緑、白、黒、赤、青。5つの単色デッキのメインリストです。 内容に目を通していただければ、4ターンキルデッキということもお分かりになっていただけることでしょうか。 各マナ域毎の枚数の比率も、普段と大きく違いません。 ただ、スタンダードのデッキということになると、パーツ(カード)の採用基準に疑問を感じることになると思います。
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白のデッキには戦士のシナジーがありながら《アラシンの先頭に立つ者》が、 赤には単体で高い打点を作る《ゴブリンの熟練扇動者》が、 また青はアーティファクトを大量に採用していながら《アーティファクトの魂込め》がありません。 緑と黒にも、スタンダードで見かけるキーパーツと言われる類のカードが幾つかないかもしれません。
この5つのデッキリストは、"スタンダード"の中でも更にプールを制限して組んでみました。
使用セットは 『タルキール覇王譚』 『運命再編』 『タルキール龍紀伝』 『マジック・オリジン』 の4セットです。 テーロス・ブロックと『基本セット2015(M15)』のカードを使用していません。 ※編注 執筆は9月中旬に行われました
(《アラシンの先頭に立つ者》は『タルキール龍紀伝』のカードですが―...) そして他にも条件を作りました。 レアリティが「レア」と「神話レア」のカードも使用していません。
まとめると、"タルキール+オリジンのコモン・アンコモンからなる"構築です。 とても日常の店舗大会で採用されるような構築プールではなさそうです。
実は今回、マジックの完全な初心者向けのデッキリストの一例、として5つのリストを挙げました。 最近益々発展の勢いを伺わせるマジック:ザ・ギャザリング。 以前からプレイされている皆さんの回りにも、周りに触発されて興味を持たれて始めた方や、これからまさに始めようとされてる方がいらっしゃるかもしれません。 そうした方々に、一例として紹介して欲しいデッキリストです。
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『テーロスとレアを抜いた理由』
9月末にテーロス・ブロックがローテーション落ちするという感覚を、 初心者の方はつかみにくいと思います。 特に組んだばかりのデッキから使えないカードが出てくるというのは モチベーションを保つ上でも阻害の要因になりやすいのではないでしょうか。
ですので、端からテーロスとM15を取り入れない形のリストにしました。 "Damage 4 Wins(D4W)流のエントリーセット"という感じです。
店舗毎に入手性や値段に大きく差のあるレア・神話レアを抜いた理由も同様です。 入手性に関しては当サイト、BigWebを始めとしたウェブ通販もありますので "どうしても手に入れられないカードがある"、ということにはなりにくい現状だとは思うのですが、 「高くて買えない」「実物がない」といった否定的な感情の芽生えは、 ゲーム自体の導入(イントロダクション)の否定につながりやすいです。
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また"導入させる側"がデッキを用意する場合にも、 リミテッドなどで剝いたカードを使ってこのデッキの大半は組めると思います。
出来るだけお互いに負担のない形として、今回の構築方法を提案しました。
これをベースに、パックで剝いたレアカードを入れたり、 コモン・アンコモンのカードパワーに馴れてから神話レアを勧めてその強さを体感してもらったりといった、 『最初の遊び方』を楽しんでいただきたいです。
(ゆくゆくは過去のD4Wでアプローチしてきた、ゼロからのデッキの組み方や動かし方に接してもらい、競技マジックにも興味が出てきてもらえれば良いなぁというのが個人的な思いです。)
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『デッキのプレイの仕方』
今までのD4Wで時どき触れる程度に話してきた部分があります。
D4Wの構築方法とプレイングの関係性です。 優勝リストを紹介した第2.5回では、 D4Wの形よりも「大量に軽いカードを用意して、3~4ターン目のダブル・アクションが強いデッキ」として紹介しました。
これは逆に言うと、D4Wのデッキは基本的には「1→2→3→4マナのカード、と、1ターンに1回しか動かない」ということです。 そして入っているカードはマナコストが重い方が強いので、 「1ターンに1回、ハンドの1番重いカードを唱える」というのが「基本のプレイング」になります。
1~2マナという同じマナコストを大量に採用した(赤単のデッキに多いですが)リストは、 デッキが比較的安価で勝率も一定あるので初心者の最初のデッキにお勧めされやすいのですが、個人的には1番最初ではなく、2番目のデッキの選択肢なのかなと思ってます。
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マジックに慣れたプレイヤーからすればどうということもないこういったデッキも、「そのターンに唱えられる選択肢が多すぎて」、「プレイングが難しい」んです。
