北の樹の木霊/Kodama of the North Tree
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妖怪の魅力。これに取りつかれた...憑りつかれたという表記が正しいか、憑りつかれた子どもは数知れず。先日亡くなられた、水木しげる先生のパワーはとんでもないものだったなぁと。僕も先生の妖怪図鑑が放つ怪しい魅力に憑りつかれた子どもの一人だった。小学校の図書で毎回のように借りては、文字通りバケモノじみた画力で描かれた妖怪たちの怖さ・気味悪さ・それでいてユーモラス、かわいさを併せ持ったその姿を眺めて惚れ惚れしたものだ。そこから、江戸に描かれた妖怪絵巻の類にも興味を持って...妖怪という存在によって今の自分の感覚・価値観が形成されたといっても言い過ぎでは決してあるまい。今を生きる子ども達が、某妖怪キャラクターに熱中しているのも、妖怪大好き少年だった人間としてはうれしい限りだ。
そんな僕にとって、和のテイストをメインテーマとした神河ブロックは好ましいものであった。人と対決するのは、神と呼ばれるものたち。この神々は次元テーロスの神とはまた違った、日本の八百万の神・妖怪の要素が強いもので...言うまでもなくど真ん中ストライクだった。特に、マジックで活躍している欧米のアーティストの方々が妖怪を描くというのは、色々と豪勢でたまらなかったものである。ただ、はき違えたジャパニーズテイストを醸し出しているイラストも多かったのも事実。それはそれであくまで日本ではない「神河」という独自の世界観を生み出していて好ましくあったりもするが、多くの日本人には「うーん」と受け止められていたのも事実。ただ、そんな似非ジャパンカード群で、ジャパニーズクリーチャーとはかくあるべし!というお手本のような、それでいてマジックらしさも同居したパワフルな魅力に満ち溢れたイラストのカードが1枚。《北の樹の木霊》だ。このカードのイラストを担当したのは、日本のイラストレーター・獅子猿氏。氏の描いた、神河の森林地帯に住まう樹の霊の姿は、植物と爬虫類の融合体のような身体におかめの面や巫女装束のようなアイテムをまとい、灯篭を浮遊させた、まさしく妖怪な出で立ち。
この伝説のスピリットはその迫力満点のイラスト通り、強力なクリーチャーであった。緑のトリプルシンボル5マナで、6/4被覆トランプル。クリーチャーインフレを経験した現代のプレイヤーから見ても、なかなかに強力に見えることだろう。当時は本当に、信頼のおける素晴らしいアタッカーだった。今でこそ呪禁が最高の除去体制であるが、この時代はまだ呪禁も被覆もキーワードになっておらず、「~は呪文や能力の対象にならない。」と書かれていた被覆のほうが圧倒的に多く存在していた頃。ベストと言える除去体制とパワー6にトランプル、欠点といえば《梅澤の十手》を装備できないことぐらい。
神河には東・西・南・北・そして中と5つの樹があり、それぞれに木霊が存在したようだが、カード化されたのはこの北と南、中の3種のみ。またいつか、東西に会える日は来るか...?