マジックとの距離の図り方~30代既婚者がマジックと向き合う話~
タグ:日下部恭平, 読み物こんにちは!いつもBIGWEBにて記事を書かせてもらっているくーやんこと日下部といいます。
今回はいつも書いているカードの値段の話やデッキの話では無く僕自身や僕の周りで起こっていることについて想うことを書かせてもらおうと思います。
いつも記事を読んでくれている方や戦略的な知識を得たい方にとっては、的外れな内容やネガティブなことにも少し触れている内容だと思うので、そのままこの記事を閉じて読み飛ばしてもらっても構いません。
BIGWEB情報サイトには他にも読み応えのある記事がたくさんありますからね!
それでは、ここからは思ったことをありのままに書かせてもらいます。
1.
まず初めに、改めて自己紹介しますと僕は『エクソダス』から本格的にマジックを始めてそれ以降ずっとマジックを続けています。
この記事を書いている2017年現在で満30歳、既婚者です。
「MTGをはじめとしたカードゲームを販売する」という特殊に聞こえるような仕事をしてはいますが、要は一般的な会社員です。
マジックでの主な戦績は幾つかのGPを3敗で終えたことがあるくらいと、ワールド・マジック・カップ2013予選で運よく優勝し日本代表になったことがあるくらいで、強さで言うとマジックプレイヤー全体で見ても真ん中かそれよりもちょっと下くらいかなと、自己認識しています。
基本的に現在は日曜日と祝日が休みですが、休みの日は家族と過ごすことが多いので主にMagic Onlineというツールを使って平日の夜にプレイをし、年に何度かグランプリ(以下GP)に出るということを繰り返しています。
当然グランプリしかプレイしていないわけですから、プレインズウォーカー・ポイント(PWP)はなんとか1Bye(不戦勝1回戦)の権利を得られる1250を少し上回った分しか保有していません。
肝心のグランプリの成績も、最近では誇れるようなものはありません。
そもそも平日の夜にMagic Onlineをプレイすることしか出来ないので、GPで勝つための満足な練習が出来たと思ったこともありませんし、そもそもGPに出るために色々と無理をすることもあり直前になればなるほど思うように練習は出来ません。
GPに参加している人たちの中でも、上位に残るような人たちはマジックだけで生計を立てている「プロプレイヤー」や、マジックに多くの時間を費やしている所謂「廃人」的な人たちも多く、当然自分とはデッキの完成度もプレイの上手さも違います。
そんな猛者どもがひしめき合うGPですので、当然ながら自分が賞金やプロポイントをもらえるような良い成績を残せることは5回チャレンジして1回あるか無いか・・・というのが現状。
一応自分の中で「どこかのGPでTOP8に入りプロツアーに出場する」という目標を掲げて競技マジックをプレイしていますが、現状達成出来ていませんし今以上にマジックに時間を割くことは物理的にも不可能なので...今後、ここから劇的に勝てるようになるとは思っていません。
「競技マジックをプレイしている」と言い張っていますが、プロツアーに出場しているような方々から見たら「GPに参加しているだけじゃん・・・」と思われても仕方の無い行動かもしれません・・・だってPPTQに出る時間すらないんだもん・・・
「いきなりそんな話をされても・・・」と思ったことでしょう、要は何が言いたいかと言うと
必ずしもイコールとは言い切れませんが、「競技マジックを高いレベルでプレイするには膨大な時間がかかる」ということです。
専属でプレイに集中出来るプロプレイヤーは当たり前としても、無職であったり時間の多くとれる学生が一般的な会社員に比べて圧倒的に有利なゲームなのです。
それでも僕が競技マジックでプレイすることを辞めないのは、マジックが大好きで(仕事にしているくらいですからもはや中毒ですね 笑)ただただ常にモチベーションが高いからだと思います。
GPであと一歩だったときは嬉しくて、ボロ負けしたときは悔しくて、結局またどこかのGPに出てしまいます(笑)。
でも僕と同じような人はたぶん少数で、最近僕と同年代のプレイヤーが規模を縮小したり遠征を辞めたり競技マジックだけで無くマジック自体から遠ざかったり・・・という話を良く耳にするようになりました。
