松本友樹「新たなるA定食を求めて」第2回 エルドラージ環境でのA定食
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怪物と戦う者は、自らも怪物とならないように気を付けねばならない。
0.はじめに
皆さんこんにちは。
松本友樹です。
前回のA定食探求の記事からかなり間が開いてしまいましたね。
あのA定食は残念ながら上手くいきませんでしたが(編:松本さんは第1回記事を『マジック・オリジン』発売前、プレビュー期間中に執筆しています)、今回は良いモノを作りたいと思います。
という事で今回は、「モダン」環境の新たなるA定食を作りたいと思います。
1.戦乱のモダン環境
PT『ゲートウォッチの誓い』はモダンフォーマットにて開催されました。
世界中からトッププレイヤー達が集まり、モダンという環境の中で最も強いデッキとは何か!?を探求ししました。
そして、見つけてしまったのです。
かつて、ジェイス・チャンドラ・サルカンら三人のプレインズウォーカーがゼンディカーを食い荒らす"怪物"を解き放ってしまったように。
世界最高の調整チーム達は、あらゆるものを食い尽くす「エルドラージ」という怪物デッキをモダンに解き放ってしまいました。
「無色エルドラージ」 Ivan Floch プロツアー『ゲートウォッチの誓い』 準優勝 |
24lands 4:《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》 4:《エルドラージの寺院/Eldrazi Temple》 4:《ウギンの目/Eye of Ugin》 4:《幽霊街/Ghost Quarter》 3:《変わり谷/Mutavault》 3:《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》 2:《荒地/Wastes》 26creatures 4:《エルドラージのミミック/Eldrazi Mimic》 4:《果てしなきもの/Endless One》 4:《作り変えるもの/Matter Reshaper》 4:《現実を砕くもの/Reality Smasher》 4:《猿人の指導霊/Simian Spirit Guide》 2:《呪文滑り/Spellskite》 4:《難題の予見者/Thought-Knot Seer》 10spells 4:《四肢切断/Dismember》 4:《虚空の杯/Chalice of the Void》 2:《漸増爆弾/Ratchet Bomb》 15sideboard 3:《はらわた撃ち/Gut Shot》 3:《忘却蒔き/Oblivion Sower》 2:《真髄の針/Pithing Needle》 1:《漸増爆弾/Ratchet Bomb》 4:《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》 1:《呪文滑り/Spellskite》 1:《歪める嘆き/Warping Wail》 |
エルドラージがゼンディカーの次元を食い荒らしたように、モダン環境をも食い荒らしていきました。
このプロツアーのトップ8には、エルドラージデッキを持ち込んだ6人が勝ち残っています。
直近のモダンの大規模な大会、StarCityGames.com Modernではトップ32に実に20人が入賞しています。
一口にエルドラージといっても、上記リストのChannel Fire Ball謹製の「無色エルドラージ」。
一見リミテッドのデッキと見紛うような、誰もが度肝を抜かれたプロツアー覇者「青赤エルドラージ」。
エルドラージ対策をすり抜け、違う軸から攻めるランプ要素も持つ「赤緑エルドラージ」。
これらエルドラージ同系を制すために生まれた「青白エルドラージ」。
その他にも様々なエルドラージが覇権を巡り、モダン環境はまさにエルドラージをもってエルドラージを制そうとする魔境となっています。
本記事では、そんなエルドラージを打倒する方法を考えたいと思います。
その為に、まずは「エルドラージデッキとは一体どんなデッキか」をご紹介します。
もう十分にエルドラージは知ってる!という方は飛ばして、3番の項目からご覧下さい。
2.エルドラージ
エルドラージデッキで最も強い動きは何か?とプロプレイヤー達に問いを投げかけると10人が10人、こう答えると思います。
先手2ターン目《難題の予見者》
1ターン目に《虚空の杯》を設置したり《エルドラージのミミック》を沢山並べたり、そういったぶん回りもあります。
