スーパーサンデーシリーズ・スタンダード Round 3川上貴仲(東京) 対 嶋津芳基(山梨)
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スーパーサンデーシリーズ・スタンダード Round 3 川上貴仲(東京) 対 嶋津芳基(山梨)
Text by 森安 元希 ※02/01更新 グランプリ2日目進出が6勝3敗というラインに引き下げられたことで、進出者割合が増え、前日まではサイドイベントの参加者数が減ることが懸念されていた。 しかし無事参加者230人に達し2トーナメントにセパレートされたスーパーサンデーシリーズ・スタンダードは日本国内での「新たな環境を示す」役割を担う、最初の大規模大会だ。 構築戦においての重要性は、ある種でグランプリ本戦にも匹敵している。 アブザン・アグロ。ダーク・ジェスカイ。マルドゥトークン。エスパーメンター。アタルカレッド。最近はおおむねこの5つのアーキタイプが中心となってきたメタゲームに待ったを掛ける新デッキは現れるのか。 Round 3からは『ゲートウォッチの誓い』によって新戦力を得た2つのアーキタイプの戦いの様子をお届けする。 川上 貴仲(東京)。 おそらく『ゲートウォッチの誓い』において、最も端的に強化されたカードが採用されているデッキを持ち込んだ。 赤緑エルドラージランプ。元々《荒地》を自然に探し出せるマナ加速手段を持ち、《大いなる歪み、コジレック》に繋げてこれを守り、また《ウギンの聖域》誘発以外では単発で終わり気味であったフィニッシャーの二の矢、三の矢を紡げるようになっている。 中盤を支えるエルドラージの登場によっても、デッキ全体が強化された。 過去のスタンダードの《世界を壊すもの》となれるか。 嶋津 芳基(山梨)。 晴れる屋主催の神決定戦―…その第1期において優勝を飾った木原 惇希と準決勝を争い、おしくも敗れている嶋津。当時は"黒単信心"の《アスフォデルの灰色商人》を活用して相手のライフを吸い切っていたが、今環境で選んだデッキは"《先祖の結集》デッキ"だ。 方法は違えど、《ズーラポートの殺し屋》が相手のライフを吸うことでゲームを制するプランも擁する。ライフを攻めつつ守るという戦法は《包囲サイ》だけの十八番ではない。 どちらもミッドレンジスピードのゲームを得意とするデッキだ。鍛え上げられた熟練の腕が、光る。 Game 1 残念ながら不運が重なり、川上が遅刻の裁定を受けてGame 1をゲームロスとなった。 この場合、川上が先後権を有してサイドボーディングは行われずに、即座にGame 2へ移行する。 川上 1-0 嶋津 Game 2 1ターン目《ジャディの横枝》からの4ターン目《爆発的植生》と、緩やかなスタートを切る川上。 この隙に戦線を築けば絶好のチャンスとなる嶋津。しかし動きは《ヴリンの神童、ジェイス》から《反射魔道士》、《ナントゥーコの鞘虫》と、順調ながらも見た目の打点に恵まれない。 川上の5ターン目、セットランドからの《世界を壊すもの》。 実際にスタンダードが新環境を迎えて、使用感を確かめたユーザーたちから評価が急上昇している1体だ。 《現実を砕くもの》を、《風番いのロック》を、《先頭に立つもの、アナフェンザ》を一方的に止めつつ土地を割る姿は、彼の後ろに控える伝説のエルドラージの登場までを膠着させる"前説役"として相応しい。 勿論、そのままゲームを勝利に導くに足るスペックも持っている。過去のエルドラージランプが渇望していた《爆発的植生》1枚から繋げられる、7マナの盤面に触るビッグアクションだ。 嶋津が唯一の白マナ源である《平地》を割られると、色拘束もマナを支払う量も元々余裕のない《先祖の結集》デッキの動きが一気に鈍くなってしまう。 それでもトップで引いてきた白マナから《永代巡礼者、アイリ》、《ナントゥーコの鞘虫》と並べていき、《世界を壊すもの》越しにもライフを狙えるように戦線が整った頃。 