神戸マジック:ザ・ギャザリング・コスプレ・コレクション
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text by Seigo Nishikawa
神戸といわれて皆様は何を思い浮かべるであろうか。美しいハーバーライト、情緒あふれる異人館、神戸牛に代表されるずらり並ぶ美食の数々。それらはどれも正しいイメージではあるが、一つ忘れてはいけないことがある。神戸はファッションの町ということだ。
"ファッションコレクション""ファッション美術館"、例をあげれば枚挙に暇が無い。 さて振り返ってMagic the Gatheringでファッションというと、お一人の姿が思い浮かぶのではないだろか。
Christine Sprankle WotCの公式コスプレイヤーとして有名な彼女は、その美貌と類まれなるセンスを遺憾なく発揮し、世界中のグランプリで会場を賑わせる役を担っている。マジック・ザ・ギャザリングに首まで浸かっている方、まだはじめてから日が浅い方、実際に手に触れたことは無い方、その全てが等しく彼女を見ると幸せな気持ちになってしまう。
(画像はWizardsの公式サイトより引用させていただきました)
BIGMAGICがGP神戸を開催させていただくに当たり、いかにMtGを盛り上げていくか、MtGを広げていくかを考え、彼女への来場を企画したところ、快く引き受けていただき今回の「神戸マジックザギャザリング・コスプレ・コレクション」の実現に繋がったという次第である。
2015年11月22日(日) 17時10分、司会のせれ、ちあき両氏の挨拶をもって、いまここにGP史上初の「コスプレショー」が幕をあけた。
左:せれ氏 右:ちあき氏
まず始めに、せれ氏の挨拶の言葉を紹介したい。
「マジック・ザ・ギャザリングはグランプリへの参加者もさることながら、遊んでいただいている方がどんどんと増えていっております。その門戸を広げるべく、今回このコスプレショーというものを企画させていただいたのが経緯でございます。」 そうマジックを広げたいという思い。入り口はなんでもよい、マジックに触れ、マジックに親しみ、マジックを楽しむ人が一人でも増えてほしい。それが今回の一番の目標。その上でそれに協力していただいた参加者の方からお一人をチャンピオンとして選ばせていただくということも目的としている。 その審査員として選ばせていただいたのは
日本人初のPTチャンピオン 黒田正城さん PT戦乱のゼンディカーチャンピオン BIG MAGIC専属プロプレイヤー瀧村 和幸さん Wizards of the Coast 広報担当 格内 麻衣子さん
《頂点捕食者、ガラク》に扮したDJ 岩Show そして何より忘れてはいけない
Christine Sprankleさん!!
rk Post氏に書き下ろしていただいたDark Angelの姿を見に纏い、遠くカリフォルニアからこの神戸の地までお越しいただいた。翼を広げ今にも飛び立ちそうなその美しさに思わず会場からはため息が漏れる。果たして本当にここはグランプリの会場なのか。
思わずトリップしそうになるも、コスプレショーはここからがメインイベントだ。
エントリーナンバー1 しゃらさん(東京) 《悪夢の織り手、アショク》
「これはいいですね。予め岩Showさんから本能で語ってくれといわれてたんですが、僕の本能が告げてます。これはいい。いいですね。Good!!」思わず瀧村がマイクを掴む。 コスプレ暦10年を超えるしゃらさんは、マジックも勿論楽しんでおり、特に《悪夢の織り手、アショク》をモダンでもスタンでもずっと使用していたという。
しゃらさん「私はずっと青黒を使っていて、マジックのフレーバーが大好きで、アショクへの愛を伝えたいという一心で、がんばって衣装を作りました。」
この言葉に会場からは拍手。皆にしゃらさんの思いはしっかりと届くとともに、いきなりのコスプレのレベルの高さ、素晴らしさに観客も審査員もぐっと前に乗り出す。これは想像していた以上に真剣な勝負だと。 Christineさんからも「アショクの頭の部分を上手く表現しているのがすばらしい」との賛辞のコメントだ
エントリーナンバー2 大河さん(東京) 《薄暮の騎士》
一目見て、彼女が何のコスプレをしているか判別付いた方はどれだけいたであろう。ちあき氏から《薄暮の騎士》であることが告げられると、大河さんはゆっくりと歩を進める。
大河さんはステージに上がると、急にその身に纏いし鎧を脱ぎ始めた。一体何が起こるのかと固唾を呑むギャラリー。するとその鎧の下からは
美しいもう一つの姿が! お分かりになるだろうか。《薄暮の騎士》は「テンペスト版」と「基本セット第10版」でそのイラストを変えているのである。
