スレイマンの壺/Bottle of Suleiman
タグ:Bottle of Suleiman, Card of the Day, MTGシングル, アラビアンナイト, スレイマンの壺, リバイズド, 岩SHOW, 第4版, 第5版, 第6版Card of the Day -今日の1枚- 2015/02/19
スレイマンの壺/Bottle of Suleiman
スレイマン=ソロモン王の話は《King Suleiman》の回で記したので割愛。精霊・あるいは悪霊であるジン(及びイフリート)を従え自在に操ることが出来たという伝承が残っているこの王と同じ『アラビアン・ナイト』に収録されているのが《スレイマンの壺》である。《King Suleiman》の能力によって退治されたジンは、この壺に封印されるのかもしれない。今日はこのフレーバー満載のカードについて書いていこう。
《スレイマンの壺》は「アラジンと魔法のランプ」の逸話をモデルにしているのであろう、壺からジンが出てきて願い事を叶えてくれる、「かもしれない」カードである。勿論のこと無色のアーティファクトである。初登場時はまさしく英名の「Bottle」に相応しい瓶上のものに見えたが、『第5版』からのイラストではそれこそ僕らがイメージするランプのような、見た目になっている。クシャミで飛び出る某大魔王の壺っぽくもある。というか「Bottle」を壺と訳したのは英断だったと思う。『第4版』を訳する時に、「瓶からジンが出てくるってのも違うだろう」という判断があったのだろうか。
この「Bottle」という単語はマジック界でも珍しく、テンプレ訳がかなり柔軟に行われている(《瓶詰の回廊》《ボトルのノーム》など。《壺のノーム》はちょっと違うもんな)。いずれにせよ、これはジンが封じ込められたアーティファクトで、プレイヤーはこの壺を起動させることで中に潜むジンを解き放つことが出来る。出てくるのは5/5飛行のジン・トークン。合計のマナコストで考えれば5マナでそのサイズを呼び出せるのだから、なかなか破格である。今ではすっかりそれより優れた連中が登場してしまったが、無色なので文句は言ってられない。
問題は、これがかなりスーサイドな1枚であるということ。起動した時にコインを投げて賭けにまけてしまった場合、それは精霊ではなく悪霊を呼び出してしまう。5/5飛行どころか、それがあなたにワンパンチ入れて姿形もなく消えてしまう。カード1枚使って5点喰らう、なんて普通のゲームにおいては考えられないくらいのデメリットの塊、自ら敗北へ向かってまっしぐらである。
マジックを始めた頃、友人がこれを用いて自爆しながらもゲームに勝利した姿を見たことがある。「ミスったけど勝てた、あそこで5/5出てたらもっと早く勝てた」とのたまっていたが、つまりはこのカードそもそもいらないってことやんとツッコミたくてしょうがなかったが、そのイラストとリスキーな能力は「使いたい」と思わせるのに十分だということを僕も理解していたので、その言葉はここまで十数年間抱えてきていた。ようやく、壺に封印していたこの思いも解放されたというところで、今日は筆を置こう。