【BIG MAGIC Open Vol.9】 BIG MAGIC Sundayモダン 準々決勝 荒堀 和明(東京) vs 志村 一郎(東京)

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text by Seigo Nishikawa

8回戦を終了した時点で、ベスト8当確マークを灯したのは僅かに二人。残りの6席を15人強のプレイヤーが争うという激戦となった、BIG MAGIC Sunday モダン。

その中で堂々の1位通過を果たしたのが荒堀和明。最終戦、崖っぷちのところで劇的な勝利を収め、見事に8位に滑り込んだのが志村一郎。......荒堀和明と志村一郎、この名前を見て胸躍らせる古参プレイヤーは多いのではないだろうか。

荒堀は今を遡ること16年前、GP仙台2001の優勝者、かつてはあの浅原晃や中嶋主税と共に四天王と呼ばれていた超実力者だ。一方の志村はGP仙台2005の優勝者となる。こちらは11年前。最近のプレイヤーにはむしろ晴れる屋トーナメントセンターの店長とお伝えしたほうが通りがいいかもしれない。

 

【BIG MAGIC Open Vol.9】 BIG MAGIC Sundayモダン 準々決勝 荒堀 和明(東京) vs 志村 一郎(東京)

二人の対決を前に周囲は沸きあがり、本人たちよりもジャッジのほうが興奮しているようにすら見える。「二人とも一発屋なんだけどな」荒堀は笑う。いや、そんなことはない。ただの一発屋に回りはここまで騒ぎ立てることはない。二人の歩んできた道のりが、気がつけばこれだけ周囲に人の輪をつくりあげたのだ。



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16年と11年、人間は嫌でも年を取る、離れていった仲間も、新しく知り合った友もいよう。それでも、そんな長い時を超えてもMtGはまだ二人を放さない。二人もMtGから離れない。あのときの喜びを今一度、ここまでくれば二人の頭にはその様な思いが到来しているであろう。

 




Game1

荒堀はじっと手札を確認すると、志村の顔を見つめながら力強く「やります」と宣言。その勢いに押されたわけではないだろうが、志村は土地が1枚だけという手札では動き出すことができず、テイクマリガン。

エルドラージトロンを駆る荒堀は《ウルザの魔力炉》でゲームをスタート。《新緑の地下墓地》で第1ターンを終了した志村は、アブザンを使用して今この戦いに立ち向かう。

《ウルザの鉱山》から荒堀の《歩行バリスタ》が、まずは先陣の雄叫び。しかし志村は即座に《致命的な一押し》でこれを排除すると、《残忍な剥ぎ取り》に戦場の制圧を命じた。



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荒堀 和明



荒堀が送り出す3枚目の土地は《ウルザの鉱山》。すこしほっとするものの、そこから現れる《作り変えるもの》を前にして表情を引き締めなおす志村。これには《ヴェールのリリアナ》で退場を強いるが、《現実を砕くもの》に生まれ変わったことで、あまり余裕をもつことはできない。

だからといって止まる道理も無い志村は、《残忍な剥ぎ取り》の攻撃で不要な2枚の《コジレックの審問》を墓地に落として昂揚にリーチをかける。

荒堀からは3枚目の《ウルザの鉱山》。いまだ《現実を砕くもの》は姿を現すことができない。ならばと《虚空の杯》をX=2でキャストし、志村の動きの鍵を握るマナ域を潰しにかかる。

それでも現在のダメージレースは志村のほうがリードしている。《ヴェールのリリアナ》の力で《最後の望み、リリアナ》を捨てると《残忍な剥ぎ取り》は4/4へと成長。更に重くなった一撃と、そしてもたらされた3枚のカードをうち2枚は戻し、残りの《未練ある魂》を墓地へ送るという、と磐石の体制を整える。

 



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荒堀は《幽霊街》を置き、待望の5マナに到着。満を持して《現実を砕くもの》を走らせるのだが、志村からは《流刑への道》が公開され、《未練ある魂》が捨てられる。除去されるのはある程度想定済みであったとしても、本来であれば1-2交換の強要となるはずが、まったく志村は苦しんでいない。

