BIGs 杉山雄哉のGP神戸2015調整録 

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 はじめまして。
 このたびBIGMAGICユニホーム契約、通称「BIGs」に加入しました杉山雄哉(すぎやまゆうや)と申します。
 簡単に自己紹介をさせていただくと、大昔にはプロツアー(以下PT)にも参加したことがありますが、就職後にマジックを引退し、『ミラディンの傷跡』から復帰した復帰組になります。

 復帰後の主な成績は...
 
 PTQ 『ニクスへの旅』突破
 PTQ 『マジック2015』突破
 GP 名古屋2014(テーロスブロック・リミテッド) 5位
 PT『ニクスへの旅』(テーロスブロック構築・ドラフト) 参加
 PT『マジック2015』(スタンダード・ドラフト) 参加
 GP 神戸2014(モダン) 16位
 GP 静岡2015(『タルキール覇王譚』リミテッド) 13位
 GP 香港2015(『マジック・オリジン』リミテッド) 14位

 と、2014年前半に所謂"ビクトリーシーズン"が来たものの、二度のPT以降はあと一歩が勝ち切れない結果が続いており、なんとかもう一度PT権利を!と臥薪嘗胆していた折のBIGsへのお誘い。
地方在住のため、BIGsお披露目イベントであったBMO横浜にはBIGsメンバーで唯一不参加となり、今回のGP神戸がデビュー戦でした。
スポンサーの名前を入ったシャツを着てプレイすることはかなりのプレッシャーでもありましたが、それが良い方向に働いたのか今大会では9位という成績で目標としていたPT権利を得ることができ(TOP8オポ落ちは残念ですが)、今回記事を書かせていただける運びとなりました。
記事を書かせていただけるだけの成績でデビュー戦を終えることができたということで、今は少しの安堵感があります。
 
 それでは、さっそくですが今回のGPに向けて自分が行った調整・およびGP本戦を振り返っていきましょう。
 
 

2.デッキを選択するまで

 
BIGMAGIC契約プロプレイヤー・瀧村和幸さんの鮮烈な優勝によって幕を閉じたPT『戦乱のゼンディカー』
PTで活躍したいくつかの有力なデッキによって環境が規定され、ここからがスタンダード新環境のスタートとなります。
「ダークジェスカイ」と「アブザンアグロ」。
すなわち《ヴリンの神童、ジェイス》と《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》から、環境は始まりました。
 
ヴリンの神童、ジェイスゼンディカーの同盟者、ギデオン
サンプルリスト 「アブザンアグロ」 瀧村和幸 PT『戦乱のゼンディカー』優勝
26land
2 《森》
2 《平地》
2 《梢の眺望》
1 《窪み渓谷》
1 《燻る湿地》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《樹木茂る山麓》
4 《溢れかえる岸辺》
2 《ラノワールの荒原》
4 《乱脈な気孔》 

21creature
4 《始まりの木の管理人》
4 《棲み家の防御者》
4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》
4 《包囲サイ》
2 《風番いのロック》
3 《搭載歩行機械》

13spell 
4 《ドロモカの命令》
4 《アブザンの魔除け》
1 《残忍な切断》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 

sideboard
1 《風番いのロック》
2 《黄金牙、タシグル》
2 《強迫》
3 《絹包み》
3 《精神背信》
2 《究極の価格》
1 《自傷疵》
1 《真面目な訪問者、ソリン》
 
サンプルリスト 「ジェスカイブラック」 ジョン・フィンケル PT『戦乱のゼンディカー』ベスト4
26land
1 《平地》
1 《島》
2 《山》
1 《沼》
2 《大草原の川》
1 《窪み渓谷》
1 《燻る湿地》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《汚染された三角州》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《神秘の僧院》
1 《遊牧民の前哨地》

14creature
1 《竜使いののけ者》
4 《ヴリンの神童、ジェイス》
2 《魂火の大導師》
4 《カマキリの乗り手》
3 《黄金牙、タシグル》

20spell
2 《払拭》
2 《焦熱の衝動》
2 《乱撃斬》
4 《はじける破滅》
3 《コラガンの命令》
3 《オジュタイの命令》
1 《完全なる終わり》
2 《時を越えた探索》
1 《龍語りのサルカン》

sideboard
1 《竜使いののけ者》
3 《アラシンの僧侶》
1 《フェリダーの仔》
2 《強迫》
3 《軽蔑的な一撃》
1 《焙り焼き》
2 《光輝の炎》
2 《影響力の行使》
 
