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「フリゴリッド」だ。John F. Rizzoの手によってつくられたこの魔界の発明品は、GPシャーロット05を制覇。発掘を繰り返し、何度も何度も墓地から複数で蘇り相手を蝕むイチョの姿は悪夢そのもの。発掘はドローが飛ばされるのだが、墓地に落ちたカードをそのままリソースとすることで通常ドローよりも遥かに多い手数を生み出すことが出来る。イチョ自体もその餌も補給される。完璧やん!
このデッキは後に時のらせん・ブロックにて《戦慄の復活》《ナルコメーバ》《黄泉からの橋》を得て、「ナルコブリッジ」というスタンダードのデッキのエンジンと融合。
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イチョはますますの活躍を見せることとなる。メジャーどころになってしまって、ちょっと複雑な思いを抱いたもんだ。自分がシブいなと目をつけていたカードが時間を置いてから評価された時って、この独特の感覚を味わえるよね。 『時のらせん』といえば、《冥界の裏切り者》がこの系譜を代表する1枚として登場。
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このカードもすこぶるシブい。古臭さを持ちつつ、その帰還方法は他に類を見ない独自のもの。無限コンボが組めるスペックであり、どう使うかあれこれ悩んだものだ。
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「恐ロシキハ血ニ狂ウ鬼」
「フリゴリッド」「ナルコブリッジ」はレガシー(およびヴィンテージ)に戦場を移し、「ドレッジ(発掘)」として墓地対策弱き時代のメタゲーム上位に君臨し続けた。《ライオンの瞳のダイアモンド》の価値を一気に跳ね上げたものだ(今の3分の1くらいしかしなかったけど)。かつては「古いカードが使えるなんて嬉しい、レガシーやってみたいな^^」とやってきたご新規さんの心をズタズタに引き裂いてしまう門番的存在でもあったね...ヴィンテージに至っては、《Bazaar of Baghdad》を使えるため、もはや「マジックとは別ゲー」「ドレッジ:ザ・ギャザリング」と言われる動きを見せるほどに。
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ここで「ハメ技おもんねーわ」とならずに「うわー面白い動きするなぁ」と思った人は、底なし沼に自ら飛び込むベア・グリルスみたいなもんである。
勿論、そこにイチョの姿はしっかりとあった。めでたいんだが、初心者殺しと呼ばれるデッキでの活躍は素直に喜べない。そんな日々が続いた。
2009年10月『ゼンディカー』推参。対抗色フェッチランドと、"トレジャー"と銘打って初期生産分にランダムに仕込まれたデュアルランドを初めとした絶版高額カード達の存在は、マジックに関わるほぼすべての人間を熱狂の渦に巻き込んだ。発売初日、当時は恵比寿町の方にあったBIGMAGIC日本橋店の混雑ぶりは凄まじいものだった。あの店舗も懐かしい、コンクリ打ちっぱで分けわからんところに柱があって、なかなかにモダンな店内だったなぁ。レジから店中に伸びた会計待ちの列は《とぐろ巻きブリキクサリヘビ》の如し。フリースペースではBOXを手にした皆がバリバリバリバリ剥いては歓喜と絶望の叫びをあげていた。
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僕はというと、BOX買いは捨てて確実に4枚欲しいものをシングルで集めるプランをとっていた。とりあえず、《新緑の地下墓地》と《恐血鬼》はマストバイ。《恐血鬼》はプレビューでその姿を見てから、気になってしょうがない1枚だった。
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・墓地から還ってくる能力 ・そのためのコストはマナ不要、土地を戦場に出すだけと簡単で展開を阻害しない ・素出しでも2マナで2/1と軽量クリーチャーとして優秀 ・相手のライフが低い時に速攻を得る能力、この地味シブ感 ・ダブルシンボル、ブロックに参加できないのは愛嬌 ・吸血鬼なので部族デッキの可能性 ・イラストもどことなくザ・グレート・カブキ感あってシビぃ
こんだけビビっとくるものがあれば、ね。前評判も高いカードだったが、とりあえず使いたいし購入。「ドレッジ」は《知られざる楽園》や《汚染された三角州》を採用してイチョに変わる蘇生生物として採用したりしていた。アップキープにしか還って来ないイチョ、とりあえず発掘してから落ちたカード次第でこのターン蘇らせるか否かを選べる《恐血鬼》が、よりコンボパーツとしては勝っているように見えた。
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実際に入れ替えて使った上での感想は...《イチョリッド》の一見デメリットであったターンエンドに自らを生け贄に捧げる能力。あれが強力だったんだということを思い知る。イチョに適当にインプ食わせたりして出して殴って、エンドにサクってゾンビトークンを出す。状況によっちゃ殴らないし、《黄泉からの橋》が2枚以上あればゾンビがモリモリ増えていく。マナを払わずにこれをダラダラやってるだけで、盤面は整ってくる。蘇らせる条件の緩さでは《恐血鬼》は遥かに勝ることは実感できたが、戻ってきたところでチャンプブロックも出来ずにただ突っ立っているだけで死にすらしない、というのはマイナスな点だったのだ。