大河さん「マジックは再販でカードのイラストが変わるというのが、コレクション的にとても面白いです。」 Christineさん「衣装を変えるというアイデアが素晴らしいのと、私自身キュートでラブリーな《薄暮の騎士》が大好きなのでとってもお気に入りです」 マジックの魅力の一つであるイラストの素晴らしさを、格好良いコスプレから美しいコスプレへの変化という形で見事に表してくれた。そんな大河さんの仕掛け、はまだこれだけでは終わらない。続いて登場するのは
エントリーナンバー3 大河さんの愛娘さん(東京) 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
思わず会場からは「かわいい」の声と、声には出さないまでにこやかな笑みを浮かべるギャラリー。Christineさんも最初は英語でコメントを喋り始めたのだが、途中で思わず日本語で「すごくかわいいですねー!」と絶叫してしまうほど。 このギデオンならついていける、ゼンディカーを守ってくれる、そう思いたくなる程の威風堂々の入場を果たした彼女は、場内の思いに応えてか
「皆を守るぞーーーー!」誓いの雄叫び。 守られたい!! マジックのカードで一番好きなカードは? という質問に対し迷い無く「エイヴン」と応える彼女は、なんとも末恐ろしい。彼女に呼ばれたら、私たちはすぐに同盟者になって馳せ参じるであろう。マジックとゼンディカーの未来を託したくなる。
エントリーナンバー4 よこやまさん(神奈川) 《三日月の神》
登場するなり方々から飛び交う笑い声と「三日月!」の掛け声。場内にギデオンがもたらした優しい空気を一変させる神の登場だ。
こんなん卑怯ですやん! これトレスして反転させただけでしょ!! しかしまぁなんという再現度(?)であろうか。「以前からよく似てると言われていたので、この容姿を活かすにはこのタイミングしかない!」とはよこやまさんの参加志望動機であるが、似ていると言い出した人には個人的にアイデア賞をお送りしたい。 こんな幸せそうな笑顔を見たら1枚ぐらい追加で引かれたって許せてしまう。これだけ文明が発達した世の中において、有人神が降臨するタイミングに立ち会えるなど誰が想像できたであろう。 この出会いにはChristineさんも驚いたか、「普通コスプレと言うと衣装を着るのに、逆に脱ぐと言う斬新なアイデアです。彼こそが本物の《三日月の神》ですね」と大絶賛である。
エントリーナンバー5 校長さん(東京) 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
本能のままにゼンディカーを食らいつくさんとするウラモグの登場だ。 ところでこのウラモグが人間サイズに見えている貴方。それは遠近法による目の錯覚だ。
ウラモグが左手で今にも握りつぶさんとしているのは《巨森の予見者、ニッサ》だ。ニッサは私たち人間とほぼ似たような体形をしている。つまりは、我々の存在などウラモグの前ではただひねり潰されるだけのちっぽけな存在なのだろう。 なお最初にニッサの存在に気づいたのはWotCの格内氏であることも付け加えておきたい。 校長さん「ウラモグの脚を再現するのに、一本一本針金をいれて個別に動かせるようにしてみました。」 Christineさん「ウラモグを作ろうなんて普通考えません。触手とかうまく表現しているのが素晴らしいです」と校長さんのこだわりの部分はやはりコスプレイヤー同士通じ合うものがあるようだ。
エントリーナンバー6 うにぱーさん(大阪) 《若き紅蓮術士》
何故かBIGWEB MANと一緒に登場したうにぱーさん。実は二人は元上司と部下(DJ岩Show談)。BIGWEB MANはコスプレには一切関係ないはずなのに、うにぱーさんが出場することをどこからか聞きつけると、半ば強引に出てきたのだという。BIGWEB MANは入場時に、観客に飴を配りうにぱーさんへの投票を促すことも忘れない。 なお今回は観客の皆様には投票権はない。
特別審査員席に座るChristine Sprankleさんは過去にチャンドラ・ナラーのコスプレも行っており、チャンドラと《若き紅蓮術士》といえば、そのゴーグルでわかるようにいわば師弟とも言える間柄。彼女のその首にはチャンドラの紋章がかかっている。これをみてChristine Sprankleさんも「チャンドラとヤンパイの師弟関係を忘れずにやってくれているのが凄く嬉しいです」とご満悦。 BIGWEB MANとの関係を模して......はいないかな、流石に。
エントリーナンバー7 みささん(愛知) 《黄昏の番人》
みささんがその姿をあらわすと場内の空気が一変する。思わず漏れる「きれい......」というため息。 瀧村にいたっては「これはぐっときます。かなり角度があがってきますね!」と語る。何の角度があがるのかは彼の名誉のために伏しておきたい。
みささん自身がコンセプトにしたと語る「神秘的な雰囲気と優雅さ」に男も女も性別に関係なく魅入られてしまっている。これまでにコスプレイベントには数え切れない程参加しており、過去にはコスプレ雑誌にも掲載されたこともあるのだとか。今回の出場自体はMtGプレイヤーのご主人から「参加してみてはどうか」薦められたから、とのこと。こういう形でMtGに触れるのもまた一つの新しい形といえるであろう。 Christineさんは「黄昏の番人の身体がすらっとしているところを上手くあらわせているのと、天使を表現するクオリティの高さが素晴らしいです」との評価をしていた。