GP神戸までの期間、約1ヶ月。
この5週間の期間をどのように活かすか。
自分は1週間単位で5つのタームに区切って、デッキを選択/調整することにしました。
各タームの内容はおおまかに
1~2週目:環境理解と自作デッキテスト
3週目:強いデッキが組めればそのまま自作デッキの使い込み。組めなければ自作デッキテストと平行して使用候補メジャーデッキの使い込み
4週目:使用デッキ決定と使い込み
5週目:最終調整とサイドプラン書き出しなど
といったところです。
 
社会人である自分はMtGに打ち込める時間も限られており、調整期間は効率的に使わなければ、プロや学生プレイヤーに太刀打ちできません。
スケジュール管理による時間リソースの取捨選択、そしてMOによるハイケイデンス・クライム(※)が、社会人と競技プレイヤーを両立させる鍵となります。
また、こうしてスケジュールの全体像と進捗状況を把握することで自身の現在位置が分かり、精神的に余計な不安を抱えなくて済みます。
 
(※編:ケイデンスとは1分間のクランクの回転数、自転車に乗る人がペダルを回す速さを示す数字。高回転で坂を上る、すなわち集中してデッキを何度も実戦で回し続けるということ。)
 
以下、1週間毎の進捗を振り返っていきます。
(なお、一応自分なりに環境理解のため、PT前にもいくつかデッキを作っていましたが...割愛します)
 

【1週目】

瀧村さんの「アブザンアグロ」はPT後の環境を踏まえた上でリストを見直してもほぼ完璧に思えたため、自分は「ダークジェスカイ」を試そうと思いました。
まず、そのデッキの青マナ過多のマナベースに注目しました。
フェッチランドの関係上しょうがないのですが、青マナはほぼシングルシンボルしか必要としないのに(ダブルシンボルは《時を越えた探索》2枚のみ)見た目上20枚の青マナソースは過剰に思えました。
この青マナソースを他の色マナに振り替えることで、リストは割愛しますが見た目上の色マナが
青17 赤16 白19 黒15
青16 赤18 白18 黒16
青18 赤16 白18 黒16
という三種類のマナベースを作成し、それぞれ《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》、《ピア・ナラーとキラン・ナラー》、《つむじ風のならず者》をフィーチャーしたリストを作成しテストしました。
理由は、《ヴリンの神童、ジェイス》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》という二大パワーカードが使えるデッキ探し。そして、環境の除去が《はじける破滅》など単体除去に寄っていて、全体除去が不在という点に注目したためです。
つむじ風タシグルゼンディカーの同盟者、ギデオン
あと、《つむじ風のならず者》で《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》や《黄金牙、タシグル》をシュートしたらかっこいいなあ、という思いも^^
 

【2週目】

「ダークジェスカイ」を断念。
早い!

 
いくつか理由はありますが、

・先手最強でも後手でまくることが困難
・「エルドラージ・ランプ」系の台頭
・相手の先ギデオンへの対処しづらさ
・相手のチャンプブロック戦略への対処しづらさ
・ジェイス以外の2マナ域の薄さ
ダブルシンボルを含みタップインランドを多用する4色デッキであることのテンポの悪さ
・ライフゲインカードが少なく、ビートダウン相手に押し込まれる

などがあげられます。
ギデオンの有無は容易に結論を出せませんが、更なるダブルシンボルのカードはやはり無理があったようです。残念。
ピア・ナラー
しかし、《ピア・ナラーとキラン・ナラー》は想像以上の強さで、これは収穫でした(逆に《つむじ風のならず者》は想像以上の弱さでした^^)。
なので、次はナラー夫妻をフィーチャーした「マルドゥ除去コントロール」「マルドゥトークン」そして「ラクドスアグロ」を試すことに。
 

【3週目】

「マルドゥ」「ラクドス」を断念。
早い!

損切りが早いのは大事です^^
「マルドゥ」については
・一過性だと思った緑の「エルドラージ・ランプ」が思ったよりも減らず、それとの相性の悪さ
・ライフゲインカードが少なく、ビートダウン相手に押し込まれる
・ドローが少なく、土地トラブル・マリガンに弱い
・《棲み家の防御者》に弱い!
・2マナ域の選択肢がなく、展開的にギデオンを守れない場面がよくある

「ラクドスアグロ」については
・ドローがなくリソースが足りなくなり、同一ターンに2アクションできない。ひと押しができず勝ち切れない
・《オジュタイの命令》だけで負けることがある