川上が《精霊龍、ウギン》で戦場を綺麗に一掃した。 《精霊龍、ウギン》自身の追放能力ではなく、《ナントゥーコの鞘虫》でかろうじて自軍のクリーチャーたちを"再利用可能領域"でもある墓地へと逃がした嶋津。 ターンをまたぐことさえせず、死亡したクリーチャーたちを《先祖の結集》で再び戦場に呼び戻す。 結集の呼び声で蘇った戦線は《ナントゥーコの鞘虫》2体、《無慈悲な処刑人》、《反射魔道士》、《不気味な腸卜師》、《ズーラポートの殺し屋》。 《世界を壊すもの》が《無慈悲な処刑人》と共に墓地へ落ちると、《不気味な腸卜師》の死体占いによって嶋津はハンドを急速に回復させていく。 しかし《先祖の結集》にて吹き込まれたクリーチャーたちの生命は仮初のものだ。《ズーラポートの殺し屋》1体と《ナントゥーコの鞘虫》の組み合わせだけでは、川上のライフを奪い切るほどのドレイン量を作り出せない。 嶋津はなんとか《集合した中隊》を引き、唱えるところまでたどり着いたものの、《世界を壊すもの》が自らの復活能力で墓地から蘇り、再度川上によって唱えられると、《ウギンの聖域》が更なるエルドラージをライブラリーから連れ出してくる。 《大いなる歪み、コジレック》。 エルドラージ三神のうちの一柱が、君臨する。 2体のエルドラージたちがゼンディカーとタルキールの住人たちを蹂躙するのに、その猶予に2ターンを必要としなかった。 川上 1-1 嶋津 Game 3 嶋津のサイドボーディングはハッキリしていた。そしてそれは3ターン目に無事、着地する。 《先頭に立つもの、アナフェンザ》。 同型に対する枠は同時に、ランプに対して序盤からライフを攻める切り込み隊長としての役割も持っていた。 川上、同サイズの《難題の予見者》でここを受け止めたかったが《無慈悲な処刑人》で捌かれると残りの有効牌としてはマナ加速しかハンドになくなってしまった。 嶋津は《棲み家の防御者》との区別がつかないように《不気味な腸卜師》を変異で出して《コジレックの帰還》を釣るというプレイをはさみ、《ヴリンの神童、ジェイス》を活かして展開とドローを止めない。 川上にとって貴重な中盤を耐える戦力である《難題の予見者》が裁かれると、守勢を保つには脆弱な《作り変えるもの》しか追加できない。 なんとか土地を伸ばしていきビッグマナアクションのトップにかけるが―…ライフがなくなるその地点まで、あまりにもなにもなかった。 川上 1-2 嶋津 嶋津Win! これまで《精霊龍、ウギン》か《絶え間ない飢餓、ウラモグ》の二択を引かなければならなかったエルドラージランプは、そこに繋げる為のカードを『ゲートウォッチの誓い』にて非常に多く得ていた。 強化の度合いの前評判が随一であり、今回のマッチアップにおいてもその実力の一片を見せつけている。 勝ち筋へと繋げるカードという意味合いでは、《先祖の結集》デッキが得た《反射魔道士》というカードは、強い。 こちらも《シディシの信者》やあるいは《残忍な切断》といったカードに頼っていた《先頭に立つもの、アナフェンザ》(+《ゲトの裏切り者、カリタス》)対策を担いつつ、汎用的に扱える待望のカードだ。アタルカレッドのような最高速度のデッキ、アブザンのようなミッドレンジ、またランプのいずれにも強く、今後の必須パーツとしての頭角を現しつつあるようだ。 エルドラージランプも《先祖の結集》デッキも、このマッチの動きを見る限り、メタゲームの中央に食い込むスペックを持っている。スタンダードに激変の時代が訪れる。 また、"未定義の環境"において相手のリストを推し量ることの難しさは、環境末期のそれとは大きく異なる。 嶋津はそのなかでも適切にサイドボーディングを行い、キープし、ハンドを読み、展開した。こうしたゲーム中の標準調整(アジャスト)が、1マッチ3ゲーム制の醍醐味であり魅力だ。残り4ラウンドでもその調整力で観客を魅せ続けてほしい。 グランプリ・名古屋2016 サイドイベントカバレージページに戻る
