『プロプレイヤーインタビュー』 シルバーレベルプロ・川崎慧太

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text by 岩Show

 大阪市某所。「折角お互いの職場も近いので」とのことで、仕事帰りに飲みに行ってついでにインタビューさせてくれないか、とくーやん(日下部恭平)が提案したところ、秒で快諾の返事が返ってきたらしい。川崎慧太。プロツアー『破滅の刻』参加により、2016~2017シーズンのプロポイントが20点を超え、シルバーレベルのプロプレイヤーとなった。そんな川崎の、BIGs卒業・プロ契約を記念してのインタビューを行う手筈は、あっという間に整った。普段から仕事帰りに飲みに行くことが多い川崎のキャラクターを引き出すには、BIG MAGIC(以下BM)の事務所なんかで済ませちゃダメだ。BIGs時代、初めてBM関連の生放送にゲスト出演することになった際も、赤ちょうちんのコラ画像で酔いどれキャラとして押し出そうとしたのだから。ここで冷えたビールを流し込んでいない川崎をフィーチャーしてどうするんだという話である。

 

 場所はくーやん行きつけのたこ焼き居酒屋に決定。川崎は前日から突如出張となっていたようで、大阪に戻ったばかり。"戦うサラリーマン"スタイルを写真に収めたかったのだが、思いもかけずに私服となってしまい残念ではあるが、むしろリラックスして飲んでいる姿をお届けできるか。それじゃあ、飲み会の始まりだ。

 

 

くーやん「シルバーレベル到達を祝して、乾杯~お疲れでしたっ!」

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 うだるような熱帯夜が連日続く8月上旬。この日も例外ではなく。即ち、ビールが美味い!ついつい飲むのに集中してしまいそうだが、酔われる前にまずは1つ目の質問。

 

『シルバーレベルが確定となった、グランプリ北京を終えて...どんな形で今回の契約へと至ったんでしょう?』

 

川崎「そうですね...シルバー決まって、これで契約してもらえるかな?という思いが起こりまして...前年に井上君(※1)の前例があったので、希望はかなりありましたし(笑)。だから、こっちから「(僕にも)星どうすかね?」と振ってみました」

(※1:BM所属プロ・井上徹も、2015~2016シーズンでシルバーレベルとなりBIGsから契約プロへと昇進した)

 

BM所属プロはユニホームにそれぞれのレベルに合わせた星がつく。シルバーなら星1つ、ゴールドなら2つといった具合だ。

『星どうすか?はかなりいい響きですね(笑)で、実際にこれからユニホームに星がつくようになるわけですけど、実際にそれを...言うなれば背負うことになりますが、どうでしょう。やっぱり違うものですかね』

 

川崎「今回のプロツアーからシルバー、ということでユニホームを着せてもらったんですが、木曜日のレジスト(参加受付)の際に、他のプロの方々から...具体的には晴れる屋Prosの八十岡翔太選手らがユニホームの星を見て「あっプロだ!」とイジってくれて、まずは美味しかったですね(笑)

あと、Team Cygamesさんのサイトでもプロ入りしたことをわざわざ表記していただいて、そこで実感しましたね。あぁ、自分はシルバーになったんだなぁって」

 

 

川崎は今回のプロツアーでシルバーに到達したため、まだシーズンに1回のプロツアー参加権利の行使や、PPTQに参加せずにRPTQに参加するなどのシルバーの恩恵を体験していない。なので、プロツアーに行ったことよりも、その舞台で戦う他のプロプレイヤーに認知・祝福してもらうことで自身のプロプレイヤーとしての門出を実感したようだ。

 

それでは、この際なので川崎慧太というプレイヤーの背景を今一度掘り下げてみよう。出身は関東、仕事で大阪に転勤となり、単身やってきた。趣味と友人を作るためにマジックを本格的に開始した、という話は聞いたことがあるのだが、もっと深く聞いてみよう!

 

 

 

川崎「実は社会人になって少し経った頃...転勤する前に、関東でもほんの少しマジックやってました。青黒の感染デッキで、PWC(※2)に1,2回参加したことがあるかなぁ。仕事も落ち着いて、時間が出来た。さて、何をするか。実はこのタイミングで、Lord of Verilion2をやってまして。これも、ちょっとゲームを知ってる姉から「マジックのカードが出てるよ」って聞いたことがきっかけだったんですけどね」

 (※2:長きに渡って関東のマジックシーンを盛り上げる草の根大会。昨年10月に500回目のトーナメントが開催され、その桁違いの数字と、会場で寿司が食えるということで多くのプレイヤーの度肝を抜いた)

