《雷の頂点、ヴァドロック》でラドン・テンポ! ~ 低予算デッキ構築 第3回 ~
By Riku Imaizumi
「マジックを始めたばかりの人は赤単」。そんな風に言われたことはないでしょうか。
赤単はアグレッシブなため慣れない人が使っても勝ちやすい。さらに低レアリティのカードが多く、組みやすい。これが赤単が初心者におすすめされる理由です。
ですが、赤単に慣れてくると別のデッキを使いたくなるでしょう。
はじめたばかりのころは資産が少なく、高レアリティのカードに手が回りません。それでも別のデッキを使いたい......そんな人のために、この記事では初心者でも組みやすいデッキをご紹介していきます。
ひとくちに組みやすいと言っても、「デッキ作成にかかる金額が少ない」とか、「アリーナにて組みやすい」などの指標があると思いますので、「どのように組みやすいか」は記事ごとに設定していこうと思います。
今回のデッキに必要なのは神話レアです。とはいえ必要枚数はわずか4枚。
トップメタのデッキでの使用率も低いカードですので、余っている人は使ってみてはいかがでしょうか。
普通のビートダウンともコントロールとも一味違う、クロック・パーミッション風のデッキを味わえますよ。
デッキコンセプト:《雷の頂点、ヴァドロック》でラドン・テンポ
今回のキーカードは《雷の頂点、ヴァドロック》。
3マナ・3/3・飛行・先制攻撃という上等なスペックを持つ上に、「変容」時に3マナ以下のインスタントorソーサリーをタダで再利用できる、テンポデッキに入れたいクリーチャー。
ゴジラ・シリーズの一枚で、《翼竜怪獣、ラドン》になっているバージョンが存在します。
クロックを持ちながら呪文を再利用できるという意味で《瞬唱の魔道士》を彷彿とさせますね。
ですが、実際に使ってみるとけっこう違うことがわかります。
最大の違いは「クリーチャーを増やしながら呪文を再利用できない」ことです。
《瞬唱の魔道士》を2枚引いた時などは2点クロックを2枚用意して攻め立てることができますが、《雷の頂点、ヴァドロック》は(「変容」するかぎりは)何枚引いても3点クロック1枚分にしかなりません。
「変容」時にもクリーチャーが必要なことを考えると、攻め込む力で一歩劣っています。
さらにもうひとつ。《雷の頂点、ヴァドロック》の能力を最大限に活かそうとすると、デッキが重くなってしまう可能性があります。
フリーキャストできる呪文のマナコストは最大3。能力を最も強く使おうと3マナの呪文を入れてしまうと、クロック・パーミッション系のデッキにあるまじき鈍重なデッキになってしまいかねません。
ですが、《雷の頂点、ヴァドロック》にも《瞬唱の魔道士》にはないメリットがあります。
それを活かしてデッキを構築していきましょう。
デッキリスト:多重変容で気分はストーム
デッキリストインポート用(クリックで展開します)
デッキ
4 雷の頂点、ヴァドロック (IKO) 214
10 山 (IKO) 271
10 島 (IKO) 265
4 急流の崖 (IKO) 255
2 選択 (DAR) 60
4 心を一つに (IKO) 60
4 ショック (M19) 156
4 雷猛竜の襲撃 (IKO) 109
4 禁じられた友情 (IKO) 119
4 稲妻の嵐族 (M20) 213
4 スプライトのドラゴン (IKO) 211
2 送還 (M20) 78
4 伝承のドラッキス (IKO) 194
《雷の頂点、ヴァドロック》で再利用する呪文は、《心を一つに》!