しかし、それらを含めた上で最も恐ろしいのがこのカードなのです。
先手2ターン目に出てくるこのカードを止める手段は、ほぼ存在しません。
《流刑への道》か《四肢切断》は唯一これを除去する事ができますが、それをしてもなお不利な展開です。
次のターンの重要なアクションや今後の展開で重要な役割の手札が1枚追放される上に、こちらが4点のライフを失うか、相手は1枚の土地を得てさらに加速してしまうのです。
このアクションさえできなければ、場に残るのは4/4という大型クリーチャー。
さらに相手は次のターンに5マナに到達します。
対してこちらは2マナしかない上、数少ない低マナでの対処手段を既に追放されているのです。
理不尽というほかありませんが、これが全てのエルドラージデッキに共通している動きです。
これは、「現行モダンのA定食」と言えるでしょう。
とはいえ、こればっかりは考えすぎていても仕方ありません。
どんなデッキにもブン回りは存在していて、例えば《花盛りの夏》が禁止されたことで見なくなった「《精力の護符》コンボ」の最高の動きでは、2ターン目にゲームが終わりました。
「感染」デッキでも最高の動きをすれば2ターン目にゲームが終わりますし、そういう最高の動きだけを見ていても、話は始まりません。
ひとまず、ベストでなくベターな動きを見てみましょう。
まずエルドラージユーザー達は1ターン目に《エルドラージのミミック》か2/2の《果てしなきもの》をキャストします。
あるいは《四肢切断》を構えてターンを返したり、場合によっては《虚空の杯》X=1を置いてきますね。
そしてその次のターンには、《ウギンの目》あるいは《エルドラージの寺院》ではない土地を置いて、3マナのアクションです。
これだと《難題の予見者》が出てくるのは3ターン目。
もっとも1ターン目に置かれた2マナ土地が《ウギンの目》であれば、3ターン目には3マナのアクションを2回する事もありますし、そこに《エルドラージの寺院》か《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》が揃えばもっと沢山のアクションをしてきます。
そして何よりエルドラージで恐ろしいのは、彼らがこれだけの展開をしてくるデッキでありながら"ミッドレンジ"であるという事です。
時に「Zoo」や「バーン」といった速攻デッキをも上回る速度で攻めてくる彼らですが、その構造自体はミッドレンジそのものです。
エルドラージ=超速攻デッキといった認識でいると、悠々と土地を伸ばされてパワーカードを連打されてしまうでしょう。
アグロデッキの速度で攻めながら、妨害を両立してくるミッドレンジ、それがエルドラージなのです。
長所が分かったところで、それでは今度は逆に「エルドラージの弱点」を探ってみましょう。
エルドラージデッキに共通する弱点...。
それは、カード1枚1枚はマナコストに対してのパワーが低い...ものが多いという点です。
勿論《ウギンの目》か《エルドラージの寺院》が1枚でもあれば問題ありません。
さらにもう1枚揃えば全てのクリーチャーが《タルモゴイフ》すら圧倒するコストパフォーマンスに大変身します。
その為、初手に《エルドラージの寺院》か《ウギンの目》、通称2マナランドのどちらかが必要不可欠であり、無い場合はマリガンを選択せざるを得なくなります。
デッキの中に8枚入っているカードは、初手に1枚ぎりぎりあるか無いかという確率です。
つまり、エルドラージとはマリガンの存在を前提として成り立っているデッキなのです。
そしてそれら8枚の土地に依存しているということは、当然そこを狙い打たれると苦しい戦いを強いられます。
最も効果的なのは《血染めの月》。
無色マナを出すことが出来なくなり、土地を3枚寝かせても場に出てくるのが3/3バニラというのは悲しいものです。
さて、ここまでは全てのエルドラージデッキに共通する項目でした。
ここからは、色々なエルドラージデッキについて触れていこうと思います。
ただし全てを詳細に語ろうとすると長くなってしまいますので、本当に簡単に。
無色エルドラージ
「無色エルドラージ」 Ivan Floch プロツアー『ゲートウォッチの誓い』 準優勝 |
