Splintering Wind

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Splintering Wind

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風の性質が変わってきた。1,2月の風は厳しい。刺すように、斬るように。明確な攻撃性を持って吹いている。それが3月も半ばになるとどうだ、ふんわりと柔らかく、撫でるような風で心地が良い。この季節に柔らかな風が吹くと「春一番」という単語を想起してしまいがちだが、実はこれは2月~3月に強く吹く南風のことで、その日は温かくなるも翌日は気温が下がることが多い。そよ風の類とは別物である、ということを覚えておいて損はないぞ。今週はそんな、心地よさの象徴・春風からテーマを取って「風ウィーク」。やってそうでやってなかった、シンプルなお題でいってみよう!

いきなり激しいイラスト、絵師は勿論Ron Spencer。僕はやっぱり、この人の絵が好きなのだ。何やら葉っぱのような羽を持った、邪悪そうな精霊がその膨れ上がった腹から刺のようなものを弾き飛ばしている。そのカード名は《Splintering Wind》。日本語名をつけるとすれば「引き裂く風」とでもなろうか。緑のエンチャントで、イラストのテンション同様、かなり独特な能力を持った1枚に仕上がっている。

4マナで設置し、3マナで能力を起動とコスト周りは重め。錠剤型能力や誘発型能力は持たず、この起動型能力を複数使ってナンボである。その能力とは、対象のクリーチャーに1点のダメージを与えつつ、「裂片」トークンという、このカード専用のクリーチャートークンを生み出すというもの。この裂片は、緑の1/1で飛行を有している。クリーチャーにダメージを与えられるため、除去となるし戦闘を円滑に行うことも出来る。それに加えて1/1の飛行持ちを得られるのだから、3マナと起動コストが重いのも止む無し。小粒を除去しつつ大物をチャンプブロックできる、かなり防御的な1枚。捌き切れたりマナが溢れるようになれば、攻めに転じることも出来るだろう。

ただ、問題もある。この裂片、アイスエイジ・ブロックのカードらしく、"累加アップキープ"を持っている。この能力は、アップキープの開始時に誘発し、それを持つパーマネントに経年カウンターを1個置き、その後その数に等しい倍数の累加アップキープコストを支払わない限り、それを生け贄に捧げなければいけない、というもの。ターンを経るごとに、維持するのが難しくなっていくというわけ。即ち、このカードの能力で得たトークンは、複数回アタックするのが難しい・そこまでする価値がないということ。

そして、だからと言って生み出したトークンをさっさと破棄して良いのかというと、それにもリスクは伴う。このトークンは戦場を離れた際に、そのコントローラーと自軍クリーチャー全てに1点のダメージを与えるという、謎のデメリット持ちでもある。死亡ではなく戦場を離れたら誘発するのも辛いところ。複数トークンが並んだ場合、累加アップキープに手が回らなくなって1体弾けてしまった場合、残りの全裂片があなたの身に突き刺さる。痛すぎるだろうよそれは。

どちらかと言うと使えない方に分類されるカードだが、面白い独自性も持ち合わせている。この裂片、英語名はSplinter。これに対してカード名を参照する、例えば《撲滅》を撃ち込んだとする。《撲滅》の効果で、あなたの手札・墓地・ライブラリーから同名のカードが追放されるわけだが...普通、トークンと同じ名前のカードは存在しない。しかしこのトークンには、その英名が全く同じSplinterであるカードが存在する。《木っ端みじん》だ。この呪文は、この裂片トークンに撃たれた《撲滅》で、追放されてしまうのだ。まさしくバグ技とでも呼ぶべき動きで、こういう奇妙な相互関係があるからマジックは面白い。生きているうちに、このシーンが実際に起きたゲームに遭遇してみたいものだ。

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