Text by 森安 元希 ※02/01更新 グランプリ2日目進出が6勝3敗というラインに引き下げられたことで、進出者割合が増え、前日まではサイドイベントの参加者数が減ることが懸念されていた。 しかし無事参加者230人に達し2トーナメントにセパレートされたスーパーサンデーシリーズ・スタンダードは日本国内での「新たな環境を示す」役割を担う、最初の大規模大会だ。 構築戦においての重要性は、ある種でグランプリ本戦にも匹敵している。 アブザン・アグロ。ダーク・ジェスカイ。マルドゥトークン。エスパーメンター。アタルカレッド。最近はおおむねこの5つのアーキタイプが中心となってきたメタゲームに待ったを掛ける新デッキは現れるのか。 Round 3からは『ゲートウォッチの誓い』によって新戦力を得た2つのアーキタイプの戦いの様子をお届けする。 川上 貴仲(東京)。 おそらく『ゲートウォッチの誓い』において、最も端的に強化されたカードが採用されているデッキを持ち込んだ。 赤緑エルドラージランプ。元々《荒地》を自然に探し出せるマナ加速手段を持ち、《大いなる歪み、コジレック》に繋げてこれを守り、また《ウギンの聖域》誘発以外では単発で終わり気味であったフィニッシャーの二の矢、三の矢を紡げるようになっている。 中盤を支えるエルドラージの登場によっても、デッキ全体が強化された。 過去のスタンダードの《世界を壊すもの》となれるか。 嶋津 芳基(山梨)。 晴れる屋主催の神決定戦―…その第1期において優勝を飾った木原 惇希と準決勝を争い、おしくも敗れている嶋津。当時は"黒単信心"の《アスフォデルの灰色商人》を活用して相手のライフを吸い切っていたが、今環境で選んだデッキは"《先祖の結集》デッキ"だ。 方法は違えど、《ズーラポートの殺し屋》が相手のライフを吸うことでゲームを制するプランも擁する。ライフを攻めつつ守るという戦法は《包囲サイ》だけの十八番ではない。 どちらもミッドレンジスピードのゲームを得意とするデッキだ。鍛え上げられた熟練の腕が、光る。 Game 1 残念ながら不運が重なり、川上が遅刻の裁定を受けてGame 1をゲームロスとなった。 この場合、川上が先後権を有してサイドボーディングは行われずに、即座にGame 2へ移行する。 川上 1-0 嶋津 Game 2 1ターン目《ジャディの横枝》からの4ターン目《爆発的植生》と、緩やかなスタートを切る川上。 この隙に戦線を築けば絶好のチャンスとなる嶋津。しかし動きは《ヴリンの神童、ジェイス》から《反射魔道士》、《ナントゥーコの鞘虫》と、順調ながらも見た目の打点に恵まれない。 川上の5ターン目、セットランドからの《世界を壊すもの》。 実際にスタンダードが新環境を迎えて、使用感を確かめたユーザーたちから評価が急上昇している1体だ。 《現実を砕くもの》を、《風番いのロック》を、《先頭に立つもの、アナフェンザ》を一方的に止めつつ土地を割る姿は、彼の後ろに控える伝説のエルドラージの登場までを膠着させる"前説役"として相応しい。 勿論、そのままゲームを勝利に導くに足るスペックも持っている。過去のエルドラージランプが渇望していた《爆発的植生》1枚から繋げられる、7マナの盤面に触るビッグアクションだ。 嶋津が唯一の白マナ源である《平地》を割られると、色拘束もマナを支払う量も元々余裕のない《先祖の結集》デッキの動きが一気に鈍くなってしまう。 それでもトップで引いてきた白マナから《永代巡礼者、アイリ》、《ナントゥーコの鞘虫》と並べていき、《世界を壊すもの》越しにもライフを狙えるように戦線が整った頃。 川上が《精霊龍、ウギン》で戦場を綺麗に一掃した。 