結婚や出産を機にマジックから遠ざかることになる人もたくさん見てきましたし、単純に僕らが学生だった頃と比べても手軽に出来るスマホゲームの普及や大人になったからこそ出来る遊びがたくさん増えたこともあるでしょう。
「いい歳してカードゲームで遊んで」なんてことを言われた人もいるかもしれません(いい歳してカードゲームで遊んで何が悪いねん!と僕は思ってますが 笑)
そもそも貴重な休日に朝早くからけっして安くない参加費を払って出た大会で、一瞬で事故って0-2して何も得ず終わる可能性のある趣味・遊びは、パチンコや競馬のようなギャンブルを除けば他に無いのかも?とすら思えてきます・・・。
かなりネガティブなことを書いてしまいましたが「だからマジックはクソだ!」と言うわけではありません(笑)。
むしろ「それでも続けられるマジックは最高だ!」と言えるような魅力が、マジックにはあります。
前置きがとてもとても長くなってしまいましたが、今回の記事で一番伝えたいことは「忙しくて満足に大会に出ることが出来ない・勝てないからと言ってマジックを辞める必要はまったく無い!」ということ。
これを誰かに伝えたくて書き出しました。
「えぇ!?今マジックに対してめっちゃマイナスな側面ばかり書きだしたけど、ここから持ち直せるの!?」と自分でも書きながら思っているところです(笑)が、まぁなんとかしますのでそのままよければ続きも読んでください。
2.
ここからは自分なりに「マジックを今後も続けていくためのモチベーションを維持する」ために心がけていることや考えていることを書いていこうと思います。
「その1 そもそも勝てると思わないこと」
いきなり凄くネガティブなタイトルですが、言いたいことはそのままです(笑)。
もちろん参加する大会は勝つつもりで出ますし、勝つために出来ることは(限られているとはいえ)やります。
しかし一方で、自分は世界を股に掛ける八十岡プロでも渡辺プロでもない、基本的に負けて当然の一般プレイヤーだということをきちんと自覚しておきましょう。
「勝ちたい、勝ちたい」と気持ちだけが先行しても、勝てない時にしんどくなるだけです。
負けてしまっても「やっぱりだめだったなぁ、でも次もまたがんばるか!」くらいの気持ちでいきましょう。
「優勝するぞ!」という気持ちと「いつか勝てたらいいなぁ」という相反する二つの気持ちを、自分の中で上手く飼いならしましょう!
「そんな気持ちだからいつまでも勝てないんや!」と言う意見もあると思いますが、僕はこのスタンスを今後も変えるつもりはありません。
マジックで負けたからと言って、後がなくなる・生活が苦しくなるわけではありませんから。
「その2 マジックがその時の自分にとって何番目に大切なのかきちんと優先順位をつけて行動する」
これもまぁ当たり前なのですが、社会人になると優先順位をつけて行動しないといけないことがたくさんありますよね。
仕事や家族は当たり前としても、マジック以外の趣味や友人との食事・飲み会などイベントは無数にあります。
要は「バランス良くいこう」という提案です。
週単位でもいいですし、月単位でも年単位でもいいです。
僕はマジック以外に音楽を趣味として持っていますので「この週は音楽に比重を置こう、この週はマジックに比重を置こう」といった風に週ごとに自分の中でランク付けをしたり「今日は家族のために時間を使ったから明日はマジックに時間を使わせてもらいます」ときちんと家族に伝えて、雑多なスケジュールを決めています。
なんかマジックどうこうというより自己啓発本みたいな言い回しになっていますが(笑)、自分の中でランク付けをしてスケジュールを立てて行動するとメリハリも付くし、何より普通に生活しやすいです。
「その3 目標に期限を設定しない」
これもその1の「そもそも勝てると思わないこと」に通ずるものがあるのですが「今年中に~出来なければ引退!」みたいな感じで自分を追い込むようなことはしない方が良いですね。
僕も前述したとおり「GPでTOP8に入ってPTに出る」と目標を掲げてはいますが、達成出来るのは1年後か、5年後かはたまた20年後かあるいは死ぬまでやってこないのか・・・といった感じで、あまり自分に期待していません。
自分が特別なプレイヤーでは無いということを知っているからです(繰り返し言いますが、勝ちたいという気持ちももちろんあります!勝つのが楽しいので負けていいわけがない!)
