【BIG MAGIC Open Vol.9】 BMOスダンダード 準々決勝 樋口 靖洋(東京) vs 斉藤 智也(東京)

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text by Seigo Nishikawa



横浜に馳せ参じた369人のデュエリストは、いよいよ8人に絞られた。

斉藤「5,000円目標で今日は来たんですけどね」
樋口「同じです。一気に賞金が跳ね上がりましたね、望外ですよ」

まるで今ここに座っていることが信じられない、という会話を交わす二人だが、ここまで勝ち抜くということがその持てる実力の何よりもない証左である。そしてここまで来たからにはまだまだ上を目指してもらいたいし、そうすれば更に「跳ね上がっていく」のだ。

勝利と言う栄誉と賞金と言う実利。その二つを同時に得られる機会と言うのは簡単には訪れない。待っているだけでは牡丹餅は棚から落ちてこない。牡丹餅を落とすためには相応の鍛錬が必要である。

ティムール《霊気池の驚異》の樋口、ティムール《電招の塔》の斉藤。青赤緑という同じ色を使用し、生み出したエネルギーを持って強力なアーティファクトを操る二人の戦いをお送りしよう。

「霊気池」と「電招の塔」という二つの異なる構造物の決戦の後、更なる大きな餅を手にするのは、何れのプレイヤーであろうか。またはそのどちらでもない第三のカードが勝利をもたらすのか。



【BIG MAGIC Open Vol.9】 BMOスダンダード SE1 樋口 靖洋(東京) vs 斉藤 智也(東京)

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Game1

予選上位の樋口が不承不承という表情でマリガンを宣言すると、一方で斉藤は力強く「やります」と宣言。樋口は新たに開いた6枚に思わず笑いを漏らすと、どうにかならないかと考えるが、最終的には試合にならないと5枚に託すことを決めた。

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樋口靖洋

樋口は《森》《霊気拠点》と土地を置くも、3ターン目に土地を置けず「これはまずいな」と呟く。一方の斉藤、《伐採地の滝》2枚から《霊気拠点》、そして「事故のところ申し訳ないですが」と挨拶代わりの《電招の塔》。だが斉藤も土地が無いということは他のスペルはある。《否認》でこれを弾き、一方的な敗北は拒絶する。「なるほど」と頷く斉藤。

《伐採地の滝》、続くターンには《霊気との調和》と手に入れることに成功した樋口は《山》を調達し、こちらも同じくティムールカラーであることを斉藤に示した。

初弾の《電招の塔》こそは弾かれてしまったものの、必死に土地を集める樋口に対して、着々とマナ基盤を組み立てる斉藤。樋口の《ならず者の精製屋》に《本質の散乱》を当て、《天才の片鱗》をキャストと、ハンドアドバンテージ差を確実に守り続けていく。

遅ればせながら土地を引き始めた樋口、斉藤との差をつけられまいと粘るが、斉藤からは2枚目の《電招の塔》でお伺い。樋口はこれを通さざるを得ず、戦況が少し斉藤のほうに倒れる。

斉藤は《奔流の機械巨人》そして《天才の片鱗》を再利用せんとしたところで、樋口からは《蓄霊稲妻》。巨人こそは撃ち落とされてしまうが、アドバンテージ差がいかんともしがたい。遂には《電招の塔》が起動され、この試合初のそして、今後の展開を決めそうな、ライフの変化が発生する。

この状況をどうにかして跳ね返したい樋口は《織木師の組細工》。これに対して斉藤は、樋口の残りのアンタップ状態の土地6枚を数えると「危ないな」と一言。そして《織木師の組細工》を《否認》。《電招の塔》が再び樋口に稲妻を落とす。

ここで勝負を決めようと、斉藤は《明日からの引き寄せ》を全力(X=4)でキャスト。しかし樋口の《奔流の機械巨人》で、サイクリングで墓地に落ちていた《検閲》により、引き寄せが成就しないと、見落としてたとばかりに少し天を仰ぐ。それでも《奔流の機械巨人》自体は《蓄霊稲妻》の前に即座に消滅。

樋口の体に、三度雷が降り注ぐ。

斉藤からは《奔流の機械巨人》。これは《霊気溶融》をエンチャントすることで、ダメージを抑えていく樋口だが、斉藤は構わないと《伐採地の滝》と力を合わせて攻撃。樋口は自身の《伐採地の滝》で《奔流の機械巨人》の受け止めると、《蓄霊稲妻》をキャストし、これを打ち落とさんとする。

しかしそこに待ったをかける斉藤。

樋口の手札が0であることを確認、樋口の使用できるマナが10であることを再確認。自身の3枚の手札をじっと見つめると、まず《マグマのしぶき》さらに加えて《蓄霊稲妻》を自身の《奔流の機械巨人》に打ち込む。両スペルともこの先打ち込む先は無いと判断し、ならばこの瞬間エネルギーに変えてしまおうという判断だ。