くーやん「お姉さん、ゲーマーなんですか?」

 

 

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川崎「そこまでではないけど、知ってるくらいですかね。で、その関係でカードゲーㇺの雑誌を読むことがちょくちょくあって...で、とある号でマジックの最新セットの特集がある。今どうなってんの~と目を通してみると。《獣相のシャーマン》とかいうカードが特集されてて...サバイバルやん!と興奮しちゃいました(笑)」

 

『《適者生存》やんけ!と。思い入れのあるカードだったんですか?』

 

川崎「《適者生存》は青春の1枚ですね...元々僕は、中学生くらいの時にマジックを始めたんです。そこで地元のディスクメイトというお店に通ってて...そこで晴れる屋さんの副社長である高桑祥広さん達と一緒にマジックをしてました。ラッシュ(高橋純也)君も同じ時期に通っていたことがありますね、懐かしい。そのディスクメイト勢の中に、"面倒見のいいおじさん"がいて、その人が僕らをまとめてくれてた、そんな感じですかね。」

 

『濃いメンツと一緒にマジックやってたんですね』

 

川崎「そうですね、個性的なメンツにもまれてました(笑) ただ中学を出て、それぐらいのタイミングでマジックをやらなくなってしまって。高校大学と、学校の友達らと所謂普通の遊びをしながら過ごして...そしてある日。本当になんとなく、"面倒見のいいおじさん"の家に行ってみたんです。」

 

『いきなりですか?』

 

川崎「いきなりですね。フラーっと。向こうも、おぉ!と驚きながらも歓迎してくれて、色々話したりしたんですが...その際に、「高桑君とかプロツアー行ったりして頑張ってるらしいぞ!」と聞かされまして。同じ店でマジックしてたヤツらが活躍しているということを初めて知りました。それで色々調べて、当時まだ出来立ての晴れる屋さんの存在を知り、行ってみたんです。で、高桑さんと再会し、飲もうよという話になり...その時はまだちょっと触ったくらいですかね。それから青黒感染を組んで...感染のパーツが一部スタン落ちして、またやらなくなったんです。ただ、Brian Kiblerがプロツアー『闇の隆盛』で活躍しているのを見て、火がつきました。彼が使っていた《高原の狩りの達人》めっちゃ強いやん!と(笑)《適者生存》が好き、即ちシステム系のクリーチャーが大好きで...これは我慢できないと買って、それで再び本気でマジックをやるようになりました。」

 

『で、その後に転勤になったわけですね』

 

川崎「『アヴァシンの帰還』の後だったかな。大阪に移りまして。で、その年のGP名古屋で久しぶりの競技マジックを遊んでみたら...これが楽しかった!」

 

 

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『久しぶり、ってどれぐらいぶりだったんですか?』

 

川崎「中学生の頃に実はグランプリに出たことがあって...ローリー(藤田剛史)さんのネクロドネイトが優勝したGP京都、あるじゃないですか。実はあれに、カウンタースリヴァーで出てたんです」

 

くーやん「むっちゃガチな中学生じゃないですか!(笑)僕もそのグランプリ出てました、懐かしいなぁ」

 

 

川崎「その後にチーム戦のGPに1回出て、それで当時の競技イベント出場は終わりだったかな。僕がマジックに真剣に取り組んでいた中学時代って『テンペスト』~『ウルザズ・ディスティニー』の頃だったんですよ。カードがどれも強くて、魅力的だった。それを経て、『メルカディアン・マスクス』以降のセットのカードパワーが弱くて弱くて!たまらん~つって(笑) 泣く泣く《ぶどうのドライアド》を使ったわけですが、なんやこれという弱さで...」

 

『確かに、テンペブロック落ちてのやってきたのが《ぶどうのドライアド》はがっかり(笑)』

 

川崎「そこからさらにウルザブロックが退場。カードパワーの下がりっぷりにつられてやる気もダウンしました。で、高校生になるタイミングでやめちゃったんですよね。そこからの復帰の話は先ほど話した通りです」

 

 カードパワーが下がり、エキサイティングなゲーム展開が無くなったことを理由にマジックから離れるプレイヤーは決して少なくない。川崎もまた、その一人だった。

 

『お話を伺っていると、かなり早い段階から意識の高い、所謂競技志向のプレイヤーだったんですね』

 

川崎「そうですね、僕はやっぱり競技としてのマジックが好きですね。競技の場で勝てると、楽しい。中学時代も渋谷にあったDCIジャパントーナメントセンターに通ってたんです。そこでトーナメントに出て、6勝1敗とかで賞品のTシャツ貰って帰ったり。僕はルーツがそうなんで、ずっと競技マジックしかやったことがなくて。そしてそれが最高に好きですね」