24lands 4:《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》 4:《エルドラージの寺院/Eldrazi Temple》 4:《ウギンの目/Eye of Ugin》 4:《幽霊街/Ghost Quarter》 3:《変わり谷/Mutavault》 3:《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》 2:《荒地/Wastes》 26creatures 4:《エルドラージのミミック/Eldrazi Mimic》 4:《果てしなきもの/Endless One》 4:《作り変えるもの/Matter Reshaper》 4:《現実を砕くもの/Reality Smasher》 4:《猿人の指導霊/Simian Spirit Guide》 2:《呪文滑り/Spellskite》 4:《難題の予見者/Thought-Knot Seer》 10spells 4:《四肢切断/Dismember》 4:《虚空の杯/Chalice of the Void》 2:《漸増爆弾/Ratchet Bomb》 15sideboard 3:《はらわた撃ち/Gut Shot》 3:《忘却蒔き/Oblivion Sower》 2:《真髄の針/Pithing Needle》 1:《漸増爆弾/Ratchet Bomb》 4:《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》 1:《呪文滑り/Spellskite》 1:《歪める嘆き/Warping Wail》 |
このデッキは再掲になりますが、無視できない存在なので改めて。Channel Fire Ball謹製のデッキであり、《虚空の杯》は非常に多くのデッキに対して強力です。
「感染」「親和」「バーン」はこの1枚でゲームが終わりかねません。
それ以外のデッキに対しても非常に強力ですが、唯一エルドラージ同型では無駄なカードになってしまいます。
また同型に強いカードも数が少ないため、エルドラージで溢れかえる今の環境では若干数を減らしつつあります。
青赤エルドラージ
「青赤エルドラージ」 Jiachen Tao プロツアー『ゲートウォッチの誓い』優勝 |
24lands 3:《魂の洞窟/Cavern of Souls》 4:《エルドラージの寺院/Eldrazi Temple》 4:《ウギンの目/Eye of Ugin》 1:《宝石の洞窟/Gemstone Caverns》 2:《島/Island》 4:《沸騰する小湖/Scalding Tarn》 4:《シヴの浅瀬/Shivan Reef》 2:《蒸気孔/Steam Vents》 33creatures 4:《希望を溺れさせるもの/Drowner of Hope》 4:《エルドラージのミミック/Eldrazi Mimic》 3:《エルドラージの寸借者/Eldrazi Obligator》 4:《空中生成エルドラージ/Eldrazi Skyspawner》 4:《果てしなきもの/Endless One》 4:《現実を砕くもの/Reality Smasher》 2:《破滅を導くもの/Ruination Guide》 4:《難題の予見者/Thought-Knot Seer》 4:《不快な集合体/Vile Aggregate》 3spells 3:《四肢切断/Dismember》 15sideboard 2:《虚空の杯/Chalice of the Void》 2:《はらわた撃ち/Gut Shot》 3:《ハーキルの召還術/Hurkyl's Recall》 1:《漸増爆弾/Ratchet Bomb》 2:《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》 1:《呪文滑り/Spellskite》 3:《頑固な否認/Stubborn Denial》 1:《精霊龍の墓/Tomb of the Spirit Dragon》 |
「無色エルドラージ」と異なり、同型に強いカードが多く入っています。
特に《希望を溺れさせるもの》はダメージレースを一瞬で制する強力なフィニッシャーとなります。
無色と比べてサイズが大きいクリーチャーが多いというのも魅力です。
青白エルドラージ
「青白エルドラージ」 Kent Ketter StarCityGames.com Modern - Louisville 準優勝 |
