| 狙うは「Miracles」「Omni-Tell」「Delver」の"青き三強"。
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| 一般的なリストをベースにはしているが... 
 
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| 上振れは期待できない。《タルモゴイフ/Tarmogoyf》に押し負けるリスクを受け入れてでも2枚目の《紅蓮破/Pyroblast》をメイン投入したこと、全く性に合わない2マナカウンターを排除したこと、《すべてを護るもの、母聖樹/Boseiju, Who Shelters All》へのせめてもの対抗策として無理矢理《不毛の大地/Wasteland》の枠を空けたこと...あたりが多少のオリジナリティと言えようか。
 しかし下振れもしない。
 実直に回せば応えてくれる。
 
 このデッキのそんな...朴訥としたところが好きだ。
 
 記録的な猛暑の中、負けじと最高に滾った闘争本能をぶつけるスイス9回戦の幕開けである。
 
 
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| 1戦目 Merfolk ○×○ 
 G1
 まずは《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》で様子見。
 これが通って《殴打頭蓋/Batterskull》を連れてくるが、返しに《幻影の像/Phantasmal Image》でコピーされてあちらは《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》をサーチ。
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| G2取り敢えず《頭蓋》で盤面を固定しつつ、《目くらまし/Daze》射程圏外からの《宿敵》が先に通って勝ち。
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| G3今度はあちらが《魂の洞窟/Cavern of Souls》からの《宿敵》連打。
 嘘のように瞬殺される。
 取り敢えず《霊気の薬瓶/AEther Vial》は《封じ込める僧侶》で無効化するも土地が詰まっている所にロードを2体出されて非常に厳しい。
 島渡りで3ターンあれば負けるかな...という所で、相手が追加の《不毛の大地/Wasteland》をツモって虎の子の《Tundra》を失う。
 
 ...とまぁ辛いは辛いが島渡りがこれで解除され、再び盤面睨み合いへ。
 
 《平地/Plains》《Plateau》《不毛の大地/Wasteland》からの石鍛冶、稲妻、紅蓮破だけで立ち回り、ロードを壊滅させたところで島置きを再開。
 
 ぎりぎり《殴打頭蓋/Batterskull》無事着地の回復モードまで耐えて勝ち。
 
 相手のミスにつけこんだ形ではあるが勝利に貴賎なし。1-0である。
 
 2戦目 土地単 ○○
 
 相性差0-10とさえ言われる最悪のデッキ、土地単がここで登場。
 
 G1
 《Maze of Ith》が効かない《宿敵》に装備品をオールインするのが唯一の勝ち筋。
 《壌土からの生命/Life from the Loam》のサポートを得て4度登場したマリット・レイジを全て農場送りに処した所為で相手のライフがとんでもないことになるも、
 
 
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| G2重武装した《宿敵》が総計3桁に届くダメージを叩き出して奇跡のメイン勝利。
 相手の初動は《モックス・ダイアモンド/Mox Diamond》。
 土地単はその名の通り土地枚数こそ潤沢だが、色マナ基盤は案外タイトなデッキなのでノータイムで《Force of Will》。
 
 
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| 3,6,9,12,15...《罰する火/Punishing Fire》指定の《翻弄する魔道士/Meddling Mage》も加わり、僅差でこちらがお先にゴール。そして再び...《宿敵》と共にお祈りの時間が始まる。
 
 0-10と言われているが実は小数点以下のダイアグラムが存在するらしい。
 最大0.4の勝機をつかみ取ることに成功。
 
 ノリに乗ってまずは2-0。
 
 3戦目 BUG Delver ×○○
 
 G1
 相手の《タルモゴイフ/Tarmogoyf》重ね引きが非常に辛い。
 《剣を鍬に/Swords to Plowshares》減量が響いて予想通りの負けである。
 しかしこのリスクを受け入れて今、ここに立っている。後悔は許されないのだ。
 
 G2
 今度は相手の土地がつまり気味の所に《不毛の大地/Wasteland》で追い討ちをかけて即投了まで。
 《すべてを護るもの、母聖樹/Boseiju, Who Shelters All》対策と言いつつこういうこともあるさ、と気を取り直して3本目へ。
 