《精霊龍、ウギン》自身の追放能力ではなく、《ナントゥーコの鞘虫》でかろうじて自軍のクリーチャーたちを"再利用可能領域"でもある墓地へと逃がした嶋津。 ターンをまたぐことさえせず、死亡したクリーチャーたちを《先祖の結集》で再び戦場に呼び戻す。 結集の呼び声で蘇った戦線は《ナントゥーコの鞘虫》2体、《無慈悲な処刑人》、《反射魔道士》、《不気味な腸卜師》、《ズーラポートの殺し屋》。 《世界を壊すもの》が《無慈悲な処刑人》と共に墓地へ落ちると、《不気味な腸卜師》の死体占いによって嶋津はハンドを急速に回復させていく。 しかし《先祖の結集》にて吹き込まれたクリーチャーたちの生命は仮初のものだ。《ズーラポートの殺し屋》1体と《ナントゥーコの鞘虫》の組み合わせだけでは、川上のライフを奪い切るほどのドレイン量を作り出せない。 嶋津はなんとか《集合した中隊》を引き、唱えるところまでたどり着いたものの、《世界を壊すもの》が自らの復活能力で墓地から蘇り、再度川上によって唱えられると、《ウギンの聖域》が更なるエルドラージをライブラリーから連れ出してくる。 《大いなる歪み、コジレック》。 エルドラージ三神のうちの一柱が、君臨する。 2体のエルドラージたちがゼンディカーとタルキールの住人たちを蹂躙するのに、その猶予に2ターンを必要としなかった。 川上 1-1 嶋津 Game 3 嶋津のサイドボーディングはハッキリしていた。そしてそれは3ターン目に無事、着地する。 《先頭に立つもの、アナフェンザ》。 同型に対する枠は同時に、ランプに対して序盤からライフを攻める切り込み隊長としての役割も持っていた。 川上、同サイズの《難題の予見者》でここを受け止めたかったが《無慈悲な処刑人》で捌かれると残りの有効牌としてはマナ加速しかハンドになくなってしまった。 嶋津は《棲み家の防御者》との区別がつかないように《不気味な腸卜師》を変異で出して《コジレックの帰還》を釣るというプレイをはさみ、《ヴリンの神童、ジェイス》を活かして展開とドローを止めない。 川上にとって貴重な中盤を耐える戦力である《難題の予見者》が裁かれると、守勢を保つには脆弱な《作り変えるもの》しか追加できない。 なんとか土地を伸ばしていきビッグマナアクションのトップにかけるが―…ライフがなくなるその地点まで、あまりにもなにもなかった。 川上 1-2 嶋津 嶋津Win! これまで《精霊龍、ウギン》か《絶え間ない飢餓、ウラモグ》の二択を引かなければならなかったエルドラージランプは、そこに繋げる為のカードを『ゲートウォッチの誓い』にて非常に多く得ていた。 強化の度合いの前評判が随一であり、今回のマッチアップにおいてもその実力の一片を見せつけている。 勝ち筋へと繋げるカードという意味合いでは、《先祖の結集》デッキが得た《反射魔道士》というカードは、強い。 こちらも《シディシの信者》やあるいは《残忍な切断》といったカードに頼っていた《先頭に立つもの、アナフェンザ》(+《ゲトの裏切り者、カリタス》)対策を担いつつ、汎用的に扱える待望のカードだ。アタルカレッドのような最高速度のデッキ、アブザンのようなミッドレンジ、またランプのいずれにも強く、今後の必須パーツとしての頭角を現しつつあるようだ。 エルドラージランプも《先祖の結集》デッキも、このマッチの動きを見る限り、メタゲームの中央に食い込むスペックを持っている。スタンダードに激変の時代が訪れる。 また、"未定義の環境"において相手のリストを推し量ることの難しさは、環境末期のそれとは大きく異なる。 嶋津はそのなかでも適切にサイドボーディングを行い、キープし、ハンドを読み、展開した。こうしたゲーム中の標準調整(アジャスト)が、1マッチ3ゲーム制の醍醐味であり魅力だ。残り4ラウンドでもその調整力で観客を魅せ続けてほしい。 グランプリ・名古屋2016 サイドイベントカバレージページに戻る