そのくらい漠然とした目標の方が、趣味として長続きしそうです。
それとは別に人によっては転勤などで丸々一年以上プレイ出来ないような環境、日々が来るかもしれません。そんな状況に置かれても「マジックを辞める」と決めてしまう必要はありません。
「一旦休止している」くらいに思っておきましょう。マジックはいつでもあなたの帰りを待っています(近くにマジック出来るお店が無くても、MOという手もありますしね!)
「何年後か分からないけど、子供が手がかからなくなったらまたマジック復帰するぞ!」このくらいの気持ちでも全然良いと思います。
「その4 フォーマットを絞る」
とりあえず国内のGPには全部出る!と意気込むのももちろん良いですが、闇雲に全部出ても練習が足りずに負け散らかしてテンションが下がるだけなので、自分がプレイするフォーマットを絞るというのは割とありだと、僕は考えています。
短期間で練習が必要なリミテッドや環境初期のスタンダードは、一般的な社会人は自分よりも時間を多く割ける他のプレイヤーと比べると圧倒的に不利だと思うので、そのタイミングのGPはパスしてしまうのもありだと思います(と言いつつ、僕はそれでも出ることが出来るGPは出ていますが)。
個人的にレガシーやモダンはローテーションによる環境の変化があまりないフォーマットなので、短期間であまり時間を取れない社会人プレイヤーにはオススメのフォーマットだと思います。
逆に短期間だけ集中してマジック出来るタイミングがあるような人は、その期間だけスタンダードやリミテッドを猛練習するスタイルでも良いかもしれません。
カードを集めるのが嫌だという人はリミテッドだけに絞るのも全然ありだと思います。
自分のライフスタイルに合ったフォーマットを選択すれば、限られた時間でも効率よくプレイ出来ると思います。
「その5 競技マジックにこだわらない」
「えぇ!?最初の話から思いっきりズレてるやん!?」というリアクションをされると思いますが、まぁ再確認です。
マジックを続けて行く上で絶対GPに出ないといけない、競技マジックをプレイしないといけない義務なんて無いということです。
MOで時間が空いた時にドラフトするもよし、新セットが出るたびに友達と集まってワイワイ遊ぶもよし、
お気に入りのカードを集めるもよし、マジックは別に競技マジックをプレイしなくても楽しく続けて行けます。
「もうGPには出ていないけど、プレリにだけは参加している」これでも全然楽しめると思います(実際にそういう方もいらっしゃいます)。
いつかまた自分が競技マジックをプレイしたくなったら、その時に復帰すれば良いだけなのですから。
と、ここまで5つの心構えを読んで「いやいやそれはアンタの考え方が楽観的であったりモチベーションが只々高いだけじゃないか?」と思った方も多いでしょう。
確かにそれも否めませんが、競技マジックに触れている、あるいは触れていた方々は今更どうこう説明しなくてもマジック自体の持つ魅力や楽しさにはすでに気が付いているはずです。
「ただ人生の一部」として色々考えると、マジックをプレイすることを重く感じてしまうだけなのです。
「やむを得ず引退する」よりも「たぶんもう続けられないだろうな」くらいの段階で引退を決めてしまう人も、少なくないと思います。
上に書いた通り、もっと気楽にいきましょう!
先日、岩SHOWさんが「マジックはまぁ中学からの連れみたいなもんやからな」と言っていたことが凄く印象に残っていて、僕もその通りだと思いました。
マジックは数いる友達の内の一人みたいなもんだと考えれば、それだけに向き合うわけではなく気楽に付き合っていけますよね。
3.
