへの切符を求めている。


背景は違えど、両者の命運は互いの"部族"デッキに託された。
今日に向けて、彼らのデッキは余念なくブラッシュアップされている。メタゲームという生き物の動きに合わせて、適応を繰り返した結果の進化形態と呼べるだろう。
《適者生存》の言葉の通り、進化を続けるモダンのメタゲーム、その最前線は、ミシックチャンピオンシップに届こうとしている、今、ここにある。


429.jpg


石附(左)、Xie(右)


Game 1


石附の《秘密を掘り下げる者》が先陣を切り、


frifinal01.jpg

Xieの《教区の勇者》が立ち向かう。


教区の勇者.jpg


部族の歴史は長い。
本格的なプッシュは『オンスロート』ブロックに始まり、『ローウィン』ブロックでは最盛期と呼べるほどの隆盛を見せた。
その後にも、『基本セット 2014・2015』でスリヴァーが、直近の『ドミナリア』ではウィザードが強化されている。


《稲妻》に《教区の勇者》が撃たれ、《帆凧の掠め盗り》が《呪文嵌め》に捕らわれる。
早くも石附がゲームを掌握し始めたかに見えたが、《魂の洞窟》で打ち消されなくなった《反射魔道士》が押し返すと、石附は《渋面の溶岩使い》で対抗を図った。


Xieの【人間】、石附の【ウィザード】。彼らはマジックと同等の歴史を持つ。
共にアルファ版にまで遡ることができる由緒正しい部族だ。時に大胆に、時に堅実に、両者のサポートカードは増え続け、2019年現在、優秀なデッキ足り得る質と量を得た。
ミシックチャンピオンシップを賭けて、今こそ、どちらが強いか決める時だ。


Xieは《魂の洞窟》を存分に使い、《カマキリの乗り手》で確実に戦線を強化。
石附は制限の解けた《秘密を掘り下げる者》を再び唱えるが、その差は歴然。2/3の《反射魔道士》、3/3の《カマキリの乗り手》を従えるXieに、1/1の《秘密を掘り下げる者》《渋面の溶岩使い》で立ち向かわなければならない。


共に"部族"デッキとはいえ、その性質は大きく違う。
Xieが駆る、土地と《霊気の薬瓶》以外全てのカードが"人間"クリーチャーで構築されているアグロ・デッキに対し、石附が手に取るのは《秘密を掘り下げる者》《損魂魔道士》を中心に火力とカウンターをふんだんに入れたクロック・パーミッションだ。
クロック・パーミッションはクリーチャー・デッキを苦手とすることに加え、《魂の洞窟》がその戦略を打ち砕く。


426.jpg


【人間】を駆るXie


Xieの攻撃に対し、石附は《呪文づまりのスプライト》で応戦、微力ながら《カマキリの乗り手》の攻撃を止めると、《渋面の溶岩使い》がそれを狙い撃つ。3/3飛行を失ったことで、盤面の勢力図が塗り替りを予感させる。


ターンを迎えた石附だが、《秘密を掘り下げる者》は"変身"しない。
このウィザードは気まぐれだ。これまでのスタンダードやモダン環境においても、《秘密を掘り下げる者》は気まぐれに"変身"し対戦相手の瞬殺を成し遂げることもあれば、"変身"の気配も見せずにオーナーの瞬殺を傍観することもある。


石附には《変わり谷》がいる。このウィザードで攻撃に向かうと、2枚目の《秘密を掘り下げる者》を戦線に投入。


マナフラッドの気を見せるXieは、《地平線の梢》2枚を犠牲に手札を補充。
ターンを手にしたが、これにより使えるマナはわずかに3に絞られた。土地を除けば、彼の盤面には《反射魔道士》のみで、石附の《秘密を掘り下げる者》と《渋面の溶岩使い》への対抗としてはあまりに心許ない。
しかし、決定的なアクションを持たないXieは、ひとまず《貴族の教主》を追加する。
続けて《翻弄する魔道士》をプレイし――考えた末、指定は《魔術師の稲妻》。


