【BIG MAGIC Open Vol.9】BMOスタンダード Round 9 中道 大輔(東京) vs 奥村 祐司(千葉)

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Text by 森安 元希



スイスラウンド最終戦 Round 9が始まる。
時計の針が18時40分丁度示すと、開始の合図がかかった。

―...参加者369人で午前10時30分から始まったBIG MAGIC Open Vol.9も、その展開はいよいよ分かれ道のところに来ている。

勝てば決勝トーナメント進出が確定するか、その芽が残る。
負ければ、終わり。

この限定的なシチュエーションを、目の前にあるのに掴めない水の泡のようだと例えた"バブル・マッチ"という言い回しがMTG界には根付いている。
上位卓のうち既にID(合意引き分け)によって決勝進出を決めている卓もあるので、バブル・マッチと呼ぶべきは今回、2番卓から7番卓までの5卓だ。

オンライン・ペアリングではローマ字表記で一覧が発表される。



Kakumae Teruya vs Tsuji,Naoto
Mita,Ryoichi vs Asaumi,Hiroki
Yamada,Nobuhiro vs Iwamoto,Nobuyuki
Saitou,Tomoya vs Saito,Yohei

Nakamichi,Daisuke vs Okumura,Yuji


Team Cygames所属 覚前 輝也プロもそのうちに名を連ねている。

このなかからSaitou,Tomoya vs Saito,Yoheiはビデオ・フィーチャー・テーブルについた。
そして7番卓。中道 大輔 vs 奥村 祐司が、テキスト・フィーチャー・テーブルにつく。



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既にRound 4でテキスト・フィーチャーについていた奥村。

「今回、フィーチャー2回目なんですよ」

Round 4では【赤白人間】の上田との熱戦を読者に届けた奥村。
朋友、PWCC2017王者 岡井 俊樹と共に前日に組んだという【機体】を持ち込んでいる。

現地点で6勝2敗の18点である奥村は、これを勝っても9位の可能性が濃厚なのだが、全く芽がないわけではない。
諦めずに試合することを決めている。

向かうは今期からBIG MAGICユニフォーム契約である"BIGs"所属となった中道 大輔。
その安定した"勝ちっぷり"ではトッププロにも引けを取らない競技マジック最前線で闘うプレイヤーだ。
関東の競技大会のトップ8一覧に、彼の名がないものを探す方が難しいというのは多少誇張表現か。

奥村と同じく6勝だが1敗1分けの中道は、勝てば殆ど決勝進出が決まる。

中道 vs 奥村。実に数か月ぶりのマッチメークとなった。
"BIG MAGIC Open vol.8"で準決勝を競った組み合わせだ。

前回は、奥村が【青白フラッシュ】キラーとして持ち込んだ【バントミッドレンジ】の力強い展開で、
王者のデッキであった【青白フラッシュ】の中道との勝負に勝った。
中道からすれば、雪辱戦の側面もあるのかもしれない。

それでも2人は試合の前から会話が弾んでいた。
現環境における【青白フラッシュ】についても、意見をとりかわす。

中道「青白フラッシュ、結構試して。"デッキ"でしたよ」

この場合の"デッキ"である。とは、第一線で通用するデッキパワーをしっかりと持っている。という意味合いの符丁だ。

奥村「《不屈の追跡者》入り【バント】に挑戦してみましたが、マナ出ませんね(笑)」
笑う奥村は結果として【機体】を持ち込んでいる。

そして【青白フラッシュ】に挑戦していたという中道も、今回は【ティムール霊気池の驚異】だ。




Game 1

《産業の塔》3枚、《模範的な造り手》《屑鉄場のたかり屋》《キランの真意号》をキープした奥村の先手だ。
第1ターンにこそ色マナが出ないが、色を要求されない第2ターンのアクションと第3ターン以降の色マナには不自由しなそうだ。
その初手の通り、《キランの真意号》から《屑鉄場のたかり屋》、《模範的な造り手》へ展開してゆく。

中道は《森》から《霊気との調和》の安定したスタートだ。
《山》を置いて《キランの真意号》を《蓄霊稲妻》で落とす。
2枚目の《霊気との調和》でエネルギーと土地を再供給して、奥村の様子をうかがってゆく。

奥村は第4ターンに《ピア・ナラー》プレイ。
順調に奥村の土地が伸びていることを確認して、中道は《検閲》をサイクリングする。
使い勝手の良いカウンターを得たのは青白系のコントロールだけでなく、序盤中盤を耐えないとならない【ティムール霊気池】も同様であったようだ。
そして《霊気池の驚異》を設置。まだ起動にはエネルギーが少し足りない。

奥村はここに勝機を見出してゆき、《ピア・ナラー》起動を含め最大効率でのアタックを仕掛けてゆく。
1度に10点を与え、中道のライフは4にまで落ち込んだ。



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中道、致死圏から脱却すべく《織木師の組細工》設置でライフを7に戻しつつ、エネルギーを6に。