 

 

『たっぷり思い出聞かせていただきました。じゃあ続いて、今回契約するようになったBMとの出会いなんか、覚えてますかね?』

 

川崎「大阪来て色々な店舗へ、とりあえず手あたり次第行きましたね。FNMで《ミラディンの十字軍》に《怨恨》貼ったら最強やん!とか言って、そんなデッキ持ち込んでました(笑)」

 

『プロテクション(緑)ですやん!(笑)』

 

川崎「それに誰も気づかなった、ってことがありましたね(笑)それが大阪での最初マジックで...その後にBMに行くようになりました。今では店舗スタッフをやっている子や、そしてリュウジと交流するようになりましたね。毎週FNMに通うようになって...当時のBMのFNM参加者は沢山いて、そして所謂一般層よりちゃんとしている、意識の高いプレイヤーが多かったですね。それで自ずと通うようになりました。そんな中でも「いつもいる」ということでリュウジと話すようになって...いや、最初はあれか。

姫路のPTQ会場で、リュウジから声をかけてくれたんだったかな。一人で会場行ったら目が合って、「あ、いつもBM来てる人ですよね」って感じで」

 

『いつもいるのは君やろ、と(笑)』

 

川崎「そうそう(笑) そこから、話したりフリープレイしたり遊ぶようになりましたね。それまでは半年くらい一人でGPTに出たり、という形でマジックやってて、それもそれで楽しかったんですけど、リュウジきっかけで仲間が増えてより楽しく、って感じですかね。GP名古屋を経て、年が明けてモダンシーズンになって、そこからPTQに出るようになりました。ここまでで、大阪でマジック開始して1年ちょっとくらいかな」

 

くーやん「PTQどのくらい行ってました?」

 

川崎「基本的には関西周辺ですかね、静岡や金沢なんかに遠征をしたことも1回あるかな。当時は北海道や沖縄でもPTQでありましたけど、さすがに遠過ぎて行けなかった。今なら行きたいと思いますね。

まあでも当時行けなかった分、今は海外GPに行っていると考えれば...多分PTQ制が続いていたら海外GPに行くことはなかったかもしれないですね。海外GPに参加したからシルバーになれたんで...過去のPTQ制がずっと続いていたら、自分はシルバーにはなれてないかもとか思いますね。今後も海外GPには出続けたいですね、休みが取れる限りは」

 

『休みと言えば、川崎さんはサラリーマンかつプロプレイヤー』

くーやん「そのあたりのお話を、同じ戦うサラリーマン達のために是非聞かせてほしいですね」

『もうストレートに、働きつつ競技マジック。時間足ります?』

 

川崎「今回PTに関しては、もっと時間は欲しかったですね。折角の自国開催で、移動などもないことを考えるとアドバンテージがある。そこにもっと時間があれば、というのは正直なところですね。

しかしもし仮に、自分が仕事会社勤めじゃなかったらマジックが上手くなるか、もっと上のプロを目指せるのかと言えば...惰性でやりそうなのが目に浮かぶので、答えはノーですね。だから、今みたいに限られた時間でやるのが自分には合っているかなと。いかに効率を上げてやるか、ということを考えながらMOなんかをやっています。勿論、フルタイムをマジックに捧げられる、所謂"プロ"としての生活に憧れもありますけど。僕が高校・大学の頃にやってこなかったドラフトを、時間を捧げてガンガンやっていたプレイヤーが勝っている、という印象を受けます。リミテッドはマジックの基礎を養う場であり、それに正面から向き合ったプレイヤーが強いのは当たり前かもしれません。そういうのは、僕が出来なかった経験であり、足りてない部分だと思います。10年ぶりに、マジックに復帰した際に、このゲームはテンペ・ウルザの頃に比べて「スペル弱い・クリーチャー強い」という世界に変わっていました。そんな環境でマジックに復帰したわけで、1234と毎ターン同じ動きをして勝つアブザンアグロのような、そういうデッキが大半のスタンダードを経験してきているので、そんなゲームの中で他人と差がつく部分・リソース管理などが、自分にはまだまだ足りていません。Team Cygamesさんの合宿で身に染みましたね。そういうことを再確認できた、足りていないものがわかった。それが今回のPTでの最大の収穫ですね」

 

 

 

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 シルバーになって、兜の緒を締める。まだまだ、競技マジックという道はここから始まったばかりだと、今一度自分の弱点を噛みしめる川崎。しかしながら、酒が入っているということもあるだろうが、その表情は明るく、まさしく「ワクワクしてきたぞ」とでも言わんばかりのものだった。