などの理由があげられます。
 
ここまで実り無く貴重な2週間を消費してしまいました...が、《苦い真理》の強さや《絹包み》の強さ、ギデオンの脆さに気付けたなど、収穫もありました。
この時点でMOレーティング上では1750~1800を行ったり来たりと、まあ負けすぎてもいないがかと言って勝ちまくってもいないといったところですが、自分はMOを負けるための練習ツールと割り切っているので特に動揺はありません。
あくまで練習なので、見た目不利な選択肢をわざと「どうなるかな?」と選んでみたり、色々なデッキをテストしたり、見た目弱そうなカードを試してみたりといったことをよくやります(《つむじ風のならず者》とか)。
上記は「調整期間を効率的に使う」という言葉と矛盾するようにも思われますが、ただ効率化を求めるだけでは行き着くところは「コピーデッキで構成もプレイングも知れ渡ったまま戦う」です。
この方法では、効率的に100点満点中60~70点の成績を収めることはできるかもしれませんが、GPなどの大舞台でシングルエリミネーション進出以上のを目指すには相当な上振れが必要です。
少し陳腐な言い方をすれば、「シークレットテク」や「わからん殺し」を見つける、言わば「邪道」こそが、一見遠回りに見えて、実は最も効率よく80~90点の勝ち星を得る手段なのではないでしょうか。
もちろん、時間を費やし、メタを支配するデッキを使い込み、プレイングや構成を完璧なものに研ぎ澄ます「王道」という選択肢もあります。
どちらが良いも悪いもありませんが、いずれにせよ、自分に確保できる調整時間で、王道/邪道どちらの方法が適切かを判断することが重要です。自分が、できる限り自作デッキの可能性を探ろうとするのには、こういった理由があります。
※もちろん、勝てるかどうかが一番重要なので、勝てるデッキができなければ未練なく一番勝てるメジャーデッキを使います。
悔いを残さないために自作デッキを使う!などと、手段が目的になってしまってはいけません。
 

 さて、かなり話が逸れてしまいましたが、ここからは予定通り(?)、メジャーデッキも使い始めます。
すなわち海外GPなどで優勝を重ね続けている「アブザンアグロ」。
強さは折り紙つきですが、最終的にメジャーデッキを使うことになったとしても、単に使うだけでは勝てないので、プレイングの確認や細かいカード選択を進めます。

少し試してみると、やはり先手最強なれども後手が課題
その他、相手にテンポよく2アクションを取られるとテンポ負けするケースがしばしば見られるのが気になりました。
マナレシオの高さと汎用性の高いスペル、フラッドの受けとなるマナの注ぎこみ先の豊富さ「だけ」が「アブザンアグロ」の強みですから、ゲーム中に一度でも1ターン分のテンポを取られると、巻き返すことは非常に困難です。

白蘭の騎士

また、ちょうどこのタイミングで「白蘭アブザン」が結果を残し、話題になっていましたが、自分は実はすでに「白蘭ジェスカイブラック(笑)」を試していたので、この《白蘭の騎士》というカードの限界を知っていました。
残念ながら強い場面が限定的過ぎるということで、次に自分は安易に《爪鳴らしの神秘家》を2マナ域に据えてテスト。
プレイしてみると、確かに先後を入れ替えてはくれますが、3ターン目にギデオンをプレイするには2ターン目アンタップイン土地からの3ターン目白白を用意する必要があるため難易度が高かったり、4ターン目に《風番いのロック》を強襲達成でプレイするにはピンポイントで3ターン目にアタッカーを用意することが必要だったりと、そのままスタンダードな構成の「アブザンアグロ」に入れるには癖があるカードだな、という感想でした。
 
一方で最後の可能性を諦めず、自作デッキも平行してテストします。
《包囲サイ》と《棲み家の防御者》でマルドゥの弱点を補った「マルドゥタッチ緑」、《コラガンの命令》と《はじける破滅》をタッチした「アブザンタッチ赤」。
マナエルフに特化し《戦呼びの学者》と《爪鳴らしの神秘家》を4枚ずつ積んだ「カマキリゴリラナラーロック」。etc...etc...
 
「マルドゥタッチ緑」と「アブザンタッチ赤」はかなり勝てたものの、やはりテンポ負けを解決できず解体。
最後の長い名前のデッキは、一度回しただけで解体となりました^^
大会で少し結果を残していた「エスパートークン」や「ダークティムール」に可能性を感じたものの、「エスパートークン」は速い赤単や緑ランプ系に相性が悪く、またジェイスとギデオン以外のカードパワーに不安があり、GPという雑多なデッキが多いフィールドでは使用ををためらってしまいます。
「ダークティムール」はテンポ的に強い動き方ができるもののやはりライフゲイン・ドローがなく継戦能力に難あり。
また、チャンプブロッカーを突破することが難しく、かといって《ティムールの魔除け》を使っているようでは有効牌の枚数で負けてしまいます。
その他、赤ダブルシンボルや早いターンから青マナを要求するマナベースにも不安がありました。

《放浪する森林》は強いけれど、そもそも《凶暴な拳刃》よりも《先頭に立つもの、アナフェンザ》の方が強いし、《雷破の執政》よりも《包囲サイ》のほうが裏目がないしダブルシンボルのキツさもないしライフゲインは偉いし、《アブザンの魔除け》と《ティムールの魔除け》は比べるべくもないし。。。。。。
 
ピコーン!
 