そして志村が、確信とともにトップに積み込んだ1枚がキャストされる。

荒堀「もしかしてサイ(※《包囲サイ》)まで持ってる?」
志村「そうです」

いまやアブザンの代名詞ともなった《包囲サイ》。この強大な力をもって、志村は荒堀からまずは一勝を剥ぎ取った。

荒堀 0-1 志村

 




Game2

荒堀は《ウルザの魔力炉》から《探検の地図》、志村は《花盛りの湿地》から《貴族の教主》と、お互いが得意とし、そしてデッキに求める上々の立ち上がり。荒堀は《ウルザの鉱山》をセットし、早くもウルザランドが取り揃うことを宣言すると、志村も負けじと《残忍な剥ぎ取り》をキャストし、Game1の再現を狙う。



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志村 一郎



だが先程とは異なり、荒堀はすでに7マナを生み出す土地を取り揃えている。まずは先鞭として《難題の予見者》を戦場へ。予見者そのものは志村の《流刑への道》により存在は却下されるが

《未練ある魂》
《未練ある魂》
《タルモゴイフ》
《新緑の地下墓地》
《寺院の庭》

という志村の手札を攻めたて、《未練ある魂》の片割れを奪い取る。

志村の《残忍な剥ぎ取り》が攻撃を開始。ここで見えた《タルモゴイフ》《思考囲い》《乱脈な気孔》を躊躇無く全て墓地に送ると、昂揚を達成すると共に、手札から5/6となった《タルモゴイフ》が戦場に降りたつ。だが《現実を砕くもの》すらも返り討ちにしてしまうこの化け物を前にしても荒堀は全く動じることはなかった。

 


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荒堀が繰り出した嵐により戦場が一瞬にして灰燼に帰す。志村も《未練ある魂》で2体のスピリットを生み出し、抵抗を見せるも、《歩行バリスタ》が5/5のサイズで登場すると、どうにもこの1/1は心細い。

加えて《難題の予見者》で志村の手札が土地2枚であることが判明すると、情け容赦なく今再び《全ては塵》。スピリットは志村の身を守ることも許されず塵となって弾け飛ぶ。

荒堀が《歩行バリスタ》に手をかけると、それを静止するかのように志村はデッキを片付けた

荒堀 1-1 志村

 




Game3

泣いても笑っても二人の今日の対決はこれが最後。更なるギャラリーが二人を取り囲む。

志村は土地が3枚に《貴族の教主》《思考囲い》《未練ある魂》という6枚で最終戦に臨むことを決意。まずは《思考囲い》で荒堀の動きを確認。

荒堀、開始時に示された7枚を結構な時間をかけたうえでキープと宣言している。而してその7枚は

《難題の予見者》
《作り変えるもの》
《ウルザの塔》
《ウルザの塔》
《ウルザの鉱山》
《ウルザの魔力炉》
《荒地》

という既にウルザランドは取り揃えていながらも、もし志村から妨害が飛び、少しでも自身の引きが遅れたらGame1の再現となりかねないもの。ただ土地は十分なので、Game2のように展開していくことも十分に可能だ。

だが今、志村からその懸念した妨害が飛び、《難題の予見者》が奪われた。そしてここから志村の怒涛の攻めが始まる。続くターン志村は《貴族の教主》を出すと《乱脈な気孔》。荒堀は《ウルザの塔》《ウルザの魔力炉》から、《バジリスクの首輪》をキャストする。

そこに志村、狙い済ましたかのように《大爆発の魔道士》を引き入れ、《ウルザの魔力炉》を破壊。まさにここしかないという一撃......しかし、それだけでは終わらせない。《ウルザの鉱山》を出した荒堀に対して、なんと2枚目の《大爆発の魔道士》。志村の思いにデッキが応えていく。

