龍ちゃんの「ガチンコ!スタンダード」第3回『PTの結果から読むメタゲーム』

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text by Ishida Ryuichiro

GP京都が終わりレガシーもひと段落といったところ。スタンダードの調子はいかがですか?
今週末にはRPTQが控えているということもあり、スタンダードの調整に忙しいと言う人も多いかと思います。(そう言う自分もその一人なのですが)
今回はスタンダードで行われた直前のPT『タルキール龍紀伝』の結果から読み取る、現在のメタゲームについて考察していきます。 
――PT『タルキール龍紀伝』の勝ち組

PT『タルキール龍紀伝』のメタゲーム・ブレイクダウン(外部リンク)にも書かれている通り、全体数の多さと安定した勝率を見せた「赤単アグロ」(タッチ《アタルカの命令/Atarka's Command》も含む)とアブザンアグロ、そして脅威の二日目進出率を見せ、なおかつ二日目も好成績を残している青黒タッチ《龍王オジュタイ/Dragonlord Ojutai》コントロール(以下エスパー)のこれら3つが今回の勝ち組でした。

【赤単アグロ】
初日47人→二日目31人→勝ち越し16人

今回大幅強化され誰もが注目していただろう中で優勝したポテンシャルの高さは圧巻の一言。タッチ緑にして《アタルカの命令/Atarka's Command》を入れるか、赤純正にすることで《稲妻の狂戦士/Lightning Berserker》を最大限活かす方がいいか。二日目の勝率を見る限りではアタルカの命令/Atarka's Commandをタッチした方が若干勝率は安定しているようです。

今後も絶対数の多さからサイドボードの枚数を一定数とられ続けるでしょうが、対策された上でもブン回りで常に勝ちにいけ大抵のデッキに有利であることから今後も人が予想されます。

 

【アブザンアグロ】
初日41人→二日目27人→勝ち越し13人
今まで苦手であった緑白信心や赤白ミッドレンッジに対して《ドロモカの命令/Dromoka's Command》のおかげでメインから対応しつつ、赤単などの火力にも対応できるようになり万能感が増した印象です。
また《究極の価格/Ultimate Price》が多数使われたことで、アブザンアグロのクリーチャーが生き残り易くなったのも環境的に地味に追い風でした。
アブザンアグロは成績上位のデッキリストの中でもバラつきが見えるので、どんな形が最適解かはまだまだ検討の余地も大きいです。カードパワーが高い故の悩みと言ったところ。
 


【青黒タッチ《龍王オジュタイ/Dragonlord Ojutai》コントロール】
初日9人→二日目7人→勝ち越し6人
ドラゴン公開系のスペルはどれもスペックが高く、相手を問わず序盤から終盤まで腐りにくい二枚が大活躍でした。また《龍王オジュタイ/Dragonlord Ojutai》はカードパワーの高さから様々なデッキで使用されていましたね。データ上、アーキタイプとしては優勝と言っても差し支えない程に高い勝率を納めています。
コントロールデッキを好んで使用するプレイヤーはまず試してみて損はないでしょう。通常の準優勝の八十岡さんのように《氷瀑の執政/Icefall Regent》を使って純正青黒に収めるのも安定感があり良さそうです。
 

成績上位の次点としてはアブザンミッドレンジ緑赤信心が続き、更にその次にアブザンコントロール緑白信心ジェスカイトークンズといった具合の成績でした。

丁度この記事を書いている時にGP京都と同日に開催されていたGPクラクフ(スタンダード)の結果が出ていたのですが、二日目のメタゲーム・ブレイクダウンで会場の50%以上の人たちが上記の三種を選択しているという結果が出ています。

DAY2 STANDARD METAGAME BREAKDOWN(外部リンク)

特にエスパーについてはTOP8に6人も残るというこれまた好成績。今後もこれら三種に対してメインサイド合わせて戦い方を熟知しておく必要性がありそうです。


 
――PT『タルキール龍紀伝』で何故○○が勝てなかったのか?

