プロモアーカイブ 第64回 ex.7 『コールドスナップ』構築済みリプリントその3



text by Iwa-Show

プロモカードって、結局何なのだろう?突然始まる哲学。あれが存在することで、誰が何を得られるのか。結論から言ってしまうと、皆が幸せ。いや、わかりきっていることだとは思うんだけどね、改めてそういうものについて考えたくなることもあるじゃない。プロモカードを手に入れた僕らプレイヤー・コレクターは嬉しいものだ。トーナメントに参加するだけで貰えたりするのだから、最近では「参加し得」という言葉もあったりする。先日行われたRPTQなんてまさにそれだろう。《ヴェールのリリアナ》が貰えるなんて有難い話だ。

そうやってプレイヤーが喜んで大会に参加したり、パックを剥くようになればお店としてはこの上なく有難い話だ。FNMプロモの存在がお店を支えていると言っても過言ではない。お店が繁盛すれば、それ即ちWotCも嬉しいことになる。プロモの存在がマジックを盛り上げ、いっぱい売れてプレイヤーも増える。プレイヤーが増えると大会も規模が大きくなり数も増えて、現役プレイヤーも嬉しい。「販売促進」、これは正義の存在ですなぁ。

2006/07/21
火葬

 
『コールドスナップ』は、開発部に埋もれていた失われしファイルが見つかったためにイレギュラーなタイミングで製品化・発売されたセットであり、日本語版のブースターパックには「アイスエイジ・ブロックの失われし最終セットがついに登場!!」という一文が添えられていたりするが、実はこれはジョークである

。冷静に考えれば、そんな経緯で作られるセットなんてあるわけないだろ!と。それでも10年という時を経て、アイスエイジ・ブロックが無事に完結したのは良いことだったと思う。今や『コールドスナップ』はレガシーを中心に活躍するかけがえのないカードを含んでおり、このセットがなければ今日のマジック事情は大きく異なっていたであろうとさえ言える、重要なエキスパンションとして高く評価されている。

そんな『コールドスナップ』、単体でいきなり発売するのも心許なかったのだろうか。これまで発売されていたエキスパンションと同様に、構築済みデッキを販売・そこには『アイスエイジ』『アライアンス』のカードが新枠となって、そして各地域の言語となって登場するというサプライズがあった。これは実質的にプロモカードであり、販売促進を狙っての物だろう。スペシャルなカードを手に入れつつ、新しいセットのカードも知ってもらう。コレクターにとっては、ありがたさの塊である。

というわけで今週はこれらの「『コールドスナップ』構築済みリプリント」を紹介して行こう、実に第3弾目となる。
《火葬》は新枠になったわけだが、このカードはそれ以上に得た物があった。『第5版』にて日本語化された際に、フレイバーテキストは"ああ、「こんがり焼けた」というのが適切な表現だろう。"という形で訳された。これは《特務魔道師、ヤヤ・バラード》の台詞だが、彼女は皮肉屋でくだけた口調の女性なのに、妙に落ち着いた男口調で訳されてしまっていた。これはヤヤ・バラードのキャラクター設定が日本に伝わっていなかったためである。その背景世界が知られるようになった2006年に、改めてこのフレイバーが訳される際には、きちんと彼女らしい口調へと変更されることとなった。そういう意味でも、日本のマニアにとっては見逃せない逸品だ。

腹黒い紙虫
 
お初にお目にかかる方も多いカード名かと思う。『アライアンス』に収録されていた《Insidious Bookworms》は発売から10年後、遂に日本語名がつくこととなった。このカードはデザイン的にも、後のセットで収録される可能性はほぼないであろう1枚であり、ここしかないというタイミングで新枠・日本語名を獲得したのだ。


 
構築済みデッキということは、勿論多くの基本土地が含まれているのであり、この《島》も例外ではない。特に並べる土地の代表格であるし、旧枠セット感溢れるイラストを新枠で囲ったこの1枚でデッキ内の《島》を統一なんかすればオシャレだろう。

 
そして、七不思議。3種類の《島》のうち、何故か1枚のイラストに『アイスエイジ』の《冠雪の島》のイラストが採用されているのだ。この違和感に気付けたあなたは立派なマジックマニアだ。一体なぜ、このような形となったのだろうか。

キイェルドーの死者
 
『第6版』以来久々の登場、相変わらず元気そうな愉快なイラストを見て、何故かホッとしたのを覚えている。それにしても妙に新枠がフィットしている1枚だ。

キイェルドーの精鋭守護兵
 
こちらも読みにくさナンバー1の勢力「キイェルドー」からの1枚。それまで英語だったフレイバーテキストが日本語になったことで、その「なんじゃそら」な内容が多くの人に知れ渡るようになったことは誠に喜ばしい。

キイェルドーの本拠守護兵
 
キイェルドー第3弾。その中世感溢れるイラストが、これまた新枠と絶妙にマッチしていて面白い。『アライアンス』のエキスパンション・シンボルがアンコモンの銀色になっているのも、なかなかシブくて欲しくなる1枚ではないか。

キイェルドーの誇り
 
キイェルドー・シリーズ完結編。カード性能はお察しではあるが、コレクションとして割り切るならカードイラストが美しいものはそれだけで価値がある。熊のオーラがカワイイ、素敵な1枚だ。これが今の綺麗なインクで上質の用紙に印刷されているのは世界の小さな小さな幸せである。


ラト=ナムの遺産

 
『アイスエイジ』『アライアンス』には、効果がニッチであるが故にもしかしたら今後チャンスがあるのでは?というカードが複数存在している。基本的にはカジュアルな楽しみ方における出番ではあるが、それこそが大事なのだ。この《ラト=ナムの遺産》のような独特な挙動を見せるカードも、ここで新枠・日本語版が登場したことに大きな意味がある未来が待っている、のかもしれない。


リム=ドゥールの軍勢

 
このイラスト!言うなれば、古き良きホラー映画の傑作がデジタルリマスター・ブルーレイで登場したようなものだよ。VHSの味わいも良いが、やはり綺麗に越したことはない。何の話をしているのやら。個人的に最高にお気に入りの1枚。

霧の民
 
これまた好みの1枚。これでコツコツ殴るフルパーミッションを組んだ記憶がある(無茶苦茶弱かった)。Quinton Hoover氏のファンであれば必携の1枚とも言える。氏のイラストは有名どころが人気作だったりするが、こういうシブいものを愛でてこそのマニアというものだろう。構築済みリプリントにより日本語名と日本語フレイバーを獲得、ホラーな世界観が日本語で伝わりやすくなったのは素晴らしいの一言に尽きる。

今週はここまで!《島》に《冠雪の島》のイラストが使われている、なんてちょっとしたトリビアで、ドヤ顔出来るいい機会だと思うので是非現物を手にし、使用する際に披露してほしい。「知っているということは素晴らしい」、これが当アーカイブの執筆理念だ!それでは、また来週!