潤沢だった筈の荒堀のマナベースが見る見るうちに削り取られていく。志村は続いて《残忍な剥ぎ取り》を戦場へ。

荒堀、《荒地》《ウルザの塔》をセットし初手にあった5枚の土地を全て繰り出すことでようやく3マナに到達。《作り変えるもの》を送るのだが、志村は2枚目の《貴族の教主》で《残忍な剥ぎ取り》を4/4とし攻撃宣言。そして《未練ある魂》まで追加していく。

荒堀ここで《全ては塵》を引き入れる。だが目の前にあるマナはいまだ4マナ。どうにかしてこれを打ち込むだけの時間を稼ぐ必要がある荒堀は、《漸増爆弾》をキャストすると共に、《作り変えるもの》に《バジリスクの首輪》を装備させ、《残忍な剥ぎ取り》を牽制する。

しかしそんなことは意に介さず、ターンを得ると即座に《残忍な剥ぎ取り》に攻撃を命じる志村。当然荒堀は《作り変えるもの》を差し出し《四肢切断》と変わる。志村が一切の躊躇をしなかったのは、その手に《包囲サイ》を握っているからだ。先程取得した3ライフがこれにより相殺される。

荒堀は《幽霊街》をドロー、これで5マナ。ライフは11となった。そして再び《作り変えるもの》をキャストすると、これは流れるように《バジリスクの首輪》を装着。

一気呵成に押していた志村の動きが一瞬止まる。

それでも、それでも志村にできることは荒堀にプレッシャーを与え続けることだけ。持てる力で1点も多いダメージを叩き込んでいくだけだ。3人目の《貴族の教主》が追加され、《包囲サイ》をタップする。これにより荒堀に従う《作り変えるもの》は《ウルザの魔力炉》へと姿を変え6マナ。

そして、荒堀からは《エルドラージの寺院》がセットされた。

 

そして《全ては塵》に帰す。

 

それでも志村にはまだ《未練ある魂》という弾が墓地にある。ライブラリーのトップからは《漁る軟泥》がやってくる。だが志村のここまでの怒涛の攻めを耐え忍び、この盤面を結実させたのは荒堀。《歩行バリスタ》を3/3のサイズで公開するとこれに《バジリスクの首輪》を装着、《漁る軟泥》を打ち落とすと、いよいよ試合の主導権を取り戻しにかかる。

志村が力を込めて引き入れたのは《石のような静寂》。荒堀は冷静に、《歩行バリスタ》で2体のスピリットを地に落とすと、今度は荒堀がトップを叩きつける番だ

クリーチャーのいない綺麗な戦場に、《現実を砕くもの》を颯爽と駆ける。

志村も耐える。《未練ある魂》を手札から、そして墓地から連弾。耐えられる限界まで、スピリットで荒堀を攻めたてる。

荒堀のライフが8、十分な土地と《現実を砕くもの》。
志村のライフは6、6体のスピリットと《乱脈な気孔》を含む4枚の土地。

荒堀の《難題の予見者》により、志村の最後の手札が虎の子の4枚目の《未練ある魂》が白日の下に。これが役目を果たさぬままに姿を消した。

志村、目の前に並ぶスピリットと《乱脈な気孔》を前に考え込む。おそらく両者共にここが最終ターンであることがわかっている。攻撃、防御、あらゆるケースのシュミレーションを重ねる志村。志村の選択をじっと黙って待つ荒堀。

ジャッジから軽く、そして静かにプレイの進行を促されると、志村はいなくなってしまった《未練ある魂》に目をむけ、そしてこのターンは何もしないことを選択した。

だがそんな志村の計算も、荒堀にもたらされた新鮮な1枚で崩壊してしまった。そのカードを引き入れると、それは即座に戦闘態勢に入る。即ちそれは2体目の《現実を砕くもの》。

 


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《乱脈な気孔》も起動して、とにかく生き残るための全力ブロックに回るが、荒堀が《四肢切断》を持っていることはすでに公開されている。荒堀は、志村の攻撃を全て受けきった上で逆転劇を演じてみせた。

志村は右手を差し出し、荒堀はそれに笑顔で答えた。

荒堀 2-1 志村

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