イーサンの影/ Ihsan's Shade

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イーサンの影/ Ihsan's Shade

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Christopher Rush御大を偲ぶ一週間。開幕を《情け知らずのエロン》で迎えておいて、また『ホームランド』の伝説のクリーチャーを紹介!?と思われる方もいらっしゃるかもしれないので、まずは事情を説明したい。長きに渡り数多くのアートを提供してきたRush御大だが、彼の手掛けた伝説のクリーチャーは少な目で全部で8枚。そのうち...実はすでに《Ur-Drago》と《1996 World Champion》は当コラムで紹介済み、残る6枚のうち3枚が『ホームランド』産、そしてイラストも能力もカッコイイのが《イーサンの影》なのだから、これはもうしょうがない!というわけで今日の1枚はこの亡霊騎士についてのお話。

エロンの回でも触れたが、『ホームランド』出身で構築シーンで活躍したカードというのは、その事実を誇って良い。それだけカードパワーが抑えられたセットだったということだが、この《イーサンの影》はなかなかに強く、同セット内では随一の輝きを放つ1枚であった。トリプルシンボルの6マナと重いが、5/5というサイズにプロテクション(白)を有する伝説のクリーチャーだ。能力としては以上、なのだが、当時の除去とクリーチャー事情を考えるとこれでも強力。黒という除去の色が今のように何にでも触れる万能カラーではなく、同じ黒のクリーチャーに対しては何もできなかった。なので《恐怖》系のカードを受け付けず、他の色での定番除去であった《剣を鍬に》《稲妻》はプロテクションと高タフネスでものともしない、という抜群の除去耐性を誇っていた。そのまんまデカい《黒騎士》であり、《暗黒の儀式》などのサポートにより戦場に出れば、後はドスドスッと殴ってゲームを終わらせるフィニッシャーには持ってこい、「ネクロディスク」などで使用されていた。

ホビージャパンにより行われたキャンペーンにより、本来日本語版が存在しない『ホームランド』のカードでありながら、日本語名とテキストを授かり復刻される。当時強かったこと、またRush御大による圧倒的な存在感を放つイラストから人気カードであったため、このカードが選ばれるのも当然と言えば当然であった。このフレイバーテキストにはイーサンを裏切り者であるとし、彼への呪詛の言葉が連ねられている。それでは、この亡霊騎士が何者なのか、お話ししよう...。

イーサンは『ホームランド』の舞台である次元ウルグローサの都市アイゼンの生まれ。この次元の悪しき存在・男爵領に住まう闇の男爵を倒す、という幻視を経験し、セラの聖騎士団の一員となる。長年の努力の末に正式に団員となった彼は、聖騎士としての務めを果たした。そして、幻視したあのセンギアの男爵領に挑む日が来た。この地を統べるセンギア男爵に対し、彼は...剣を抜いて切りかかる、どころかなんとその前に跪いて見せた。実はこれは彼の作戦で、永遠の命を持った吸血鬼となることを懇願し、それにより得た永遠の命・強靭な魔力を用いて男爵を倒す、そのためには自分がたとえ悪しき存在に堕ちてしまってもかまわない、という危うき考えに基づいたものだった。

こんな浅はかな考えは男爵はお見通しで、その血を吸われた挙句、魂を指輪に封じ込められ、肉体はシェイド(亡霊)へと変えられてしまう。これにより、イーサンは自我を持ちながら永遠に生きる操り人形と化してしまう。これからは男爵の手となり足となり、吸血鬼のために人間へと刃を向ける、青白い巨人として永遠に生きるのだ。そして、味方だった聖騎士達からは裏切って怪物となった男として、永遠に憎まれ続けるのである...。最高にかっこいいイラストから感じられる哀愁は、この背景設定が反映されているのだろう。彼の未来は同セットの《Prophecy》にて文字通り預言されている。『ホームランド』のストーリーはヘビーで面白いので、興味を持った方は調べてみよう。

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