Basal Thrull
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マジックには数多くのクリーチャー種族が登場する。人間、ドラゴン、天使、エルフ、ゴブリン、ゾンビ...ファンタジーの常連や、スリヴァー、マイア、ヴィダルケン、エルドラージといったマジックオリジナルのものまで、多元宇宙には多種多様なクリーチャーが生息している。今日はそんなマジックオリジナルズの中から、あまりスポットライトの当たらない種族を紹介しようではないか。スラル。元々は次元ドミナリアにかつて存在した宗教国家、漆黒の手教団が生み出した人工生物。次元ラヴニカにおいてもこれと同様のものが、オルゾフ組とラクドス教団で作られている。基本的に知性に乏しく戦闘力も低い存在で、数枚を除いて2/2以下のサイズ。このクリーチャーは何故作られるのかというと、基本的には奉仕用だ。教団やギルドの雑務を担う、いわば奴隷的な人工生命。漆黒の手教団が生み出したそれは、教団の宗教的指導者トーラックへの捧げものとしての意味合いも大きく、『フォールン・エンパイア』では実際に自身を生け贄に捧げることで何かを得る能力を持ったスラル達が複数登場した。今日はその中から、Christopher Rush御大がイラストを担当した《Basal Thrull》を紹介しよう。
実はこのカードには、4種類ものイラストが存在する。いずれも同一エキスパンションに封入されて、だ。『フォールン・エンパイア』にはこうしたコモンカードが多数存在した。多角的に背景世界の雰囲気を伝えたかったのだろうか。コレクターとしては楽しいけど、ドラフト向きでは全くなくて今のプレイヤー皆怒るだろうなぁと思う。この《Basal Thrull》はKaja Foglio・Phil Foglio・Richard Kane FergusonそしてChristopher Rushの4名によってイラストが担当されている。コミカルだったりダークだったり、いずれも魅力的なイラスト揃いなのだが...個人的にベストはRush御大のもの。爬虫類型ヒューマノイド、深海魚・エイリアン、古代エジプトの墓に住まう魔物...様々なファンタジー要素を想起させる、素敵なバケモノの顔のアップ。背景もシンプルに油絵の具で塗った緑一色というのがまた良い、御大のサインが作品の一部として映えるというもの。個人的にはRush御大の作品の中でも1,2を争う好みのイラスト。最近のクリーチャーは全身像が明らかにされているものがほとんどだが、こういう想像の余地を残すイラストが多かったかつてのそれも味わい深くいいものだ。
カードとしては、前述の通り生け贄に捧げる起動型能力を持ったスラルである。黒のダブルシンボルで2マナ1/2、タップして生け贄で黒マナを2つ生み出す。即時性はないが、次のターンに使えるマナを2つ増やす、タイムラグ付きマナブーストだ。今見ると、なかなか悪くないカードに見える。昔よりもマナコストが重いカードが格段に強くなったから、マナが伸びることの意味合いが大きい。ただこのカードが登場したころは、これを遥かに上回る《暗黒の儀式》があった頃。単体でのスペックも低く、ブーストとしても即効性がないとあって、おそらくはスラルデッキを組む時ぐらいしか出番はなかったことだろう。今なら、様々なカードとの組み合わせで無限コンボが組めるので統率者戦なんかだと出番があるかもしれない。やはりタップが必要なのが相当にネックだが...。
『時のらせん』ではこのカードの能力と名前を引き継いだ《基底スリヴァー》が登場(基底=Basal)。しかしこちらのスリヴァーは、能力の起動にタップが不要ときたもんだ。これには、スラルの生みの親であるエンドレク・サールもビックリ。フレイバーテキストで彼が言うには、スラルはおぞましくなければならないとのこと。見ているものに恐怖と嫌悪感を抱かせる必要があるのだとか。このスラル、僕はこれらと真逆の感情を...愛嬌を感じるのだけど、皆さんはどうだろうか?もしかしたらスラルとしては失敗作なのか?そうならすぐさまマナに変換され、次のスラルを呼び出す媒介とされてしまうことだろう。