入り海のイカ/Gulf Squid
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個人的に大好きなアーティストであるWayne England先生の追悼ウィークとしてやってきたこの一週間。好きなカード、人気なカードと紹介させて貰ったが...書いてきて、改めて先生の存在の大きさ・マジックへの貢献というものを感じた。最後に紹介する1枚は、やはりデビュー作が相応しいかなと。『プロフェシー』の《入り海のイカ》について、語ろう。
4マナ2/2と青にはよくあるサイズ。戦闘に関するキーワード能力は持っていないため、ここは何かしら特殊な能力を持っているのに期待したいところだが...なかなかに珍しいものを持っている。こいつが戦場に出た時、対象プレイヤーがコントロールする土地をすべてタップする、という誘発型能力。相手の土地をタップすることで、マナを締め上げる。これによりコンバットトリックのない戦闘や、打ち消しなどの妨害が飛んでこない第2メインを送ることが出来る。...ん~、地味に弱い!これ単体で見ると、ソーサリータイミングで自分のターンのみ対戦相手のマナを奪う...それも土地だけなのでクリーチャーヤアーティファクトからのマナは奪えない。それに4マナ支払うのは...うん、弱いね。だがちょっと待ってほしい。これが登場したウルザ・マスクス期のスタンダードには、これを用いたデッキがちゃんと存在したのだよ!その名も、「イカロック」。ど真ん中直球なネーミングだ。やることは、①イカを《流転の護符》or《ベルベイの門》で相手のターンのアップキープに戦場に→②土地がタップされ、相手はメインで動けず→③イカを《時間の名人》で手札に戻す→④以上を繰り返す!...弱い!インスタント除去2枚をススッと使えば簡単に溶けるロック!盤面のクリーチャーは何も気にせずアタックしてくる!と、ネタデッキの域を出るものではなかった。
後年、パーマネントを複数用いたこの「イカロック」コンボを嘲笑うかのような、カード1枚でこの複数パーマネントを使用するマナロックを完結させてしまう上に打点も高いフィニッシャーとなるカード《霧縛りの徒党》が登場。イカとフェアリーの間には大きな隔たりがあるのだ...。
イラストに描かれているのは、デカそうなイカ...というかオウムガイっぽいクリーチャー。入り海というのはそのまんま、陸地をえぐる様に浸蝕した海、入り江のことだ。海流、波の影響を受けにくい、比較的穏やかな海中には独自の生態系が形成される。このイカは、その食物連鎖の上位にいそうな風貌だ。動き自体は巨大な貝殻から連想される通り鈍そうだが、多数の触手を使って海底を打ち砂泥で煙幕を張り、相手の自由を奪ったところで残った食腕で獲物を絡めとるのだろう。イカの仲間は賢いからね。ただフレイバーを読むと、そのパワーを無駄遣いしている節があるらしい。あいつは無敵だろうよと書かれているが、フルパワー状態のイカは果たしてどんな能力に?霧縛りも目じゃなかったりするのだろうか。
思えば、『プロフェシー』を剥いて飛び出たこのイカのイラストを見て「味があるなぁ」と出会ってからはや16年。多数の作品で楽しませてもらいました。今後Wayne Englandという偉大なアーティストが描く作品が増えることはもうないが、彼が生み出したクリーチャーや呪文は、カードという形で永遠に残り続ける。ご冥福を、心から祈るばかりである。