出ましたよ、《エレボスの鞭/Whip of Erebos》を用いたデッキの、新型が。デッキ名にも、ちゃんとアーキタイプとしてわかりやすい表記と、身内にはわかるノリな表記の両面記載でシブありがたい。黒赤緑、ジャンドカラーの墓地利用デッキ!ながらく3色デッキと言えばタルキールの氏族カラーが主流であったが、エスパーカラー(青白黒)のコントロールが出てきたり、このジャンド・ウィップが出てきたりと勢力図は塗り替わる・あるいは混沌を極めるのかもしれない。
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「シディシ・ウィップ」はスゥルタイ(青黒緑)カラーで構成されたウィップ系でも最も戦果をあげていたデッキである。青はあくまで《血の暴君、シディシ/Sidisi, Brood Tyrant》を採用するためのタッチであり、デッキの根幹は緑のマナ・クリーチャーと墓地肥やし呪文&黒の除去や《思考囲い/Thoughtseize》、《エレボスの鞭/Whip of Erebos》、釣り上げる大物といった2色のカードで構成されている。つまり、緑と黒のパーツだけはそのままに、スゥルタイ・アブザン(緑白黒)・ジャンドと、タッチカラーを変えるだけで3種類のデッキに化けることが出来るのだ。
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アブザンだと、《包囲サイ/Siege Rhino》をただただ連打したり、《テーロスの魂/Soul of Theros》の能力を墓地から起動するといった必殺技を有していた。むしろウィップを解雇して、《血の暴君、シディシ/Sidisi, Brood Tyrant》をタッチしてマナ・クリーチャーやゾンビトークンを《テーロスの魂/Soul of Theros》で強化することを主目的とした「シディシ・ソウル」なんてのも登場した。
ちょっと話が脱線しそうになったが、これまで緑と黒のベースに赤が乗せられたデッキが登場しなかった・活躍できなかったのは、赤を足す旨味に欠けていたからである。上述した相性の良いカード、必殺技を有していないのだから、わざわざ赤を絡める理由は皆無だった。「だった」と書くからには、今現在はその事情が覆されたという事。というわけで、長い前フリだった。 |
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龍王、食いしん坊お嬢さんのアタルカ姉貴。彼女はそれ1枚で、赤を足す理由足り得る。かつて「昇竜拳」というリアニメイト・デッキで釣り上げられていた《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》と同様の制圧力!5点ダメージをクリーチャーとプレインズウォーカーに振り分ける、強烈な除去能力を有しながら、7マナ8/8飛行トランプルという驚異的なサイズを併せ持つ!これぞ怪物!龍王!最強!
この《龍王アタルカ/Dragonlord Atarka》を《エレボスの鞭/Whip of Erebos》で釣り上げると、対戦相手の戦場に被害を与えた上で8点という初期ライフの1/3を上回る大打撃を与え、さらにはあなた自身は13点ものライフをゲイン出来るのだ。例え対戦相手の戦場に《女王スズメバチ/Hornet Queen》とその配下のトークンが並んでいても、それらをまとめてブチ抜き6点のダメージを与えることが出来る。素出しで散らして女王本体と相討ちしたら、次のターンに鞭で釣り上げてトドメを刺してやろう。仕留めきれなくてもこの間に26点ゲインしているので、まあ負けるということはないだろう。
このアタルカ×ウィップの破壊力は、それこそ龍紀伝発売直前から囁かれてはいた。今回このデッキが見せつけたのは、もう1つの龍の持つ力であり、実はこちらこそが主役かもしれない。 |
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前代未聞のカード名で話題になってはいたが、構築の場でここまで早く結果を残すとは...《快速ウォーカイト/Swift Warkite》。その能力は、これが戦場に出た時に墓地から3マナ以下のクリーチャーを釣り上げ速攻を与え、ターン終了時にそれを手札に戻す。
なかなか類を見ない能力を持ったクリーチャーだ。リミテッドでは6マナ4/4飛行でテンポを失わずにダメージを与えることが可能で、アドバンテージにも繋がるということでなかなか強力なドラゴン(あくまで個人的な意見)。これが構築だと、6マナ4/4飛行だけではお世辞にも強力とは言えない。となると、その能力で何を釣り上げるのか。これが肝。 |
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このデッキでは釣り上げられるカードが18枚存在するが、それらの中でも釣って「オイシイ」のはこれらのカードだろう。《ゴブリンの熟練扇動者/Goblin Rabblemaster》はフツーに強力なアタッカー。《サテュロスの道探し/Satyr Wayfinder》を釣るのはいぶし銀、シブい仕事である。《龍王アタルカ/Dragonlord Atarka》を埋めながら土地を伸ばせられるのはたまらない。1回目でヒットしなくても、手札に戻して次のターン素出しすれば良いだけの話だ。そして、最も強力であろう1枚は《無慈悲な処刑人/Merciless Executioner》。序盤に自身の能力で対戦相手のクリーチャーを道連れにさせておいて、後半ウォーカイトで再利用。アタッカーにしてもパワー3と最低の基準ではあるし、別にこれ自身を生け贄にしても構わない。あるいはウォーカイトを生け贄に捧げて自身は手札に戻り、次のターンに処刑人→自身を生け贄→《エレボスの鞭/Whip of Erebos》でウォーカイト釣り上げてまた処刑人、なんて動きをすれば対戦相手のクリーチャーをズタズタのボロボロにしてしまえるだろう。これぞ激シブムーブだ。
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また、龍紀伝から"濫用"持ちも採用しているのも注目ポイント。《ラクシャーサの墓呼び/Rakshasa Gravecaller》は、僕が龍紀伝発売前トップ5予想で最後の最後まで悩んで6位に落としてチョイスしなかった1枚でもある(「イラストが海外版「いっき」やね」とかふざけたことを書くのが仕事ゆえ、仕方がない)。
5マナ3/6、濫用でマナクリやサテュロスを食べさせると2/2のゾンビが2体飛び出す。比較対象となるのは《アンデッドの大臣、シディシ/Sidisi, Undead Vizier》。あちらの方がサイズやその能力の幅で勝るが、《ラクシャーサの墓呼び/Rakshasa Gravecaller》はアドバンテージの取り方がタイムラグなしで即座に盤面に還元するという点で勝っていると言えるだろう。これで地上を固めれば、わざわざサーチしてこなくても《龍王アタルカ/Dragonlord Atarka》に辿り着き、勝利できるというわけでデッキにはコチラの方がフィットしているようにも思える。サイドボードの《龍王アタルカ/Dragonlord Atarka》も、《アタルカの命令/Atarka's Command》入りのスライや各種トークンデッキにシブい活躍を見せることだろう。
新セットの持ち味を、派手な神話レアだけでなくシブいアンコモン達もチョイスして引き出したフクナガさんには、M88激シブpoint進呈。これからもウルトラ怪獣で盤面を蹂躙されることを期待しております。
というわけで、今回の「世界、激シブ発見!」はここまで。皆が既に知っているものの中にも、使い方1つで激シブに化けるカードは存在することでしょう。また、世界の激シブを見つけたら、こっそり伝書鳩でも飛ばしてください。サヨナラ! |