もちろん、1マナで唱えられるよう工夫します。使うのは『イコリア:巨獣の棲み処』リミテッドでお馴染みのあのコンボ。
《禁じられた友情》が人間と人間以外のクリーチャーを場に揃えてくれるので、これ1枚で《心を一つに》が1マナに。
《雷の頂点、ヴァドロック》のためにデッキが重くなる、という欠点を解消できるコンボです。
しかも、《禁じられた友情》で出てきたトークンはそのまま「変容」元として使えますし、《雷の頂点、ヴァドロック》で《禁じられた友情》を唱えることもできますよ。
残念ながらもうひとつの「クリーチャーを増やしながら呪文を再利用できない」という欠点をまるっと解消することはできませんが、
それ以上のメリットとなり得るシナジーを仕込むことで、《瞬唱の魔道士》超えを目指していきましょう。
つまり、目指すべきは「多重変容」です。
《伝承のドラッキス》も《雷の頂点、ヴァドロック》も誘発条件は「変容するたび」。1枚のクリーチャーにこれら「変容」持ちを重ね掛けすれば、《瞬唱の魔道士》以上に呪文を再利用できるのです。
《心を一つに》を回し続けることでこれらのクリーチャーを引き込めるので、どんどん多重変容していけますよ。
なお、デッキ全体としてはクロック・パーミッション系統の変則アグロに分類されるのですが、メインデッキにはカウンター呪文を入れていません。
それは《雷の頂点、ヴァドロック》での再利用が事実上不可能なため。《送還》や《雷猛竜の襲撃》のような状況をあまり選ばない妨害呪文でテンポをとって殴り切りましょう。
また、お気づきかと思いますが、このデッキでは《雷の頂点、ヴァドロック》を通常キャストできません。
《平穏な入り江》のような多色地形を入れれば可能ですが、タップインはこのデッキに最も重要なテンポを犠牲にしますので、今回は見送っています。
・相棒について
6月1日の発表で、「相棒」に関するルールが変更されましたね。
それまでは「ゲーム中に1回、ゲームの外部から唱えてもよい」だったのが、「ゲーム中に1回、ゲームの外部から3マナを支払って手札に加えてもよい」になりました。
実はこのデッキ、重要度は非常に低いのですが、このまま「相棒」を指定できます。
持っているなら《湧き出る源、ジェガンサ》をサイドボードに置いておくと役に立つことがあるかも......?
ただ、わざわざワイルドカードを使うほどではないと思います。ルールが変更される以前ですら唱える機会は稀でした。
サイドボード案
デッキタイプが変則アグロ(クロック・パーミッション系統)ですので、サイドボード後のプランもクリーチャーでの攻撃が主になることが多いでしょう。そのためにはカウンター呪文の取捨選択が必要です。
メインデッキは《雷の頂点、ヴァドロック》を最大限活かすようカウンター呪文0枚ですが、サイドボードには相手に合わせてしっかり用意します。
・サイドボード案1:対コントロールデッキ
現行スタンダードのコントロールデッキとの対戦を考えるなら、《時を解す者、テフェリー》の対策はほとんど必須です。
このプレインズウォーカーが場にいるだけで、《雷の頂点、ヴァドロック》の誘発型能力は一切機能しなくなります。
(「各対戦相手はそれぞれ、自分がソーサリーを唱えられるときにのみ呪文を唱えられる」に引っかかるため)
着地されたら速やかに排除しなければいけませんが、そもそも着地を許さないようにしましょう。
《神秘の論争》は最もおすすめのカウンター呪文です。
《覆いを割く者、ナーセット》や《空を放浪するもの、ヨーリオン》に突き刺さりますし、「クロックを展開しつつカウンターを唱える」ためには最大限軽いカウンター呪文を運用しなければなりません。
まずは《神秘の論争》4枚から入っても良いかもしれないくらいです。
他にコントロールデッキに対して効くカードは、お馴染みの《否認》。
これは《空の粉砕》《ガラスの棺》などの除去呪文の回避手段になります。
それから、除去呪文に引っかかりにくいアドバンテージ発生装置。すなわちプレインズウォーカー。
コントロールデッキとの対戦時に重要なのは、要所を抑えるカウンター呪文と多角的なプレッシャー。この2点を抑えて考えてみましょう。
・サイドボード案2:対クリーチャーデッキ
