ゾンバードメント、青赤緑トロン、緑信心 in モダン ~ デッキリスト探検隊 第72回



こんにちは。「オリジナルデッキを見つけて紹介する」デッキリスト探検隊、第72回です。

「目が覚めるようなデッキリストを見たい、というかあわよくば自分のデッキをみんなに知らしめたい

と思っているデッキビルダーのみなさまの要望にお応えし、今日もデッキリストを紹介していきます。

オリジナリティがあるだけのデッキリストは誰にでも作れます。しかしながらそれで勝つのは至難の業。

だからこそ、オリジナリティを持ち、ある程度の成績を残したデッキリストには大きな価値があるのです。

デッキリストにはビルダーの個性が光ります。

唯一無二、この世に一つしかないオリジナルデッキたち。

そんな「デッキビルダーの作品」を今日も紹介していきます!

 

ゾンバードメント

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Designed by TheDiplomancer in Magic Online

 

《墓所這い》の登場以来、レガシーにはゾンバードメントというデッキが存在しました。

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墓所這い》を《ゴブリンの砲撃》で発射し、黒1マナを1点ダメージとして打ち込み続けられるデッキです。《ゴブリンの砲撃》の英語名が「ゴブリン・ボンバードメント」であるため、ゾンビと混ぜて名づけられました。
かつてはレガシーでしか使えなかった《屍肉喰らい》の存在もあって、ゾンビプレイヤーとしてはモダンとレガシーの差を如実に感じるデッキだったことでしょう。

ですが、『モダンホライゾン』シリーズの発売によってその差は埋まりました。
マナを支払わずに生け贄に捧げられるカードが入ったことにより、ゾンビデッキは大きく強化されています。

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スタンダードで猛威を振るった《波乱の悪魔》。ゾンビでこそないものの、ゾンバードメントならばそのポテンシャルを一切損なうことなく発揮できます。
そして、この《波乱の悪魔》と同時期に活躍した《真夜中の死神》を思い浮かべてもらえれば、《アンデッドの占い師》の強さはわかるでしょう。
疫病吹き》においては、-1/-1カウンターを乗せる先を選んだうえで生け贄に捧げてしまえばデメリットを軽減できますし、場に出てからは《血の芸術家》に近い活躍を見せてくれます。

さて、《波乱の悪魔》《疫病吹き》と3マナ域のカードが目立ちますが、なんとこのデッキでは《ゲラルフの伝書使》まで入っています。

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3マナ域の合計枚数はなんと9枚。いずれもシナジーある強力なカードではありますが、ここまで重くして大丈夫なのでしょうか?
超高速化したこのモダン環境で、《霊気の薬瓶》すら入っておらず、さらにさらに《ゴブリンの砲撃》という単体ではなんのプレッシャーにもならないカードが4枚も入っているというのに。

激情》の採用は、そんな悩みを解決するためなのかもしれません。

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展開スピードで劣るなら相手の展開を阻害すれば良い、という考え方はマジックにおいて基本。
もともとゾンビは部族デッキの例にもれず展開を優先したいデッキです。ですが、《ゴブリンの砲撃》の設置に2マナもかかる関係上、展開スピードでは他のデッキに水をあけられるのは必然。ならば相手の展開を阻害しよう、という発想と考えることができますね。
想起で生け贄に捧げられる直前に《屍肉喰らい》や《ゴブリンの砲撃》で生け贄にするなど、小さなシナジーも存在します。

これだけでは《激情》は単なる除去呪文でしかありませんが、ちょっとした工夫が施されています。

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生け贄エンジンがあれば《マラキールの再誕》はほぼブリンクのように使えますし、《激情》などインカーネーションとの相性はいわずもがな。
ゾンビと《激情》の間にシナジーはないようですが、《マラキールの再誕》が接着剤の役目を果たしています。

ちなみにこのデッキはだいぶゾンビに寄っていますが、元々ゾンバードメントは生け贄エンジンに着目したデッキで、部族シナジーはさほど濃くありませんでした。
「生け贄」にだけ着目してみれば、《波乱の悪魔》を増やしてみても良いですし、《魔女のかまど》まわりのシナジーを試しても良いかもしれません。
今後、別種の《ゴブリンの砲撃》デッキが生まれてもおかしくありませんね。

『イニストラード:真夜中の狩り』からは、《滅びし者の勇者》が入るかもしれません。

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ゾンビデッキとしては強いと思いますが、あくまで生け贄シナジーが軸であることを忘れてはいけません。

これ単体では《ゴブリンの砲撃》とも《屍肉喰らい》とも特にシナジーを形成しないため、使ってみて試していきましょう。

どちらかといえば、《ネファリアのグール呼び、ジャダー》のほうが相性は良いかもしれませんね。

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トロン

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Designed by Xenowan in Magic Online

 

緑トロンかと思いきや青トロンで、かと思いきや赤も入っていて......。一見すると緑トロンと青トロンを混ぜて赤まで入れたかのように見えますが、よく見れば緑トロン要素はないことがわかります。《古きものの活性》も《森の占術》もありません。

青トロンが数々の調整を経てこの形になった、と考えるほうが自然です。

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序盤のアクションは、マナ加速、妨害、《虚空の杯》のいずれか。青トロンと大きく変わりません。
妨害アクションの中で他のトロンデッキと最も異なるのは《激情》です。

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妨害カードに《火/氷》を採用、加えて《ヴァラクートの覚醒》を使うことで《激情》の想起キャストを狙っています。
とはいえ赤いカードは12枚しか入っておらず、最序盤で想起キャストは難しそうです。ということはフィニッシャーとしての運用がメインなのでしょうか。
......あ、よく見たらここにも赤いカードがありました。