 G3
 とは言えDelverデッキ相手の後手3本目。まさに崖っぷちの死闘である。
 
 相手のクロックを排除することに専念しつつ、攻勢が止んだタイミングで宿敵を無理矢理通し、更に追加の石鍛冶で逆襲を開始。
 そんなところで相手3マナタップ...《毒の濁流/Toxic Deluge》は見たくない...《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》!
 大人しく石鍛冶を捧げて勝ち。
 
 Nemesisは近代マジックの象徴、と言い切って差支えないだろう。そんな3-0。
 
 4戦目 Omni-Tell ××
 
 公式カバレージをご参照ください。
 
 G2の「FoWの弾が減るけどカラで瞬唱ビート」作戦が失敗に終わったのがすべて。
 何かしら引けるだろうと思っていたら土地土地《殴打頭蓋》と引いてしまい2枚目のFoWは撃てず。
 
 
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| 再びバブル・マッチでフィーチャー席に返り咲く、とカバレージ選出担当者(旧知の仲)に宣言して次の戦場へ。結果論はあるかもしれないが、何度思い返しても2ターン目EOTカラ瞬唱が正しい選択だったと思うので止む無し、な3-1。
 さぁ、早速後がない。困ったものだ。
 
 5戦目 Tezzeret Control  ○×○
 
 オリジナリティと殺意溢れるデッキを作ることに定評のある友人のT氏と。
 
 
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| G1少しだけネタバレすると《虚空の杯/Chalice of the Void》が5/5で殴ってくるデッキなのだが...彼のオリジナリティはこの後すぐ。
 いつもの調子なら置物系であろうことは想像に難くなかったので、他が割と死んでいるが虎の子のメイン1枚《議会の採決》が含まれる7枚を迷わずキープ。
 
 
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| G21度目で《虚空の杯/Chalice of the Void》を、フラッシュバックからの2度目を《罠の橋/Ensnaring Bridge》に当ててギリギリ撲殺。
 今度はそうやすやすとコントロールさせて頂けない。
 相変わらず《虚空の杯/Chalice of the Void》で首がしまり、更に《血染めの月/Blood Moon》投下によりロクに動けなくなったところで投了。
 
 G3
 ラストチャンスの先手。今度は《採決》とFoWが含まれる7枚。最高だ!ノータイムでキープ。
 
 2度の《虚空の杯/Chalice of the Void》は処理するも、《ダク・フェイデン》がこちらの《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》を強奪した挙句《Transmute Artifact》のコストにされるという憂き目に会う。こういうことをするからこの人は怖い。
 
 
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| 返しのアタックでダクは沈むが、《Helm of Obedience》登場でリーチ。 
 
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| 土地単に続き絶望的な相手を倒しての4-1。暖まってきた。ライフを詰めて最終ターン、《虚空の力線/Leyline of the Void》を引かれたら負け。
 引くな...引くな...引くな...引かなかった!
 
 6戦目 Patriot ○×△
 
 G1
 お互いに要所要所を打ち消し合い、《梅澤の十手》付き《宿敵》がすれ違いの殴り合いを続ける展開。
 
 
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| G2こちらが1ターン先に《宿敵》を出していたこともあり、長い長いドローゴーの果てに掘り当てた《稲妻/Lightning Bolt》でぴったりゼロまで。
 今度は相手が《宿敵》2連打。
 こちらの《頭蓋》を止めつつ3点ずつライフが溶けていく。
 