初心者目線で、覚えることが「ルールのチュートリアル」から、一気に「ゲームの実際のプレイングの機微」に移行すると、 難しいゲーム・勝てないゲームだという壁が迫ってきてしまうかなと思います。
このあたり、「負けて覚えろ」「負けて覚えてきた」という考えや経験の方もいますが、 その「負ける期間」の前に一つ「デッキを回せる期間」というのも用意すると、ステップ・アップが順調に行くかもしれません。
競技目線では、その「負ける期間」で「負け方を覚える」というのが大切という考えも良く分かるので、 人に合ったチュートリアルやインストラクションで実際の導入に繋がっていって欲しいです。
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『各デッキの特徴』
どのデッキも、基本的には4ターンキルを目指して順番にクリーチャーを展開するデッキなのですが、 色の役割(カラーパイ)から、実際には使うカードがクリーチャーでないものの比率が高いデッキもあります。
簡単にですが、各デッキのリストの特徴を説明します。
『緑』 |
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《荒野の後継者》の"獰猛"を達成させることで打点を作りだす構成です。 特に4ターン目の《押し進み》はメインで唱えて獰猛を達成させつつ、 "接死"+"トランプル"というルールの説明にも向いています。 1マナ2/1がいない分、3マナのパワー4が2種類いるので、中盤の攻勢に強いです。
『白』 |
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良い意味でキーカードを持たない、金太郎飴デッキ(どこからでも同じ動きが出来る)です。 1マナ2/1と2マナ3/1を2種類ずつ持っている上に2マナのクリーチャーは最も多いので、 序盤からの攻めの安定性は一番あります。
『黒』 |
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《待ち伏せの巫師》を軸にする"疾駆"を活用する構成です。 通常プレイと疾駆の選択肢があるので少し難しいですが、 4ターン目までに与えるダメージではどちらが大きいのか。 というのを考えていくルートがやはり基本になります。
『赤』 |
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速攻に長けてる赤はコモン・アンコモン構築でも安定のプールでした。 実際にスタンダードで見かけるカードも一番多いので、 「スタンダードの赤単デッキ」にも繋がりやすいと思います。 《満月の呼び声》の強さが頭二つくらい突き抜けているのが実感できると思います。
『青』 |
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青といいつつ青+アーティファクトデッキです。 アーティファクトのことを「茶」と呼ぶプレイヤーがいるのは、 以前はアーティファクトカードの枠の色合いが茶色だったことが理由です。(今は銀色なので「銀」と呼ぶ人もいます。) やはり《アーティファクトの魂込め》がないのが残念とも言えますが、 《鋳造所の隊長》によって《破衝車》が5/4になる姿は、まさしく巨大戦車の部族の名に恥じない暴力です。
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『デッキのアップデート』
このデッキを初心者に勧めた後は、初心者である本人がプレイしてみて、どういったところが楽しいか・魅力が足りないかを確認して、 それを満たすコンセプトの方向に調整していく。といった手立てを取っていただければ、と思います。
またコモン・アンコモンにも2色土地があるなかで単色に限定してリストを組んだのは、 友人知人で複数人が同時に始めるときに効率良くプールを集めるため「プレイヤー毎に色の分担をする」というような 動きが自然発生的に起こることも多いので、2色デッキよりも区別しやすい単色のリストにしました。
「当分大会には出ないのでスタンダードに限定する必要はなく、テーロスやM15のカードも使っていく」のか、 『戦乱のゼンディカー』でこんなカードが出てきてる("欠色"と《幽霊火の刃》のシナジー等)と伝えるのか、 負担の少ない範囲の予算は幾らなのか、少しオーバーしても勧めたいレアカードはどれか、 あるいはルーキー・オブ・ザ・イヤーを目指して競技一直線で行く決心があるのか―... グループのなかでも、それぞれ思惑が変わってくると思います。
今回紹介したリストを、ほんのキッカケの一つにして、 仲間や初心者とコミュニケーションを取っていくプレイヤーが増えれば良いな、と思っています。
それでは。森安でした。 今回は突発的な番外番だったので、短くまとめました。 遠くないうちに、本コラム第6回でまた皆さんにお目に掛かりたいと思います。 |