25lands 4:《アダーカー荒原/Adarkar Wastes》 2:《魂の洞窟/Cavern of Souls》 2:《コイロスの洞窟/Caves of Koilos》 4:《エルドラージの寺院/Eldrazi Temple》 4:《ウギンの目/Eye of Ugin》 4:《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》 2:《神聖なる泉/Hallowed Fountain》 1:《島/Island》 1:《平地/Plains》 1:《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》 28creatures 4:《希望を溺れさせるもの/Drowner of Hope》 4:《変位エルドラージ/Eldrazi Displacer》 4:《エルドラージのミミック/Eldrazi Mimic》 4:《空中生成エルドラージ/Eldrazi Skyspawner》 4:《果てしなきもの/Endless One》 4:《現実を砕くもの/Reality Smasher》 4:《難題の予見者/Thought-Knot Seer》 7spells 3:《四肢切断/Dismember》 4:《流刑への道/Path to Exile》 15sideboard 2:《解呪/Disenchant》 2:《はらわた撃ち/Gut Shot》 2:《安らかなる眠り/Rest in Peace》 3:《石のような静寂/Stony Silence》 3:《頑固な否認/Stubborn Denial》 1:《ヴェズーヴァ/Vesuva》 2:《崇拝/Worship》 |
エルドラージ隆盛を受けて誕生した新たなエルドラージデッキ。
《流刑への道》はエルドラージ同系での先手後手を入れ替えるのに十分なカードであり、《変異エルドラージ》《希望を溺れさせるもの》と同系で強いクリーチャーが多いのも魅力です。
エルドラージ同系戦において最強のデッキだと目されています。
赤緑エルドラージ
「赤緑エルドラージ」Alex Zurawski StarCityGames.com Modern - Louisville 3位 |
24lands 4:《エルドラージの寺院/Eldrazi Temple》 4:《ウギンの目/Eye of Ugin》 4:《森/Forest》 1:《幽霊街/Ghost Quarter》 4:《燃え柳の木立ち/Grove of the Burnwillows》 4:《カープルーザンの森/Karplusan Forest》 1:《山/Mountain》 2:《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》 22creatures 4:《果てしなきもの/Endless One》 4:《作り変えるもの/Matter Reshaper》 2:《忘却蒔き/Oblivion Sower》 4:《現実を砕くもの/Reality Smasher》 4:《難題の予見者/Thought-Knot Seer》 4:《世界を壊すもの/World Breaker》 14spells 4:《古きものの活性/Ancient Stirrings》 2:《四肢切断/Dismember》 4:《コジレックの帰還/Kozilek's Return》 4:《精神石/Mind Stone》 15sideboard 3:《古えの遺恨/Ancient Grudge》 1:《世界のるつぼ/Crucible of Worlds》 3:《稲妻/Lightning Bolt》 3:《自然のままに/Natural State》 1:《忘却蒔き/Oblivion Sower》 3:《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》 1:《絶え間ない飢餓、ウラモグ/Ulamog, the Ceaseless Hunger》 |
こちらは少々毛色が変わり、対エルドラージデッキに対して最も力を発揮するエルドラージデッキです。
《血染めの月》を張られたら機能不全に陥るのがエルドラージデッキの弱点でしたが、こちらは《世界を壊すもの》を使うことでその弱点を克服しています。
《精神石》などのマナアーティファクト、《コジレックの帰還》やその状況に合わせたカードに加えて土地を探すことのできる《古きものの活性》を使うことができ、安定性はその他と比べ物になりません。
その分速度という強みを犠牲にしていますが、角度が異なるエルドラージデッキとして存在感を明らかなものにしています。
エルドラージを倒すデッキがこの「赤緑エルドラージ」に倒されてしまう為、エルドラージの支配が崩れることが無いのです。
その他にも「昇華者型エルドラージ」や「赤黒エルドラージ」など、様々なタイプが存在しています。
まさに、侵略真っただ中のゼンディカーばりの戦乱状態。
こんな環境に風穴を開けるデッキを作ることは、出来ないのでしょうか。
