2014/04/04 大貂皮鹿 - Card of the Day -今日の1枚-
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カードは何処から生まれてくるのか。そりゃ印刷所でしょ、とかそういうのはナシで。バニラ(能力なし)やフレンチバニラ(飛行や到達などだけを持っている)は、「リミテッドをする上で必要」「初心者に色の役割・レアリティ格差を教えるもの」という理由から生まれてくる。
そう、物事には全て理由があり目的がある。僕ら人間だってそうで、生まれてきた理由も生きる目的もある。ただ、それに気付きにくくできているだけなのだ。今は目的が見えなくても、目的を知ることを目的にすれば何も問題はないのだ!と僕は思…話がそれすぎた。
この《大貂皮鹿》というカードほど、生まれてきた理由と目的がハッキリとしたカードもないだろう。打ち消されない・プロテクション青と黒。このカードは、「時のらせん」で青いカードが強化され、「次元の混乱」で《滅び》が登場して以降進撃を続ける青黒コントロールに一蹴りかますために生まれてきたのだ。
その開発経緯はかなり具体的に公式発表されている。勿論、皮鹿誕生時にスタンダードであちこちでブンブンと羽ばたきまくっていた「青黒フェアリー」に効果的なカードとして作られている。
そもそもは、プロテクション青・黒のみを持ったクリーチャーとして作られていたようだ。しかし、青を含むコントロールデッキの強みとは「打消し」である。これに尽きる。確実に相手のリソースを奪っていき、トップから降り注ぐ儚い希望はカウンターで弾く。これが青黒の真骨頂である。
そのため、まずはカウンターに強くなくては始まらないということで打ち消されない能力が与えられた。
次に、対フェアリーカードが対フェアリーカードに潰されるという、不毛な衝突を避けることも考慮されたようだ。
たしかに、既存のカードのあおりをくらってしまうのであれば「そっちを使うから鹿に用はないよ」と言われてしまう。そこも計算しなければならないデザイナーは大変であるわけだが、この皮鹿のデザイナーさんはそこも完璧にケアしていたのだ。
この時既に活躍していた対フェアリーの先輩は《火山の流弾》。これはタフネス2以下を流し去る全体除去であり、打ち消されない飛び道具であったために非常に多くのデッキがこのカードを採用していた。
これに引っかかるタフネス2以下では、せっかくの新カードが活躍できずにローテ落ちしてしまう。つまり2マナ2/2は強そうに見えてお呼びではないのだ。かといって2マナでタフネス3以上では強すぎるようにも見える。
フェアリー相手にダラダラやっても向こうのクロックの方が強くては負けてしまうのでパワー3は欲しい、となれば3マナ3/3という具合にサイズも決定した。大変そうだけど、遣り甲斐があって楽しそうな仕事である。
これらのデザイン上のカードを用いて、開発部内では「フューチャーリーグ」や「フューチャー・フューチャーリーグ」と呼ばれる将来に訪れるスタンダード環境でゲームを行うテストプレイ用のリーグが存在する。その場で皮鹿は、絶妙な「脅威」であったらしい。これが「絶望」になるとバランスブレイカーになってしまうわけで、カード開発とはとかく難しいものなのだ。