「ダークティムール」のメソッドを「アブザンアグロ」に移植したら強そう
ということで、そのまま《凶暴な拳刃》を《先頭に立つもの、アナフェンザ》に、《雷破の執政》を《包囲サイ》に置き換えてみました。
違和感を感じていたギデオンも、《放浪する森林》に差し替えることで《爪鳴らしの神秘家》を正当化できるし、《頑固な否認》を強く使えるし、《放浪する森林》なら相手の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の返しにキャストしても(相手に何もなければ)場を返せるし!
と、かなりご都合的に考えながらささっと仮組みして試してみると、これが意外にもかなりの好感触。

 
サンプルリスト 「アブザンブルー」

26land 
2 《森》
2 《平地》
1 《梢の眺望》
1 《大草原の川》
1 《燻る湿地》
1 《窪み渓谷》
4 《樹木茂る山麓》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《吹きさらしの荒野》
2 《ラノワールの荒原》
4 《乱脈な気孔》

26creature
4 《始まりの木の管理人》
4 《爪鳴らしの神秘家》
4 《棲み家の防御者》
4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》
4 《包囲サイ》
4 《放浪する森林》
2 《風番いのロック》

8spell
3 《ドロモカの命令》
4 《アブザンの魔除け》
1《 残忍な切断》※《頑固な否認》はサイド

《始まりの木の管理人》→《先頭に立つもの、アナフェンザ》~《包囲サイ》という「アブザンアグロ」の骨太な部分やスペルの強さはそのままに、《爪鳴らしの神秘家》によるブン回りの強化。
放浪する森林頑固な否認爪鳴らし
また、《放浪する森林》と《頑固な否認》のおかげで、「アタルカレッド」や「エルドラージランプ」など、どちらかと言えば苦手に感じていたマッチアップの相性が改善された点が特に気に入りました。
 
先にも少し書きましたが、自分は、GPなどのローグデッキが多いフィールドではメタ上位のマッチアップに強いが苦手なマッチアップもいくつかあるデッキよりも、まんべんなく苦手なマッチアップの少ないデッキのほうが有利だと考えています。
いくらメタ読みが的中しても15回戦という長丁場では当たり方に偏りが出る可能性が高く、前者のデッキではローグデッキに取りこぼす懸念があるためです。
また、ローグデッキに勝つにはライフレースやアド勝負など、相手の得意分野で勝負するのではなく、単純なカードパワーの差で勝負するのが一番です。
そのためか、自分が使うデッキは(理論上)早いデッキにも遅いデッキにも対応でき、カードパワーの高いカードを詰め込んだミッドレンジになることが多いです。
また、MOでも8人構築やデイリーイベントばかりでなく、当たるデッキの幅を持たせるためにリーグや2人構築も好んで利用します。
 
 なお余談ですが、デッキを作った2日後、前週末のSCGフィラデルフィアで《放浪する森林》入りタッチ青アブザンが入賞していたのを知り、軽く落ち込みました^^

 

【4週目】

せっかく自分で閃いたデッキが既存のデッキだったという事実は悲しいですが、実績の裏付けができたと考えることもできます。
使用候補だったメジャーデッキの亜種でもあるので、今のところ青をタッチしたアブザンを使わない理由は見当たりません。
ひとまず使用デッキと仮決定して、細部の調整と使い込みに入ります。
 
自分はこの頃、従来の「アブザンアグロ」の《梢の眺望》を1枚《大草原の川》に差し替えただけのマナベースを使用していましたが、《頑固な否認》を安定して運用するためにはさらに追加の青マナソースが必要なことは明らかでした。
また、《乱脈な気孔》は確かに強いのですが、16枚のフェッチ+基本土地ではバトルランド(『戦乱のゼンディカー』の2種類の基本土地タイプを持つ土地サイクル)を安定してアンタップインするには、少し枚数が不足しており、《爪鳴らしの神秘家》によって多少緩和されたとは言え、《乱脈な気孔》がタップイン祭りを誘発しテンポ負けするケースは依然としてありました。
そのため、上記のSCG青アブザンのフェッチ15枚、総土地枚数25枚のマナベースには非常に可能性を感じたのですが...
よく見ると「見た目上の色マナ:緑16(アンタップイン10) 白19 黒15 青13」の歪つなマナベース。
これでは《始まりの木の管理人》は安定して1ターン目にキャストできませんし、黒マナと青マナにも不安があります(ついでに白マナ過多)。
そこでマナベースの見直しに着手しました。