ただ、《恐血鬼》が駄目だったとは思わない。《大いなるガルガドン》で積極的にグルグル回すというのは面白いし、上述のように《黄泉からの橋》《陰謀団式療法》が墓地にタップリある状態を発掘で作ってから、任意のタイミングで釣り上げられるのは安心感がある。イチョの場合、アップキープにしか戻せないので後の発掘の結果を見てからプランを立てられないのだ。あるいは、イチョと違ってとりあえず場に戻しておく、というアクションを取っておくことで墓地対策を事前に回避しておけるという点も未体験のシブさだった。結局僕は...《イチョリッド》3:《恐血鬼》2くらいのバランスで併用していた。この2体を戦場に戻して《陰謀団式療法》を唱えるだけで、シブいものへの欲求は満たされるのだ。
《恐血鬼》はスタンダードでも活躍していた。「赤黒吸血鬼」または「青黒~」デッキでは、重要な2マナ圏のアタッカーとして、そして《臓物の予見者》に占い用ハラワタを提供しては《カラストリアの貴人》の能力を誘発させて2点ドレイン、占術でフェッチランドをトップに置いて...という、コンボじみた動きを見せていた。
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勿論僕もこれを使用...していなかった。当時はMOでより格安で組めてなおかつ勝てるという点で、白単の《聖なる秘宝の探索》デッキを愛用していた。これもこれでシブい白ウィニーだったな。当時はよく対戦相手からチャットで「初手依存イージーデッキ使うなコラ」とか煽られたのも懐かしく良い思い出だ。
そして...モダンというフォーマットが産声を上げる。『第8版』以降のセットのみを用いるとのことで、そこには所謂旧枠セットに属する《イチョリッド》の姿はなかった。故に《恐血鬼》がいて良かった。モダン制定時から存在する「ドレッジ・ヴァイン」というデッキは、新セットの登場と禁止カードの変更などの環境の変化に合わせその姿形を変え、細々と生き延び続けている。色は違えど《復讐蔦》も墓地から還ってくるクリーチャーだ、紹介しない訳にもいくまい。
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上記の「ドレッジ・ヴァイン」のキーカードだ。レガシーでは《適者生存》と合わさり暴れ回った挙句、同カードを禁止カードに制定させてしまった。これまでの還ってくる連中を大きく上回る4/3というサイズは圧巻。このカードと《恐血鬼》を4枚ずつ採用し、《小悪疫》でのディスアドバンテージを最低限にするというデッキ、大好物である。個人的には更にダメージ源として《爆破基地》も絡めたいものだ。
そうそう爆破と言えば、最高のデッキがね...
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「ボンバー・オブ・ザ・デッド」 中世ヨーロッパ風、ホラーな世界観を展開しマジック史上初の両面カードも登場し話題となった『イニストラード』。"フラッシュバック"の帰還は、オデッセイ・ブロック大好き坊やである僕のような人々にはそそられるものだった。そして、続く第2セット『闇の隆盛』。《ヴェールのリリアナ》《瞬唱の魔道士》《聖トラフトの霊》対抗色土地などの華々しいカードに彩られた、その次のセットと言うことでハードルが上がってしまい、結果多くのプレイヤーが発売当初このセットを評価していなかった。『イニストラード』の頃は発売準備&当日のお客さんの途絶えなさで死にそうになったものだが、前回を踏まえて気合いを入れて臨んだ『闇の隆盛』は肩透かしをくらったのをよく憶えている。徹夜はし損(これから8か月後、この言葉を撤回することになるんだが)。
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世間の評価はどうあれ、個人的にはそそるカードが山ほどあったので良セットだった。《地獄乗り》はライダー好きであり、メタル好きであればそそられない訳はない。Judas Priestやで!《ゲラルフの伝書士》なんて、イラストから何から最高じゃないか。Kev Walkerが手掛けるは、アメコミ風の眼光を発する、シンプルな作りの人造ゾンビ。カードとしても攻撃性と継続戦闘能力に優れた逸品だ。トリプルシンボルと言うのもいっそ清々しくて良い。どっちもシブいカードで、発売初日抑えることを誓っていた。
待て待て、これで終わりじゃない。最上級な1枚があるではないか。ゾンビで、1マナパワー2で、墓地から還ってくるぞ!その名も《墓所這い》、ゾンビの最高傑作と言っても過言ではない1枚だ。
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上記のように1ターン目に2点クロックとして出すだけで普通に強い。《肉占い》《カーノファージ》を思い出してくれ。それが何度も何度も蘇ってくるとしたら...ワクワクしかしないだろう?このカードの帰還方法は、墓地から唱えてOKというもの。条件は、自身の戦場にゾンビが居る事。ちょっとした部族カードだ、同族が居れば何度でも戦力になるよと。これの良い所は、これ自体を複数枚引いた場合、自分達だけで帰還サイクルを形成できること。単体除去カードしか有しない相手にとって、これが2体並ぶだけで相当に厄介な話だ。
この激シブゾンビを用いて、激シブデッキを生み出し結果を残したシビぃ男がいる。アメリカが誇るトッププレイヤーの一人、Sam Blackだ。彼がGPアトランタに持ち込みTOP8入りしたデッキは、レガシーという固定観念に塗り固められたフォーマットに新たな風を吹かせたのである。Ladies and Gentlemen, here comes the Zombardment!!
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Zombardment |