メタモルフォーゼ/Metamorphosis
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カードに大事なのは、インパクトではないかと思う時がある。やはり人間は視覚から入る生き物、全ての入り口は見た目だ。パックを開けてカードをシャッシャッと見ていったとして、やはりインパクトのあるイラストが目に留まると思う。レアリティや強さに関係なく、すごいイラストのカード達。たった一瞬の注目を引くだけでも、彼らは成功していると言える。そして、そうしたカードは忘れられることがない。いつまでも、1枚絵として記憶に残り続ける。しょうもないことが書かれているテキストと共に...僕にとっても、そんな1枚がある...。
《メタモルフォーゼ》は、『アラビアンナイト』にて登場したコモンだが、僕ら日本人としては日本語で発売された『クロニクル』のそれの印象が強い。何せ、カード名。「メタモルフォーゼ」って、すごい名前だ。《稲妻》《火の玉》《対抗呪文》《暗黒の儀式》...《メタモルフォーゼ》!横文字の強烈なインパクト、そしてイラストだ。このイラストよ、もうインパクトしかない。Christopher Rush御大のパワー爆発、ザ・グロテスク!男の顔がドロリと溶けてコブラの顔と一つに...悲鳴で開いた口が、毒牙を閃かせる魔物のそれへと変化する...SFやホラー映画のワンシーンかのような、インパクト抜群のこの絵を、生涯忘れることはないだろう。
このパンチ効きまくっているイラストに添えられている能力は、これまたワンパンツーパン効いていて素晴らしい。緑1マナのソーサリー、クリーチャーを1体生け贄に捧げると、それのマナコストに1を加えた点数の好きな色マナを生み出せる。このマナはクリーチャーを唱えるためにしか使えない、というのがポイント。Aというクリーチャーが後続のBへと生まれ変わる、という過程を表現した1枚だ。これで生み出したマナはカード2枚分使って捻出したもの。せっかく得たマナは可能な限り、大型で勝負を決められるクリーチャーに繋ぎたい。これを《剣を鍬に》とかで弾かれたら、1:3交換されたようなもんだ。...そう、されるんである。ど、どないしようもない弱さや!当時は除去体制の高いフィニッシャーなど存在しないため、わざわざこんなカードを使用することは負けに行ってるとしか言えない行為。
時代は流れて、カードのバリエーションが大幅に増えた現在。例えば、《スカイシュラウドの切断獣》。《森》があれば1ターン目に《メタモルフォーゼ》して5マナ生み出すことが可能だ。《災難の大神》でも叩き付ければ、そのまま勝てるゲームもあるだろう(ないことも多いが、そこは日頃「ベルチャー」でも回して耐性をつけてくれ)。こういったカードに書かれた値よりも安いコストで戦場に出せるクリーチャー、クリーチャーが死亡することでアドバンテージを得るカード、叩き付ければ勝てるフィニッシャーなど、23年が生み出したあらゆる傑作と組み合わせれば...いや、ないか。過去、ダメなカードランキングTOP100という記事で42位にランクインしたこともある。ただ、今ならもっと酷い後輩たちがいるような気もするが...。
英名は《Metamorphosis》。魔力や超自然力がもたらす変形、変質、変態といった意味を持つ。これが「メタモルフォーゼ」と訳されたわけだが、その後なんと《Metamorphose》というカードが登場。真のメタモルフォーゼは、《変態》という日本語名となった。因みにMetamorphose/メタモルフォーゼの意味は「(~を)(~に)変態させる」。この2枚の関係は面白く、それぞれ日英で統一してメタモルフォーゼ8枚デッキなんて作ってみたいものだ。
後にまさかのリメイクで《食物連鎖》が登場。こちらも長らく、《メタモルフォーゼ》と同様の扱いを受けていたが...ゴブリンやグリフィンという相方を得て押しも押されもせぬナイスカードとなった。メタモルの時代もこれから!インパクトだけはあるから!