 ...そして、遂に崩壊。
 
 G3
 G1が長すぎた為、開始早々に追加ターン。
 相手は土地が全滅しているので勝てる流れではあったものの、3度の攻撃チャンスでは落としきれず。
 
 困ったな、4-1-1で雲行きが怪しい。
 
 7戦目 Omni-Tell ×○○
 これまた友人のコンボマイスターF氏と。
 
 G1
 順調にライフを詰めていたはずが、きっちりラストターンで無限《蟻の解き放ち/Release the Ants》まで。
 
 
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| G2(編:挙動を知らない方のために...《全知》を貼った状態で《狡猾な願い》《渦巻く知識》などを駆使し《引き裂かれし永劫、エムラクール》などのマナコストが重いカードをデッキトップに置いた状態で《蟻の解き放ち》を唱える→激突勝利で手札へ→唱える→無限にダメージ)
 たんまりあるカウンターで守りつつ《石鍛冶》で《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》をサーチ。良い滑り出しだ。
 装備、アタック、ディスカード、アンタップ。
 アンタップ。大量展開をするわけではないこのデッキにおいては一見地味な効果だが、不確定カウンターを大量に飛ばし合う戦いでは本当に心強い。
 そのまま相手の選択肢を狭めていって勝ち。
 
 G3
 ここへ来て痛恨のダブルマリガン。しかし今更どうして諦められようか。
 5枚のハンドはクロックこそないもののドロースペル、カウンター、土地と決して悪くない内容。安易に仕掛けられても一度は耐えられそうだ。
 
 ...恐怖の3ターン目、何事もなくエンド。
 更に《母聖樹》を惜しみなく使って《狡猾な願い/Cunning Wish》と《時を超えた探索/Dig Through Time》で確実な死のお膳立てが始まる。
 
 しかしそれは、《母聖樹》の効果により急激にライフをすり減らすということ。
 漸く舞い込んだ《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》を無理矢理通してハンド整理のやり直しを強い、残りわずかなライフを...詰め切った!
 
 絶望の淵から、細い細い希望の道を。もう負けは許されない5-1-1。
 
 8戦目 Grixis Control  ○○
 
 G1
 相手の初動はT2の《悪意ある大梟》。
 土地から見てもDelverレスの「Grixis Pyromancer」と呼ばれるミッドレンジであることは間違いなさそうだ。
 
 更に《若き紅蓮術士/Young Pyromancer》も追加されるが、こちらは無敵の《宿敵》+《十手》コンビが大暴れ。
 めっきりメジャーになった《コラガンの命令》で十手を失いかけるが、相手の浮マナは1。
 こちらの手には《呪文貫き/Spell Pierce》...で勝負あり。
 
 G2
 とにかくこのマッチは《十手》が強い。上述の《コラガンの命令》さえ飛んでこなければ文字通り無双である。
 
 ...《ダク・フェイデン》登場。十手強奪。梟に装備。こちらの石鍛冶死亡。
 
 本日2度目の屈辱プレイである。
 
 もうここまで来たら恥もへったくれもねえ!ということでついさっきまで心強い味方でいらっしゃった十手様には恐縮ながら《議会の採決》で御退場頂き、照れ隠しの《宿敵》ビートで3、3、3。
 
 帰ってきたぞ!6-1-1!
 
 9戦目 ANT ○○
 
 もう一度フィーチャー席へ。
 相手は奇しくもBMライター、朴高志選手。言うまでもなく強豪だが、もうハラは決まっている。勝つ以外に道はないのだ。
 
 G1
 こちら先手、《Volcanic Island》セットゴー。
 相手は《Badlands》設置&《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》。
 ハンドはお世辞にも強いとは言えないものだったので、これを即座に《紅蓮破/Pyroblast》。
 
 
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| ...因みにこの台詞を昔1度吐いたことがある。手の内を見られないってのは、時にどんなアドバンテージにも勝るものだ。
 
 今となっては懐かしい。
 どこぞの草の根大会のSE1回戦、岩showが駆る「Dredge」から放たれた《陰謀団式療法/Cabal Therapy》を虎の子の《Force of Will》で返した時のことだ。
 
 これでラストハンド1枚から仕掛けられるハズがない、と大胆な発掘を開始、3体の《ナルコメーバ/Narcomoeba》を生贄に《戦慄の復活/Dread Return》をプレイされた所で...
 