もはや何を書いているのか分からなくなってきました(笑)。が、何故そこまでしてマジックを続けるの?と思う人もいるかも知れないので、ここからは僕が感じるマジックの魅力や続けてきて良かったことを書いていきます。
「その1 競技マジックを再開するのに遅すぎるということは無い(年齢は関係ない)」
マジックは体力勝負的な側面もあるにはありますが、一般的なスポーツと比べると年齢でのハンデ差がそこまで無いように感じています。
「マジックを本格的に再開できる頃にはもうまぁまぁおじさんになっているだろうなぁ・・・」と嘆く必要は無いです!
定年退職後、突如としてプロツアーシーンを席巻する初老のおじさんが現れるってストーリーもあっても良くないですか?(笑)
「その2 いろんな友達が出来る(出来た)」
僕はマジックのおかげで世界中に友達がいます。
日本にも、マジックをやっていなければ絶対に出会わなかったであろう友達がたくさんいます。
そしてそれはこれからも増え続けていくことでしょう。
年齢も性別も関係なく、はたまた国籍や宗教すらも関係なく一緒に楽しめるマジックは、とても素晴らしいゲームだなと思います。
僕の中ではそれだけで続けて行く理由になります。
「その3 絶対に勝てないゲームでは無い」
これもまぁ当たり前と言えば当たり前なのですが、囲碁や将棋や格闘ゲームと違い、世界チャンピオンにだって勝てる可能性があるのは、運の要素も絡んでくるマジックならではの特徴です。
とりあえず打席に立ってバットさえ振り続ければ、いつか自分もホームランを打てる日が来るかもしれません。
来ないかもしれませんが、僕はその日が来るまでGPに出続けます(笑)
「その4 負けても観光出来る」
今は無くなったPTQ制度ですが、この制度のおかげで僕は日本のPTQが行われた地のほとんどに足を運びました。
この経験は今でもかけがえのない無い思い出なので、当時駆け回っていて本当に良かったと思います。
たぶんマジックをやっていなければ一生行かなかったであろう場所にも沢山行けたという事実は、単純に自分の人生の糧にもなっています。最後まで勝ち切ることは出来なかったPTQでしたが、PTQで出会った全ての方々に今でも感謝しています(PTQ制度の復活も願っています!)
例えGPで二日目に行けなくても、サイドイベントに出て、もしそこでも負けてしまってもご当地グルメを食べたり観光すればいいんやで!
「その5 いつでも戻って来ることが出来る」
これもちょっと前述しましたが、基本的にマジックは一回ルールを覚えたら細かい変更はあれどどんなタイミングでもスムーズに戻ってこれるようになっています。
「今はプレイはしていないけど情報だけ追っている」こんな人もいるかと思いますが、それでも良いと思いますよ!
いつでも戻ってくることが出来るのですから、「引退」する必要なんて無い!
僕自身が感じる魅力や良かったことをざっと書き出してみました!
若干無理矢理な内容になってしまった気もしますが、これ以外にも個々で感じる様々な魅力がマジックにはあります!
もはや精神論レベルの話しかしていない内容ペラペラな記事ですが、マジック好きなおっさんが「どうやら一人でも多くマジックを引退する奴らを止めたいらしいぞ?」ということくらいは伝わればいいなと思います。
今現在、仕事やプライベートが忙しくて満足にマジックが出来ない人、あるいはこれからそうなるような人、その人たちに今の僕の気持ちが1ミリだけでもいいから響いて欲しいと思い立って書いてみました。
別に競技マジックに拘らなくても、仲間内で遊ぶだけでもいいですし、ジャッジとしてイベントに関わるような方法もあります。
長々と書いてきたわけですが、結局は「誰もマジックを辞めて欲しくない」というただのおっさんの願望です(笑)。
最後に、引退しようか迷っている方や、実際にもうマジックから離れてしまった方へ(そういった方が読んでくれているかはわかりませんが)
もしこの文章を読んでくれて、何か少しでも心に引っかかる物があったなら、またマジックをプレイしてみて下さい。
プレリに出るだけでも、パックウォーズだけでも、何ならパックを剥くだけでも。
きっとマジックは、プレイされていた頃と変わらず楽しいものだと思います。
長々と書いてきましたが、最後まで読んでいただきありがとうございます。
僕自身もまだまだマジックから離れることは無いので、ぜひどこかの会場でお会いしましょう!!