PTの成績が良かったデッキリストから洗いざらい見ていくと、対照的にあまり勝てていないアーキタイプもいくつか見えてきます。
まずは初日抜け0人のマルドゥミッドレンジがPT内での一番勝てなかったデッキでした。次点に初日使用者数第3位でありながら二日目進出率の低さと最終成績6勝以上の人数が少なかった赤緑モンスターズ、それより更に2日目進出率と最終成績が低かったのが緑白信心ジェスカイトークンズジェスカイテンポ白青英雄。それに加えてPT持ち込み数が少なかった赤白ミッドレンッジといったラインナップです。
何故これらのアーキタイプの勝率が低かったのかについて考察していきます。

・赤白系の戦略の衰退
今まで赤白のメリットは軽量除去の《岩への繋ぎ止め/Chained to the Rocks》が使えることと《前哨地の包囲/Outpost Siege》による中・長期的なアドバンテージが会得できることにありました。これらがアブザンに対しテンポやアドを取り易く強かったのです。

 


しかしそのアブザンが今では《ドロモカの命令/Dromoka's Command》というメインからエンチャントに対処しやすいカードを手に入れ相性が改善されてしまったこと。赤単が点ではなく面で攻めることで、捌きにくく《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》や《道の探求者/Seeker of the Way》が生き残りにくいこと。これらから単純な中・長期的な戦略は難しくなってきているように感じます。

・環境速度と3色デッキの減少
現在の「赤単アグロ」はカードパワーが上がり、何もなければ平均キルターンは5ターン程。かなり早いため、今までのような連続タップイン処理からの初動3ターン目という動きはそれだけで命取りです。

 


コントロールですら《龍王オジュタイ/Dragonlord Ojutai》という5マナ5点クロックを手に入れたことから、ゲームエンドまでのスピードが早くなりました。
包囲サイ/Siege Rhino》を有するアブザン以外の3色デッキは軒並み勝率が低かったと見ると、今の環境は2色以下で纏めて赤単へのリスクを減らす方が望ましく思えます。

・より速い選択肢へ
「緑白信心」と「緑赤信心」の2つの成績は初日に持ち込んだ人数と6勝以上の人数の差から「緑赤信心」の方が勝っています。
その差は《龍王アタルカ/Dragonlord Atarka》と《歓楽者ゼナゴス/Xenagos, the Reveler》の影響が大きいと思われます。二枚に共通するのが、対処しないと速やかに負けてしまうまでのキルターンの速さ、決定力にあります。

「緑白信心」だとこの部分の選択肢が《起源のハイドラ/Genesis Hydra》などでよりコントロールに強く息の長い戦略となります。元々《見えざるものの熟達/Mastery of the Unseen》などでロングゲームを作ることに長けていたデッキなので当然なのですが、勝負を決めるまでにとにかく時間がかかるということも少なくありません。引き分け率の高いデッキでした。

 
今ではコントロールがフィニッシャーを出しながら全体除去を使えたり、赤単が5ターン目には勝とうとしたりする環境です。ならばこちらも相応のスピードで勝ち手段を作るというのが現実的な選択に思えます。


・「赤緑モンスターズ」と「白青英雄的」に何があったのか?

『環境が速くなり、二色で抑えたデッキの方が良い』『決定力の高いカードを使うのが良い』、この2つが環境の肝だとすると、それらに当てはまりそうな「赤緑モンスターズ」と「白青英雄的」は何故勝てなかったのでしょうか?

 
両者に共通するのが、どちらも挙動に事前準備が必要なデッキで、前者はマナ加速・後者はオーラやプロテクションなどのサポート。これらはパターンにハマれば強いデッキです。しかし、事前準備が必要=勝ちパターンの細さは、それだけでデメリットとなります。『タルキール龍紀伝』までの環境ならばそのデメリットは小さいものでしたが、今ではそうは言っていられないように感じます。

その理由は全体的なカードパワーの上昇にあります。各種龍王と命令を初め《シルムガルの嘲笑/Silumgar's Scorn》などのドラゴン公開呪文など強力なカードばかりで、どれもそれを使用するための準備に手間取ることもありません(ドラゴンカードを公開するだけだったり)。結果的に、「赤緑モンスターズ」「白青英雄的」はそれら手間いらずなカードを擁するデッキと比べて、パワー不足となってしまったようで、「赤白ミッドレンジ」が廃れたようにこれらも今、苦境に立たされているように思えます。

 
――今後のメタゲーム

丁度GPクラクフの結果が如実に表わしている通り、『赤単アグロ』『青黒タッチオジュタイ』『アブザン』の絶対数は多いでしょう。RPTQを初め、スタンダードの大会に行くなら必ずこれら三種に対する回答は用意しておきたいものです。現環境のカードパワーはいずれも高く、あくまでPTでは勝てなかったというだけでどれもデッキとしての自力は高いものばかりなので、残りのアーキタイプにも手広く対応したいところです。

何れにせよ『速度』と『カードパワー』を意識して調整していくのが重要なので、それらを踏まえて大会に臨んでみてはいかがでしょうか?