 
サンプルリスト 「アブザンブルー」マナベース
25land 
2《森》
1《平地》
1《沼》
2《ラノワールの荒原》
1《梢の眺望》
1《大草原の川》
1《燻る湿地》
1《窪み渓谷》
1《乱脈な気孔》
4《樹木茂る山麓》
4《溢れかえる岸辺》
4《吹きさらしの荒野》
2《汚染された三角州》
 
見た目上の色マナ:緑17(アンタップイン12) 白18 黒16 青12(+《爪鳴らしの神秘家》4)

基本土地+フェッチ:18


できれば《乱脈な気孔》をもう1枚採用し、白マナはもう1枚少なく、黒マナはもう1枚多く、というバランスであれば最高でしたが、かなり理想的なマナベースを組むことができました。

 実際、GPを通してマナベースに不満を持つことは一度もありませんでした。
マナベースについてはそれだけで何本も記事が書けてしまうので割愛しますが、自分でマナベースが組めるようになると、大きなメリットがあります。
おそらく、皆さんが考えているよりもだいぶ大きなメリットです。
ぜひ、マナベースについては妥協せずに色々と考えてみてください。
 
その他サイドボードを色々試しながらテストプレイを重ね、《頑固な否認》がサイドからメインに昇格し、更に枚数が3枚に増え、ついでに《頑固な否認》と相性の良い《黄金牙、タシグル》がメインに1枚固定されたところでこの週は終了。
荒野の後継者
しかし、このタイミングで津村さんの記事で「《荒野の後継者》アブザン」が推され、メタゲームの変化に若干の不安を覚えます(《放浪する森林》やタシグルが涙目になるため)。
 

【5週目】

泣いても笑っても最後の一週間。
週末にGPブリュッセルThe Last Sun予選BMIQがあり、神戸直前にしてメタゲーム上に波紋が起きました。
「エスパードラゴン」「4Cラリー」の台頭と、「エスパーメンター」の出現です。
龍王オジュタイ先祖の結集僧院の導士
それぞれデッキの乗り換えを検討しましたが...
「エスパードラゴン」は上に挙げたGPで使いたいデッキの条件にもマッチしており、かなり悩んだのですが、試行期間の不足・引き分けリスクを考え、最終的に使用を断念。
「4Cラリー」はどうしても「アブザンアグロ」相手に十分な勝率を確保できなかったために断念。
「エスパーメンター」は《ヴリンの神童、ジェイス》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》以外のカードパワーに不安があり、前述のローグデッキ相手の取りこぼしが懸念されこれも断念しました(ただし、GP神戸4位の高尾翔太さんは、《龍王オジュタイ》の採用というアプローチでこの問題を解決されていました。流石です)。
サンプルリスト「エスパーメンター」 高尾翔太 GP神戸2015 4位
 25land 
2 《平地》
1 《島》
2 《沼》
2 《大草原の川》
1 《窪み渓谷》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《汚染された三角州》
1 《進化する未開地》
4 《コイロスの洞窟》
4 《乱脈な気孔》

14creature
4 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《道の探求者》
4 《僧院の導師》
2 《龍王オジュタイ》

21spell
4 《強迫》
2 《蔑み》
2 《勇敢な姿勢》
1 《絹包み》
1 《究極の価格》
2 《破滅の道》
2 《残忍な切断》
2 《宝船の巡航》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《真面目な訪問者、ソリン》

sideboard
2 《白蘭の騎士》
2 《層雲の踊り手》
1 《払拭》
2 《軽蔑的な一撃》
2 《自傷疵》
2 《正義のうねり》
1 《見えざるものの熟達》
1 《絹包み》
1 《究極の価格》
1 《次元の激高》
結局、使用デッキは「アブザンブルー」で確定。あとは最後の詰めです。
思っていたよりも週末に結果を残さなかったとは言え、やはり《荒野の後継者》はネックです。
また、《風番いのロック》が思ったよりも「アブザンアグロ」に強くない点、《頑固な否認》との相性が良くない点、「エスパードラゴン」のオジュタイに弱い点も気になっていました。
 
そこで、
・《残忍な切断》の増量(《ドロモカの命令》の減量)
・サイドの《自傷疵》を4枚に増量
・《風番いのロック》→《龍王オジュタイ》の差し替え
を行いました。

