2015/11/17 長毛のソクター - Card of the Day -今日の1枚-

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長毛のソクター/Woolly Thoctar

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 GP神戸、日本国内でももう既に6度も開催されている定番イベントである。7度目の今回・GP神戸2015のフォーマットはスタンダードだが、なんとこの地でこのフォーマットのGPが開催されるのは初の出来事。これまではブロック構築やリミテッドにモダン、そして...今は無き、思い出のフォーマット・エクステンデッドにて開催されていたのだ。今日はそんなエクステンデッドにて開催されたGP神戸09の優勝デッキ「ナヤZoo」に採用されていたカードについて書いていこう。《長毛のソクター》だ。3マナ5/4という、何一つ能力を持っていないがその巨体こそが異能のクリーチャーだ。『アラーラの断片』は1つの次元が5つの断片に分断され、そのそれぞれが3色のマナしか持たず独自の進化を遂げた...という背景世界を持っている。このソクターが属する断片は、緑を中心にその友好色である赤と白のマナをベースとしたナヤ。一面をジャングルで覆われたこの断片には、数々の巨獣達が生息している。これらの怪物はガルガンチュアンと呼ばれ、そこに住まう人間やエルフ達から神聖視されている。この背景世界に基づいてデザインされたナヤの緑赤白のカードは、ガルガンチュアン信仰=巨大なクリーチャー・具体的にはパワー5以上のそれをコントロールしていることでボーナスを得られるというものが主となっている。『タルキール覇王譚』の"獰猛"のご先祖様だ。で、このソクターはそれらパワー5以上のクリーチャーとシナジーを形成するカードの恩恵を得るための火種。3色とは言え3マナでパワー5のクリーチャーが得られるのは破格だ。《モストドン》《熊手爪のガルガンチュアン》《血茨のなじり屋》その他もろもろでトランプルや先制攻撃、速攻など戦闘力を高める能力与えてやるもよし、《あふれ出る火焚き》《鼓声狩人》らの能力起動の条件を満たしてもよし、《メイエルのアリア》でなんだかすごいことになっちゃうのを狙ってもよし。


 ただ、そんなことを抜きにして、何度も言うが3マナ5/4。このカードの登場まで、これほどのスペックを誇ったカードは稀有な存在だった。《包囲の搭、ドラン》か、あるいはとてつもないデメリット持ちくらいしかおらず、それらと比べて伝説でなくバニラであり、しかもレアリティはアンコモンという事実は...インフレを感じずにはいられなかった。塗族シナジーを活かした強力なクリーチャー群が揃ったローウィン・ブロックを経て、単騎で完結した強さを持ったクリーチャーへ...まあ、今となっては「3色のカードなんだからこれぐらいは当たり前」と思ってしまうが、その当たり前という新しい価値観を打ち出したのはこのカードだと個人的には思っている(あと、同サイクルの《ロウクスの戦修道士》)。

 このカードが4枚投入された「ナヤZoo」でエクステンデッドのGPを勝利したのは皆さんご存知、齋藤友晴さん。当時の彼の戦術記には、《野生のナカティル》《タルモゴイフ》らと並んでこの《長毛のソクター》もデッキに4積み必須の主力であると書かれていた。ここまで絶賛されたバニラクリーチャーってのもなかなかないな。

 今回長いのは承知だが、どうしても紹介しておかねばならない逸話がこのカードにはある。そもそも、3色3マナバニラというカードは、ソクターというビーストではなく、ナヤに住む猫のヒューマノイド・ナカティルの戦士として作られる予定だったのでイラストもまさしくナカティルの戦士が剣を手に咆哮しているものだった。しかし開発が進み、このカードのサイズは猫族に相応しくない5/4へと膨張。そこでイラストを差し替えてビーストに変更しよう、と2マナ2/2バニラのために用意されていた角の生えた毛むくじゃらの獣のイラスト...このカードの現行イラストに差し替えられたのだ。元は2/2だったとは...今となってはとてもそうは見えない。ちなみにその2/2バニラにはエルフのイラストが充てられ、ナカティル戦士は紆余曲折を経てコンバットトリックに採用されることとなった。それぞれ何かわかるかな?

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