一方の石附、盤面の有利は概ねとったものの、肝心の手札がない。《秘密を掘り下げる者》の"変身"も成功しない。
せめて、と石附は《沸騰する小湖》で不要なデッキトップをリフレッシュ。
《秘密を掘り下げる者》が"変身"しないということは、石附が引いているカードは、土地か、あるいはクリーチャーカードということになる。現時点で石附の土地は5枚並んでいた。クロック・パーミッションの土地としては少し多すぎるほどだ。


425.jpg


【ウィザード】を操る石附


《渋面の溶岩使い》で《翻弄する魔道士》を除去すると、その他《変わり谷》含め攻撃へ。


今回のゲームでは、《秘密を掘り下げる者》が本気を出さずとも、《渋面の溶岩使い》が八面六臂の活躍を見せている。
これに触ることができないXieは、一向に盤面を構築することができずにいるままだ。
しかし、石附のクロックはどうしようもないほど大きいわけではない。今のうちになんとか攻めきれれば、Xieにはまだまだ勝ちの目があった。
《カマキリの乗り手》《サリアの副官》《軍勢の切先、タージク》。彼のデッキには、石附を打ち砕く手段が残っているのだ。
だが、唯一居座っていた《反射魔道士》が《稲妻》に焼かれた瞬間が、"彼"にとってのスイッチだったらしい。


いまや《昆虫の逸脱者》と化したそれが、Xieのライフを削り取る。


Xie 0 - 1 石附


ゲームの開始時では、商品分配に会話を始め、お互いを激励していた両者だったが、ゲーム間では打って変わって緊張が噴き出していた。
苛烈なシーソーゲームを制した石附は、次にかかるプレッシャーに表情の強張りを隠せない。
あと1勝。たったそれだけでミシックチャンピオンシップへ行けるのだ。
一方で、Xieの緊張はひとしおだ。メタゲーム上ではなかなかお目にかかれない【ウィザード】が相手ともなると、ただでさえサイドボーディングに慎重にならなければならないのに、1ゲーム目を落とした今、もはや後がない。


サイドボードのカードを吟味し、入れ替え、デッキを切る。
張り詰めた空気の中、石附の口から漏れた。


「相棒なんですよ」


《秘密を掘り下げる者》。
モダン、レガシー、ヴィンテージと、リーガルな環境では必ず使っている。《秘密を掘り下げる者》を愛し、共に数多く戦い抜いた。その経験、自負、その他あらゆる積み重ねが、今の彼をこの舞台に押し上げたことは疑うべくもない。


バルセロナへ。
遠く欧州で開催されるミシックチャンピオンシップへの道は、いよいよ開かれようとしている。
もちろん、石附に対してとは限らない。次のゲームではXieが先手を撃つ。


Game2


Xieの静かな「Good Luck」でゲームが幕を開ける。
両者に武運を。


Xieは初手をデッキに戻した。クリーチャー、除去、ドローとバランス良く揃った石附のデッキは、ゲーム2ともなれば不要カードが消え去り、更なるブラッシュアップが予想される。突き崩すには隙の無い手札が必要だ。


Xieが《魂の洞窟》から《霊気の薬瓶》という最高のスタートを切ると、石附は《秘密を掘り下げる者》。アクセル全開、続くターンに《稲妻》を公開して《昆虫の逸脱者》への"変身"を遂げた。


2ターン目に動けなかったXieの顔が強張る。
《昆虫の逸脱者》が攻撃したエンドフェイズ、カウンター1個が乗った《霊気の薬瓶》から、クリーチャーが、出ない。


3ターン目にしてドローに力が入るXie。
前へ、勝ちへ、バルセロナへ。その思いを背負ったのは《拘留代理人》だ。


打ち消すことができない石附、《引き裂く流弾》で抗うが、《霊気の薬瓶》から《幻影の像》を追加したXieが一枚上手。《拘留代理人》本体は焼失するものの、幻影の《拘留代理人》が《昆虫の逸脱者》を捕らえた。
しかし、石附も負けていない。《イゼットの静電術師》で《拘留代理人》=《幻影の像》を撃墜、相棒《秘密を掘り下げる者》を再び呼び戻す。


土地を置くと、《カマキリの乗り手》をプレイ、攻撃するXie。手札は1枚に。
《秘密を掘り下げる者》、今回は変身しない。


石附は《魔術師の稲妻》で《カマキリの乗り手》を撃破するが、クロックは1点だけと寂しい。
それどころか、Xieが《幻影の像》で《イゼット静電術士師》をコピー。《秘密を掘り下げる者》が叩き落される!