現行スタンダードのクリーチャーデッキは速度が速く、しかもリカバリーの効くデッキも多いです。(「相棒」ルールの変更によりこうしたデッキが減る可能性はあります)
そのため中途半端な除去呪文を増やしても意味がありません。
サイドボードに除去呪文を用意するのなら、「とにかく軽い」か「一手で二手分を稼ぐ」カードを選びましょう。
あるいはリカバリーを防ぐ除去呪文(追放能力を持ったもの)も悪くはないと思います。
プランを考える時、プレイをする時は、相手より先にこちらが勝つことを意識して闘いましょう。
この時、除去呪文はあくまで相手の攻勢を少し削ぐだけのものでしかありません。相手のクリーチャーを根絶やしにする必要はないのです。危険なクリーチャーだけを排除し、とにかく相手のライフを0にすることを目指します。
高速アグロとの相性は悪いと思われますので、クリティカルなプロテクション持ちも候補に入ります。
《解き放たれた狂戦士》は人間なので変容の元にはなれませんが、《心を一つに》の条件を半分担ってくれますね。
相手のライフを先に0にする、という意味では《軍勢の戦親分》や《弾けるドレイク》のように高火力なクリーチャーも候補に挙げられないことはないのですが、これらは重さや攻撃の通りにくさからあまりおすすめできなさそうです。
3マナ以下で、2点程度の火力では焼かれず、回避能力と高いパワーを持つクリーチャー......例えば《奇怪なドレイク》みたいなカードでも見つかれば採用する価値はあるかもしれません。
強化案
・色に合ったユーティリティ・カードの投入
変則アグロ(クロック・パーミッション)というデッキコンセプトに一致するレアカードなら強化につながる可能性は高いです。
例えば「出来事」呪文。中でも《厚かましい借り手》と《砕骨の巨人》は単純に優秀です。
しかし、そのまま《ショック》や《送還》と入れ替えてしまうと、《雷の頂点、ヴァドロック》や《伝承のドラッキス》の再利用候補が減りますので、採用枚数には注意してください。
・バーンに寄せる
色の配分は均等になっていますが、少し崩してバーンに寄せることも考えられます。
火力呪文なら、《雷の頂点、ヴァドロック》や《伝承のドラッキス》で使いまわすほど直接勝利に近づきます。
変容や火力への干渉手段を持たない相手にはかなり強くなるのではないでしょうか。
3マナの呪文が増え、テンポが悪くなるのが最大のネックと言えます。
《批判家刺殺》の「絢爛」達成に困らないよう1マナから展開できるクリーチャーを入れたり、
1マナからクリーチャーを展開するため、また《殺戮の火》を強く使うために赤マナの配分を増やしたり、
赤マナを増やすと青い呪文を連続で唱えにくくなるので青呪文を抜いたり減らしたり、と、
組み替えなければいけない要素は多いと思いますが、バーンが好きな方はぜひやってみてください。
《炎の氾濫》なら大きく組み替えずとも入るかもしれませんね。
・白を入れる
とりあえず《神聖なる泉》や《聖なる鋳造所》を入れるだけで《雷の頂点、ヴァドロック》の通常プレイが可能になります。
もちろんアグロ・デッキへの耐性が落ちることは忘れずに。
白を入れたうえでちょっと工夫をすると、実は《孤児護り、カヒーラ》を相棒に指定できちゃいます。
《スプライトのドラゴン》という強力なクロックが抜けてしまいますが、代わりに《幽体の船乗り》のような1マナのクリーチャーを入れてみると良いでしょう。
そもそも1マナのクリーチャーはクロック・パーミッション系統のデッキでは活躍できるので、さほど弱体化することはないはずです。
とはいえ相棒のルール自体が変更されてしまったので、《孤児護り、カヒーラ》自体の有用性が微妙なところ。
白を入れると使えるプロテクション持ちが増えるのも利点ですね。
《浄光の使徒》は《大釜の使い魔》デッキ相手に大活躍します。
以上、低予算構築 第3回でした。
クロック・パーミッションは他のカードゲームでは成立しにくいコンセプトなので、ぜひこの機会に組んでみてください!
構築に縛りがある関係上、十分なデッキパワーを持たせるのは難しいのですが、今後も回していて楽しいデッキを紹介していければ良いなと考えています。
それでは、また次回!