 
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| そんな戦いを思い出した。最後の1枚、《殺し/Snuff Out》を自らの《タルモゴイフ/Tarmogoyf》へ。
 これで《黄泉からの橋/Bridge from Below》が4枚吹き飛び逆転勝利。
 (編:懐かしい。まだジェイスも石鍛冶も対抗色フェッチもなんもなかったころのレガシーの覇者「Team America」やね。)
 
 閑話休題、眼前の相手に《不毛の大地/Wasteland》を叩き込むと、土地が止まったらしく相手は《水蓮の花びら/Lotus Petal》切りの《思案/Ponder》。
 
 これも懐かしい。
 
 初めて「Team America」を使ってGPT優勝した時だ。
 同じ動きをした相手に贅沢な《渦まく知識/Brainstorm》切り《Force of Will》を合わせてそのまま勝ったっけ。
 
 
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| そしてそのあとはあの日の繰り返し。追加の土地を引かれる前にビートダウン完了。考える間もなく、体が同じ動きをしていた。
 
 
 G2
 相手1ターン目ハンデスで「土地、土地、土地、《稲妻》、《稲妻》、《紅蓮破》、《渦巻く知識》」から当然最後の人が脱落して開幕。我ながらクソハンドに成り下がったなぁと思うがもう遅い。
 
 さっきのカッコいい雰囲気の話はなんだったのか、という立ち上がりである。
 
 追撃の《陰謀団式療法/Cabal Therapy》に対し少し迷うも、ライフ6点持って行ければよし、と《紅蓮破》を差し出す覚悟で本体へ《稲妻》を発射。
 
 予定調和で《紅蓮破》が抜かれた返しに...《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》!今日はいい日だ!
 
 相手のエンドに元・キープ基準の《渦まく知識/Brainstorm》を今度こそプレイしハンドを一新。《呪文貫き/Spell Pierce》2枚。これは来ている。
 
 ...というのはあまり関係なく、《沼》1枚で土地がストップした相手をそのまま介錯。
 
 ドラマティックな試合なんてそうそうないものだ。
 
 何はともあれ、生き延びて辿り着いた7-1-1。
 
 人事は尽くした。あとは天命を待つのみ。
 
 
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| この気持ちを今まで何度味わったことだろう。 
 オポ落ちギリギリのライン、確実に7-1-1の何人かが悲しみを背負うことになる。
 
 名前は呼ばれず、ただ熱気の抜けた会場の隅にひらめく紙切れに
 「9 Ryosuke Sakamoto」の文字。
 
 何度もその光景がフラッシュバックし、淡い期待を捨てろ、悲しいだけだと心のどこかで誰かが囁く。
 
 そして運命の時。
 
 一人、また一人、三人、四人、いよいよ23点ライン、五人、六人、七人...
 
 「8位!オポネント・マッチウィン・パーセンテージ、56.....」
 
 駄目だ、期待が捨てられない。
 
 悲しいだけだとしても、祈らずにはいられない。
 
 「サカモト  リョウスケさん!」
 
 まだあと3試合ある。最後の戦いの土俵に乗っただけだ。
 
 それでも。
 
 気づけば、会場に響き渡る怒号を上げて、周りの友人たちに抱き着いている自分がいた。
 
 そして...狂ったような暑さの昼とはまた別の、重苦しい空気が夜も更け始めた神戸の片隅にのしかかる。
 
 シングルエリミネーション3回戦、長い長い3時間が始まる。
 
 
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| SE1 Omni-Tell 
 Top8プロフィールを書きながらくだらない話で盛り上がる。
 いつもはどこでプレイしているだとか、「レガシーでも実は強いカードは?」とか聞かれても困るから取り敢えず二人で《包囲サイ》って書いとくか、だとか。
 
 しかしこの時間も長くは続かない。あと数分で、目の前の笑顔との殺し合いが始まる。
 
 G1
 相手は《島》セットから淡々と手を整えていく。
 これが「Omni-Tell」でないならなんだというのか。「High-Tide」?...そうかも知れないね。
 