3.対エルドラージデッキ
エルドラージに対抗しようとしているデッキの中で私が良いと感じて試したもの。
その残骸がここにあります。
「ノリンシスターズ」
「青白コントロール」
「ブルームーン」
「ジェスカイバーン」
「カウンターバーン」
「赤白コントロール」
「赤単血染めの月」
これらに共通する思想は「《血染めの月》を置くか全体除去を撃つか、あるいはその両方」でした
確かに《血染めの月》は多くの場合エルドラージを機能不全に陥らせますし、全体除去も有効です。
しかしそれでも、結果は必ずしも満足いくものでは無かったのです。
毎回きちんと対策カードが引けるわけでも無いのは勿論、理想のタイミングで対策カードを使ったその上で負ける事が多々ありました。
「赤緑エルドラージ」は先手2ターン目の《血染めの月》を嘲笑うように土地を伸ばして私を圧倒しました。
多くのマッチで後手2ターン目に置けるはずだった《血染めの月》を先手2ターン目の《難題の予見者》が消し飛ばしました。
全体除去を撃った返しに《現実を砕くもの》に殴り倒されました。
対策によって勝つことは勿論ありましたが、対策だけでは勝てないのです。
デッキにマッチするものであっても、こちらが勝つまでに時間がかかってしまえばエルドラージ達はリカバリーできてしまいます。
これらのデッキの中で「青白コントロール」はとても良い選択に思えましたが、プレインズウォーカー等で迅速に試合を決められない場合、《ウギンの目》から次々に呼び出されるエルドラージに圧倒される事もありました。
またエルドラージ対策デッキに強いエルドラージである「赤緑」には中々良い勝率が出せず、「感染」等のその他のモダンデッキに勝ちづらくなってしまっていたのです。
結局のところ、「全部のデッキに勝てるデッキ」は無いというだけなのかもしれません。
しかし、それならばより多くのデッキに対して優位を取れるデッキを使うべきです。
より多くのデッキに対して優位を取れるデッキとは何でしょうか。
「エルドラージに強いエルドラージ」でしょうか?
確かにマジックオンラインやSCG等の結果を見るとそれが一番に思えてしまいます。
我々はエルドラージに屈するしか無いのでしょうか?
怪物と戦う事を諦めて、自らも同じ怪物になるしかないのでしょうか?
...話は少し変わりますが、マジック:ザ・ギャザリングの世界には数多くの怪物が存在しています。
ギリシア神話風の次元・テーロスにおける、ハイドラやサイクロプス達。
ゴシックホラーな次元・イニストラードにおけるゾンビや吸血鬼達。
都市をギルドが統治する次元・ラヴニカにはネフィリムなんていう怪物もいましたね。 しかし、この多元宇宙では彼らは所詮1つの次元での脅威でしかありません。 いくつもの次元を滅ぼしてきたエルドラージは、かつて3人の旧世代プレインズウォーカーによって封印されました。 (この画像はマジック:ザ・ギャザリング公式サイトから引用させていただきました)
旧世代プレインズウォーカーは我々の言うところの神に匹敵するかのような強大な力を持っていましたが、そんな3人が死力を尽くしてもなお封印するのがやっとだったのです。
しかし、さらにより多くの力を必要としたものが、この多元宇宙にはいます。
9人のプレインズウォーカーの同盟軍であるナイン・タイタンズや、その他のプレインズウォーカーを含む様々な人々・種族、次元、国、軍勢、あらゆるものの犠牲によって打倒された存在。
数多くの次元を股に掛け、プレインズウォーカー達すら恐れさせたもの...そして、一度は敗れはしたものの、エルドラージ同様再び蘇り、次元を滅ぼさんとするもの。
ファイレクシア
エルドラージに対抗できる存在は、彼ら機械の軍団しかいません。
邪悪を制すには、より巨大な邪悪の力を使うしかありません。
ファイレクシアという怪物の力を借りて、エルドラージという怪物を打ち倒すのです。
4.新たなるA定食
さて、ようやく本題に入ります。
エルドラージ軍団を圧倒できる怪物の中の怪物、《荒廃鋼の巨像》。
当然ですが、そのマナコストはエルドラージ級それもタイタンと呼ばれる最上級の連中と並ぶものです。
ならば、踏み倒しましょう。
その為のカードがこちらです。
《飛行機械技師》
《新たな造形》
このコンビ、マジックオリジンが発売した頃、実は少しだけ話題になっていました。
3ターン目に《飛行機械技師》を唱えると、1/1の飛行機械トークンが場に出ます。
4ターン目にそのトークンに対して《新たな造形》を唱えると、なんと《荒廃鋼の巨像》が速攻を持って相手を倒してしまいます!