ギリギリだ。奥村の戦闘フェイズで《霊気池の驚異》を起動した場合、《絶え間ない飢餓、ウラモグ》がめくられたとしても《ピア・ナラー》の起動によってウラモグの脇を抜けたクリーチャーたちのアタックでライフが尽きかねない。
メインでの起動に託すしかないとして、即座に起動を選択。

めくれのなかに《絶え間ない飢餓、ウラモグ》はない。

一番有用そうなカードは《蓄霊稲妻》だが―...どの1体を止めても、丁度ライフがもたない。
奥村の《ピア・ナラー》起動が"効いた"。

奥村 1-0 中道




Game 2

奥村、7枚をキープ。
中道、悩んだ6枚をキープした。
ハンドは《尖塔断の運河》1枚と《霊気との調和》、そして幾ばくかの2マナ呪文と《ならず者の精製屋》だ。

ファースト・ドローで土地、あわよくば緑マナを引けるかどうかー...運命のドロー・カードは《伐採地の滝》。
タップインだが、ひとまず繋がった。
続くドローで《森》を引き込み、《ならず者の精製屋》プレイから入って"帳尻が合って"ゆく。

奥村の展開は《スレイベンの検査官》での手がかりはドローせず、《無許可の分解》を《ならず者の精製屋》に合わせた形だ。
中道は第4ターンに《霊気との調和》から《ならず者の精製屋》2枚目。
呪文を唱えても唱えてもハンドが減らない。ハンドが減らないということは、選択肢が広くあり続けるということだ。
中道の動向に細心の注意を払いながらも干渉材料が少ない奥村は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をプレイ。
プレッシャーをかけてゆき、いずれ設置されるであろう中道の《霊気池の驚異》のチャレンジ回数に制限をかける。

その"いずれ"のターンは、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》着地の返しのターンであった。
中道、《霊気池の驚異》設置。



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潤沢なエネルギーからの戦闘開始ステップ時の起動―...から見た6枚のうちでは《つむじ風の巨匠》が強いカードであったようだ。
当たりとは言い難いカードだが、しかし《霊気池の驚異》の強みは2発目の起動も殆ど間を置かないことだ。

中道が次弾へのエネルギー調整を考慮していたところへ、奥村のサイドボーディングが突き刺さる。
第2メイン、《先駆ける者、ナヒリ》で、横たわる《霊気池の驚異》を追放した。

中道はこれで《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》と《先駆ける者、ナヒリ》という
堅強なプレインズウォーカー2体を両面対応しなければならなくなった。
加えて、最大の武器である《霊気池の驚異》は既に失われている。

しかしこの場面においても冷静沈着、ポーカーフェイスでダメージを計算し、《織木師の組細工》2枚を続けて並べてライフを守りながらエネルギーを確保してゆく。

だが、このタップアウトに合わせて《グレムリン解放》X=2が《織木師の組細工》2つに突き刺さる。

これには若干、苦悶のような表情が見えた中道。しかしそれも一瞬であった。

ここで中道は戦法を切り替え、エネルギー6つを支払い《つむじ風の巨匠》で飛行機械・トークンを2体生成する。
飛行クロックの戦列でプレイズウォーカーたちへ対抗してゆこうというものだ。
戦法の切り替えは功をなしたようで、航空戦力を持たない奥村は飛行機械たちをブロック出来ず、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》《先駆ける者、ナヒリ》の忠誠値がジリジリと減ってゆく。

しかし奥村の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》はその間にもプラス能力で中道のライフを攻め立て、《先駆ける者、ナヒリ》もプラス能力で次の手を探しにいっている。
やがて奥村が《キランの真意号》と《無許可の分解》にたどり着くと、中道は攻める術も守る術も同時に失われることとなった。

奥村 2-0 中道



この試合の様子を見守り、勝利を祝福しにきた友人らを笑顔で迎える奥村。

「BMOで知り合った友人たちなんです。BMOくると友達が増えて、楽しいですね」

屈託のない笑顔を浮かべる。
その後ジャッジからも改めて最終順位が9位である可能性が示唆されるが、全てを承諾して試合をしていた奥村は全てを頷きながら書類にサインをしてゆく。

爽やかに締めくくられた結末となった。

奥村 Win!



しかし、中道も奥村も、これでお終いではない。
前回BIG MAGIC Open vol.8の準決勝を互いに競った、ということは2人ともTOP8に入賞している、ということだ。
そしてそれは、明日開催されるBIG MAGIC Invitational Vol.3の参加権が与えられていることを意味する。

「明日が、本番ですから」

奥村と中道が、声をそろえた。

BIG MAGIC Invitational Vol.3。
優勝賞品のプロツアー京都の参加権を賭けた戦いが、今から始まろうとしていた。

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