強烈なクロックの断絶に合う石附だが、本家の《イゼットの静電術師》が即座に《幻影の像》に対処し、冷静に2枚目の《秘密を掘り下げる者》をプレイする。
Xieも2枚目の《カマキリの乗り手》だ。一撃は喰らうが、ターンを迎えて《稲妻》で対処。


攻防の末、盤面にさしたる変化がないままターンが進んでいく。
しかし、手札は共に絞られてきていた。それに加え、《変わり谷》《秘密を掘り下げる者》が着実に刻むクロック、対して《カマキリの乗り手》たちが報いた一矢により、両者のライフも着実に減ってきている。


数ターンが経過したが、《秘密を掘り下げる者》は変身しない。
石附が攻撃宣言を行うと、Xieは《地平線の梢》を起動。有効なクリーチャーを引いて、《霊気の薬瓶》から《秘密を掘り下げる者》をブロックする目論見だが――ここに現われたのは《敏捷な妨害術師》!
サイクリングによる誘発能力で、《地平線の梢》のドローは不発に終わり、そのままダメージが叩き込まれる。Xieの動きを封じる、まさにクロック・パーミッションの真骨頂とも呼べる動きだ。


ターンを迎え、手札を2枚に増やしたXie、《軍勢の切先、タージク》で攻撃に行く。《カマキリの乗り手》たちのダメージを無駄にしない攻め方だ。


石附のターン、《霊気の薬瓶》から登場した《反射魔道士》が《秘密を掘り下げる者》を手札に返す。しかし、《変わり谷》の攻撃はそのままスルー。Xieへのダメージの軽減よりも、返すターンの《軍勢の切先、タージク》と合わせた、石附への6点のダメージを優先した。


石附のライフは残り4点。Xieのバルセロナへの道は、あとたったの4点だ。
自分のライフが無くなる前に、《秘密を掘り下げる者》が"変身"を遂げる前に、攻め切らなければならない。
Xieの表情に、一際緊張が走る。


押し込む。


考えていたことは、両者同じだった。


《秘密を掘り下げる者》が"変身"しないということは、石附が引いているカードは、土地か、あるいはクリーチャーカード。


Xieのエンドフェイズに《敏捷な妨害術師》。
続くターン、《瞬唱の魔道士》が現れると、


バルセロナへの道は、石附の前に開いた。


Xie 0 - 2 石附


メタゲームは、時に生き物に例えられる。
"台風の目"とされたのは【イゼット・フェニックス】。そのデッキがミラー・マッチや【ドレッジ】対策に《はらわた撃ち》を《外科的摘出》へとシフトさせていった結果、盛り返してきたデッキが【人間】であるとも言われている。


その結果の通りかどうかはともかく、Xieが正しい取捨選択をして、この日の"適者"となったのは確かだ。
ただし、最後まで"生存"したのは違った。
火力呪文を大量に擁する【ウィザード】が、この戦場を勝ち抜いた。


結果が全てだ。
ミシックチャンピオンシップへ行けるのは、石附ただ一人。


ゲームが終わると、Xieのもとに仲間が集まった。惜敗に耐えるXieを慰めるのもつかの間、そのまま反省会が始まった。


結果が全て、とは言ったが、次はどうなるかわからない。
メタゲームは生き物だ。
御しきるために、これからも彼らは研鑽を怠ることはない。


しかし、今日ばかりは、その生き物を制したプレイヤーにエールを送りたい。
石附の仲間は、彼を祝勝するために、横浜の地へと繰り出した。「待ってよー」という声が聞こえた。


次回はバルセロナ。横浜の地を飛び出して。


マジックフェスト・横浜2019 サイドイベントカバレージページ


マジックフェスト・横浜2019 TOPページ

関連の記事

他の記事

『他のカードゲーム』と同時購入の際は、こちらのカートを総合レジに移動させてから『他のカード』の購入をお願いします

合計 0 種類 0
0

Coming Soon!
under development

Coming Soon!
under development

合計 0 種類 0
0