 こちらはと言うと心もとない《紅蓮破/Pyroblast》と《呪文貫き/Spell Pierce》を抱えて淡々と土地を置くが、肝心のクロックが全く引き込めない。
 
 互いが決め手に欠ける中、相手の《探索》が確実にこちらの薄っぺらいカウンターの壁を1枚剥いでゆく。
 
 返しに何とか《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》を引き込めたものの、残された時間は長くはあるまい。
 
 
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| 諦め半分、《紅蓮破/Pyroblast》を差し込んでみるも当然《Force of Will》。残された時間は思ったより短かったようだ。そのまま相手は《実物提示教育/Show and Tell》。
 静かに《全知/Omniscience》が着地し、相手の手札はあと1枚。
 これが《狡猾な願い/Cunning Wish》なら...
 
 
 「ターンエンド」の宣言。
 
 目の前に光が差した。
 序盤戦からこっそり打ち込んでいた《稲妻/Lightning Bolt》と、こちらが示した実物、《殴打頭蓋/Batterskull》でのアタックにより相手のライフは7。
 こちらにカウンターはなく、《宿敵》で相手の死を確実にしてターンを返す。
 
 相手の最後のドローは...土地!
 
 G2
 メインを拾えたのは大きい。本当に大きい。
 
 このまま勢いよく進むが良いぞ、とばかりに神様が気前の良い7枚...《翻弄する魔道士/Meddling Mage》×2、《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》、《Force of Will》、《呪文貫き/Spell Pierce》、土地2枚をプレゼントしてくれた。
 
 
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| 少し寂しくなった手札から2体目の《翻弄する魔道士/Meddling Mage》。先ずは一人目の《翻弄する魔道士/Meddling Mage》。これが通りデッキの核たる"Tell"(《実物提示教育》)を止める。
 そして2枚目...の前に《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》。
 これが《Force of Will》される時はこちらも返した方が大抵強い。
 《Force of Will》で応戦するが敢え無く《狼狽の嵐》の前に沈む。
 流石に通らないかと思いきや、再びこれが通る。
 
 さて、悩ましい。
 
 選択肢としては
 
 ・2枚目の《実物提示教育》指定
 
 ・《狡猾な願い》指定
 
 というのもあったが、《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》に迷いなく《Force of Will》を当ててきたことからサイド後《若き紅蓮術士/Young Pyromancer》プランのキープかと思い、そちらを指定。
 
 相手の意外そうなリアクションに、これが見当違いであったと感付くがもう遅い。
 カラフルな《灰色熊/Grizzly Bears》で殴る以外にどうせやることもないのだ。
 
 その間、ゲームは静かに、4点ずつ減っていくライフを除いては極めて静かに進んでいく。
 
 相手が《Volcanic Island》《Underground Sea》を引けば、こちらは合わせて《不毛の大地/Wasteland》を出す。
 
 そして最終ターンが近づき...ツモったのはまさかの《翻弄する魔道士/Meddling Mage》3人目。
 さて、これが殺されては堪らないとプレイし...指定は《虐殺/Massacre》。
 
 
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| 当然のように《実物提示教育/Show and Tell》と叫んだクリス・ピキュラが《赤霊破/Red Elemental Blast》に撃たれて落ちるが、結局カラフルなバニラの2/2が相手のライフを溶かすまで、相手が3マナを生み出すことはなかった。《Underground Sea》を見ていたのと、ソフトカウンターで対処出来ないカードということでこれをコールしたが、今振り返れば流石にやり過ぎだっただろう。
 大人しく2体でアタックし、1体が除去された後に再度SNTを指定すれば良かったのだが、流石に疲労と高揚でおかしくなっていたのだろう。
 
 随分と幸運に助けられてまずは一つ。あと二つ。
 
 SE2 Omni-Tell
 
 詳細はテキストカバレージをご参照下さい。
 
 相手が「Omni」と分かっていてカウンター重武装ハンドをキープ。
 都合よく《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》を引き込んでそのまま勝ちというこれまた引きだけ感溢れる試合運びとなっているが許してほしい。
 