《龍王オジュタイ》については《頑固な否認》《ドロモカの命令》との好相性だけでも十分なところ、「エスパードラゴン」に対しての素の強さ(最悪相手のオジュタイの返しに出すことで相手が動けなくなる・《命運の核心》も打ちづらくなる)、
負け筋の一つである《カマキリの乗り手》連打を完全シャットアウトなど、想像以上の強さでした。
また《はじける破滅》(ジェスカイブラック)が数を減らしていたことも採用の後押しとなりました。


 
最終的な形は以下の通りです。
 
サンプルリスト「アブザンブルー」 杉山雄哉 GP神戸2015 9位
 25land 
2 《森》
1 《沼》
1 《平地》
2 《ラノワールの荒原》
1 《大草原の川》
1 《窪み渓谷》
1 《梢の眺望》
1 《燻る湿地》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《樹木茂る山麓》
2 《汚染された三角州》
1 《乱脈な気孔》》


25creature
4 《始まりの木の管理人》
4 《爪鳴らしの神秘家》
2 《棲み家の防御者》
4 《包囲サイ》
4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》
3 《放浪する森林》
2 《龍王オジュタイ》
1 《龍王シルムガル》
1 《黄金牙、タシグル》


10spell
3 《頑固な否認》
2 《ドロモカの命令》
3 《アブザンの魔除け》
2 《残忍な切断》


sideboard
2精神背信
4絹包み
1頑固な否認
4自傷疵
1棲み家の防御者
2影響力の行使
1黄金牙タシグル
 
《龍王シルムガル》は除去枠とファッティ枠を半々で兼ねたスロットです。
また、シルムガルはサイドよりもメインでこそ強いカードと考えてのこの形です。
 

3.GP本戦レポート

 
土曜日
ROUND1 BYE
 
ROUND2 BYE
GPTで2BYEを獲得していたおかげでスリープインからゆったり当日入りできます。
会場でBIGsパーカーに初めて袖を通し、友人に高校生みたいと笑われ、いざ出陣です。
 
 
自分はGP中、疲労を抑えるため荷物は最小限にしています。
「マリガン後スクライ(占術)」と書いた18枚のライフメモとボールペン、ダイスケースはシザーズバッグに。
メッセンジャーバッグの中にはデッキとコーラ、リポビタンD、飴と羊羹のみで、トレード用ファイルやサイドイベント用デッキは入っていません。
少し前までは飲み物はお茶だったのですが、コーラや栄養ドリンクがよく効く体質なのを自覚してからはずっとコーラにしています。
 
 

ROUND3 「マルドゥドラゴン」 ×○○

コラガンはじける破滅
どんな大会でも初戦の入りは緊張するもの。
1ゲーム目を相手の理想的な回りで落として、ますます頭が冷えます。
2ゲーム目を《包囲サイ》連打で取り、3ゲーム目は相手の動きがぎこちなくて勝ち。
ゲーム中まったく相手のハンドが読めていなかったので、かなり浮き足立っているのを自覚していました。
なんとか勝ててほっと一息。顔を洗って気を引き締め直します。
 
 

ROUND4 「緑白鱗」 ○×○

硬化した鱗マナ喰らいのハイドラ
メインは相手がクリーチャーをあまり引かずにラッキー勝ちで、サイド後はありったけの除去を追加して流石に有利......と思っていたら2ゲーム目《マナ喰らいのハイドラ》を除去れずに圧敗して、3ゲーム目も連打された《マナ喰らいのハイドラ》を1体討ち漏らし大ピンチ。
しょうがないので時間稼ぎ半分の《包囲サイ》連打によるなんちゃってダメージレースをしかけると、除去も引かないが相手もスペルを引かなかったようでハイドラがブロックに回ってくれました。
なんとか1ターン差で《龍王シルムガル》が間に合い勝ち。
心臓に悪い勝負でしたが、相手のハンドもしっかりと読め、ようやく集中できだしたことを実感しました。
 
 

ROUND5 「緑白大変異」 ×○○

死霧の猛禽隠れたる龍殺し
集中しだしたと思っていたら1ゲーム目、後手で《ドロモカの命令》《アブザンの魔除け》《頑固な否認》土地4枚の初手をヌルキープ。酷いです。
3ターン目の《アブザンの魔除け》はドローにしか使えず、為す術もなく負け。当然。
2ゲーム目、気合を入れ直してしっかりとプレイ。《隠れたる龍殺し》のモーフもちゃんと見切ることができ、最後は《龍王オジュタイ》で勝ち。
3ゲーム目、1ゲーム目2ゲーム目の内容から相手がこちらのデッキを「《白日の下に》コントロール」と勘違いしてくれたらしく、1ターン目《始まりの木の管理人》からの《自傷疵》《絹包み》連打ビートが刺さって勝ち。
1ゲーム目2ゲーム目で自分がプレイしたカードは《アブザンの魔除け》《包囲サイ》《龍王オジュタイ》《絹包み》......なるほどヌルキープの功名とは。MtG難しい......
 