この斉藤の選択の前に樋口は表情を引き締める。そして引き入れたカードは、待望の《霊気池の驚異》。だが斉藤は「流石にこれが無いとさっきのプレイはできないですね」と《呪文萎れ》を公開する。そして4回目の落雷。ライフは2。

最後だ、ここしかない。思いを託した樋口のライブラリートップは《絶え間ない飢餓、ウラモグ》。だが既に《電招の塔》には5発目の発射エネルギーが充填されてしまっている。《霊気池の驚異》とウラモグを引く順番が逆だったら、と悔やむ樋口だが、そう上手くいかないのもまたマジック。

樋口 0-1 斉藤




Game2

まさかのダブルマリガンで先手を取るのに失敗した樋口だが、Game2の7枚には自信をもってキープ宣言。一方の斉藤が今度は悩みにふけることになる。
《霊気拠点》と《霊気との調和》、そして青いカード5枚という手札を、「マリガンしたい」と悩みながらも後攻ということもあり、最終的には受け入れる斉藤。ファーストドローで土地を引けなかった斉藤は、無論1ターン目に島を調達する。

樋口は、そんな斉藤の動きを尻目に《ならず者の精製屋》で順調にエネルギーと手札をためていく。Game1とは逆の流れになりそうな空気が漂うが、無事引き入れた2枚目の《霊気拠点》をセット。樋口の2枚目の《ならず者の精製屋》を《本質の散乱》で撃退すると、今度は《山》をドロー、と簡単には主導権を渡さない。



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斉藤 智也



斉藤は滞りなく4マナに到達できたことで、初手から抱える《天才の片鱗》を使用する、対して《蓄霊稲妻》で《守られた霊気泥棒》を打ち落とす樋口だが、《天才の片鱗》は無事通過。斉藤は代わりの《守られた霊気泥棒》と《マグマのしぶき》を手に入れる。

それでも押しているのはまだ樋口だ。樋口は《ならず者の精製屋》で攻撃をしかけると、そこに現れた《守られた霊気泥棒》を《本質の散乱》し、斉藤に一太刀を浴びせる。

だが斉藤の手札から《周到の神ケフネト》が光臨。これを止めることができなかった樋口が悔しそうな表情を浮かべる。斉藤の手札は5枚であり、今すぐにでも顕現しかねず、ひとたび顕現すればそのまま試合を決めてしまいかねない。これへの対抗策を考えざるを得ない樋口は《ならず者の精製屋》を追加してそこに回答を求め、《守られた霊気泥棒》を戦場へ送り込む。

似たような構成のデッキとなるため、お互いの弱点も知り尽くしている両者。特にサイドボード後は「ケフネトゲー」だと口を揃える。樋口の2体の《ならず者の精製屋》の攻撃を前に、その神の力を持って、斉藤の手札を7枚まで押し上げた《周到の神ケフネト》。《ならず者の精製屋》の片割れを受け止めると、いよいよ反撃を開始する。



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樋口の残った《ならず者の精製屋》の攻撃は3枚目の《守られた霊気泥棒》、ならばと現れた《奔流の機械巨人》は《不許可》と、徐々に徐々に試合の趨勢が斉藤に傾き始める。それでも樋口には逆転の目である《霊気池の驚異》も《絶え間ない飢餓、ウラモグ》もある。一瞬たりとも隙を作りたくない斉藤は樋口の動かせるマナを何度も何度も数える。

樋口は《周到の神ケフネト》に押し付けられているクロックをかいくぐって、逆転の一手を引き入れたい。

そのために樋口は自身のメインフェーズで《天才の片鱗》をキャスト。残された4マナに目をくれながら「怪しいなぁ」と呟く斉藤は、しかしながらこれに《否認》で応じる。すると樋口は再度重ねて《天才の片鱗》を重ねる。《霊気池の驚異》ではないことに少し胸をなでおろす斉藤。

神の力は斉藤に安寧と、樋口に毎ターンの重圧をかける。樋口に残されたターンは後1となった。さぁ樋口のターンが始まる。

樋口は持てる手札、戦場の土地を幾度か見直し、最良の選択肢を模索する。そしてその結論として、全ての土地を倒し《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を全力召還。目の前の小賢しい神を排除せんとするが......

神は、予め斉藤に術を授けていた。アモンケットならざる力は



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なり。

樋口 0-2 斉藤



樋口「Game2の初手は賭けでしたが、前の試合で同じ手札をマリガンして負けてたので、今度は賭けてみることにしました。」大胆な賭けと、着実なプレイングでコントロール対決を制した斉藤、疲れたとこぼしながらも、遥かなる頂を求め更に一歩前進。

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