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大いなる創造者、カーン》で手札に加えてそのまま追放!
何故《熔融林の橋》ではなく《火荒の境界石》なんだろうと思いましたが、9割くらいは《激情》か《活性の力》のコストにするために入ってますね。たぶん。
《活性の力》はサイドボードに入っていますが、緑マナのカードはさらに少なく、メイン・サイド合わせても10枚のみ。
でも、必ず撃てちゃうんですよね。

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サイドボード後のクリーチャー構成にさえ気を配っていれば、最低限《活性の力》は使えるという考えでしょう。
なんなら《孤児護り、カヒーラ》が戦場に出ることはまずないでしょうね。色マナの捻出すら辛そうです。

画期的な妨害アクションの選択から考えても、やはりこのデッキは青トロンから進化してきただと思います。
ハイドロイド混成体》もこの進化の体現者です。

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役割は単純、大量ドローとフィニッシャー。
ですが、大量ドローとフィニッシャーどちらかの役目だけで良いならば、もっと良い選択肢が存在していました。《知識の渇望》とか《約束された終末、エムラクール》とか。

従来の青トロンは妨害枠にカウンター呪文が入っていたので、大量にマナを使う上に決定力の低い《ハイドロイド混成体》にはお呼びがかかりませんでした。緑を足す必要もありましたしね。

このデッキで《ハイドロイド混成体》が4枚も使用できている理由のひとつはカウンター呪文をオミットしていることでしょう。
マナオープンでターンを返す必要性が薄いため、懸念がひとつ解消されています。
加えて、「緑が入っていて」「ドローができる」「フィニッシャー」というと、《ハイドロイド混成体》が最適解になるのかなと思います。緑であることで《活性の力》のコストになりますし、ドローやフィニッシャーの役割を持てれば枠の節約になります。
実際、リストを見てみればエースは《ハイドロイド混成体》であることがわかります。《精霊龍、ウギン》はどうしようもない状況をひっくり返すための切り札であり、サイドボードの《ワームとぐろエンジン》はあくまで《大いなる創造者、カーン》のオプション、といったところなのでしょう。

また、大量ドローから《激情》想起を狙えるので、ここでもテンポ面の解消が考えられていますね。
見れば見るほど細かな工夫がこらされていて、良いデッキだと感じます。使ってみればもっともっと発見があるのではないでしょうか。

今週末に『イニストラード:真夜中の狩り』が発売されますが、このデッキの強化案は難しいですね。

メインボードに入るカードの場合、複数の役目をこなせるカードが望ましいです。このデッキはアーティファクトが多数を占めているにも関わらず、《活性の力》や《激情》のコスト枠を確保しなくてはならないため、枠がほかのデッキより限られています。

サイドボードに入るカードの場合は必ずしも複数の役目をこなせる必要はありませんが、何かしら非常に大きな価値を見出さなくてはなりません。なぜなら《大いなる創造者、カーン》を使うため、メインボード以上に枠が限られているからです。

正直なところ、『イニストラード:真夜中の狩り』からの強化はあまり期待できない気がします。

 

 
緑信心

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Designed by RpAngriff in Magic Online

  

懐かしの緑信心です!
忍耐》や《成長の揺り篭、ヤヴィマヤ》という各所で使われているカードによりデッキが強化されていますが、最も注目すべきカードは《老樹林のトロール》でしょう。

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普通に使って3マナ4/4トランプル。死亡すると《繁茂》にプラスαの能力がついたエンチャントに変わり、戦場に戻ってきます。
《繁茂》能力が《東屋のエルフ》とシナジーしていることはもちろん、死亡しただけでは信心が減らないという、緑信心には非常に噛みあった一枚。

このカードがあれば《ニクスの祭殿、ニクソス》の爆発力が継続します。大量のマナがあれば《起源のハイドラ》はいつでも強いままですし、《大いなる創造者、カーン》のサーチから即座にアーティファクトをキャストすることも可能です。

また、《秘密を知るもの、トスキ》にも期待できそうです。

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《東屋のエルフ》《炎樹族の使者》と高速展開しますし、《絡み根の霊》もアタッカーの役割をはたします。
緑への信心こそ少ないものの、場持ちが良いことも手伝って、なかなか良い働きをしてくれそうです。

総じて除去耐性のあるクリーチャーが非常に多くなりました。《邪悪な熱気》でテンポをとられないようにしているのかもしれません。
忍耐》を想起で唱え、生け贄に捧げる前に《ニクスの祭殿、ニクソス》を起動......という一時的なマナ加速もできるようになっていますので、爆発力・安定力ともに向上していることが伺えます。

あとはもっと強力なフィニッシャーが出てくれれば見違えるほど強くなるかもしれません。《邪悪な熱気》のせいで《大いなる創造者、カーン》はおろか《獣の統率者、ガラク》であっても信頼性が薄いので、安定した選択肢は以前ほど多くはないのかもしれませんね。

『イニストラード:真夜中の狩り』では非常に信心深いエンチャントが実装されますね!

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かなり大味なので浪漫カード感はありますが、序盤に《炎樹族の使者》や《絡み根の霊》を並べる→《ニクスの祭殿、ニクソス》で大量マナ捻出→《不自然な成長》で先に並べたクリーチャーを強化、という展開自体は無駄がありません。

あとは環境がそれを許してくれるかどうか......という話ですね。


以上、デッキリスト探検隊でした。

昨今、自分のデッキを記事にする人も増えてきました。そういった発信も良い流れだと思いますが、デッキビルダーたるもの、自分のデッキが他人の記事に掲載されることこそ本懐。

あなたの作ったデッキを紹介できる日を楽しみにしています。