ROUND6 「緑青エルドラージランプ」 ○○

絶え間ない飢餓、ウラモグ水の帷の分離
1ゲーム目、クロック展開から《精霊龍ウギン》を《頑固な否認》で弾き、返しに強化スペルでライフを残り3まで押し込み、《絶え間ない飢餓、ウラモグ》をプレイされても《包囲サイ》で削りきる詰めろをかけて勝ち。
2ゲーム目、相手がダブルマリガン。
こちらは《精神背信》を2枚引いていて、マナ加速と《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を落とし、《龍王アタルカ》を出されるも《アブザンの魔除け》で除去してビート完了。
 
 

ROUND7 エスパードラゴン ××

時を越えた探索龍王オジュタイ
1ゲーム目2ランドストップ。
2ゲーム目3ランドストップ。
何もいいところ無く負け(笑)
 
 

ROUND8 アブザンアグロ ×○○

荒野の後継者包囲サイ
1ゲーム目は王道の後手負け。
2ゲーム目はこちらの土地が4枚5枚でかなりのターン詰まり、1ターンに1アクションしか取れず苦しみましたが、《影響力の行使》から《棲み家の防御者》でフェッチ回収、無理やり土地を伸ばして《龍王シルムガル》で勝ち。
3ゲーム目は再びこちらの土地が3枚で詰まり続け、気づくと場は5ターン目(こちらのターン)にして
自分:《先頭に立つもの、アナフェンザ》、土地3枚(アンタップ)、ライフ8
相手:《包囲サイ》《荒野の後継者》《始まりの木の管理人》(3/3絆魂トランプル)、土地5枚、ライフ20
という絶望的な場に。
しかしここから、相手のアタックを《先頭に立つもの、アナフェンザ》で《荒野の後継者》をブロック、パンプに合わせて《アブザンの魔除け》で《始まりの木の管理人》を除去、返しに《自傷疵》+《黄金牙、タシグル》でテンポを奪い、そのまま逆転! これはシビれました。
正直途中で5回ぐらい投了しそうになってましたので(笑)
 
 

ROUND9 ダークティムール ○○

凶暴な拳刃残忍な切断
1ゲーム目は《凶暴な拳刃》ビートに苦しめられるも、《包囲サイ》を2枚引けていて時間が稼げ、《乱脈な気孔》が殴りながらの《ドロモカの命令》で格闘してさらにライフを稼いでダメージレース勝ち。
2ゲーム目は《放浪する森林》6/6を作る→《残忍な切断》。《包囲サイ》→《影響力の行使》をくりかえされ手のひらの上で転がされまくるも、唯一残った3枚目のサイによるダメージレース差し切りのプランが成功し奇跡的に勝ち。
相手に黒マナか赤マナがもう1枚あれば、《残忍な切断》から《凶暴な拳刃》が速攻で走ってきて負けていました。心臓に悪い。
 
 
というわけで初日8-1。
なんと全て異なるデッキとの当たりでした。

この日の夜はBMお食事会で美味しい料理をご馳走になり、気力を充電しました。
 

日曜日
気合の朝一リポDスタートです。
というのも、ホテルの隣の部屋の人達が朝方4時過ぎまで大騒ぎをしていて2時間しか眠れなかったため、急遽のドーピングです。
まあ、以前のGPで同じように全く眠れずに二日目を乗り切ったことがあるので、今回もなんとかなるでしょう。
ということで勝負の2日目です!
 

ROUND10 マルドゥ ××

軍族の解体者焦熱の衝動
1ゲーム目、《始まりの木の管理人》をキャスト後うまぶって即3/3にせず《頑固な否認》を構えたら、相手アクション無し→相手のエンドに3/3にしようとしたところ《焦熱の衝動》を合わせられるという素人っぽさ丸出しのプレイをしてしまいそのまま負け。
2ゲーム目、シーソーゲームから《龍王シルムガル》で《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を奪いなんとかなりそうと思ったところに《軍族の解体者》をトップされ《龍王シルムガル》がチャンプブロックに回らざるを得なくなり、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が相手の下へお帰りになって負け。
 
...
 
......
 