 勝つときは誰しもこういうよく分からん御加護に恵まれるものだろう。
 
 そしていよいよ、正真正銘、最後の戦いの舞台へ。
 
 時は既に21時を回り、施設の規約により全館冷房もダウン。
 疲労と暑さでどうにかなりそうだ。
 
 でも、これで最後。
 泣いても笑っても、これが最後。
 
 
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| 決勝戦 RUG Delver 
 この戦いは是非ビデオカバレージで見て頂きたい。長い長い消耗戦を越えて、星は互いに一つずつ。重苦しい沈黙は普段おしゃべりな二人の司会にも伝搬し、空気の音まで聞こえてきそうな異様な雰囲気に包まれた3本目。
 
 
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| OK、軽く捌いて意地でも《宿敵》を、今日一日通じて何度相手の息を止めたか分からないこの現代の「青い悪魔」を着地させろ、というハンドだ。手を開けば、《爆薬》《採決》《宿敵》《狼狽の嵐》に土地3枚。
 
 
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| 相手の初動は《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》。 どちらかと言えば《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》を捌く為のハンドなので、若干裏目が出ている。とは言えこちらは《Force of Will》を引き込み、より戦いの焦点が明確になった形だ。静かにターンを返すと、アップキープに変身目的と思しき《渦まく知識/Brainstorm》。
 プラン変更を余儀なくされるほどライフが落ち込むのは嬉しくないのでここは《狼狽の嵐》で対処。ナチュラル変身は回避する。
 
 そしてそのままターンエンド。
 
 2枚目の土地は...ない。
 
 ここで勝たずにいつ勝つというのか。
 《目くらまし/Daze》1枚しか打てない内に《宿敵》を放ち、当然の如く要求される1マナは手札2枚と1点のライフで支払を拒否。
 
 
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| 2度目のチャンスで《昆虫の逸脱者》への変身を見事遂げライフレースは互角になるが、無論こちらも爆薬 X=0でこれを対処。この期に及んでこれを高い買い物と言うものは最早いまい。
 
 そして相手の2枚目の土地は...《島/Island》。クロックの展開は...ない。
 
 3点。
 
 3点。
 
 3点。
 
 長い長い戦いは、あっけなく終わった。
 
 この瞬間、疲労のあまりその場に倒れ込みそうになった。
 
 割れんばかりの拍手も、耳に届いていなかった。
 
 だが。
 
 背後から声が聞こえる。
 
 聞きなれた友の声。しかし聞いたことがないほどの歓びの声。
 
 
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| 「チャンピオン」はカッコイイもの、と冒頭に言った。 
 でも、さほど強くもないし、カッコ良くなくても、今度はどこかの誰かの物語じゃない。
 
 
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| この神戸の地で、《火の玉/Fireball》X=6を叩き込んだ黒田正城じゃない。
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| UUBBBRR...UUBBBRR...ハロー。
 会場を揺るがす阿鼻叫喚の中、《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》を放ったガブリエル・ナシフじゃない。
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| ましてここが、プロツアー・サンデーの舞台であるはずがない。「見るな!叩きつけろ!」叩きつけた《稲妻のらせん/Lightning Helix》。
 クレイグ・ジョーンズでもある訳ない。
 
 7年前、第二のマジック人生が始まるきっかけになったBig Magic。
 
 それが誇るBMOが、根城の関西に初上陸した、Big Magic Open Vol.4。
 
 「いつかBM主催でグランプリとか、賞金制トーナメントとか開けたらいいね」
 
 スタッフと話したそんな他愛もない夢が、我がホームタウン、神戸で今叶った。
 
 そこにいるのは...紛れもない。誰でもない。
 
 自分が今、トロフィーを握りしめている。
 
 この気持ちを、喜びとか、感動とか、そんな言葉で表すのは何だか安っぽくて出来やしない。
 
 ただ今は...
 
 ずっと息を殺して見守ってくれていた友たちに向き直り、拳を突き上げて...叫んだ。
 
 「俺が、俺が...Big Magicじゃい!」(意味不明)
 
 
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 ~Fin~
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