エントリーナンバー8 てつさん(東京) 《希望の天使アヴァシン》
「天使が多くていいですね。みんな完成度が凄いですね」黒田の鼻の下が遠めに見ても分かるぐらいのびきっている。まぁ確かに、これだけ美しければ仕方がない。 「四徹で作りました」(てつさん)と語るその衣装に妥協点は一切見当たらない。まるでイラストがそのまま現実世界に飛び出してきたかのようなその完成度は、全体を見ても図抜けているといっても過言ではない。
これにはせれ氏からもただ「ありがとうございます」という言葉しか出てこない。 Christineさんは、通訳に言葉を敢えて聴いた上で日本語で「美しい!」と語ると「《希望の天使アヴァシン》は私もやった事があるので、コスチュームの作り方にも興味がありますね」とその出来栄えはおろか、てつさんの衣装作成技術にもお墨付きがたといっても良いであろう。
エントリーナンバー9 りゅうじさん(大阪) 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
BIGMAGICの心得ある1スタッフが作り上げた、エルドリュージその真の姿。想像以上のガチ度に周囲は吃驚仰天。特に何をそこまで、と言わせたくなるほどの脚の部分へのこだわり。 だがこれが見た目以上に重いようで、わずかな段差を上るだけでも一苦労。そんなウラモグは見たくなかった......
そりゃ《黄昏の番人》も笑いますよね ちなみにChristineさんからは「......凄くいい感じなんですが......怖いので近寄らないで><」と当然の拒絶。リュウジ無念。
以上、全9人の出場となったわけだが、予断を恐れずに言わせていただければ、想像を遥かに凌駕する完成度と、参加者のマジック・ザ・ギャザリングに対する熱い思いが余すことなく伝わったといっても過言ではないであろう。正直甲乙をつけるのは非常に難しいようにも思えるがそれでもコンテストという形をとっている以上優勝者を決めないわけにはいかない。審査員の喧々諤々の協議が繰り広げられる。 そう遅くなったが今回のコスプレイベント、優勝者にはなんと
賞金10万円が贈呈されるのである。 両司会者からは是非とも次の衣装への資金としてほしいとの意見が出された。次回のGP名古屋は再びBIG MAGICの主催で開催される事が既に決定している。優勝者の方には、是非とも私たちと一緒にマジックを盛り上げていっていただきたい。 そうしたところで、ようやく審議が終了し席に戻る審査員。彼らの結論がせれ氏に伝えられ、一瞬の緊張感が場を支配する。 せれ氏の口から発表された優勝者は 《黄昏の番人》のコスプレをおこない、会場の皆を魅了したみささんに決定!
みささん「皆様とても素晴らしくて、まさか選ばれるとはおもってなくて吃驚しています。」思わず涙声。 そしてもう一つクリスティン賞として、Christine Sprankleさんからもお1人に特別なアイテムが贈呈される。これはChristineさん自身が作成するコスプレアイテムとのこと。 その栄えある受賞者は
Christineさんはまっすぐ「神」の元へ向かう。本人が一番これに驚き「え? いいの? ほんとに? 僕で? やめて」と困惑というか混乱。少ししてChristineさんの選択が夢でも嘘でもないことを悟ると、満面の笑みを見せる。
Christineさん「私、コスプレを12年間やっていますが、この12年間でこんなにmagnificentなアイデアは始めてみました!」 通訳によればmagnificentとは、Good・Excellentの更に上、英語では最高級の褒め言葉である、とのこと。これには観客からも大歓声。 また神とは別にChristineさんが大興奮の《歴戦の戦士、ギデオン》ちゃんには彼女のサインを入れたプレイマットが送られた。
Christineさん「アメリカのグランプリにも沢山参加していますが、これまで見てきた中でもこんなに楽しい、アメージングなグランプリは初めてです。日本のグランプリにも又来たいと思ってます。皆様もまたコスプレで会場に来てください」 かくしてグランプリ初のコスプレコレクションは大盛況のうちに幕を閉じた 参加いただいたコスプレイヤーの皆様、お集まりいただいた観客の皆様、審査員の方々、Christine Sprankleさんに、そして全てのMtG者に心からの感謝を述べ、今回のイベントレポートの締めくくりと変えさせていただきたい。 あなたに天使の加護があらんことを。一人でも多くの人がマジック・ザ・ギャザリングに興味を持ってくれることを大いに期待しつつ、今は暫しの休息を。
本当にありがとうございました。また次回お会いしましょう!