なーにが「今回もなんとかなるでしょう(^ω^)」か。
初日を抜けただけで気を緩め、高をくくっていた自分に腹が立ってしょうがない!
初戦の入り方は難しいと、昨日もやったばかりなのに。
 
寝ぼけた自分に喝を入れるために、洗面所で何度も顔を洗って目を覚まします。
もう1敗も許されません。完全に目が覚めました。
 

ROUND11 ダークティムール ○○

ROUND12 ダークティムール ○○

 雷破の執政焙り焼き
気合が入ったか、危なげなく2勝を重ねることができました。
基本的にタフネス6を作れば《焙り焼き》では除去されず、アナフェンザと《凶暴な拳刃》の差、《包囲サイ》と《雷破の執政》の差で勝てました。
 
《包囲サイ》は攻める時にも強いですが、本当に強いのは守る時だと思います。
攻められながらもライフレースを12-12ぐらいのイーブンに保ち、いつの間にか相手が「殴ると4/5トランプル他に殴り返されて、強化スペルや追加の《包囲サイ》があるとライフがヤバい」なんて状況を演出します。
そうなると攻守が逆転し、あとはこっちのものです。
《自傷疵》も同じく控えめにダメージレースを演出します。
 

ROUND13 アブザンアグロ ○○

始まりの木の管理人アナフェンザ
1ゲーム目は先手を活かして勝利。
2ゲーム目も《精神背信》で安全確認からの、《包囲サイ》を《影響力の行使》でキャッチする理想的な動きで勝ち。
 
 

ROUND14 赤緑上陸(覚前プロ) ○○

強大化ティムールの激闘
ボス戦です。
1ゲーム目、先手を取られ、途中何度も負けたか、と思うも《包囲サイ》を1枚引けていたことと、覚前プロが少し土地を多めに引いていたために《棲み家の防御者》で《包囲サイ》を再利用し、《頑固な否認》を握って勝ち。
2ゲーム目、覚前プロが土地詰まり。《包囲サイ》が間に合い、最後はやっぱり《頑固な否認》で勝ち。
 
 
最終戦を残し12-2。勝てばプレイオフに残れるのか。残れないのか(残れないんですけど)。
スタンディングは見ませんでした。何位であろうと勝つしかないし、余計な情報は脳の酸素を消費するだけです(どうでもいい情報ですが、「嘘喰い」というマンガが好きです)。
 
 

ROUND15 アブザンブルー ○×○

 爪鳴らし影響力の行使
1ゲーム目は先手《爪鳴らしの神秘家》から、相手の《アブザンの魔除け》をスカす展開をして勝ち。
2ゲーム目は2ランドストップ。何もできずに負け。
3ゲーム目は《燻る湿地》《森》からの《爪鳴らしの神秘家》を《絹包み》されて手札に土地なしというピンチからのダイレクト《平地》ツモ!で、《先頭に立つもの、アナフェンザ》が出せ、相手の《先頭に立つもの、アナフェンザ》鏡打ちにアタック→ブロックしてもらえたところに《ドロモカの命令》で一方+《絹包み》生け贄と1対2交換に成功。
その後、《悲劇的な傲慢》をくらうものの《影響力の行使》と《龍王シルムガル》で盤石に勝ち。
 
 
というわけで、勝ち!!!
ゲームが終わった瞬間に、後ろで見ていた友人達が肩を叩いて祝福してくれました。掛け値無しに嬉しい瞬間です。
張り詰めていた緊張が緩み、疲労が吹き出てきます。
 
 
それが良くなかったのか。
 
...
 
......
 
その後のプレイオフ発表前後は割愛させていただきます。
9位。
手元には3枚のライフメモが残ってしまいました。悲しい。
 

4.最後に

とにもかくにも、プロツアーの権利は手に入りました。1年以上ぶりのプロツアーです。
TOP8を逃した事実には言うほど落ち込んでおらず、今はやる気に溢れています。
過去のプロツアー参加経験から言うと、GPで勝つための方法論とプロツアーで勝つための方法論は、全く違うゲームをプレイしているほどに異なります。
自分はまだまだその道の一歩目を踏み出したばかりですが、PTアトランタではその成果を発揮し、少しでも良い順位を目指したいと思っていますので、ぜひ応援をよろしくお願いいたします!
 
また、こういった記事を書くのは初めてなもので、わかりづらい表現や冗長な文章になってしまったところもあるかと思います。

記事についても、より良いものを書いていけるようになりたいと思っていますので、ぜひ記事についての感想やリクエストなどツイッターで呟いてみてください。参考にさせていただきます。

それではまた、次の機会に。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!