(図1)
とはいえ当時は《欠片の双子》デッキの全盛期。
同じ青赤というカラーリングなら、どちらが強いかは一目瞭然でした。
インスタントタイミングで動いて隙を見て戦場に出せる《詐欺師の総督》に比べ、《飛行機械技師》は同じ3マナでもソーサリータイミングでしか場に出せないのです。
しかし、《欠片の双子》無き今、そんな問題は消え去りました。
「でも双子の下位互換なんでしょ?」と思われる方もいるかもしれません。
大丈夫です。「双子」はもういないので、下位も何もありません。オンリーワンです。
また「双子」との大きい違いとして、全く認識されておらず警戒されていないという点があげられます。
《島》と《山》と《蒸気孔》を置いてきて、《ピア・ナラーとキラン・ナラー》や《瞬唱の魔道士》、《ヴェンデリオン三人衆》。
そんな「双子」定番クリーチャー+珍しいけど《ピア・ナラーとキラン・ナラー》とは相性が良くてCIP能力を持っている《飛行機械技師》という陣容では、知らない相手には《鏡割りのキキジキ》を使ったコンボかな?としか警戒されません。
タップアウトで《飛行機械技師》を出した返しに、相手が警戒してマナを立ててくるという事は現状あまり無いのです。
むしろこちらが青いデッキですから、タップアウトした今の隙に!と喜んで全力展開をしてくる事が多いでしょう。
そんな今だからこそ、《荒廃鋼の巨像》を元気に走らせるのです。
勿論それは相手が知らないからであり、いずれそうはならなくなるでしょう。
広く認知された状況になっても問題ないポイントとして、コンボをせずとも横に広げて空から殴るという戦術が取れる点にあります。
かつての「双子」デッキと同じように、コンボを仕掛ける隙をうかがいつつチクチク殴っていくのです。
そういうプランをとる場合、攻撃的な役割をもてるカードが多い分、より有利に戦うことが出来ます。
特にこのコンボが全く警戒されていないこの瞬間に置いては、かつてのマークされまくっていた「双子」をも上回る力強さを発揮出来るでしょう。
そしてもう1つ。
このデッキを使う理由があります。
《血染めの月》
対エルドラージ最大の対策カード、《血染めの月》。
このデッキはこのカードを最も上手く使えるデッキといっても過言では無いでしょう。
ただコンボをそろえることに全力を尽くすだけなら、エルドラージには適わないかも知れません。
しかし、このカードをナチュラルに採用出来つつ4ターンキルが可能という点で、他のあらゆるデッキと一線を画しているのです。
それでは、本日のレシピをご覧下さい。
「新たな造形」 松本友樹 サンプルリスト |
23lands 2:《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus》 4:《硫黄の滝/Sulfur Falls》 2:《蒸気孔/Steam Vents》 1:《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》 4:《霧深い雨林/Misty Rainforest》 4:《沸騰する小湖/Scalding Tarn》 5:《島/Island》 14creatures 4:《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》 3:《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》 4:《飛行機械技師/Thopter Engineer》 2:《ピア・ナラーとキラン・ナラー/Pia and Kiran Nalaar》 1:《荒廃鋼の巨像/Blightsteel Colossus》 23spells 3:《稲妻/Lightning Bolt》 1:《四肢切断/Dismember》 1:《払拭/Dispel》 4:《差し戻し/Remand》 3:《謎めいた命令/Cryptic Command》 4:《血清の幻視/Serum Visions》 1:《炎の斬りつけ/Flame Slash》 4:《新たな造形/Shape Anew》 2:《血染めの月/Blood Moon》 |
モダン環境のA定食。
かつては3ターン目《詐欺師の総督》からの4ターン目《欠片の双子》がそうでした。
今現在のA定食、それは2ターン目《難題の予見者》なのかも知れません。
しかし、今日からは違います。
3ターン目《飛行機械技師》から、4ターン目《新たな造形》。
これこそが「新たな」A定食!