 

『じゃあぼちぼちインタビュー自体は締めに入りますか。シルバーとなり迎える来期。目標などはありますか?これは前後逆になってしまうんですが、今期は目標など設定されていたんですか?』

 

川崎「今期はシルバーが自分の目標でした。そして、それが達成できた。中でも...リミテッドのGPでも勝てた(GP北京準優勝)のは大きかったですね。まあこれはぶっちゃけ、Team Cygamesの方々にドラフトにおける各カードの点数を教えてもらったりしていたからというのがほとんどですけど(笑) 皆さんに感謝!」

 

『仲間に助けてもらえるのもマジックのいいところですね!今期はどのあたりからその目標が達成できそうな実感がわいてきたんですか?』

 

川崎「GP広州でTOP8、4点。PT『カラデシュ』にも出場して10勝6敗で6点。シーズンの頭で10点。この時点で"行ける"感はありましたね。そこから...14点だったかな、そこらで止まったタイミングがあって。シーズンも半分すぎて、あれこれヤバいかな?なんて。そこで「2点貰えたら御の字!」と参加した北京で...バチンッ!」

 

『バチンと』

 

川崎「2015=2016シーズンが14点止まりだったので、来期こそは...と思っていました。そして、目標達成」

 

『ほんとお疲れさまでした。ホッとしました?』

 

川崎「PPTQ出なくてよくなった~って、だいぶホッとしてます(笑) あれには大幅に時間を持っていかれることがありますし、抜けてないうちはずっと不安でしょうがないですから。免除でRPTQに出られるのはデカいですね。

ただ、それにも良し悪しはあって...マジックは、大会でこそ上手くなるものでして」

 

『参加できないのが、むしろ練習の機会を減らす可能性もあると』

 

川崎「そこでマジックとの付き合い方をどうするか?というのを考えていかなくちゃいけないですね。とりあえず1日1回MOのリーグ戦を回す!というのを日課にしようかなと。PCか回線か、よくわからないけどMOが最近よく落ちちゃうけど(笑)

 えっと、それで今季の目標ですよね。まあ、シルバーの次は自ずとゴールド、なわけですが...。ゴールドには通年のプロツアー参加権利などなど、魅力は満載でそりゃあ勿論なりたいですけども、ただ今の自分にはゴールドはまだ遠い世界ですね。なので、目標はシルバー維持です。ここから3年ほどかけて、地力をつける。しかる後ゴールドになれたら...良いなと。こう言ってますが、そもそも仕事の関係で年間すべてのPTに出られるかはわからないです(笑) まあこれまでのPT参加で、帰国後に仕事がやばくなったなんてことはないので、大丈夫だと思いますけど。飛行機の待ち時間とかでよく仕事してます」

 

『出ましたサラリーマンポイント』

 

川崎「海外にノートパソコン持っていくけど、これMO用じゃなくて、仕事用だからね!会社に借りてるやつだからね!って(笑)」

 

『良いオチ(笑) じゃあ、ここらですかね』

くーやん「あ~っとじゃあ最後に!これは個人的にも聞きたいことなんですが、これまでBIGsをやってて良かったことが何かあればお願いします!」

 

川崎「BIGsで良かったこと、って言ったらやっぱり知ってくれる人が増えたことですね。レポートなんかの記事を読んでくれたと言ってくれる人もいたりします。素直に嬉しいですよね。あとは、面識はなかった人との付き合いが出来、輪が広がったっていうのも得たもかな...これはBIGs全員がそう思っているんじゃないかと。

あと、自分は結構カッとなりやすいタイプで...負けた時にナチュラルに煽られたりすると結構きちゃうんですけど、ユニホームを着ることで「着させてもらってる以上、恥ずかしいことは出来ないな」と。気を引き締めるようになりましたね。ユニホームにはこれに加えて認知してもらえるという恩恵がありました」

 

くーやん「いや~良かった、ありがとうございます!」

 

『記事見てます、とかは嬉しいですよね。じゃあほんとの最後の最後、シルバーになった川崎さん!これからBMのメディアで露出を増やすというお気持ちは?』

 

 

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川崎「いいとも!」

 

 

 こうしてインタビューを終えた我々は、たこ焼きをつまみ、酒を流し込み(くーやんはコーラ)、マジック談議で盛り上がりつつ、明日の仕事に影響しない時間で宴を切り上げ、各々の岐路についたのでした。マジックファンの皆さん、川崎慧太選手の応援をどうかよろしくお願いいたします!

 

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